2024年11月23日現在
10月に投稿されたコメント796枚から選考しました。
選考は、大学生協の全国学生委員、出版甲子園学生メンバー(特別協力)、
書籍担当職員、顧問をお願いしている先生で行いました。
ナイスコメント8点、次点11点でした。おめでとうございます!
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- コメント:
- ある一文を読んだ瞬間、ゾッとした。自分自身も、この本に隠された仕掛けを当に体験していたからである。小説は物語そのものを楽しむもの。今までそう思っていた。しかしこの本は私のそんな思い込みを、一瞬で消し去ってしまった。物語そのものだけではなく、作者のトリックにも本当に驚いたし、このような形でも読者を楽しませてくれる本があるのだと感動した。電子書籍が普及する現代だからこそ、紙の本の魅力を再確認できる一冊である。読み終わった際にはきっと、心が「透きとお」ったように感じるであろう。
- コメント:
- ずっと名前を欲しがっていた感情に、ようやく名前が付いた、「センス・オブ・ワンダー」という名が。
こういうことが時々あった、自分の中にある「自然」が静かに崩れて、ただ、目の前にある生の気配に目をみはる瞬間。自分の本当にいるべき場所に帰れた安堵感もある。この感情は何なんだろう、ずっと考えていた。そして今、やっと見つけることが出来た。
年を経るにつれ「センス・オブ・ワンダー」を体感する瞬間は減りつつある。それでも忘れたくない。だから、今はこの想いを大切に味わう、自分の心の故郷と共鳴する、あの瞬間を。
- ペンネーム:
- 北極星
- 大学・学年:
- 愛知教育大学 3年
- 書名:
- ぜつぼうの濁点
- 著者:
- 原田宗典 柚木沙弥郎
- 出版社:
- 教育画劇
- コメント:
- 言葉とはなんて美しいのだろう。
この絵本を読んだ時の感想はまさにその一言であった。
物語の主人公はひらがなの国に住む,「ぜつぼう」の「ぜ」の字に付いた濁点である。主人である「ぜつぼう」が苦しんでいる責任は自分にあると感じたぜつぼうの濁点は,旅に出ることを決意する。しかし,濁点は用途に限りがあると同時に単体では存在できない。自身の存在意義を問われる濁点の様子が愉快な言葉遊びで描かれる。
私たちが当たり前のように使っている言葉がこんなにも面白く,美しい物語になることの衝撃を,ぜひ味わってほしい。
- ペンネーム:
- ゆる
- 大学・学年:
- 東北大学 2年
- 書名:
- 流浪の月
- 著者:
- 凪良ゆう
- 出版社:
- 東京創元社
- コメント:
- 「小児性愛者」この単語は聞くだけで人を不快にさせる、そんな言葉だろう。さらにここに、「小さな女の子を匿っている」そんな表現を加えたら、不快を超えて憤りさえ感じさせるかもしれない。しかし、この少女にとってこの人が必要な人間だとしたら?生きる上でなくてはならない存在だとしたら?
この本を読んで感じたのは常識とは何かということである。そもそも「常識」「普通」「当たり前」これらの言葉は何が基準なのか。肯定も、しかし否定も出来ないこの2人の関係をあなたはどう捉えるか。「犯罪」か、それとも「愛情」か。
- ペンネーム:
- たま
- 大学・学年:
- 京都大学 3年
- 書名:
- 生殖記
- 著者:
- 朝井リョウ
- 出版社:
- 小学館
- コメント:
- あらすじがほとんど公開されていないという、あまりされてこなかった販売方法を取っている理由がよく分かります。とにかくページを開いてみて!きっとあなたも「私」の正体に驚かされます。一人称でも三人称でもない書き方を考えるうちに思いついたという、この語り手。その発明に脱帽です。
小説のようであり、論説のようである内容からは、「生きる意味」「世界の発展」を考えさせられます。あなたも関係ありますよね?と首根っこを掴むように問いただされている感覚。是非他の多くの方にも、打ちのめされてほしいです。
- ペンネーム:
- 空飛ぶまめだいふく
- 大学・学年:
- 東北大学 大学院
- 書名:
- 本は眺めたり触ったりが楽しい
- 著者:
- 青山南 阿部真理子
- 出版社:
- 筑摩書房
- コメント:
- 本を読む人なら感じたことのある「なぜかこうしちゃうんだよな」。自分だけだと思っていたかゆいところに手が届いたような話が詰まっている。言語化してくれてすっきりし、なぜか小気味良い。本棚をただ見たいだけの男の子と読書家の司書の話が印象的。読んだ後、キャンパス内の書店を2つと駅近の書店を2つ見て回った。なにも買わずにじっくり本棚の背表紙を見て歩きまわるのも楽しいもんだ。この本には、感想を書くとき、感動をべつな感動と結びつけて書くと良いと書いてあった。心の文脈のなかで整理する、っていい表現だな。
- コメント:
- 私のような書痴に言わせれば、「読めば人生が変わる本」などそこら中にある。最早ありふれている。しかしこの本のとびきり良いところは、読み終えた直後から、思考せずにはいられないところだ。簡潔なテーマ、明快な比喩、それらは我々の複雑な人生の精巧な写しである。疑いなく誰もが、これまでの人生をチーズの上で生きている。だから今までの自分を顧みる。そして我々はこれからもチーズの上で生きる。だから自分の未来を考える。数十年後、これを読み返す自分が容易に想像できる。そのとき私は、私をどう解釈するのか。楽しみである。
