受験生(高校生)保護者座談会@埼玉大学(2024年開催)
大学選びは親と子の話し合いが大事
高校受験を終え、次は大学受験。「うちの子、大丈夫かな?」「どんな大学を選べばいいの?」そんな保護者の声にお応えするため、現役大学生を招き、座談会を開催しました。部活と勉強の両立、大学選びのポイント、受験期の親と子のコミュニケーションなど。保護者の不安や期待、現役大学生の失敗談や成功談など実情を伺いました。

〈参加者〉
- 木田 陽子さん
- 中川 麻知子さん
- 新井 美里さん
明野 敦子さん- 笠松 典子さん
〈学生〉
- 藤田
笙綺 さん
(埼玉大学 工学部 応用化学科2年生) - 小倉 明美さん
(埼玉大学 教育学部 小学校コース心理・教育実践学専修1年生) - 大前
萌々花 さん
(埼玉大学 教養学部 教養学科1年生)
Contents
受験生の保護者座談会
現役学生からのメッセージ
埼玉大学の特徴と入試方式
- 埼玉大学の特徴
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- 1キャンパスに全学部が集まる国立の総合大学。
- [教養学部、経済学部、教育学部、理学部、工学部]の5学部。
- 大学院は[人文社会科学研究科、教育学研究科、理工学研究科]の3研究科に加え、東京学芸大学大学院連合学校教育学研究科がある。
- 多様な個性が行き交い、融合する場として発展することを目指している。
- 実験報告や演習などを通じて知を伝え合う教育、英語など国際化教育のために多くの資源を割く中で、「確かな専門性を持ってこそ、交流による相互貢献も豊かなものになる」というポリシーを掲げる。
- 埼玉大学の入試のポイント
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一般選抜
- 大学入学共通テストが課せられ、学部ごとに個別試験の科目が異なる。
- 面接や小論文を課す学科・コースがある。
- 前期日程と後期日程があり、それぞれ一つの(同一または異なった)学部への出願が可能。
特別選抜
- 総合型選抜、学校推薦型選抜に加え、社会人選抜・帰国生徒選抜など多彩な入試方法を採用。
- 面接に加え、大学入学共通テストや小論文を課す学科・コースがある。
令和7年度入試の主な変更点(抜粋)
- 全学部の一般選抜では、すべての募集単位※で大学入学共通テストの「情報」を課す。また、教育学部の一部コースの学校推薦型選抜においても「情報」を課す。
※前期日程 経済学部国際プログラム枠を除く。 - 教育学部では、学校推薦型選抜を地域枠と全国枠に分けて実施。
- 理学部では、一般選抜(前期日程)物理学科における総合問題を廃止し、大学入学共通テストによる合否判定を行う。
- 学部ごとの変更点はインターネット上で開示されている。

受験生の保護者座談会

部活と勉強の両立

木田陽子さん(以下、木田さん):
息子は高校2年生で、陸上部に所属しています。先輩が引退してだいぶ気合が入ってきたようで、毎日部活に行っています。勉強量が減ってしまい心配ですが、限られた時間の中で効率的に勉強を頑張ることができれば、受験期にその効果が出るのではないかと思い、見守っています。

中川麻知子さん(以下、中川さん):
息子は高校1年生で、陸上部に所属しています。中学校3年間も陸上部で、高校でも続けています。とにかく練習がハードで、勉強は1日の中で10%程度という状況です。テスト前には図書館で勉強しているので、心配はしながらも本人なりに何とかやっていると感じています。

新井美里さん(以下、新井さん):
息子は高校1年生で、バトミントン部に所属しています。幼い頃は勉強より遊ぶことが大好きでしたが、中学時代は高校受験に向けて努力をしてきました。ただ、部活に集中しすぎると勉強が疎かになることは本人も分かっているようで、友達と自主練に励むときもあれば、しっかりオフ日をつくって勉強しているので、任せようと思っています。

