オンライン座談会 大学生のパソコン事情
生成AIは時間を正しく効率化する手段。使いこなすことで大学生活はより豊かになる。

オンライン座談会 大学生のパソコン事情 生成AIは時間を正しく効率化する手段。 使いこなすことで大学生活はより豊かになる。


現役大学生は生成AIをどうやって活用しているの? 大学の授業でプレゼンテーションは? デジタルノートテイキングって? 高校までの学習をさらに発展させ、大学では専攻ごとに特徴ある学びの世界が広がります。その中で学習方法はどのように進化し、学生はその進化にどう向き合っているのでしょうか。文系・理系交えた4人の学生に集まっていただき、“今”の声を伺いました。

参加者
  • 上原
    上原 真結花 さん(鹿児島大学 法文学部3年)
     
    後藤
    後藤 かける さん(同志社大学 政策学部2年)
  • 矢田
    矢田やた 佳惟かい さん(名古屋大学 医学部 保健学科3年)
     
    山口
    山口 莉玖りくさん(東京理科大学 工学部 情報工学科4年)
 
司会進行
  • 小浦
    小浦 太郎(大学生協事業連合 広域勉学研究事業部)
(以下、敬称を省略させていただきます)
 
 

大学での専攻と使用デバイス

小浦
 
大学生協事業連合で情報機器・ソフトウェアの担当をさせていただいている小浦と申します。AIの進化はまさに日進月歩で、大学生をめぐる学習環境も急速に変化しています。今回の座談会は、大学での学びに不安を持たれているであろう新入生とその保護者の方々に等身大の大学生のトークをご覧いただき、大学生活への夢を育めるような内容になればと願います。
まずは自己紹介と研究内容、使用しているデバイス、特に生成AIに関しては有料無償を含めブランド名も教えてください。
 
画像
第60回学生生活実態調査 概要報告より
(調査実施時期2024年10~11月)
回答数11,590人(30大学生協 回収率24.0%)
 
上原上原
鹿児島大学法文学部3年の上原真結花と申します。専攻は英語学で、英語にも日本語と同様に方言の違いがあることに興味を感じ、研究しています。将来は外国の方と関わるような仕事に加え、物流関係も気になっています。使用機器は富士通のパソコンとiPadで、生成AIはChatGPTを主に使っています。
 
後藤後藤
同志社大学政策学部2年の後藤駈と申します。学部では社会科学横断的に学問を追求しており、「企業・投資・市場」を専門とする先生のゼミに所属しています。

政策学部という名前を聞くとどんなことをしているの?政策って何?と普段聞かれることが多いのですが、「政策」とは政府や自治体、一般企業など公的・一般に関係なく組織などが問題を解決する・目標を達成するために定める方針や計画のことをいいます。必ずしも政府などの公共政策だけではなくて、自治体が掲げる方針や企業などの一般組織、個人がつくる計画までもが対象になりえ、問題の大きさや種類にかかわらずこの条件が当てはまるものは政策と考えてよいと思われます。社会には様々に複雑な問題がありますが、一つの学問分野に対して深く深めていくのではなく、分野にまたがる課題の捉え方を知る、学際的な教養を身に着けていく。また政策の決め方・実施・分析・評価のサイクルの仕方まで一貫して学ぶことで、多角的な視点で課題を捉えて解決に向かっていける能力を身に着けていく、課題の発見や解決に導く方法を政策学部では日々学んでいます。

使用機器は富士通のパソコンで、使用する生成AIは主に、ChatGPTとGoogleのGemini(ジェミニ)の二つです。Geminiは、大学生であれば12カ月無料で使えるので、現在無料期間ではありますが有料のプランを使っています。
 
矢田矢田
名古屋大学3年の矢田佳惟と申します。医学部保健学科放射線技術科学専攻で、放射線を用いた検査および治療業務を行うのに必要な診療放射線技師の国家試験の受験資格が取得できます。MacBook AirとiPadを使い、あまり勉強では使いませんがスマートフォンも持っています。生成AIはGemini、ChatGPTなどいろいろ使っています。スマートフォンでMicrosoftのCopilotも大学のアカウントで使えるので、それも使います。
 
山口山口
山口莉玖と申します。東京理科大学工学部情報工学科4年で研究室に所属しています。研究分野は「一人称の映像に対する生成AIを用いた映像理解」です。

「一人称の映像」とは、人の頭や首に小型のカメラを装着して撮影された映像のことで、一人称視点映像は、障がい者支援やAR/VRデバイス、作業支援、ロボティクスなどの幅広い応用先を持ち、人工知能の開発に寄与しています。

