
白水社
定価2,200円(税込)
著者は、スーダンから鍼灸師の資格を得るために日本に留学したスーダンの留学生。日本語学習は19歳からで、耳と点字だけだった。なのに、すでに『わが盲想』(ポプラ社)という日本語の著作を出版。日本語の習得は、耳と点字だけなので逆に、漢字を覚えるというハンディがなかった。単語をまずオトで認識し、その後オトに対応する漢字を認識する。モハメドさんが「おやじギャク」が得意なのは、同音異義語を記憶の戸棚にしまってあるからである。鍼灸師の国家試験を取得したが、さらに勉強するために、東京外国語大学の大学院に進学。そこで、アフリカ地域研究に取り組む研究者となっている。
本書を読んで、研究者の世界はある面で競争が熾烈であるが、障害のある人々が障害を理由に研究の場に参入できない場合には、みんなで障害を埋め合わせる助けをできる社会であることが大事だと思う。また障害のある人は、彼のように、自分に必要な助けは何かという声を自分からはっきりと表明することも大切だと思った。