明野敦子さん(以下、明野さん):
息子は高校1年生で、バスケ部に所属していて、3年間続けてほしいと思っています。中学の時に部活をやりながらクラブチームにも参加していた時と比べて、時間に余裕が持てて楽しい、部活を終えて帰ってきてからも勉強はしています。

笠松典子さん(以下、笠松さん):
息子は高校2年生で、ラグビー部に所属しています。部活後は家で何もできないことが分かっているので、学校に残って勉強をしてから帰ってきます。「体調が悪くなければ、学校の課題も全部やりたい」と考えているようです。私は勉強にはノータッチで、塾にも通っていないのですが、2年生のこの時期にどういう勉強をする必要があるのかが気になっています。
藤田笙綺さん(以下、藤田さん):
柔道部と地学部を掛け持ちしていました。柔道部は週6~7日あり、部活がある日は勉強ができませんでした。
小倉明美さん(以下、小倉さん):
高校1年生のときは、英語ディベート部に入っていました。週2日でしたが結構忙しく、家で作業をすることが多かったので勉強との両立が大変でした。
大学進学に関する不安と期待

木田さん:
今、高校2年生で志望校が少しずつ出てきてはいますが、方向性がバラバラです。大学選びは一歩引いて見ていますが、どのようなアドバイスをすべきか分かりません。本人は勉強するモードにはなっていて、それ以外のことを親がある程度把握しなければいけないと思いますが、遠方での住まい探しや後期日程を受けた場合に住まいが見つかるのかなど、受験は初めての経験なので不安です。
中川さん:
高校受験までは親が全面的にやりましたが、大学受験は本人に任せる方針です。ただ、本人がどの大学に行きたいか、何をやりたいのかは決まっていません。スケジュール管理も苦手なので親のサポートは必要になると思いますが、思春期であまり話をしてくれないので不安です。子どもが三人いて、お金のことも心配ですね。
新井さん:
本人がやりたいことは決まっていますが、学力が追い付くか心配です。どう勉強していくかの計画が苦手な上に、親には話してくれず、先生や兄に相談しに行くこともしません。大学受験まで苦手な部分を頑張れるか、どういうバランスで勉強していくのかなど不安がいっぱいです。
明野さん:
やっと高校受験が終わって安心していたのですが、「もう大学のことを考えなくてはいけないの?」という気持ちです。塾には通っておらず、どう勉強をしていくのか、いつまでに出願する必要があるのかなど何も分かっていません。どのように情報収集をしていけばいいのか本人も私も不安です。
笠松さん:
うちは上に娘が二人いて、長女は大学に進学しませんでしたが、次女は大学4年生です。次女の話になりますが、埼玉大学のオープンキャンパスにも行ったことがあります。当時はコロナ禍と重なり、埼玉大学以外の大学は受験時に初めて訪れました。情報収集には苦労しましたが、子ども同士でも情報交換をしていたようです。
息子の話に戻りますが、学部選びで迷っています。小学校の先生になりたいようですが、高校の担任との面談では「小学校の先生にこだわらなくてもいいんじゃない?」「選択肢を広げてみては?」とアドバイスを受け、揺らいでいます。「情報収集をしているの?」と聞くと「してる」と答えるのですが、実際のところはどうなのでしょう。「分かっているからほっといてくれ」という意味なのか、口では言いつつ調べていないのか。距離感が難しくて悩んでいます。
木田さん:
私はインターネットで調べたり、資料請求をして、大学の情報を集めています。今年のオープンキャンパスは逃しましたが、横浜で開催された主要大学が集まるイベントには息子を連れて行きました。息子自身はOBの方から情報をもらい、大学に進む実感が湧いてきたようです。