課外活動として日本Microsoft 首都圏地区のSurfaceアンバサダーに所属させていただいていて、それに応じてSurface Pro11thのIntelバージョンを使用しています。情報系なのでMacBook Proをまた別に持っています。

Surface アンバサダー:全国の大学キャンパス内にある生協店舗にて、新入生向けにSurface を含む PC の販売をしている学生スタッフ。

生成AIについてはChatGPT、Geminiなど結構多彩に使っています。最近ではNote book LM※1、あとはプログラミングをするので、Claude Code※2ですかね。MicrosoftのCopilotなども日頃から使っており、生成AI系は毎日のように使いこなしています。

※1NotebookLMは、Googleが開発したAIアシスタントツール。
※2Claude Code とは、AI アシスタントの Claude(Anthropic 社の大規模言語モデル)をターミナルから直接利用できるようにしたエージェント コーディング ツール。従来の ChatGPTなどのようにブラウザでやり取りせず、ターミナル上で CLI(コマンドラインインターフェース)として動作する点が最大の特徴です。
 

専攻における学びのスタイル

小浦
 
現在の大学の勉強状況、生成AIの活用場面、デジタルノートテイキングなどについてお話しください。悩み・困りごとがもしあれば教えてください。
 
上原上原
私が所属する法文学部は、コースの垣根を越えて法律から歴史言語まで総合的に学べる学部です。今までも幅広く学んではきましたが、3年になって履修する授業も少なくなったので、今は専攻している英語学のワールドイングリッシュのテキストを読んだり、ゼミのメンバーでディスカッションしたりしています。生成AIは本当にChatGPT一本で、あまり研究にがっつり使っているわけではありません。自分が書いた文章を点検してもらったり、レポートに何を書こうかと迷ったときにちょっと投げかけたりしています。

悩みというと、自分の実力よりちょっとレベルの高い大学を選んで運良く入学できたので、みんなについていけるのかという不安は常にありました。でもなんとか単位も落とさず、今まで地道にやってこられたので、入学前に感じていた不安が現実になることはなく、毎日楽しく学んでいます。

教授からスライド資料や何十枚もあるレジュメがPDFでiPadに共有されるので、そのレジュメに蛍光ペンで印をつけ、疑問に思ったところを書き足す形でパソコンにノートテイクをします。左側にiPadを置いて資料を映し、右側にワードでメモを取り、そのワードやパワーポイントが共有されたかというところで、iPadを使うかどうかを決めます。
 
後藤後藤
1年生時には大学生活にも慣れる必要があった上に、パソコンを使い始めて間もない状態だったので、授業に追いつきながら課題やレジュメを整理するのに苦労しました。2年生になって授業ごとにメモの取り方や授業の受け方を自分のペースで組み立てて受けられるようになりました。授業によってレジュメの有無や配布の仕方が異なりますが、ここ数年で紙のレジュメや教科書に代わり、PDFで配布されることが多いです。自分は一定、紙面上のメモや勉強を取り入れたほうが学習がしやすいと感じているので完全にデジタル上でノートテイクが完結しているわけではない一方、修正・管理がしやすい、物理的にかさばらないのでデジタルノートテイクも普段の勉強スタイルに取り入れています。自分もパソコンでPDFのレジュメを見ながら大事なポイントを打ち込むという授業の受け方が増えました。この変化については、データとしてあるので友人間で共有したり、あえてレジュメを印刷してテスト勉強したりするので、柔軟に勉強の仕方を選択できると感じています。使用パソコンはタブレットほど便利というわけではありませんが、パネル式になっていて指で画面をスクロールして動かせます。この機能を使ってタッチペンや手書きでメモします。
 
矢田矢田
私は今3年生で、ちょうどこの秋から研究室配属となりましたが、自身の研究テーマもまだ決まっておらず、とりあえず今は研究室のメンバーで必要な基礎知識を一緒に勉強している段階です。ですので、具体的な研究活動ではまだiPadは使いこなせていませんが、パソコンがMacBookなのでApple製品同士MacとiPadで、iPadを横に立てることで外付けのデスクトップ画面のように使っています。パソコンの横にiPadを置いてiPadでブラウザや実験のレジュメを開き、パソコンでワードを開いてレポートを作るという使い方です。

