「成年年齢引き下げ座談会 ~大学1年は既に成人なんだよ!ひとり立ちだよ!」

2022年4月からの成年年齢引き下げでは、親の同意がなくてもクレジットカードやローンなどの契約ができるようになる一方、未成年であることを理由とした契約の取り消しができなくなり、結んだ契約を守る責任を負うことになります。そのため、若者の消費者被害の拡大が懸念されています。
あなたは自力で対処することができますか?
このインタビューでは、消費生活専門相談員で複数の大学で講義もされている早野木の美先生に、大学生の被害が多い悪質商法の事例などをお話いただきました。

(2022年3月5日リモートインタビュー)

インタビュイー

早野はやの 木の美このみ先生

聞き手

角田 咲桜
全国大学生協連 全国学生委員会
2022年度委員長(茨城大学卒)

高橋 明日香
全国大学生協連 全国学生委員会
学生委員(兵庫県立大学)

尾崎 史奈
全国大学生協連 全国学生委員会
学生委員(金城学院大学/司会進行)

早野 木の美先生 プロフィール

消費生活専門相談員。大学の家政学部を卒業後、消費生活センターに入所し、現在に至る。同センターに勤務しながら法学部で学び、修士・博士課程を取得。相談案件の解決方法の一つに調停への道を示す。裁判所の民事調停委員を12年務め、現在はそれに加えて3つの大学でそれぞれ環境関連資格取得の講座、経済学部、家政学部の講師を務める。行政と連携した環境教育推進、都の消費者啓発員、日銀の金融広報アドバイザー等を担い、執筆や講師を務めるなど、消費生活・環境問題などを基盤に幅広い活動をしている。

(以下、敬称を略させていただきます)

早野先生の自己紹介

本日はお時間を頂き、ありがとうございます。初めに、早野先生の現在のお仕事などを交えて自己紹介をお願いできますか。

学生時代から消費者問題に関心があって、大学の家政学部を卒業して消費生活センターに就職しました。以来消費生活センターの相談員として今も現役です。
いまは、関東学院大学 経営学部で「消費生活と消費者問題」、東京家政学院大学 現代家政学部で「消費者教育」、東海大学 教養学部 で「環境カウンセラー講座」の講師もしています。
30代半ばのとき、家政学部で学んだことだけでは不十分と感じ、法学部に入りなおして、修士、博士もとりました。簡易裁判所の民事調停委員も兼任するようになりました。
調停委員になって良かったと思うのは、消費生活センターでは解決できないレベルの問題がたくさんあると分かったことです。行政は個人間同士の契約には介入できないことになっていて、フリマアプリの契約トラブルとか、アルバイト先での賃金未払いの問題などは、消費生活センターでは解決できません。
世の中には非常に質の悪い業者もたくさんいます。ですので、そういう学生には、まず弁護士の法律相談を受けてもらいます。その後、再度消費生活センターで、裁判所に提出する申立書の書き方をお教えして、学生が裁判所に調停に行ってお金を取り戻したり、あるいはエステから不当な請求を受けた学生が堂々と業者と闘ったりする後押しをしています。
大学生がさまざまな相談に来ますが、昨今は本当に自分の力で困難を乗り越えようという方が非常に多く、調停に行く方が増えてきました。私が勤務する消費生活センターに相談に来てくれれば調停での解決方法をお教えできますが、一般的な他の消費生活センターは調停まで学生を導くことのできる相談員が少ないので、残念に思います。

コロナ禍の大学生活

生の声から浮かび上がる問題

3つの大学で講義をされていると伺いましたが、コロナ禍での大学生の生活の変化や消費者被害について、印象に残る事例がありましたら教えてください。

コロナ禍で大学生活がリモート主体になってしまい、学生が本当に困っているのを痛切に感じています。私が教えている3つの大学の今年度の授業形態は、関東学院大学はすべてリモート、東京家政学院大学は前半がリモートで、後半は対面とリモートを交互にするハイブリット型授業でした。東海大学は“環境カウンセラー”という資格を取るための授業なので、前半はリモートでしたが、後半は対面授業になりました。最後の最後にオミクロン株の感染急拡大で、学生は自宅からリモートでの発表となって残念でしたが。
全てリモートで行った関東学院大学は、1回の受講者180名が毎回レポートを提出してくれました。それまでは授業の中でその日の感想を200字で書かせていたのですが、リモートでは学生が私の授業を受けた後に丁寧に200字以上の感想を送ってくれるようになり、学生の声が生々しく伝わってきました。
その180人の声を集約して分かったことが、
1)悪質商法に騙されている学生がいかに多いか
2)食生活が完全に乱れてしまっている
3)アルバイト収入が激減してしまった
という内容で、これは全国大学生協連の調査報告結果にも如実に表れています。