中川さん:
うちは高校1年生で進路もまだ考えていないので、大学の情報は集めていません。オープンキャンパスは学校の宿題や部活が忙しくて行けなかったのですが、オンラインで開催されたオープンキャンパスは視聴したようです。
新井さん:
インターネットで調べています。本人は兄から大学や受験のことを聞いています。教員になりたいようで、高校の担任との面談で「埼玉大学は教員のスペシャリストになれるよ」と教えていただいたのがきっかけでオープンキャンパスにも行きました。
明野さん:
インターネットで調べていますが、本人はこれから受験という自覚がなく、資料請求をするものの山積みになっていて見ていません。オープンキャンパスは高校の課題として出たので行ってきました。
笠松さん:
インターネットで調べることが多いです。資料請求もして何冊かは見たようですが、ほとんど見ずに山積み状態です。大学生の姉から話を聞いたり、姉の友達から他学部のことを教えてもらっているようです。
木田さん:
高校を選ぶ際は「子どもが楽しく行けたらいいな!」が第一でした。大学についても同じ気持ちです。ただ、パンフレットを見て「どういう資格が取れるか」「就職先はどうか」「大学院が充実しているか」など、本人の関心とは別で先のことを考えてしまいます。
中川さん:
本人は就職先を気にしています。「楽してお金を稼ぎたい」「名の知れた企業に勤めたい」という気持ちがあるようで、親としては「頑張ってね!」と任せています。

新井さん:
私はもともと「高校を卒業したら早く社会に出て自立してほしい」という考えでしたが、本人の目標が大学を出ないと達成できないので、今は応援しています。大学でしっかり勉強して資格を取り、自分が学んできたことを一生懸命伝えられるような教員になってほしいと期待しています。
明野さん:
大学では、楽しく過ごしてもらいたいと考えています。その中でやりたいことを見つけ、しっかり勉強して就職ができればと期待しています。
笠松さん:
高校生ともなると自分で選び、悩み、決めるべきだと考えています。頼られればアドバイスやバックアップはするつもりです。本人は大学でもラグビーを続けるのかどうか、それも含めて検討しています。大学で期待することとして、良いことも悪いことも含め、本人が今後の人生において必要な経験を積んでもらえたらと思っています。
高校生のパソコンやタブレットの活用状況
木田さん:
「タイピングの検定が楽しい」ということで、受けて1級を取りました。志望学部の候補の一つが工学部で、自分で本を購入してプログラミングの勉強もしています。20万円もする高額なパソコンを買ってほしいと言われましたが、購入は見送りました。
中川さん:
高校では1人1台タブレットを購入します。主に復習やテスト前の勉強で「スタディサプリ」を使っています。ただ、自分の部屋で勉強しているので、どの程度使いこなせているかは分かりません。
新井さん:
うちも高校指定のタブレットを購入して、分からないところを「スタディサプリ」で調べています。パソコンは使っていないと思います。

明野さん:
うちもタブレットで「スタディサプリ」の動画を見ています。勉強以外に面白動画を見たりもしていますが。
笠松さん:
タブレットを主に使い、資料を作ったりしているようです。家族共有のノートパソコンが1台ありますが、使っている姿は見たことがありません。
中川さん:
大学生にお聞きしたいのですが、パソコンは大学入学前に購入したほうがいいのでしょうか。
藤田さん:
入学前に購入しました。埼玉大学では入学のガイダンスでWi-Fi登録の案内もあるので、その日にパソコンを持っていくと説明を聞きながら登録ができます。

