今月のナイスコメント(2025年8月)速報
2025年10月15日現在
8月に投稿されたコメント583枚から選考しました。選考は、大学生協の全国学生委員、出版甲子園学生メンバー(特別協力)、書籍担当職員、顧問をお願いしている先生で行いました。
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ナイスコメント:13件
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ペンネーム: | しゃんしゃん |
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大学・学年: | 早稲田大学 2年 |
書名: | 〈弱さ〉から読み解く韓国現代文学 |
著者: | 小山内園子 |
出版社: | NHK出版 |
「自らの意志とは関係なく、選択肢を奪われている立場」を<弱さ>と定義し、韓国文学を<弱さ>の観点から考察した本。まるで大学の講義を受けているよう。
以前読んだことある本も紹介されていたが、読んだ当時は韓国社会の事情や文学の歴史を知らなかったがために、なぜその本がヒットし、韓国文学において重要な位置を占めるといわれているのか理解できなかった部分が理解できた。実社会の問題に目を背けることなく、<弱い>立場に追いやられている人々を決して踏みつけないという姿勢で著された文学はどれも魅力的であると感じた。

ペンネーム: | どせい |
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大学・学年: | 東京大学 2年 |
書名: | 何かの家 |
著者: | 静月遠火 |
出版社: | KADOKAWA |
この本がどういう趣向の作品であるかを言及すること自体がネタバレになりそうなので、感想を書くのが難しい。しかし、あらすじにある通り、どこか違和感を抱えたまま物語が進んでいく不気味さを味わえる作品である。不穏な雰囲気の漂う田舎と「家」を巡る物語だが、文体は軽妙で簡単に読み進められる。暑い夏休みの一幕を描いているのに、読書中頭に浮かぶのは、冷たく湿った、仄暗い畳の間だった。

ペンネーム: | ぜう |
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大学・学年: | 西南学院大学 3年 |
書名: | ゲーテはすべてを言った |
著者: | 鈴木結生 |
出版社: | 朝日新聞出版 |
読書の面白さを実感したことのない人は、きっとこの本で沼に堕ちる。
読者とは究極の傍観者だ。めくるめく物語を、妨害も手助けもできずただ見る。活字表現を脳の中で五感に変換する手間もある。特有の疎外感と手間。しかし、それは我々を「神の視点」に導いてくれる。出来事はすべて開示され、秘密を我々だけが握っている。解釈も、我々に委ねられる。究極の傍観者にしか見つけられない真実。発見したときの罪悪感と興奮。「◯◯してはいけない」のタブーに隠れた秘密と罪を暴いた頃には、「究極の傍観者」の甘美さにすっかり中毒だ。

ペンネーム: | マカデミア |
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大学・学年: | 名古屋大学 1年 |
書名: | 本でした |
著者: | 又吉直樹 ヨシタケシンスケ |
出版社: | ポプラ社 |
本を読む理由を見たような気がした。
想像して、自分の中に創造して、空想して、妄想して、現実から少し離れて。そういう瞬間を求めて本を読むのだとしたら、この本は「本」だった。話1つひとつは重たくなく気楽に読める分、自分の中にも様々な空想が湧いてきて、なんとなく小さい頃に本を読んでいたときの気持ちが思い出される。
くすっと笑えて心がほっこりする ー 本でした ー

ペンネーム: | くりごはん |
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大学・学年: | 北海道大学 3年 |
書名: | 君が手にするはずだった黄金について |
著者: | 小川哲 |
出版社: | 新潮社 |
虚勢を張ったような、奇妙でおかしな行動を取る人が身近にいた時、どうするだろう。
変な奴だと一蹴してしまう?ここぞとばかりに笑い種にする?
違うのだ、少なくとも小川さんは。彼は想像の域のギリギリまで理解しようとする。他人の行動の動機や理由など、本当のことを言われない限り、想像で得た答えは可能性でしかない。それでも小川さんは考えることをやめない。他者を客観的に見つめ、自分をも見つめ直す姿勢に震えてしまった。
見栄や虚飾で包まれた人々を見て胸がざらつくのはきっと、私にも重なる部分があるからなのだろう。

