今月のナイスコメント(2024年7月)速報

2024年9月1日現在

7月に投稿されたコメント433枚から選考しました。

選考は、大学生協の全国学生委員出版甲子園学生メンバー(特別協力)、
書籍担当職員、顧問をお願いしている先生、計18名で行いました。

ナイスコメント15点、次点21点でした。おめでとうございます!

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ペンネーム:
発酵ダイヤモンド
大学・学年:
北海道大学 2年
書名:
AIは短歌をどう詠むか
著者:
浦川通
出版社:
講談社現代新書
コメント:
AI対人間という図式が一般化したのはなぜだろう。私がこの本を手に取ったのは、短歌を詠む1人の人間として恐怖を覚えたからだ。AIが詠む歌に人間が負けるはずはない、でももしかしたら……。けれどこの本を読み終わったとき、私は短歌をうまく詠めないと苦しむ自分について考え直す機会を得た。いつのまにか短歌を勝ち負けで捉え、この歌はあの人より下手だと切り捨てていた自分こそAIより冷たい存在だったのかもしれない。AIと短歌、どちらも基礎から解説するこの本は、AIとの付き合い方を考える上で大切な視点を私たちに与えてくれる。

ペンネーム:
くっちゃん
大学・学年:
名古屋大学 1年
書名:
ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい
著者:
大前粟生
出版社:
河出文庫
コメント:
表題作の「ぬいぐるみとしゃべる人はやさしい」では優しすぎるがゆえにつらさを人一倍感じている人の生きづらさがリアルに描かれていた。自分が普通とは少し違うと感じているが、それを中々言い出せない人に読んでほしいと思った。生きづらさを解消してくれる訳ではないが、その辛さにそっと寄り添ってくれる作品だと思う。

ペンネーム:
詩暢
大学・学年:
京都大学 1年
書名:
「友だち」から自由になる
著者:
石田光規
出版社:
光文社新書
コメント:
友だちが欲しい。なんとなく出遅れて、いつも行動を共にするような「友だち」をつくらないまま今に至る。それはそれで気楽である一方で、知り合って間もなく仲良くしている(ように見える)同級生を見ると、どこか寂しさを感じる時もある。つまるところ、友だちって何なのか。私見によれば、家族・親族以外を「知り合い」で統一する筆者の「友だち」観はかなりドライである。大半が多数のコミュニティに軸足をおく大学において、それでも腹を割って話せる友人を求めたくなるのは、やはり贅沢なのだろうか。自分の友だち観が問い直される。

ペンネーム:
空飛ぶまめだいふく
大学・学年:
東北大学 大学院
書名:
傷を愛せるか
著者:
宮地尚子
出版社:
ちくま文庫
コメント:
「なにもできなくても、見ているだけでいい。なにもできなくても、そこにいるだけでいい」。大切な誰かが傷つくさまを、ただ息をつめて見ているしかなかった。それでも起きたことを目に焼き付けたことで救われたひとがいたかもしれない。なにもせずに見守ることは、難しい。このエッセイは、冷たくていて優しかった。どこか冷静で俯瞰しているんだけれど、それでいてどこかほんとうの部分で優しかったんだ。傷をなかったことにしたくない。この本は、「あなたの傷はそこにあるよ」といって、手当てをして、ただそばにいてくれていた。

ペンネーム:
るる
大学・学年:
弘前大学 1年
書名:
僕はイエローでホワイトで、ちょっとブルー2
著者:
ブレイディみかこ
出版社:
新潮文庫
コメント:
貧困、LGBTQ、虐待、いじめ、政治、宗教、その他色々。日本のニュースを見ていればそんな社会問題が尽きないと感じる。自分は考えるのが好きだと自負している。でもこのようなことを考えた時、考えれば考えるほどどうしようもない問題な気がしてくるのだ。そんな時にこの本の一巻を読んで驚いてから2巻を待ち続けていた。はじめに書いてあるぼくの「ライフって、そんなものでしょ。」という言葉に惹かれる。この本を読めばこの言葉が単なる諦念では無いことが分かる。この社会を生きる上で持ち続けたいマインドであることも。