木田さん:
スペックの指定はありますか。
藤田さん:
学部によると思いますが、工学部の場合は必要なスペックが送られてきます。10万円を超えないものを親と交渉しながら、最終的には8万円ほどのパソコンを購入しました。
木田さん:
8万円くらいでいいのですね。20万円のパソコンを買わなくて良かったです。
河本専務理事:
大学ごとで考え方が異なりますが、スペックを指定するところが多いです。埼玉大学は2024年春に入学の方からパソコンが必携化になり、学部ごとに必要スペックをホームページなどで開示しています。
一人暮らしで心配なこと
藤田さん:
自分は自宅です。
小倉さん:
私は寮に住んでいます。
大前萌々花(以下、大前さん):
私も寮に住んでいます。
中川さん:
寮には寮母さんがいて、食事が出るのでしょうか。
大前さん:
寮母さんはいないです。一人ひとりしっかり分かれていて、アパートに近いです。
木田さん:
手付金は払っておくのですか。
河本専務理事:
大学生協では手付金なしで仮予約が可能です。受験日に保護者も一緒にいらっしゃることが多いので、大学内に会場を設けて仮予約できる物件をご案内しています。2024年は2日間行い、約80人が来場されました。そのうち仮予約は50件ほどで、約7割が合格されてそのまま成約につながりました。仮予約は地方の大学も多いです。私立大学に関しては、そのあとに合格発表のある国立大学に入学するケースがあり、仮予約から成約につながるのは良くて4~5割程度です。
木田さん:
「親も一緒に受験に行く」と聞いて、カルチャーショックでした。
河本専務理事:
遠方の場合は保護者が一緒に前日入りし、一度下見をして、受験当日も学校にいらっしゃることが多いです。校内の食堂が保護者の控室になっています。
木田さん:
食事が心配で、料理の訓練をしています。他にも風呂掃除や洗濯など、家事全般をできるように一生懸命育てています。受験が近づいてきて、「住むなら1階は嫌だな、2階がいいな」など、徐々に具体的な不安や要望も出てきました。

笠松さん:
うちも食事が心配です。息子は家では料理も家事もしていません。
大学生の次女の話になりますが、食事は大変そうでした。ただ、一人暮らしをして「親のありがたみが分かった」と言っていたので、貴重な体験だったと思います。大学生活では、大学生協の食事のサービスや共済も加入し、来年の卒業に向けて袴のレンタルも利用しました。アパートについては入学前に内見をして手付金なしで仮押さえでき、不合格の場合はキャンセルできるサービスを利用しました。大学生協には本当にお世話になっています。
現役学生からのメッセージ

藤田笙綺さん(埼玉大学 工学部 応用化学科2年生)
小倉明美さん(埼玉大学 教育学部 小学校コース心理・教育実践学専修 1年生)
大前萌々花さん(埼玉大学 教養学部 教養学科1年生)
現役学生からのメッセージ①
埼玉大学工学部 応用化学科2年生 藤田笙綺さん
工学部応用化学科2年生の藤田笙綺です。ものづくりなどに化学の知識を生かす勉強をしています。
志望校を決めた時期

第一志望を決めたのは、高校2年生のときです。地学部の顧問の先生の母校で、「面白いことを学べるから、すごくいいよ!」と教えていただいて、そこを目指して頑張っていました。ですが、前期日程で不合格となりました。その後、後期日程で埼玉大学を受けて合格しました。化学系に進みたかったのですが、埼玉大学には理学部の基礎化学科と工学部の応用化学科の二つあります。実は違いがよく分からないまま、出願直前に調べて「楽しそう!」という学部を選びました。正解だったと自分では思っていますが、「下調べはしっかりしたほうがいい」と後輩にずっと言っています。
受験期の親との関係
第一志望を落ちると、母からは「私立大学はどこを受けるの?」「何校受けるの?」と言われ、お金や日程の部分でもめました。父は「どこでもいいんじゃない」「お金は出すよ」と言ってくれたので、母には「とりあえずこの大学を受けるから!」と言って部屋にこもりました。母は気が気じゃなかったと思います。埼玉大学を後期日程で受けましたが、合格発表は卒業式が終わってからです。私立大学にはお金を払っていて「私立大学へ行くの?」「行くならお金がすごいけど」と言われたり、埼玉大学に合格してからも「東京の私立大学のほうが就職はいいんじゃない?」という話もされました。自分としては親の負担にはなりたくないですし、奨学金を借りて就職後に返済するのも避けたかったので、「こっちがやりたいから」と埼玉大学で説得しました。受験のときにちょうど反抗期で、迷惑を掛け続けてしまいました。ですが、国立大学に受かり、通学も自宅からなので、家計の負担は抑えられたかなと思っています。