ペンネーム: | エンゲルス |
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大学・学年: | 東京大学 1年 |
書名: | 現代人のための読書入門 本を読むとはどういうことか |
著者: | 印南敦史 |
出版社: | 光文社新書 |
バイト、部活、課題で時間を追われ、時間がないことを言い訳にして、読書をせずに漫然とスマホをいじる日々が続いていた。今回この本を読んだのは、そんな状況を脱却し効率よく読書をしたいと思ったからだ。しかし、この本にはタイムパフォーマンスの良い読み方を伝授するものではなかった。この本に書いてあったのは、「読書を楽しむ」ということについてだった。必ずしも何か学ぶ必要はなく、興味の向くままに本を選び読む。そうした子どもの頃の「純粋」な読書を思い出せたと思う。読書の原点を再度確認するきっかけになった。

ペンネーム: | チョコクロワッサン |
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大学・学年: | 岐阜大学 1年 |
書名: | ナナメの夕暮れ |
著者: | 若林正恭 |
出版社: | 文藝春秋 |
気にしいで、悩みがちで、考えすぎ。そんな人にぜひ読んでほしい。
テレビで見ている人気芸人。なのに読み進めるほど自分と似ている、近しい感情を持っているように思える。
「悩み続けられるということは、生命力であり体力なのだ」
この本を読み終わったとき、自分もきっとなんとかやっていける、そう思わせてくれたエッセイだった。

ペンネーム: | ショウ |
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大学・学年: | 神奈川大学 3年 |
書名: | おいしいごはんが食べられますように |
著者: | 高瀬隼子 |
出版社: | 講談社 |
あなたは学校のクラスに八方美人のような人はいただろうか。私はいました。正直、勉強はできないほうで運動は少しできる。しかし、持ち前の愛嬌と人付き合いで高い成績をとる人。さらに面倒ごとは何か理由をつけて回避する。真面目で不器用な人からすれば煩わしくて仕方ないがそんな人にも優しくしてくる。
「弱いが勝つ」一見矛盾しているが、これを体現する人間が学校に、会社に、世の中に存在する。
身に覚えのある苛立ちと妬みを含んだ一冊だ。

ペンネーム: | ひもり |
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大学・学年: | 名古屋大学 2年 |
書名: | 変半身 |
著者: | 村田沙耶香 |
出版社: | ちくま文庫 |
「信じること」は人間の本質の一部なのだと感じました。地球が丸いこと、ヒトの内側には様々な内臓があること、日本はかつて鎖国をしていたこと、全て事実として学びますが、実証するのは甚だ困難です。その為、私たちは「事実」であると「信じ」ます。「信じること」のおかげで、ヒトは集団で協力し繁栄することができました。この本では、常識や「事実」が信仰であること、「事実」の揺らぎに気付かされます。その、「事実」に隙間が生まれる感覚がおもしろかったです。

ペンネーム: | マズルカ |
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大学・学年: | 東京大学 大学院 |
書名: | おさがしの本は |
著者: | 門井慶喜 |
出版社: | 光文社 |
たかが本の話と侮ることなかれ。熱い、熱い、魂の込められた作品である。
それでいて軽快で、笑いが込み上げるやりとりから、ほんのり香る恋心の甘さまで、展開には事欠かない。そして、本題。なぜ、この世に図書館が必要なのか。なぜ、人は本を読むのか。
答えの一つが、本を愛してやまない者たちによる心からの叫びが、この本にはある。
書物は人間を助けるだけの存在、最終的な解決は人間が行う。思えば、数多の本に背中を押してもらい、それでも最後は自分で決めてきた。
最後にそれを認められた気がして、少し自分を誇らしく思った。

ペンネーム: | 西海道の等閑 |
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大学・学年: | 九州大学 2年 |
書名: | (読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法 |
著者: | 三宅香帆 |
出版社: | KADOKAWA(文庫) |
この本を読んでいると無性に悔しくなる。いかに漫然と小説を読んできたかものか。本書、著者が小説をどう読んでいるか、こう読むと面白いと語る読みやすい本である。しかし、例ととして出される小説がいけない。『雪国』『キャッチャー・イン・ザ・ライ』『老人と海』等々。私がせこせこ読んできたものばかりである。全然わかんねえと思いながら。あんなに面白かったのか。読み直すかなあ。