医学部ならではの使い方では、CT写真、つまり体の断面図に実際にレントゲンを使って撮ったら白黒写真で出てきますが、それを全身見られるアプリをiPadに入れています。指でスクロールするだけで、足先から頭のてっぺんまでどんどん断面が見られるのですが、パソコンだと使いにくい面もあるので、そのアプリはiPadで使うようにしています。パソコンではアプリでなくウェブ版になり、使える機能に制限がかかってしまう場合があるのですね。
 
小浦
 
矢田さんご自身は高校の学びからスムーズに大学の学びに入っていけましたか。大学入学後の失敗談をお話しいただけたらと思います。
 
矢田矢田
自分もちょっと背伸びをして入ったような大学だったので、最初の頃は正直勉強についていけるのか、多分高校までとは勝手が違うんだろうな、やっていけるかなと思っていました。

それと高校まで教科書を使って授業を受けるのが当たり前だったので、大学に入学してからも教科書と紙のノートを授業に持参して、それに沿って授業を進めるものだと思っていました。ところが教科書は1冊1冊が分厚くて重たくて。実際の授業では教科書と別に講義資料がPDFファイルで配られてそれをもとに先生は授業を進め、「教科書は復習で使ってね」という感じでした。教科書は参考書みたいなものだと思いました。そのPDFファイル授業直前にアップロードされることが多く、印刷しようにも間に合わないんです。

また、解剖の写真はカラーだと分かりやすいのです。例えば心臓一つとっても、その心臓の血管の部分と血管以外の部分が見やすいように、血管でも動脈と静脈が分かりやすいように赤と青で色分けされているのですが、それを白黒で印刷すると区別がつかなくなってしまいます。使用する図が多く、1回90分で講義資料を百枚以上使う場合もあります。高校までと同じように紙でノートを取る作業をしようとするとお金と労力がかかるのだということも、入学直後に印象的でした。

周りは「iPadを買ったから、iPadを持っていけばいいや」という感じで最初から教科書を持ってこない人たちも多かったので、私に関しては知らなかったからというのもありましたが、購入した教科書と1教科1冊ノートを持っていったのに授業では使わなかったのには驚きました。

時間をより効率的に使うツール

小浦
 
山口さんは実際Macも使われているということなので、生成AIとマックユースの観点から自分の学習スタイルや今現在受験生で大学を目指している方たちの不安を和らげるような内容で伝えたいことがありましたらお話しください。
 
山口山口
まず生成AIについてですが、私が生成AIの利用頻度が上がったのは3年生からで、それまではChatGPTも含め、あまり使っていませんでした。使った前後でどんな変化があったかというと、特に新入生の方々に伝えたいのは、“正しく効率化できる”という点です。本来ならば何時間もかけてネットを探し回って得る情報も、生成AIだと簡単なプロンプトを一つ打つだけで全て調べてくれ、自分が欲しい情報をすぐに取得できるということが、大きな強みだと思います。それを使いこなすのは、「自分で考える時間をより効率的に増やす」という意味で大きな意味があるのではないでしょうか。
 
小浦
 
ハルシネーションとか生成AIの影の部分について学生側からも使用を控えるという声がありますが、実際のところは山口さんのように1年ぐらいで使いこなしているというわけですよね。

ハルシネーション:AIが事実に基づかない情報を生成する現象。
 
山口山口
今まで使ってこなかったというわけではありません。使ってはいたけれど、大学生活において自分が生成AIをしっかりと使いこなせると自負できるようになったのは3年次以降であるということです。それまではハルシネーションや、欲しい情報と違う回答が返ってきて二度手間になることがあり、そこがボトルネックに感じていました。
年々生成AIの能力が向上していることも、普段から使うようになった理由の一つです。以前よりハルシネーションへの不安も減り、使いやすくなってきたと感じています。

とはいえ、生成AIの出力をそのまま鵜呑みにしていいのかというと、それはまた違ってきます。自分が生成AIを日頃から使う上で一番大事にしているのはやはり一次情報で、取得した情報の元の文献を何も調べずに使うということはありません。もちろん情報を探す過程は生成AIに任せますが、そこで得た情報が本当に正しいかどうかはしっかりと吟味しています。例えばChatGPTで調べた情報の正誤をGeminiで調べる、または別の生成AI同士をうまく使って試すというのはよくやりますね。
 