保護者の方からの質問
新井さん:
前期日程・後期日程の違いを教えていただけますか。
藤田さん:
国立大学は前期日程と後期日程で受けることができ、前期日程で落ちても、後期日程でもう一度チャンスがあります。自分の場合、第一志望を前期日程で受け、後期日程で埼玉大学を受けました。
新井さん:
後期日程は別の大学しか受けられないのでしょうか。
藤田さん:
同じ大学も受けられます。ただ、前期日程で上のレベルの大学を落ちてしまった人が、少しレベルを下げて別大学を出願することが多く、同じ大学で見ると後期日程はレベルが上がります。
新井さん:
思春期は親から声を掛けられるのも嫌だと思いますが、何が一番嫌でしたか。
藤田さん:
「ここの大学を受けたほうがいいんじゃない?」という受験に関することはアドバイスとして受け止めることができたのですが、勉強に関して特に声を掛けられるタイミングが嫌でした。夏休みは9時~22時頃まで塾で勉強していたのですが、家に帰ると「勉強したの?」と母に聞かれるんです。「それをしてきたんだよ!」となりますよね。
新井さん:
受験が終わると気にならなくなりますか。
藤田さん:
そうですね。大学4年生の兄がいるのですが、母は就職のことで頭がいっぱいなので、自分にはそこまで構っていられないのだと思います。
木田さん:
役立ったのはどういうアドバイスでしたか。
藤田さん:
自分では大学のことをあまり調べていなかったのですが、母が調べてくれていました。第一志望を落ちて私立大学の出願を決めたのが期限ギリギリだったのですが、そのときに選択肢を出してくれたんです。「教員免許が取れる大学に行きたい」とは親に伝えていて、「この大学なら取れるんじゃない?」「化学系だったら、この大学へ行けるよ!」と私立大学について教えてくれました。自分は「あ、そう」とそっけなくしていましたが、ありがたかったです。
埼玉大学 教育学部 小学校コース心理・教育実践学専修 1年生 小倉明美さん
教育学部小学校コース心理・教育実践学専修1年生の小倉明美です。私は末っ子で、上に姉が二人います。一人は私立大学で、「国立大学に行ってほしい」という圧が高校1年生の頃からずっとあり、私立大学は考えていませんでした。
受験期の勉強

私は家でまったく勉強ができないタイプで、誘惑のない環境で勉強をしたかったので「塾に入りたい」とずっとお願いしていましたが、「高いから無理だ」と高校3年生の8月まで言われていました。妥協点をお互いに出し合い、何とか見つけたのが自習室だけ借りられる安い塾です。国立大学は全科目を受ける必要があり、苦手科目を作らないように勉強のスケジューリングを頑張っていました。
家でも勉強することはありましたが、親から「勉強したの?」と言われるのが嫌だったので、なるべく部屋に引きこもっていました。その中でも休憩時間にお菓子を持ってきてくれたのがすごく嬉しかったです。お菓子やジュースがあると「応援してくれているんだな!」という気持ちになるので、大事だと思います。
また、勉強のモチベーションアップとして、友達とオープンキャンパスに行っていました。高校3年生のときに「この日は勉強しないで、大学のことだけ考えるぞ!」という気持ちで行くと、気分転換になったんです。
受験期の親との話し合い
父は単身赴任で高校3年生になってもほとんど家に帰ってこないので、私の状況を把握していませんでした。私は推薦で他大学を受験しましたが落ちてしまい、共通テストの点が良くなかったこともあり、受ける大学を変えました。父にはすべて事後報告で、「何で言ってくれなかったの?」と言われました。聞いてこなかった父にも非はありますが、お金が関わるので志望大学についてはしっかり話し合ったほうがいいと思います。奨学金を申請する場合にも親との話し合いは必要です。奨学金は高校3年生の間にすべて手続きを行います。給付型は申請しないと打ち切りになることがあるので、その話はさすがに父としました。
共有せずに私のように直前でもめると、どちらも傷つきます。出願を決めるのは国公立大学なら共通テストのあとだと思うので、そこで両親としっかり話し合うべきだと思います。