- コメント:
- 地位も、服も、名前も、何もかもを奪われて、持っているものは自分の身体一つだけになったとき、私には他に何が残っているでしょう。自分の心?強制労働の日々、食事もろくに与えられず、寝ている時だけが、唯一自由でいられる時間。生きる目的を見失いそうになる日々の中で、私たちは今まで持っていた優しさを、人に与えることができるのでしょうか。過酷な環境の中、今までの精神状態でいられるのでしょうか。
生きる意味とは何か。どんな力でも奪えないものはあるか。ナチスの強制収容所に収監された体験をリアルに描く、不朽の名作。
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【次点:11件】
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- ペンネーム:
- ぜう
- 大学・学年:
- 西南学院大学 2年
- 書名:
- 思考の整理学 新版
- 著者:
- 外山滋比古
- 出版社:
- 筑摩書房
- コメント:
- 残念なことに、私の脳のスペックでは処理しきれないような情報に出くわすことがある。更に後回し癖も手伝って、「とりあえず明日の朝考え直そう」と次の日に作業を持ち越したこともあった。ところが翌朝になってみると、昨日までの苦悩がウソのように作業がはかどるということも経験してきた。この裏技のような思考法を、経験ではなく知識として早い段階で習得しておきたかったと感じている。その上で、刊行から37年が経ってもなお読まれ続けるこの本は、知のバイブルとして不動の存在なのだろう。
- ペンネーム:
- おかず
- 大学・学年:
- 同志社大学 1年
- 書名:
- 青を抱く
- 著者:
- 一穂ミチ
- 出版社:
- KADOKAWA
- コメント:
- その本の中で特別に重要な場面では無いのに、なぜかコメントを書く時に最初に思い浮かんでくる場面がある。
この本では、主人公が、今は昏睡状態の弟が幼い頃を思い出している場面。海が大好きな弟がバケツに海水をくんで持ち帰ってきたのにバケツの中には海の青がなくて「どうして海は持って帰れないの」と泣くのだ。
キラキラしている大好きなものが、手の中に入ったとたん、別のものになってしまう。
それは、恐らく誰の人生でも1度はあったことで、とっくに忘れていた感情をこの場面は思い出させてくれたのだろう。
- ペンネーム:
- 本を読む看護学生
- 大学・学年:
- 新潟大学 1年
- 書名:
- わたしの美しい庭
- 著者:
- 凪良ゆう
- 出版社:
- ポプラ社
- コメント:
- 読んでいると膿んで腐った心の古傷へ雨が降り注いで、新しい花が芽吹くような作品。
「縁切りマンション」なんていう縁起の悪い建物を舞台に、辛いことや嫌なことばっかりで目をそむけたくて、でもたまに幸せな瞬間がやってくる……まるで人生みたいなストーリー展開がされていく。トラウマ級の嫌な記憶もいらない縁を切ってシンプルにしたら、いつか大切な思い出になるかも。そんな予感を読者にもたらす、読むセラピーのような一冊。
- ペンネーム:
- えび天天
- 大学・学年:
- 京都大学 4年
- 書名:
- センセイの鞄
- 著者:
- 川上弘美
- 出版社:
- 新潮社
- コメント:
- 三十歳以上離れた70代の国語教師と30代の女性の恋愛物語。年齢的にも、精神年齢的にも遠い存在である2人が、世の恋愛の形にはまらず、スローペースで距離を近づけていく、この昭和や平成初期のような雰囲気がとても心地よかった。恋愛物語のドキドキ感などはあまりないが、この静かで心地よい雰囲気がよく、いつまでも読めるような作品。この国語教師のようなオシャレで大人な歳の取り方をしたいなと思った。
- ペンネーム:
- 桐田
- 大学・学年:
- 龍谷大学 3年
- 書名:
- エゴイスト
- 著者:
- 高山真
- 出版社:
- 小学館
- コメント:
- 愛とはなんだろう。この本を読んでいる時、そういった問いをずっと持っていた。結局答えは出なかったが、登場人物全員が誰かに何かしらの愛を持っていたのがよく分かった。
誰のために行動しているのか?それは行動の主体自身のためかもしれない。エゴかもしれない。でもそれを受け取る側(本書なら龍太の母親)のやさしさがあることを感じられた。
映画版を観た後に読んだ一冊。映画と同様静かな激しさがあって良かった。
- コメント:
- 気が病んだ時、私は「友だち」を極端に定義付け、自分も周りも傷つけてしまったことがあった。
今感じるのは、あの時私が本当に求めていたのは、私の定義に当てはまる「友だち」ではなく、(もといそんな定義は意義をなさない。)
自分を否定してしまう理由を受け入れて、そんな自分も肯定できる自分だったと思う。
自分に持っていない要素を相手に本気で求め出したら、それは相手ではなく自身に求めている要素なのかなと思った。
本書は、友だちとの付き合いを通して自分の心の声を改めて聴くきっかけをくれた。
簡潔ですぐ読めるので是非!
