米山高生の若い研究者にお薦めしたい本たち ~進路を迷うアナタにも~

『日本移民日記』MOMENT JOON

表紙

岩波書店
定価1,870円(税込)

 
著者は、執筆時に大阪大学の大学院に在籍する韓国人留学生。ラップ音楽の演奏家、いわゆるラッパーだ。そんな彼の視点は、これまでの在日コリアン文学者のものとは異なる。ポップな若者による比較文化的視点といってよいだろうか。それが新鮮で面白い。彼の「移民日記」からは、なぜか両国間の歴史からくる重みが感じられない。このことは、「移民」という視点であり、「ディアスポラ」の視点ではないからであろう。よって、このことでもって著者を軽薄な若者であると責めるのは見当違いである。ラップは、彼にとって、言語学の格好の研究対象のようだ。若い人の研究対象の広さには感心する。