保護者の方からの質問
木田さん:
親をシャットアウトして勉強したということで、アドバイスしてくれる人がいない中でどのように進めていったのですか。
小倉さん:
塾は自習室だけとはいえ担当の先生がいて、勧められた参考書1冊を極めるように勉強していました。周りには国公立を目指す人がいるので、いろんな人から話を聞いていました。学校の先生は特進クラスで東京大学などに行きたい学生に注力していたので頼らなかったです。ただ、学校で配布される参考書はやったほうがいいです。
木田さん:
息子に「問題集はないの?」と聞いても、「物理は教科書ぐらいしかない」「俺は何をやったらいいんだ」と言っています。
藤田さん:
自分のときは教科書とリンクした問題集が配られましたが、参考書というほどのものでなく、問題を解く用のテキストでした。確かに参考書について、物理の先生はあまり言ってくれないかもしれません。自分は通っている塾の人などに「物理はどう勉強すればいいの?」と聞いていました。
新井さん:
息子は中学校の数学か理科の教員になりたいようなのですが、教育学部は文系になるのでしょうか。
小倉さん:
私が通うコースは文系ですが、埼玉大学には小学校コースで国語・算数・理科・社会があり、中学校コースで国語・数学・理科・社会があります。そのコースにより文系・理系が決まり、受験概要も異なります。
笠松さん:
うちの息子も小学校の教員志望です。国公立を希望していますが、得意なのは数学や物理です。高校の担任からは「理学部に進んで、中学・高校の理系の教員免許を取れば教員にもなれるし、理系も生かせるよ」という話をされて、教育学部か理学部かで揺らいでいます。私もホームページを見たのですが細かいところが分からなくて。オープンキャンパスに行ったり、直接先生にお聞きしないと詳しくは分からないのでしょうか。
小倉さん:
中学校コースの理科分野では物理・化学・地学・生物などがあり、小学校コースも理系があります。小学校コースと聞くと「全科目をやらないといけないので文系」だと思われがちです。私のコースも教育の概念的なことを学ぶので文系ですが、コースで理科や算数に絞れば、理系でも大丈夫だと思います。
木田さん:
うちの子が志望している学部だけ教員免許の資格がありませんでした。4年間を過ごす中で「教員になりたい」という気持ちが芽生えたら大学院に進むしかないのでしょうか。
藤原理事長:
学部の案内などには、その学部を出て取れる資格が記されています。教員志望であれば、免許が取れるのかオープンキャンパスなどで聞いてみるのがいいと思います。
埼玉大学 教養学部 教養学科1年生 大前萌々花さん
教養学部教養学科1年生の大前萌々花です。私は埼玉大学の教養学部しか考えていなくて、学校推薦型選抜で入学しました。
志望校についての親との話し合い

父とは進路について日頃からよく話をしていました。高校生のときに考えていた将来就きたい職は英語が話せれば大丈夫なので、父は「高校で英語がマスターできれば大学には行かず、そのまま就職でもいいんじゃない?」と言ってくれていました。母は逆に「大学に行ったほうがいい」という考えで、「どの大学を受けるの?」と少しだけもめました。うちは群馬県で両親ともに「県内の大学にしてね」という希望があったのですが、私はどうしても埼玉大学の教養学部に行きたかったので、寮があることをプッシュして、「寮に入れば家賃を抑えられるし、頼むから埼玉大学の教養学部に行かせてほしい!」と説得しました。
高校の担任からは、母が希望する地元の公立大学を「そこの推薦だったら行けるんじゃない?」と勧められました。ただ、その大学で「自分のやりたいこと」ができるイメージが湧かなかったので、学力的には厳しいと分かりつつ、推薦だったら可能性があると思い埼玉大学を出願しました。
実際には私立大学と併願しました。私立大学は、上位で合格できれば学費が減額されるスカラシップ入試です。「埼玉大学に行けなかったら、そこしかない」という状況でした。
受験期の勉強
推薦入試の場合、小論文や面接などの対策を行います。生徒会で仲の良かった先生を頼りました。夏休みに質問に行ったり、放課後に質問に行ったり、相談にすべて乗ってくれました。親も愚痴を毎日聞いてくれて、本当にありがたかったです。また、自分が大学受験に向けて勉強に集中する中で、親が事務的な部分を調べたり、アドバイスをくれたのが嬉しかったです。

