米山高生の若い研究者にお薦めしたい本たち ~進路を迷うアナタにも~

『日本語の秘密』川原繁人

表紙

講談社現代新書
定価990円(税込)

 
言語学は、誰でも「学説」を展開できそうにみえる身近な学問である反面、高度な哲学的世界で展開される学問というような近寄り難いイメージを持ち合わせる学問だ。本書は、前者の言語学に属し、ソシュール、ヴィトゲンシュタインやチョムスキーを読んでいなくても理解できる内容。
この本は言語学の初心者に優しい。だからといって学問を極めることが容易であるわけではない。研究に片足を踏み入れている人は、すでにこのことを知っているはずだ。でも、自分の研究が、難解だといって敬遠されるより、興味を抱いてくれる人が多いのは、悪いことではない。この著者の素晴らしいところは、「ことばへの興味」を鍵として、他の領域の学問や分野の人々と交流していることだ。著者のこの生き様は、研究者を志す皆さんが、ノーベル賞受賞者になったとしても大切なことではあるまいか。