ペンネーム:
M
大学・学年:
お茶の水女子大学 4年
書名:
腹を空かせた勇者ども
著者:
金原ひとみ
出版社:
河出書房新社
コメント:
超コミュ強&陽キャな中学生のレナレナが、コロナとか母親の「公然不倫」とかハードモードな日常を全力で楽しんでたまに泣いたりしながら過ごしてく話。レナレナの一人称での力強い語りに、女子同士でしゃべるときみたいな息つく暇ない句読点の少ない文章。この青春戻ってきた~みたいな文体、読んでいて超楽しい!その一方で、論理的でシニカルでフェミニストな母親や、なんかイマイチずれてんだよな~っていう父親(「おじさん」の象徴だ)との会話が物語に深みを与えている。「かわいい~」と「文学…!!」が両立した超面白い一冊だ。

ペンネーム:
メルカトル
大学・学年:
名古屋大学 2年
書名:
ファミリーランド
著者:
澤村伊智
出版社:
角川ホラー文庫
コメント:
高度に発展した技術によって生活がガラッと変わる、というのはSFでよくある話だ。だが、この話に出てくる技術はどれも現実世界の延長線上にあるようなものばかりだ。だからこそ、登場人物たちの価値観が今の我々と食い違っていることの恐ろしさがひしひしと感じられる。通常、小説は読者が主人公に感情移入できるように作られているが、この小説は逆だ。知っている世界のはずなのに、読書中、何度も強烈な違和感を感じた。しかし、同時に思ってしまう。自分も人知れずおかしな行動をしてしまっているのではないか、と。

ペンネーム:
Uka
大学・学年:
西南学院大学 2年
書名:
祐介
著者:
尾崎世界観
出版社:
文藝春秋
コメント:
久々に小説を読んだ。祐介の、思わずゾッとするようなエピソードばかりだった。バイト先で商品に爪を立てたり、万引きまがいのことをしたり。暴力シーンもあるし、汚いことばかりでため息をつきたくなる。著者はこんな下積み時代を過ごしたのか。そんな中にもバスの中で聞く雨音やタバコの匂い、笑顔で話しかけられたときの緊張感、もどかしさなどふとした瞬間には私と共通するものがある。日常のどうでもいいような感覚を掬ってくれてきもちいい。「傷だらけの俺が傷だらけの俺を揺すっている」苦しくも希望が残るラストが印象的だった。

ペンネーム:
い都
大学・学年:
関西学院大学 3年
書名:
他者の靴を履く アナーキック・エンパシーのすすめ
著者:
ブレイディみかこ
出版社:
文藝春秋
コメント:
先日、玄関に置いてある自分の靴に足を突っ込むと、それはもうモーレツに違和感を感じた。なんだこりゃ、本当に自分の靴か?と。原因はスイカを差し入れに来てくれた叔母が、帰り際に私の靴を間違えて履いたからなのだが、あの一瞬でここまで靴の中身が変わってしまうことに驚いた、と同時に思い出したのがこの本である。今なら身をもって言える。誰かの靴を履いてみると(そして自分の靴が誰かに履かれてみると)見える世界が変わる、と。

ペンネーム:
本の虫
大学・学年:
東京経済大学 4年
書名:
すべての人にいい人でいる必要なんてない
著者:
キム・ユウン
出版社:
かんき出版
コメント:
自分の心に嘘はつかなくていい、もう体に纏った鎧は脱いでいい。タイトル通り、「すべての人にいい人でいる必要なんてない」と思ってはいても、人間というのは不思議で、誰でも「嫌われたくない」気持ちはあると思う。他人へ自分へも自らを偽って背伸びしてしまうことは、過去だけでなくきっとこれからもあるだろう。きっと完全にはなくせない。でもそうして背伸びして無理してもいいけど、自分の心を受け入れる時間を持つこと。スマホから離れたり、お気に入りの紅茶を飲んだりして心が楽になる時間をつくれたないいな。