食費に関しては、学生は本当に切り詰めています。去年からそう感じていたので、関東学院大のカリキュラムでは、食については通常1回しか取り上げないのですが、今年度は2回講義を行いました。1回は従来型の食品をめぐる問題、2回目は基礎的な栄養をしっかり取らないことによる身体への影響です。学生たちは4月から、にきび、下痢、便秘、イライラなどの自覚症状を訴え、中には在宅学習により昼夜逆転が常態化して「やはり食事をきちんととって、規則正しい生活をしなくてはいけないと感じました」と書いてきた学生もいました。自分の便秘や吹き出物の原因を赤裸々に書いてくれた学生もおり、それは180人いる大教室では発することのできない生の声でした。それらから学生の食生活がどれだけ乱れて、精神的にどれだけ疲れているかということが分かってきたので、今後もまだリモートが続くようであれば、食生活の乱れは、体調にも心の問題にもつながるということを伝えていきたいと思っています。

学生が食生活の大切さに気付けるように、私たちも何らかの活動をしていきたいと思います。全国学生委員会で健康・安全分野を担当している高橋さんはいかがですか。

昼夜逆転の話や食生活のことは健康安全分野でも取り上げられています。コロナ禍で体力的にも精神的にもつらい状況が続き、食生活の乱れが体調に及ぼす影響、メンタルヘルスも最近では大学生にとって深刻な問題になっています。私は理系の学生なので毎日研究室に行っていますが、やはりカップ麺で済ませてしまったり、食事を抜いたりする生活をしている人がいます。登校する・しないに関わらず、食の面はしっかりと見ていく必要があると感じています。

食生活と消費者問題

食も含めた消費者問題の講義をされているとのことですが、どのような問題があるのでしょうか。

私が教えているのは消費者教育の分野での食の問題、過去の歴史です。今でこそ食品には詳しい表示が書かれていますが、私が小学生の頃は菓子のパッケージでも何にでもお客様相談室の電話番号など皆無でした。皆さん驚かれますが、第二次世界大戦終結後の日本の食においては、そのくらい消費者は捨て置かれていた存在でした。だから過去の食品をめぐる消費者問題は非常にたくさんあります。
食の問題は消費者問題の歴史です。過去にそういう闘いを勝ち抜いてきた方々の写真を掲載すると、皆さん「自分たちが今こうして安全な食生活ができるのは、こういう方々の闘いの結果なのだ」と分かるのですね。それは第二次世界大戦後の生協の方たちが勝ち取ってきた消費者の権利の歴史に通じると思います。
10年ほど前には食品偽装問題が起きましたが、食に関心のある方々がきちんと訴えることによって、「今はインターネットの時代だから、不正は拡散されてしまう」とけん制することができる。その繰り返しです。

私は東海大学で環境カウンセラー講座を持っていますが、その講座では、資格を取るために受講者の前でプレゼンをやるのが課題です。あるときそのプレゼンで、コンビニでアルバイトをしている2人の学生が、バックヤードで大量のお弁当を廃棄しなければならないという、見えない裏方の部分での問題を報告したことがありました。環境カウンセラーを志す者としてちゃんと伝えるべきだと思って発表されたのですが、非常に印象的でした。学生がアルバイトを通じて垣間見た社会を発表する、それがもっと大きな場面、例えば大学生協さんの発表の場などで披露する機会があれば食品ロス問題の解決につながっていき、世の中がもっと変わるかもしれません。

食とお金の話

学生生活実態調査などを見ても、今の大学生は自分の健康状態に向き合う機会が乏しいと思われます。悪影響が蓄積されるかもしれないけれど、今良ければいいや、という学生も多いことでしょう。そんな中、生活リズムを整えること、きちんとした食生活を送ることが大事だと伝える上で、早野先生が意識していらっしゃること、実践していらっしゃることがあればお伺いしたいと思います。