ペンネーム: | 寝グセ |
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大学・学年: | 名古屋大学 1年 |
書名: | THE UNIVERSE IN A BOX 箱の中の宇宙 あたらしい宇宙138億年の歴史 |
著者: | アンドリュー・ポンチェン 竹内薫 |
出版社: | ダイヤモンド社 |
先日部活の合宿先で、夜宿を抜け出し星を見にいった。広がる星空は息をのむ美しさだった。この空を見て単に「キレイ」の感想で終わらせずに星や銀河、宇宙の成り立ちやそこにはたらく力を考え出す(多分)のが宇宙論学者であり、本書の著者だ。彼の専門はコンピューターシミュレーションだが、本書に数式やコードは一切登場せず、先駆者の手法と功績を追うことで宇宙論を予備知識ナシで理解できるよう解説する。あの夜私も宇宙の謎に思いを馳せていたら宿に戻るのが遅れ、先輩に大目玉を食らったがそれはまた別の話。宇宙好きは必読です!

ペンネーム: | 碧烏 |
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大学・学年: | 東京学芸大学 1年 |
書名: | 林家木久蔵の子ども落語 その3 わんぱく少年・どろぼう編 |
著者: | 林家木久蔵 |
出版社: | フレーベル館 |
えー、泥棒と申しますのは、他人のものを盗む者のことを指しまして、忌み嫌われるのが道理でございます。ところが、そうとは限らないのが落語の面白いところ。一文無しの家に入ってしまったり、人が良すぎて逆に有り金を全て取られてしまったりと、何とも憎めない泥棒が沢山出て参ります。
義理人情を感じることの無くなってきた今日この頃、落語の世界に触れるとその温かさが身にしみる。冷たく硬い鱗が剥がれて、少しだけ優しい人間になったような心地がしてくるのでございます。落語口調が使いたくてたまらなくなるというおまけ付きで。
次点:3件
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ペンネーム: | そうめんインフルエンサー |
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大学・学年: | 慶應義塾大学 2年 |
書名: | コンビニ人間 |
著者: | 村田沙耶香 |
出版社: | 文藝春秋 |
人生経験の浅い私は、主人公や白羽が感じる疎外感や葛藤に共感することができなかった。おそらくそれは、自分が多数派であるという無意識の自信、そして少数派に対する知らず知らずの差別意識の現れなのだろう。社会の「当たり前」に苦しめられ、それを自分の問題ではなく社会の問題だと訴える白羽。そして、コンビニ店員としての生き方を自らの指針とし、マジョリティの一員になろうとする主人公。多様性の時代と謳われながら、マイノリティを排除しようとする現代社会において、どちらの生き方が正しいのか、考えさせられる小説だった。

ペンネーム: | げっこー |
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大学・学年: | 宇都宮大学 4年 |
書名: | 総理にされた男 |
著者: | 中山七里 |
出版社: | 宝島社文庫 |
これは、勇気と希望の小説だ。選挙投票率の低さ。今の政治、日本には未来がないと囁く人々。現代日本は、人々の政治離れが極めて顕著である。「もし、あなたが突然総理になったら?」そんなシミュレーション小説である本書は今の時代にぴったりの一冊である。一方で、現代日本がまさに直面している政治課題を多数取り上げており、フィクションであるがノンフィクション要素も楽しみながら学ぶことができる。はじめは誰しもが抱く「青臭さ」が世の中を動かすキーとなる。そんな「青臭さ」を抱く主人公の姿から、勇気と希望をもらえた。

ペンネーム: | らるる |
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大学・学年: | 東京大学 1年 |
書名: | 一汁一菜でよいという提案 |
著者: | 土井善晴 |
出版社: | グラフィック社 |
一汁一菜を耳にしたことはあったが、改めて本を読むと、これで良いのかと肩の力が抜ける。中食や外食で済ませられる現代において、私はそれではなぜか安心できない。家でシンプルな飾らない料理を食べることで、飾らずに私として生きることができる。一汁一菜ならば、手間暇をかけず、食事を楽しむことができる。食べることは生きることとはその通りだ。食事をおろそかにしがちな多忙な大学生が、食の大切さを知る良い一冊だ。