ペンネーム:
モモノスケ
大学・学年:
新潟大学 1年
書名:
ゴットハルト鉄道
著者:
多和田葉子
出版社:
講談社文芸文庫
コメント:
読まなければよかった。三人称の理解が到底及びそうもない特殊な、敢えて言うならば統合失調の思考回路に、常人はついていけない。面妖な比喩に、正常であることを拒否するような独特のこの感性に順応できる人はまずいないだろう。読後、その文章から解放されて彼女の言葉が与えた、鉄鎖で縛りつけるような切迫感に気づいた。それでいて手元に何も残らないような泡沫のような文章である。そこにはやさしいもの、温かいもの、血の通ったあらゆるものが半ば恣意的に排除されている。解説の作者近影までもが「嘔吐」のサルトルを思わせた。

ペンネーム:
いちごおはぎ
大学・学年:
熊本大学 2年
書名:
いつかあなたに出会ってほしい本
著者:
田村文
出版社:
河出書房新社
コメント:
誰かの感想を聞くことで、物語の世界に深みが増すことは多い。この本を読んでいると、物語の世界の多様で心揺さぶれる側面が、大きな広がりを持つような感覚がした。「文芸記者」として、多くの作家の話を聞いてきた作者の言葉は、本を開けば見ることのできる世界の美しさを色鮮やかに伝えてくれる。読んだことのない作品を読む際の導入書としての機能はもちろん、読んだことのある作品の世界を見つめ直す際にもこの本は役立つような気がした。

ペンネーム:
さゆ
大学・学年:
京都大学 2年
書名:
本と鍵の季節
著者:
米澤穂信
出版社:
集英社
コメント:
「本」と「鍵」がこの本のキーワードですが、私たちの日常にもこういったキーワードはたくさん混じっています。私はコンビニに売られている「あるお菓子」を見ると、その名前を持つ実家の犬のことを思い出すし、「かつてアルバイトをしていた店」の前を通りかかると、忙しくアルバイトをしていた時の記憶がよみがえります。主人公二人はいつか社会人になるでしょう。そのとき本と鍵を通して、この青春の日々を思い出したりするのかな、思い出して一瞬でも日々のストレスを忘れたりしていてほしいな、と思います。

ペンネーム:
みかん子
大学・学年:
奈良女子大学 4年
書名:
アルジャーノンに花束を
著者:
ダニエル・キイス
出版社:
ハヤカワ文庫
コメント:
人生を通じて何度も読みたい。読む度、発見がある。私にとってこの本は、そんな本だ。
主人公は、知的障害を持つ青年。彼には頭が良くなりたいという強い想いがあった。彼は実験の被験者として選ばれ、手術を受けて高い知能を得る。しかしその効果は、期間の限られたものだった
チャーリーの変化に応じて目覚ましく変化する文体が天才の所業。そこに現される知への執着、知能を得て得たもの、失ったもの、一転して衰えていく焦り。そこには人生が詰まっている。
この小説を、10年後、30年後の自分はどう読むだろう。

ペンネーム:
くりごはん
大学・学年:
北海道大学 2年
書名:
マッチング!
著者:
加藤千恵
出版社:
新潮文庫
コメント:
簡単にいいねを送って、人と出会えるようになった反面、その気軽さによって、私たちは常に他者を選ぶ側にいるのだと錯覚する危険性が隠れています。これは傲慢さの表れです。本作品では、自分が会いたいと言うまで相手は待っていてくれている、という思い込みの愚かさがリアルに表現されていると感じました。選ぶ・選ばれることが同時に行われるがゆえの残酷さに慄きました。主人公が出会いを重ねたその先で取った選択はとても斬新でした。どの出会いも決して無駄にはならず、自分の夢に気づかせてくれるきっかけになるのだと思いました。

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【次点:21件】プレゼントなし(おしい!)