保護者の方からの質問
明野さん:
学校推薦型と指定校推薦とは違うのでしょうか。
大前さん:
指定校推薦は多くが私立大学で枠がある高校の人しか出願できませんが、国公立大学の学校推薦型選抜は基準を満たしていれば出願できます。私が受けた教養学部は、小論文と面接と志願理由書で合否が決まる入試でした。
笠松さん:
最初に受けた推薦では、どれくらいの期間準備をしましたか。
大前さん:
志願理由書などを書き始めたのは高校3年生の夏休みです。小論文と面接対策をしっかり始めたのは10月頃で、直前1カ月間でやりました。
木田さん:
うちは高校で面談をしたときに、「公立で学校推薦型選別は無理です」「この大学であれば受験ですね」と言われました。推薦で「ここなら行けるだろう」というのはどんなところがポイントなのでしょうか。
大前さん:
教養学部の場合、評定平均が4.3以上でないと出願できません。私は評定が4.3と基準ギリギリだったので反対されました。周りが4.3以上ある中で一番下から始まるので、「小論文と面接で逆転するのは可能性が低いからやめておいたほうがいい」ということでした。「推薦にかける時間で前期日程の勉強をしたほうがいいんじゃない?」とも言われました。
小倉さん:
実際に推薦入試の1カ月前は、小論文と面接対策で手いっぱいになってしまいます。その間ライバルたちは前期日程の勉強を頑張っているので、その中で推薦の対策をするメンタル的な負担と、「1カ月分の勉強を巻き返せるのか」「推薦を落ちたあとに立ち直れるのか」という不安が大きかったです。私は一度推薦で落ちましたが、12月頭に発表され「ここまで頑張ってきたのに」とメンタル的にきつかったです。
笠松さん:
うちの上の子も学校推薦で落ちています。そのあとに共通テストが控えていたので、推薦対策と並行して勉強をしていましたが、きつそうでした。
木田さん:
「推薦で行ける!」と言われていた、群馬の大学の決め手はどんなところだったのでしょうか。
大前さん:
そこは英語系の大学で、英検の資格が決め手だと思います。どれだけ加点されるかは分かりませんが、高校の担任からは「英検準1級を取得していればその大学は大丈夫だろう」と言われていました。ただ、その時点では英検は持っておらず、そのあとで英検準1級を受けました。受験時点では取れていなかったのですが、評定や学力面から「行けるんじゃないか」と言われたのだと思います。「もし推薦でだめでも、前期日程で入れる学力はあるのではないか」というのが先生の見込みでした。
木田さん:
英検以外で何か有利に働く材料はありますか。
大前さん:
生徒会を2年間やっていたこともプラスになると言われました。
木田さん:
オープンキャンパスには行けなかったのですが、公開授業などに参加した場合に推薦で有利になることはありますか。

藤原理事長:
それは関係ないと思います。来られない人がいるので不公平になりますからね。
大前さん:
「この資格を持っている」「生徒会をやっていた」など、それ自体が加算されるというより、それを“うまく伝えられるか”が面接では大事だと思います。“ものは言いよう”という感じで、誰しも経験するようなことでも言い方によって“自分が魅力的に見える伝え方”を考えて話すと、「オープンキャンパスに行っていない」などのマイナス部分も言い換えができると思います。
笠松さん:
素晴らしい考え方ですね。
藤原理事長:
質問に対して何らかの形でしっかりレスポンスをすると、「質問も分かっているし、きちんと伝えることができていますね」と面接官は受け取ると思います。就職活動でも一緒ですが、会話のキャッチボールができることはポイントとして大きいです。
ご参加いただきましてありがとうございました。
2024年9月15日埼玉大学にて
Contents
受験生の保護者座談会
現役学生からのメッセージ