後藤
後藤
生成AIについては、自分はちょっと細かい文章を考え、アイデアを出したいときに使っています。例えば「全国の市町村が行っている政策や取り組みの中で、その地域の人々の動きやこういう制度があったから成功したと思われるものを一つ取り上げて、自分の意見を述べなさい」というようなレポートが出されたとします。実際に日本全国のどの自治体がどのような取り組みを行っているか探して取り上げさらに分析・考察をしていく必要があります。ここで、一つ一つの地域の取り組みについて公文書を調べていくのはとても大変ですが、生成AIを使って「このような事例をこういった条件で行っている市町村とその取り組みを調べてほしい」と言うと結構いろいろなものを出してくれます。そういったアイデア出しや、普段自分が調べていたらたどり着けないような公の資料に行き着くことができるので、自分のできる手段を増やすためのツールとして生成AIを使用しています。

また山口さんも言われたように、生成AIで重要なのは、最終的に必ず自分でその資料が正しいか確認してからレポートに活用することです。生成AIにのまれないで自分がちゃんと使う側に立って、今後普及していく生成AIに対応するということがとても大事だと思いながら使用しています。
 
小浦
 
私は現在Surfaceを使っていますが、学生時代後半からAppleを使いはじめたのでMacを使っている時間も長いですし、iPadとの連動具合も重宝しています。双方を使ってみていかがですか。
 
山口山口
MacとWindowsのパソコンを両方持っている学生の母数が少ないため話せることも限られますが、目的が異なるので自分の中では使い分けをしています。自分はWindowsのパソコンとしてSurfaceをメインで使っており、デジタルノートテイクも他のPC作業も一台で完結できる点で、Surfaceが自分の中では最適解だと感じています。

一方、MacBookにもWindowsにはない良さがあります。パソコンとは別にiPadを検討する学生や、普段からiPhoneを使う学生も多いと思います。自分も電車通学していますが、電車内ではパソコンを広げづらいことがあります。そんな時にMacBookで作業したデータをiPhoneですぐ確認できる点は、Apple同士ならではの強みだと思います。

それこそApple AccountさえあればiCloudで連携できるので、テスト前や授業前のスキマ時間に予復習をしたいときに自分はよくiPhoneを使います。連携の強さを重視し、少しでも時間を有効に使いたい方には特に向いていると思います。Windowsとは操作が少し異なるため、慣れるまでギャップを感じる方もいるかもしれません。
 

プレゼンテーションの工夫

小浦
 
後藤さんは横断的に学問をされていると話されました。勉強の仕方やパソコンの使い方など含めて横断した学びをどういうふうに形作っているのかお聞かせください。
 
後藤
後藤
1年生次では基礎科目に位置付けられた授業で主に構成されていて社会学・政治学・法・経済・行政・組織(経営)・国際などなど少しずつ広い分野の知見を広げていきます。また政策とは何か、どのように政策が作られていくかなど深めていきます。自分の学部では、パワーポイントを使って発表する機会が多い印象を受けます。

座学だけでなくプレゼンやディベート、フィールドワークのほかグループワークで課題を進める機会も多く学んでインプットしたもものを自分の思考力や発表としてアウトプットするように計画してカリキュラムが組まれています。2年次から各分野に精通した教授のゼミに所属し横断的に身に着けてきた学びをさらに深めていけるように設計されています。自分のゼミでは毎週マイクを持ち人前に立って自分の意見を発表したり、結構パワポをグループで作り発表したりする機会が多いです。また、ゼミのほかにも1年次から少人数クラスの授業が開講しており、政策学部生は必修でそうした授業を受けることで、自分もアットホームな雰囲気の中でディベートや発表の経験に少しずつ慣れることができました。高校生の時にも少しだけパワポに触れる機会はありましたが、大学に入ってから自然と使う機会がふえて使いこなせるようになったと感じます。
 
小浦
 
大学生協調べでも、学年が上がるにつれ自分のプレゼン力を不安に思う方が多いのが分かります。高校でパワポなどプレゼン用のアプリを使っているにもかかわらず、大学入学後に戸惑いを感じるのですね。プレゼンに関して不安を克服する方法があれば伺いたいです。
 
上原
上原
高校の時は、生徒会の仕事や課題研究でGoogleドキュメントを使っていましたが、大学に入るまでパワポ自体はしっかりと使ったことはありませんでした。入学直後からから英語でパワポを使ってみんなの前で発表するという授業があったのですが、そういう授業を意図的にとったり、ネイティブの先生が「プレゼンは身振り手振りが大事」と教えてくれる授業も自主的にとったりしてスキルを身につけました。ちょうどサークル活動でも新入生の前でパワポを使う場面があったので、友達の力も借りて進めました。
 