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ペンネーム:
M
大学・学年:
お茶の水女子大学 4年
書名:
生きるとか死ぬとか父親とか
著者:
ジェーン・スー
出版社:
新潮社
コメント:
あなたは親の「親」以外の側面を知っているだろうか。本書は、母親の「妻」や「女」としての生き様を知らないまま母親を見送った著者が、同じことは繰り返すまいと父親の「父親」以外の横顔を追ってゆくエッセイである。見栄っ張りで意地っ張り、ただし愛嬌は人一倍。どこか憎めない父親と、墓参りや叔母の見舞い、銀座や上野動物園に行きながら、著者は家族の来し方行く末を思う。「親」以外の顔を知ることは時に甘美で、時にひどく苦い。すべてを飲み込んで、家族の在り方を探っていく著者を追いかけながら、私も私の家族を思った。

ペンネーム:
いちごおはぎ
大学・学年:
熊本大学 2年
書名:
本屋さんのダイアナ
著者:
柚木麻子
出版社:
新潮社
コメント:
本が好きな人必見!
同じ本を好きだと言い合った過去の優しさに気付かされる一冊。
正反対な2人を引き寄せたのは、ある一冊の本を好きだと思った感情だった。多感な時期に大好きな本を通して心を交わした2人。正反対だったからこそ生まれた、ないものねだりや、嫉妬、苦しさも全部、好きな本を共有できた過去があったからこそ、自分で乗り越えることができた。
誰かと「好き」を分かち合えた経験はきっと、あなたのお守りになってくれる、そう感じさせてくれる一冊。

ペンネーム:
詩暢
大学・学年:
京都大学 1年
書名:
この夏の星を見る
著者:
辻村深月
出版社:
KADOKAWA
コメント:
ふつふつと湧いてくるのは「ありがとう」の気持ちだった。コロナが5類に移行して1年あまりが経ち、日常が戻ってきた、と形容されることも多い。ほとんど制限のない大学生活を謳歌するなかで、でも確かにあの時があったことを忘れたくない、とも思う。お互いがお互いを無言のうちに牽制しあっているような息苦しさ、編み出しては選りすぐり捨象して伝える言葉、他の誰かにとってはきっと些細なことで傷つき、一人で泣いたこと。言葉にしたくてもできなかった言葉が、すとんと腑に落ちた。この本をよすがに、あの時を覚えていたい。

ペンネーム:
みかん子
大学・学年:
奈良女子大学 4年
書名:
カフカ断片集
著者:
カフカ
出版社:
新潮文庫
コメント:
メモ書きみたいな、詩みたいな、SNSのつぶやきみたいな、文章のかけらがいっぱい詰まっている本。どれも短くてサクッと読めて、どれもこれも面白い。幻想的な想像が広がるような描写にときめいたり、深いこと言ってるなぁって思ったり、これは何が言いたいんだか訳わからんと思ったり、わかるわかる!あるよね!って思うものもある。カフカって、いいなっと思った。

ペンネーム:
メルカトル
大学・学年:
名古屋大学 2年
書名:
AIとSF
著者:
日本SF作家クラブ
出版社:
ハヤカワ文庫JA
コメント:
同じAIをテーマにしても、作家ごとに解釈が分かれているのが面白かった。大きな違いで言うと「AIは敵か否か」だが、「AI利用orAIと共生」というスタンスの作品が多かったのは意外であった。個性的な作品も多い中で、最も異色を放っていたのは、「智慧練糸」。タイトルの読みが分かった瞬間の高揚感がたまらない。

