
東京外国語大学出版会
定価2,420円(税込)
研究との相性は、研究にとって大きな要素だ。柳澤静磨『ゴキブリ研究をはじめました』(イーストプレス、2022年)のように、あえて嫌いな研究対象に突き進む勇気もときとして必要かもしれない。しかし、研究対象や方法と相性が良いことは大切だ。著者は、次のように述べる。「いちばんすなおな言い方をすれば、私はフィールドに希望と安らぎを感じながら通い続けている。人は血縁を越えて家族になれるのだと、彼らはその生き方で、言葉で、いつも教えてくれるから。私にとって、フィールドワークは心を自由にする練習なのだ」(148頁)。研究に昇華する前の段階の記述かもしれない。しかし学問の鉱脈につながることを期待させる貴重な体験記である。