小浦
 
自分のスキルは高校の頃よりも上がったと思いますか。
 
上原
上原
プレゼンの成果は確実に上がっていると思います。クラスのメンバーと一緒にやると、上手な人がやっていたことを自分も取り入れてみようかなと思います。日本語と英語では、やはり求められる表現力が変わってくると思うんですよ。例えばジェスチャーを使うことはすごく重要で、「自分が好きな料理の手順をジェスチャーを交えて表現してみよう」という回では、マイクを持っていると手が動かしにくいので、実際にちゃんと要点を指で指すという動きが重要になると思いました。欧米出身の先生が「日本人は手をモジモジさせたり後ろに組んだりするけど、ちゃんとお腹の前に持ってきた方がいいよ」と教えてくれました。
 
後藤
後藤
プレゼンについて意識していることは、情報の正確性と聞き手にどのように伝わるかです。
前者においては確実に誤解のないようにということです。主張を補強したり、納得させるための説明にほころびがあると効果的なプレゼンにつながりにくくなってしまいます。生成AIをもし情報収集などに使うのであればなおのこと出典や信頼性の担保に注意しましょう。後者については、ゼミでの実体験から常に相手を意識した動きや伝え方が求められていると考えています。例えば、「最近あった楽しいこと」についての発表した際には、とても考えやすく内容も楽しげにつくることができたのですが、一方で「とあるBtoBの企業についての事業や社会的責任、将来性」についてまとめて発表した際、全体的に単調でただ調べた情報をそのまま伝える形になってしまい、先生からも指摘を受け、プレゼンとは名ばかりな発表に陥ってしまったことがありました。たとえ聞き手にとってなじみがない情報を伝えてもしっかり伝わるように、そして興味を引くアクセントを入れて飽きさせない工夫を散りばめることがプレゼンや発表では欠かせないのだと感じました。発表に観客へのクイズや問いかけをしてみる、役になりきった進行やかけあいを行うなど発表を聞いていてだんだん単調にならないようにする。そして聞き手に向かって堂々とプレゼンをすること。緊張していても、発表している画面ばかり見て逃げ込まずに目線を前に、聞き手に自身のある姿を向けて発表内容を投げかけていくことが重要です。また発表の最初と最後にインパクトを与えるような声の抑揚やポーズをつけることを心掛けています。
 
矢田
矢田
私は昨年度、現在の大学1年生向けの名大生協のパソコン講座の企画運営チームに入って、講座作りに携わっていました。実際に人前で1年(今の2年生)が話す練習をしているのをみて、練習の時に「大きくジェスチャーするといいよ」とアドバイスしたり「今から3つポイントをお伝えします」というように分かりやすく話す工夫を伝えたりしました。今年の8月に3週間ほど短期語学研修プログラムでイギリスに留学しましたが、日本人だったら口で言うところを向こうの人たちは大きく手を動かしたりしていました。

学内のプレゼンに関しては、名古屋大学では1年前期の一般教養科目の中に1人1回プレゼンをする授業があり、全員何らかの形で経験することになっています。また友達の研究室では、順番に担当の先生の英語で書かれた論文を読んできて、自分でスライドにまとめてメンバーに発表しているようです。このように私の場合は学年が上がるにつれてプレゼンの機会が増えてきたという感じです。
 
小浦
 
私は山口さんのプレゼンを何回か拝見したことがありますが、言葉の選び方などからすごく学んでいるなと感じる部分もあったので、ぜひプレゼンの極意をお聞かせいただければと思います。
 
山口山口
1年生の時には大学でプレゼンする機会がほとんどありませんでした。情報工学科では授業で黙々とプログラミングをすることが多く、アウトプットの場が少なかったためです。ただ、自分は入学時から人前で発表する機会を得たいと思っていたので、モチベーションや主体性はあったと思います。生協の委員会活動や様々な課外活動でプレゼンの機会を得られたことで、今の自分につながっていると感じています。

プレゼンで一番大事なのは、やはり自信だと思います。自分が伝えることに自信がないと、相手にも伝わりません。その上で伝えるべきことに対してノンバーバルなボディランゲージや言葉の抑揚などにも注意を払う必要があると思います。こうしたことを考える上でも自信や余裕がないと気持ちを込められないと思うので、自信をつけることがプレゼンを上達させるための近道だと思っています。

ノンバーバルコミュニケーション:言葉を使わずに情報や感情を伝えるコミュニケーション手法で、表情や視線、ジェスチャー、姿勢、身体的距離、声のトーンや速さ、服装など。