- コメント:
- 学問するすべての人へ。
授業中、窓の外を見て、誰しも思ったことがあるだろう。
「私はなぜ、学ぶのか。」
これは、女性皇族として初の博士号を取得なさった彬子女王がご自身が語った、オックスフォードでの日々の物語である。
皇族の方が書いた、と聞くと、堅苦しい印象があるかもしれない。
しかし、ページを開けば、伝わらない英語に苦悩し、友人とのひと時に心緩ませ、時には愚痴も言う。
時にくすっと笑ってしまうような、私たちと変わらない、大学生である。
読み終わったころには今より少しだけ、学問が楽しくなるだろう。
- ペンネーム:
- さささ
- 大学・学年:
- 東京大学 1年
- 書名:
- 大学1年生の歩き方
文庫版
- 著者:
- トミヤマユキコ 清田隆之
- 出版社:
- 集英社
- コメント:
- 大学に入って半年、サークルや勉強もそこそこでこなしてきたけれど、将来への不安が拭えない、そんな時この本を読みました。
特に実用至上主義についての部分が印象に残りました。これは、勉強も、インターンも、旅行も、「〇〇のために」するという考え方で、こうなると自由があっても何をすべきかわからず、指示待ち人間になってしまいます。自分にも思い当たる節があったので、もっと遊びをきかせるようにしたいです。大学生によくある悩みを月毎に解説しているこの本は、同じく悩める大学1年生にぜひ読んでほしいです!
- コメント:
- 読んでいくうちに、真っ暗だった道がだんだんと明るくなっていくようだった。普遍的な「こころ」というものの性質を分解して、操縦の仕方や付き合い方について教えてくれた。こころは私の扱い方次第でどうにでもなる。疎むべき存在ではないのだと思った。優しい語り口調で説明してくれたところも良かった。もう一度読みたいくらい、心地の良い本だった。
- ペンネーム:
- たま
- 大学・学年:
- 京都大学 3年
- 書名:
- 私の身体を生きる
- 著者:
- 西加奈子 村田沙耶香 金原ひとみ 島本理生 藤野可織
- 出版社:
- 文藝春秋
- コメント:
- 17名の作家による、身体・性をテーマとしたエッセイ集。各々の性自認、性的志向、コンプレックスが違うのだから、エッセイの相違点が多数あるのは当たり前。しかし、共通点も多いのは驚きだった。私が見出したのは「暴力性」という共通点だ。どういうこと?と思った方には是非読んで確かめてほしいし、他にも共通点が見つかれば是非教えてほしい。
また、一人ひとり違うのだという認識が広まったとはいえ、多くの人が同じようなことに悩んでいることが分かり安心すると同時に、社会や認識の問題点が浮かび上がった。
- ペンネーム:
- おかず
- 大学・学年:
- 同志社大学 1年
- 書名:
- Q&A
- 著者:
- 恩田陸
- 出版社:
- 幻冬舎
- コメント:
- 得体の知れない気味の悪さが徐々に自分をむしばんでいくような恐怖を味わった。地の文がない完全に対話のみで進んでいく形式、そして、対話が始まる前の「ここで話したことは外に出ることはありません」という言葉があることにより、読んではいけないものを読んでいるような気分になる。そして、人々の会話から浮かび上がってくる悪意、善意、エゴ。知りたくなかった、でも知ってしまったらどうしようもない。私が生まれる前に書かれた本だけれども、世界は何も変わっていないのだから、明日は我が身なのだ。
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