ペンネーム:
san
大学・学年:
東京都立大学 1年
書名:
水車館の殺人
著者:
綾辻行人
出版社:
講談社文庫
コメント:
稀代の建築家・中村青司が残した秘密仕掛けの館で起こった殺人事件。風変わりな館の主、1人の画家によって集まった者たち、そして幽閉された1人の少女。その全てが上手く噛み合った結果、約1年にも渡り隠し通されることとなった真実を、突然現れた容疑者の友人がおってゆく、館シリーズ二作目となるミステリー。ぜひ、一作目である十角館の殺人に続いて読んで頂きたい。

ペンネーム:
熱源
大学・学年:
同志社大学 5年
書名:
万延元年のフットボール
著者:
大江健三郎
出版社:
講談社文芸文庫
コメント:
本作には恥という言葉が頻出する。恥の感情において連帯した民衆の暴動が描かれる。その燃料として、主人公の弟は在日朝鮮人差別を利用したりもする。
ある共通の恥の輪の中に入った人間は、どこまでも暴力的になれるのかも知れない、と感じる作品だ。
現代日本を見渡しても、差別の問題は未だ根強い。自分は差別などしない!と私含め思うが、それは本作の主人公のように、ただ傍観者の立場を取っているだけに過ぎないかもしれない。
それが嫌だと思う人々は行動を始めるはず。自分はその輪の中にこそ入りたい。

ペンネーム:
モモノスケ
大学・学年:
新潟大学 1年
書名:
妖人奇人館
著者:
澁澤龍彦
出版社:
河出文庫
コメント:
物語の舞台は陰謀渦巻く世紀末のヨーロッパ。登場人物はフリーメイソンや秘密結社、偽伯爵からかのノストラダムスまで様々だ。大きな時代の転換点に際して狂人たちが自らの嗜好のためにひた走る。どうです、危ない匂いがしてきませんか。説話のほとんどはエロ、グロ、ナンセンス、しかもその大部分に伝説の不吉な雲が陰惨に垂れこめています。悪名高いマルキ・ド・サドに造詣の深い著者澁澤龍彦による、生ならぬ性と死の物語で背徳感に酔い痴れ、ひと時の非日常を楽しめます。
ご自身の道徳が愚弄される快感を一度味わってみませんか。

ペンネーム:
本を読む看護学生
大学・学年:
新潟大学 1年
書名:
ナミヤ雑貨店の奇蹟
著者:
東野圭吾
出版社:
角川文庫
コメント:
人生で初めて、奇跡を信じてみようかなと思えた作品。
キセキという音には色々な漢字が当てはまるが、この作品に描かれているのは奇跡であり軌跡なのだと直感した。言葉遊びではなく、奇跡は得てして様々な手段や出来事を踏まえて起こることだという意味だ。この作品には色々な軌跡が走っているが、どれも出発点は「信じる」ことだ。店主を信じる、自分の恋人を信じる、自分自身を信じる、そして奇跡が起こることを信じる。信じた内容が誤りだとしても、人間の原動力は信じることだと感じた。あなたも私を信じて、この作品を読んでみては?

ペンネーム:
本を読む看護学生
大学・学年:
新潟大学 1年
書名:
黒猫の小夜曲
著者:
知念実希人
出版社:
光文社文庫
コメント:
最近の猫は死者の未練から謎解きができるらしい。
作中で細かく描写される猫の特有の仕草や態度に悶絶していたら、どうやら見るべきところを間違っていたようで推理が全くうまくいかなかった。猫の可愛さを武器に読者の目を撹乱するとは、中々斬新なミステリだ。
前作と同じようなほっこり展開かと思ったが、急に訪れる殺人・殺人・殺人!猫の手も借りたくなるような急展開に心臓が早鐘を打つようだった。