言葉に関しては、制作面でいかに相手に伝えるかということを重視しています。数値面の分析も大事ですし、なぜそう考えたのかエビデンスをしっかり取るのも大事だと思いますが、最終的に「何が言いたかったの?」で終わってしまったらそのプレゼンは良くありません。一番大事な点を伝えられるように、大見出しを付けるなどして理解しやすいスライドを作ることは普段から意識しています。
 

座談会のまとめと今後の展望

小浦
 
本日のように生成AIの学生の皆さんの使い方の細かい中身まで聞かせていただいたのは初めてで、非常に新鮮でした。
今後は生成AIを使うことのメリットにさらに目が向けられて、その利用も増えていくことが想像できると思います。最後に、皆さんの将来の夢や展望をお話しください。
 
後藤
後藤
自分の所属するゼミではディベートやプレゼンの機会が盛んにあります。残りの大学生活でビジネスコンテストや政策立案大会に出て、1・2年次で学んだ幅広い学びをチームでの発表を通じてアウトプットすることを目指し、入賞できるよう努力を続けています。聞き手の皆さんに今まで見たことないアイデアをできるだけ魅力的に伝えられるような力を身につけたいと思います。将来の夢は、明確には決まっていませんが民間のメーカーに就職することです。社会に出てからもグループワークをすることが頻繁にあると考えているので、政策学部にいることで学んだ知見やそれをもとに多角的に物事を捉える能力、チームで成果を上げる経験を活かせる人材になりたいと思っています。

これから大学生になる方に伝えたいのは、「挑戦することがとても大事」だということです。元々自分は人前に立つような人間ではありませんでしたが、大学で生協のサークルに所属して人前でプレゼンをしたり、このような座談会に参加させていただいたりして、自分の意見を人前ではっきり言う機会に自ら飛び込む挑戦を続けています。自分としても自信がついて、「自分はこういうことができるんだ」と言えることが増えました。責任は伴うものの、大学生は自由で可能性が広がっています。自分のやりたいこと、できることを考えながら、経験を生かして過ごしていただけたらと思います。
 
矢田
矢田
学部卒業後は大学院に進み、医学物理士という放射線治療の計画まで立てられる資格を取りたいと思っています。大学でも放射線がどれだけ吸収されるかといった勉強をしてきたので、せっかくやるのだったら自分で治療計画書を作れるようになりたいと思っています。

パソコンに関しては、最近CT写真やレントゲン写真をプログラミングで画像処理するという授業があって興味を持ちました。今までプログラミングをほとんど学んでこなかったので、将来的に自分でちゃんとコードを書いてプログラミングができるようになりたいというのが目標です。
 
山口
山口
私は情報工学科に所属しているので、やはりエンジニア職としてプログラミングはずっとやっていきたいと思っています。加えて人と関わることの楽しさとそこから得られるものも重要視していて、将来的には国内外を飛び回っていろいろな方のお悩みを聞き、その内容を設計して開発するまでをエンドツーエンドでできるような人材になりたいと思っています。

最後に新入生の方々へお伝えしたいことがあります。大学生活では何かしら困りごとが出てくると思いますが、大学には多くの出会いがあり、相談できる人もたくさんいます。一人で抱え込まず、いろいろな方と協力して解決していく共同性を大事にしてください。また、日々進化する生成AIもうまく活用し、学生生活をより充実させてほしいと思います。
 
上原
上原
私は英語が好きで、大学でも英語の語学系に関することを勉強していますが、観光などでなく国籍が違う場所に在住するとなると、そこで感じる生きづらさや憤りというのはやはり感じるところがあると思います。将来はそういった人を最終的にはサポートできるような仕事に就きたいと思います。鹿児島は離島が多いので、離島の物流とか人の流れを支えるような仕事に就けたらと思っています。

今日の最終的な感想になりますが、私自身大学から「レポートなどでAIを使ったと分かったら単位を剥奪します」と脅し的な感じで言われている部分もあり、少しビクビクしながら使っているところがあります。今日のお話の中で山口さんがおっしゃった「AIは文献を探し回る時間を短縮する手段として使えば、自分が考える時間を確保できる」という考えはすごいと思いました。今の大学生もこれから入学してくる新入生にもどんどん広めていったら、より効率的な大学生活を送れると思います。
 
小浦
 
生成AIとの関係ももちろん、人とのコミュニケーションも大事にしていきたいという部分が新入生とその保護者にも伝わるような座談会であったと思います。皆さんのご活躍を祈念し、これからも充実した学生生活を続けていただければと願っております。貴重なお時間をありがとうございました。
 

(2025年11月11日 オンラインにて)