日銀の金融広報委員会はご存じですか? 日本銀行が消費者金融教育をするために、全国47都道府県に金融広報アドバイザーを置いており、そこにオファーすると金融広報アドバイザーが要請を受けたところに行って講演をします。その日銀が作った、食生活を考えるためにとても良い資料があります。それが『これであなたもひとり立ち』というテキストです。消費者問題も勉強できるように作られた高校生向けのテキストで、生徒用と教師の解説資料がセットになっています。例えばカレーを自炊したらいくらで、外食したらいくらかかるかという、お金の計算もできる優れものです。
また、女性は月経があるので毎月鉄分が失われます。このテキストは、食品によって鉄分やカルシウムがどれだけ補給されるかということがつぶさにわかるシール式になっており、この食品には鉄分がこれだけ含まれるから、これを意識的に食べるという選択ができます。また女性は50~60代になると骨粗鬆症になりがちなので、今の学生の年齢からカルシウムをしっかり取る必要があります。20ページ程度のテキストですが、日銀はその食のシールにすごくこだわって作成しているので、コロナ禍になるまでは授業にそのテキストを使っていました。

これであなたもひとり立ち
―自立のためのWORKBOOK―

PDF版
https://www.shiruporuto.jp/education/document/container/hitoridachi/text/

刊行物請求案内
https://www.shiruporuto.jp/public/document/container/book_seikyu/

※「これであなたもひとり立ち」は無償です。

私の大学でも、1ページ抜粋して授業で使っていました。人生に関わるお金のところです。

私も消費者問題の授業でも、「18歳までにあなたにかかったお金はいくらですか」ということを取り上げています。学生1人におよそ2,000万円かかっていると分かりますが、それには中高生時代に部活やお稽古ごとに使った費用は一切含まれていません。それを加算すると3,000万という子もいるわけです。計算して改めて驚く学生も少なくありません。これをベースに、人生のキャリアプランを考えるといいですね。

大学生が遭遇する消費者被害

マルチ商法とマルチまがい商法

成年年齢引き下げに伴い、消費者被害の拡大が懸念されます。先ほど調停に行くというお話がありましたが、被害に遭わないために意識すること、被害に遭ってしまったときにすぐ気付けるようにするにはどうすればよいでしょうか。

消費者被害が増えた背景には、リモート学習が広がり、不安に思うことを気軽に友達に聞けなくなってしまっているという状況があるのを感じています。皆さんは「投資用USB事件」というのはご存じですか?

トラブル事例としては知っていますが、詳しいことまではあまり把握できていません。

では、マルチ商法とマルチまがい商法の違いは?

分からないです。

マルチ商法を救済する特定商取引法の中には連鎖販売と書いてありますが、連鎖販売取引と言うと分かりにくいので、学生さんたちに分かりやすく説明するために、マルチ商法と言っています。マルチ商法とは、元々アメリカから伝わってきた「マルチレベルマーケティング商法」が基礎で、本場のアメリカではほとんどしてはいけないことになっていますが、なぜか日本では未だにマルチ商法が横行しています。そして多くの大学生が、大学生になったとたんにこれにだまされてしまっています。

マルチ商法(連鎖販売取引)であれば、商品を受け取った、あるいは契約をした日どちらかの遅い日を起算日として20日以内に相手方にクーリングオフの通知を出せば契約は解除になります。そこで悪人が考えるのは、法律の適用要件の一部を満たさないようにして逃れるもので、これがマルチまがい商法です。マルチ商法に合致すればクーリングオフしなさいと言えるのですが、要件を1個外せば法律が適用されなくなるので、クーリングオフができないのです。多くの大学生が被害に遭っています。
でも皆さんよく分からないから、「儲かるよ」と言われて簡単に騙されてしまい、大きな社会問題になっているのです。「マルチ商法、あるいはマルチまがい商法にご注意」という啓発をずっとやり続けていますが、大学の中で被害者が出たとしても、被害者は数年たてば卒業していきます。毎年新たなターゲットが入学してくるので、マルチ商法、マルチまがい商法は数が全然減らないという実態があります。

