大学生へのメッセージ
坪田まり子

　はじめまして。坪田まり子と申します。本大好きの大学生が集まる『読書のいずみ』に寄稿できることを光栄に思っています。幼い頃から読書大好きな私にとって、“若いっていいなあ”“青春してるなあ”と心地よい気持ちにさせてくれる素敵な冊子だと、いつも思っているからです。今回はそんな皆さんに、苦手意識をもつ人が多い自宅からのリモート授業やweb面接で親孝行できることを熱く語らせていただきます。よろしくお願いします。

　リモート授業に慣れてきた昨今は、対面授業よりリモートがいい！　とメリットに気づいている学生もたくさんいらっしゃるようです。私も授業をもっていますが、ZoomとTeamsの２つを使っています。大学側から「画面も声も原則はオフ」と言われているはずですが、私は授業開始時と終わりには、顔と声を出すことを求めています。互いの顔を見て挨拶することで、それぞれの場所にいる私たちが、同じ時を共有している仲間であることを感じあいたいからです。最初の頃は進んでオンにしてくれる学生は半分位でした。授業回が進むにつれ顔出しが増えてきて、最終授業回あたりになると、ほぼ全員が顔出しをしてくれるようになりました。ネット環境にもよりますが、私なりに学生たちの気持ちの変化を感じています。恥ずかしいから顔は出さない、という気持ちから、顔を出して話すことって楽しいと言ってくれるからです。これこそがコミュニケーションの本質。タレントのように自分が画面に映るわけですから、オンにした直後は、画面いっぱいの学生たちが、まず髪の毛をいじったりしています。きっと彼らなりにカメラ写りを見ているのでしょう（笑）。授業中にはハプニングもあります。学生の横に、ひょこっとお母様らしき人が映ったり、愛犬が頭の後ろを通過したり、愛鳥のさえずりが聞こえたり！　ひょこっとお母様らしき人が見えた時には、女子学生の授業を一緒に聞きたいと隣に座っていらしたとのこと。私の授業が大好きだとお母様に話したら、自分もぜひ一緒に聞きたいとおっしゃったそうです。こんなことができるのもリモートだからですね。あるときは、いつも気取って話す男子学生がプレゼンテーションをしている真っ最中に、エプロンをつけたお母様らしき人が彼の後ろをたくさんの洗濯物を抱えて通りました。彼の慌て様が本当に無邪気で少年のようで、本当は素直な男子学生であることがよく分かりました。こんなこと、あんなこと、恥ずかしいことだと思いますか？ もちろん見方は様々ですが、私たち教員からすれば、彼らの人となりが垣間見えた気がして、がっかりするというより嬉しく思うことのほうが多いかもしれません。何を隠そう、この私も母から褒められて苦笑したことがあります。私の部屋は北側なので自宅で授業をする際はリビングからです。まもなく87歳になる母はリビングのいつもの場所に座っています。最初は抵抗がありましたが、「お母さん、授業をするから静かにしててね」などと声をかけて今にいたります。くしゃみするとき母は声が出ないように抑えてくれています。申し訳ないなあと思いつつこの場所で頑張っていますが、１ケ月前、「あんたの声は心地よいねえ」って言われました。そんなこと言われたこともなかったのでびっくりしました。３コマぶっ続けでリビングから授業をしていますが、嫌な顔を一つもせずいつもにこにこしています。そしてびっくりしたのがつい先週。「あんたの授業は人として大事なことがたくさん含まれてるんだね。私もあんたの授業に出てみたくなったよ」って。小さい頃から叱られた記憶の方が多い母がこんなことを言ってくれるのも、リモート授業だからこそ。対面授業なら母が私の授業を聞けるはずもありません。大袈裟ですが、やっと親孝行ができたのかなあと、ちょっと温かい、優しい気持ちになりました。

　Web面接では、聞き耳を立てられているようで話しにくい！　という声が多く聞かれますが、私はもっと大きな声で話して、ご家族を安心させたらいいのに、って思っています。壁の向こうで、「ブレーメンの音楽隊」の動物のように、聞き耳を立てているお父さん、お母さんたちすべてに朗々と頑張っている声を聞かせてあげてください。あなたが誰かと結婚するとき、そして就職活動のとき、親って聞きたくても聞き出せないところがあるからです。ただおろおろして、ただひたすら心配しているだけ。皆さんのご両親は今も現役世代のはずですから、何かの折にさらっとアドバイスをしてくださるかもしれません。リモート授業やweb面接で親子関係がよくなり親孝行につながること！　素敵なことだと思いませんか？