ペンネーム:
san
大学・学年:
東京都立大学 1年
書名:
自転しながら公転する
著者:
山本文緒
出版社:
新潮社
コメント:
本屋さんにて、装丁好きな私の目に飛び込んできたのは、湾曲したタイトルの添えられた躍動感の他一倍ある爽やかな表紙だった。ジャケット惚れしたこの本を読んでみれば、その物語は現実感のある苦味に溢れていた。恋愛も仕事も、私にとっては未だ想像の中に留まっているものだが、そこで直面するであろう引っ掛かりや、無視できない感情に一つ一つ向き合い明確な形を保たせながら進んでいく主人公の素直さは、私たちがうやむやにしている現実と向き合う勇気を与えてくれるだろう。

ペンネーム:
長州お力
大学・学年:
立命館大学 1年
書名:
愛するということ
著者:
エーリッヒ・フロム
出版社:
紀伊國屋書店
コメント:
人を愛する技術を身に付けるには忍耐力や集中力が必要不可欠であり、個々が商品化され、コスパやタイパが重視される資本主義社会においてそれは非常に困難なことであるとフロムは本書にて指摘しているが、これは現代に生きる我々にも通ずる問題ではないだろうか?昨今の我々と言えば、何をするにしても片手間であり、ひとつの物事に集中する機会など滅多にない。それ故に愛は失われつつあり、愛のない社会は滅びてしまうだろうとフロムは警鐘を鳴らす。そうならないためにも、我々は愛について今一度考え直すべきであると感じられた。

ペンネーム:
本を読む看護学生
大学・学年:
新潟大学 1年
書名:
#真相をお話しします
著者:
結城真一郎
出版社:
新潮文庫
コメント:
現代ICT社会の負の側面を煮詰めて真空パックにしたような短編集。
いつどこで誰が何をしているのか、リアルタイムで・全世界に・双方向的に発信できるICT技術。これは人類史上でもかなりの革新であることには変わりない。けれども、「バカとハサミは使いよう」という言葉があるように、どんな便利な物も使う人によって全く違う結果をもたらす。これからの時代はもはや、「バカにハサミを持たせない」ことが生き残るための最善策なのかもしれないな、と思わされた。

ペンネーム:
猫武将
大学・学年:
近畿大学 4年
書名:
お梅は呪いたい
著者:
藤崎翔
出版社:
祥伝社文庫
コメント:
古い家屋の取り壊しを機に、屋根裏で発見された釘で厳重に封をされた木箱。
そのなかには、呪いの人形「お梅」が入れられていた。
戦国時代に生まれたお梅は、500年の時を経て、現代で呪いのために行動を開始する。
しかし、現代の文化や現代人に翻弄され、お梅の計画は首尾よく進まない。
果たしてお梅は呪い殺すことができるのか…。

「チャッキー」や「トイ・ストーリー」が好きな人にオススメしたい一冊。お梅を恐れない現代人を、どうにかして呪いたいお梅のいじらしさというか、ひたむきな姿はとても応援したくなる!

ペンネーム:
羊谷
大学・学年:
龍谷大学 1年
書名:
水上バス浅草行き
著者:
岡本真帆
出版社:
ナナロク社
コメント:
かなり前から読みたかった本。(図書室で借りてで借りて読了)
岡本真帆さんの短歌は、読むと情景が頭の中に綺麗に広がっていって、自分の記憶と繋がっていく。体験したことがなくても、あった気がするように感じるような短歌が多く、読むと気持ちを共有したような気持ちになる。何回も読みたい。本の質感も素敵で、改めて手元に欲しいなと感じた。

ペンネーム:
みみ
大学・学年:
龍谷大学 4年
書名:
夜空に泳ぐチョコレート
グラミー
著者:
町田そのこ
出版社:
新潮文庫
コメント:
「今日は私の誕生日で、とてもいいお天気の日曜日だから、死ぬにはぴったりの日だなと思った。」冒頭の一文でここまで話に引き込まれたことはなかった。この本は全5編からなる短編集だったが、登場人物はどこにでもいる普通の人達である。なんてことない日常のありふれた瞬間に人の心が孵化する様子であったり、言葉には言い表せないような複雑な思いの葛藤などが描かれており、悩んでいるのは自分だけじゃないと思わせてくれると同時に人の心情を沢山の言葉を使い言い表わしており感動した。