「簡単に稼げます」という甘言

この問題が特に大きく取り上げられたのが、5~6年前の“投資用情報が満載されたDVD”でした。新入生が、1枚のDVDの中にお金儲けの知恵がたくさん詰まっているから、購入すればお金儲けができると言われる。政府は金融の勉強をしろと言うし、大学生も入学したばかりでやる気満々です。その情報商材が当時62万円でした。ほとんどの学生がその金額を消費者金融から借りて、それを業者に渡してDVDを買いました。それを自分のパソコンにインストールして、一生懸命勉強する。けれども、そんなに簡単にお金なんか儲けられないのですね。それで、1~2カ月後にその情報商材を売った売り主のところに行って「全然分かりませんでした。でも消費者金融にお金を返さなくちゃならなくて困っています」と言うと、「じゃあ、この62万円のDVDを売ったら1人に付き10万円あげるよ」と言われる。6人連れてくれば62万円の借金を返済できますね。それで自分の予備校時代の友達や中学時代の友達……さすがに自分の大学の友人は何となく後ろめたいから誘えず、他の大学に行った友人に62万円のDVDを売るわけです。それでもみんなが騙されるわけではないから、借金だけが火の車になっていきます。5年前に東京都内だけでも当時2,500人の被害者が出ました。都内だけでその人数ですから、全国では何千人という規模の被害です。それでもマルチまがい商法だから誰も救済できないし、やめさせることができず、私たち消費生活相談員も途方に暮れました。

そんなとき、一人のお父さんが私の勤めている消費者センターに来られました。そのお父さんが、「息子の部屋から、消費者金融3社から借りた証書が出てきました」とおっしゃいます。私は投資用DVDの話をして、次は息子さんを連れてきてくださるようお願いしました。その息子さんにDVDを買ったいきさつを尋ねると、「予備校時代に仲良くしていて別の大学に行った友達に『お金儲けの方法があるからこのDVDを買わないか』と誘われ、消費者金融に連れていかれて買いました」と。「でも僕は中身を見てもお金儲けはできなかった。困ったなぁと思っているときに、消費者金融からの書類をお父さんが見つけて、お父さんが消費者センターに来ました」。
最初は私も消費者金融の会社や業者に電話をしましたが、そういう人たちは消費者センターの電話番号を把握しているので電話に出ません。そして、ほとんどはお金を返しません。弁護士相談を受けても無理だったと言われました。そこで提案したのが、息子さんと簡易裁判所に行って民事調停を申し立てることでした。それが、唯一お金が戻ってきた事例です。

悪質業者は手を替え、品を替え

その後、東京都消費生活総合センターと消費者庁がタイアップして、業者を行政処分にしました。行政処分にすると、業者は大学生を勧誘して商売することはできません。でも、11月に行政処分されて、4月からはもう復活しているのです。今度はDVDではなく、媒体をUSBに変えてきました(笑)。そしてまた、新入生がどんどんターゲットになって、うちの消費者センターに新たな大学生がその投資用USBを持って相談にくるわけです。やはり皆さん、自分の大学ではなく、中高一貫教育で一緒にいた友達に誘われたけれど、お金儲けができなくて消費者センターに駆け込んだと、そんな感じです。
本当にいろいろな大学から「投資用のDVDやUSBの被害が大学で蔓延しているから困ります」と言われて、私がそれらの大学に行って講座をしました。そうしたら今度はまた新たな手口に変わったのです。それがタブレットです(笑)。DVDが62万円、USBが52万円、今度は情報商材をタブレットの中にインストールして42万円です。

最初のDVDから投資用USBになった頃に、大学生の被害が非常に多いので消費者庁も行政処分をしました。しかし、消費者金融側も考えます。明らかに投資用USBでお金を借りに来た子は貸す側も分かるので、「あなたが今からお金を借りようとしているのは、こういう目的ではないですか?」というチェックリストを用意し、連れてこられた大学生に渡します。大学生は嘘ばかりの質問項目に「違います」と書いて、お金を借りて業者に渡すというわけなのです。
騙された大学生を救済するために、消費者金融に「お宅に投資用商材を買うために52万円借りているようなのですが」と言うと、「いや、うちのチェックリストでは、お金を借りる目的は違うって言っていましたよ。ということは、学生さんが我々消費者金融を騙したのではないですか」。消費者金融と業者はつながっているのにしゃあしゃあと言うのです。「学生さん、親に旅行させるためって言っていましたよ」。親に旅行させるためにお金を借りる学生なんかいないじゃないですか、自分が大変なのに(笑)。
このように最初の頃は学生が消費者金融に連れていかれたのですが、今度は勧誘員がスマホで消費者金融から借りる手口を学生に教えます。「お金を借りる目的は『旅行のため』にしなさい。そうしたらすぐにお金を借りられるから」。だから、もう消費者金融に歯止めがかからなくなってしまいました。監視の役割を果たす親御さんにしても、知らないうちに自分の子どもが投資用のタブレットを買って、スマホで借金して、結局それが売れなくてまた借金に苦しむ。もう5年前と全然変わらない状態です。

ただ、学生はどんどん卒業していき、新しいターゲット(新入生)が入ってきます。これが通常の時代であれば、クラブやサークルで先輩から話を聞けるのですが、今ちょっとそれができなくなっています。そういう勧誘があったときには、情報共有してみんなで被害に遭わないようにしようとか、あるいはサークルや食堂で投資被害に遭って元気をなくしている学生がいれば、訳を聞いて「消費者センターに行ったほうがいいよ」と声掛けしてくれそうなものですよね。しかし一人で部屋の中でパソコンを見て悶々としている学生が大勢いるのだと思うと、何とかこのタブレット被害者をこれ以上出したくない、というのが今私の一番強い思いなのです。

4月から成年年齢が18歳に引き下げられて、今までは親が助けられていた部分が助けられなくなっていく。私たちもオンラインでつながりにくい状況ではありますが、声を掛け合うこと、それが小さなことでも積み重ねることで広がっていくのではないかと感じました。

被害に遭わないために、遭っても一人で悩まないために

周りの人を消費者被害から守るために、どんなことができるのでしょうか。

自分が相談する練習をしてみるのが効果的かなと思います。私の身近な例をお話ししますね。私たち消費生活相談員は講習で、「何かあったら消費生活センターに来てください」と言っています。その私が数年前に地元の消防施設を見学に行った際、119番に火事の通報をするという練習をしたときのこと。私は「住所はどこですか?」という音声にドキドキしてしまったのです。火事が実際に起きているわけでもないし、そこに書いてあることを読むだけなのに、なんで大人の私がこんなに上ずってしまうのだろう。ということは、私たちも「消費生活センターに相談してください」と言うのではなく、講座を聞きに来てくれる学生さんたちに消費生活センターに相談するロールプレイングをさせるべきではないだろうか。
それで去年の夏、消費生活センターに電話で相談するシチュエーションで台本を作り、群馬県の家庭科の教員の集まりで試しました。1人は消費者センターに相談する役割、1人は自分の身の回りに起きた事象を述べる役割。それが先生方に大いに受けたのですよ。そういうロールプレイングをさせることが大事だと、教員の方も気付いてくださったのですね。

私は去年の秋から中学・高校を回り、子どもたちに「なりきり消費生活相談員」を実践してもらっています。すると、中学2年、3年、高校1年生が大喜び。やはり相互に体験することで、消費者センターに電話をかけても、要領の悪い受け答えをしていると相談員に救済してもらえないということが分かったからです。
先日は中学校で、「「〇〇サイトを見てクリックしたら、スマホがフリーズしてしまった。お父さんに相談したら、『高いお金を請求されるよ』と言われたので、消費生活センターに電話をかけました」という設定でやりました。○○は自分たちで考えます。消費生活センターの相談員役の子が「もしもし、どうしましたか?」と台本を読むと、その中学生の子どもたちが真っ赤な顔して「ア、ダ、ル、ト」とか言うわけです。それでわーっと盛り上がる。その子どもたちは台本を読んでみて良かったと言うのです。そういうシチュエーションを実体験することが何かの被害に遭ったときに生きるだろうというのは、今回ずっと子どもたちとロールプレイングをやってきて感じたことです。
今後大学生協さんのほうでも単に注意啓発をするだけではなく、ロールプレイングの試みをしてはどうでしょうか。今、授業もリモートが主体ですが、リモートの利点を使って、例えばzoomのブレイクアウトルームでグループに分かれて台本を読ませ、感想を言い合わせるという方法もあるでしょう。

私は消費者被害に関して卒業論文を書いていたのですが、まさに相談の仕方が分からないからロールプレイングで台本を用意するのがいいのではないかという内容でした。自分では実践できませんでしたが、大学生は電話をするにも勇気がいると思うので、シチュエーションを一回でも経験しておくと大分違うだろうと感じます。大学生協でもぜひやっていけたらと思いました。
4月から成年年齢が引き下げということで消費者被害拡大が懸念されていますが、全国の大学生に向けてメッセージを頂きたいと思います。

「何かあったら消費者センターに」ということを伝えてくださいね。

本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

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