ペンネーム:
みかん子
大学・学年:
奈良女子大学 4年
書名:
君と私 
志賀直哉をめぐる作品集
著者:
里見弴
出版社:
中公文庫
コメント:
これは作者が親友志賀との経験を描いた作品集だ。
収録作品「善心悪心」では、年長の友人佐々(志賀がモデル)と背伸びして付き合い、その影響から脱したいと足掻く心情が苦しい。
ちょっと待って!と思った。私にも、彼らと比べて良いくらいべったりな関係の妹がいるのだ。もしかして、私の妹も私に対して主人公と同じように思っていたのかも。猛烈に反省した。
この作品の後、作者と志賀は絶交してしまう。妹との絶交を怖れる姉の希望は、和解後の作品「春の水ぬるむが如くに」の一文だ。
「良い友は何をしてもよい。絶交してさえもよい。」

ペンネーム:
shu
大学・学年:
帯広畜産大学 3年
書名:
正欲
著者:
朝井リョウ
出版社:
新潮社
コメント:
あなたは「多様性」を本当の意味で理解していますか。
LGBTQが話題となり、多様性に触れる機会が増えた今日。詳しくはないけれど、なんとなく理解しているつもりだった。この本を読むまでは。
水に性的興奮をする登場人物。多様性が叫ばれる社会で彼らの多様性は初めから社会に認識されていない。当たり前のように糾弾される。社会から認められることを諦め、自分たちだけの世界で生きていこうとする。
彼らにとっての障害は社会が作った「多様性」なのではないか。私たちは「多様性」の押し売りをしているだけなのではないか。

ペンネーム:
みかん子
大学・学年:
奈良女子大学 4年
書名:
50代で一足遅れてフェミニズムを知った私がひとりで安心して暮らしていくために考えた身近な政治のこと
著者:
和田靜香
出版社:
左右社
コメント:
民主主義って、地方自治って、凄い!私もやりたい!って気持ちがわくわく湧いてきた。女性議員が議会の半数を占める神奈川県大磯。その秘密を探るため、意気込んで大磯へと乗り込んだ著者。取材をするうちに、自分たちの町をより良くするため、PTAや市民活動等に主体的に取り組む女性たちに出会う。周囲の女性と一緒になって、自分の身の回りの困りごとに取り組んでいく大磯の女性たち、凄くかっこいい。自分たちの暮らしを自分たちで良くしていくって凄く楽しそうだ!卒業したら私もやる!と思った。あなたも一緒にやってみない!?

ペンネーム:
丸犬
大学・学年:
名古屋大学 3年
書名:
イワン・イリッチの死
著者:
L.N. トルストイ
出版社:
岩波文庫
コメント:
あなたは死が怖いだろうか。
私はもちろん怖い。でもその怖さは、何か少し漠然としている。どこかに潜んでいるはずなのに、まるで他人事のようであり形を掴めない。そんな漠然とした死を、リアルにありありと描き切ったのが本作である。
主人公のイワン・イリッチは刻一刻と近づいてくる死に怯え、恐怖し、発狂する。その緻密な心情描写から、漠然としていた筈の死の本当の姿というものが嫌でも見えてくるはずだ。目を背けたくても逸せない、そんな感覚をぜひ体験してみてほしい。

ペンネーム:
レン
大学・学年:
岡山大学 3年
書名:
5秒後に意外な結末
-オイディプスの黒い真実-
著者:
桃戸ハル
出版社:
Gakken
コメント:
タイトルの通り、「5秒後に意外な結末」がわかるストーリーがたくさん収録された1冊です。見開き1ページで完結する、多彩な小話に驚いたり、笑ったり、感動したり…。新感覚の毒所を体験できます。

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