「WEB読書マラソン」の総評(2025年4月~2026年3月)
米山 高生

「読書マラソン」という活動は、大学生協の書籍部を中心に長く続けられ、読書好きの学生の楽しみとなり、また読書離れをした学生がふたたび書籍に戻ってくるきっかけにもなっています。この活動を簡単にいえば、読み終えた本について簡単なコメントを書き、生協書籍部に提出するとスタンプがもらえ、スタンプがたまると景品などがもらえるというものです。
この活動の原点は、大学生に読書という習慣を身につけてもらおう、ということです。初等中等教育でみれば「若者の読書離れ」はウソであるという研究(飯田一史『「若者の読書離れ」というウソ』平凡新書)がある一方で、大学生協による学生生活実態調査では、大学生の50%近くが、読書時間ゼロということが明らかになっています。ここで、「若者の読書離れ」がウソなのかホントなのかを議論することは本質的なことではありません。それは「若者」の定義によるからです。そこで大学生協にかかわっている私たちが考えなければならないことは、「若者の読書離れ」ではなく、大学生、とくに初年度の学生の「読書離れ」についてなのです。
初等中等教育では、読書の習慣化に力を入れています。そこで身につけた読書習慣を大学生になってからも継続していただきたいと思います。ところが大学に入学前は、あれだけ本を読んでいたのに、入学すると本をまったく読まなくなる人が少なくないのです。それは、長く厳しい受験勉強のためかもしれません。また志望大学に入学できたという解放感に流されてしまったためかもしれません。
ところで学生生活実態調査では、「読書時間ゼロ」に目が向きがちですが、読書を習慣としている学生の割合はけっして減っておらず、むしろ微増する傾向にあります。大学生に限っていえば、「若者の読書離れ」とは、大学生がおしなべて「読書離れ」をしているのではなく、読書好きとそうでない人に「二極化」するという傾向にあるといっていいのかもしれません。
さて、今回の「WEB読書マラソン」についての総評をさせていただきます。まずエントリー総数は、161大学、2,424名です。その内訳は、1年生が1,153名と約半分をしめ、続いて2年生が465名、3年生が292名、4年生が259名と、学年が進むにつれて少なくなっています。なお5年生以上が20名、大学院生は125名です(以上、いずれも2026年3月末現在)。
登録してくれた学生がすべてコメントを投稿してくれるとは限りません。実際の投稿者数は、120大学から609名です。この学生が7,044の投稿をしているということになります。全体としてみれば、エントリー学生のうち約4分の1がコメントを投稿し、投稿してくれた学生は平均で11本あまりの数のコメントをしてくれています。
エントリー登録者の数での全国トップ10をあげれば次の通りです。名古屋大学、龍谷大学、早稲田大学、東京外国語大学、東北大学、九州大学、大阪大学、北海道大学、東京経済大学、新潟大学、立命館大学。会員生協の皆様方の登録勧奨活動の熱心さがこの数字に反映しているのでしょう。コメント投稿数でみる順位は、かならずしもエントリー登録者の多さと一致しません。投稿数での大学順位ベスト10は次のとおりです。名古屋大学、早稲田大学、神奈川大学、北海道大学、京都大学、龍谷大学、新潟大学、東京大学、立命館大学、同志社大学。
エントリー登録数とコメント投稿数に一定の関連がありますが、個人のコメント投稿数について制限はないため、きわめて多数のコメントを書く学生が在籍する大学が上位にくる傾向があります。よって、「コメント投稿数が上位の大学には読書好きが多い」とは簡単に結論付けることはできません。大学別の順位は、参考程度にお受け取り下さい。
以上が、前年度の「WEB読書マラソン」の総評ですが、最後に、今後の方向について三点に絞って述べさせていただきます。第一に、対象期間が年度ごとになっていることにともなう問題への対処です。3月末でしめる場合、コメント大賞などの審査をして、発表するのは新年度になってしまいます。すると4年生が受賞した場合、社会人になってからということになります。大学生協という性格上、大学生協の組合員でいる間に表彰を行いたいと考えるのが自然です。そこで、今後は、年度方式をあらためて、12月末でしめ、2月初旬に審査し、3月中に表彰するという流れになるようになると聞いております。これにより、「WEB読書マラソン」の結果に関する情報提供は、会員生協の新学期活動に間に合うはずです。会員生協の皆様においては、新学期活動の一環に「読書マラソン」をしっかり位置付けていただき、大学生の読書の習慣化のために力を尽くしていただきたいと思います。
第二に、エントリー登録数とは、ある意味で、学生の「読書マラソンをするぞぉ」という決意表明なので、どんどん増えていただきたい数字です。エントリー登録をしたにもかかわらず、コメントを投稿していない人が多いですが、彼らが読書をしなかったというわけではないと思います。コメントできるのにしなかったという人が多く含まれているものと思います。エントリー登録者数は、読書マラソンという活動の認知と学生の皆さんの決意を示すものとしたら、もっともっと登録者数を増やしていただきたいと思います。会員生協の皆様にはご苦労をおかけするかもしれませんが、よろしくお願いいたします。
第三は、大学との関係にかかわることです。図書館の学生サービスと「WEB読書マラソン」は強い親和性があります。学食や購買は、大学になくてはならない福利厚生施設とし認識されている大学が多いと思いますが、これに対して、書籍部は教科書販売と学生の学習サポートとしか理解されていないのではないでしょうか。書籍部は、大学図書館に書籍を納入するばかりでなく、学生委員の図書活動などを通じて、図書館の学生サービスと連携していけるものと思います。図書館の職員さんたちは図書管理のプロですが、必ずしも今の若い世代の読書傾向をしっかりとつかんでいるとはかぎりません。選書に対して若者の読書傾向の情報を提供することは大変喜ばれることだと思います。さらに図書館で企画するビブリオバトルや読書会などの企画に、書籍部として可能なかぎり貢献するということも、書籍部が大学にとってなくてはならない存在になるためには重要です。大学それぞれの図書館事情があるでしょうが、学生の読書習慣の促進という共通課題をとおして、大学図書館と大学生協書籍部および学生委員がつながることによって、大学にも生協にも良い意味での相乗効果が得られ、ひいては学生生活の向上につながるものになって欲しいと願っております。
PROFILE
全国大学生活協同組合連合会 副会長理事
米山 高生 Takau Yoneyama
(2024年度大学生協の読書マラソン・ナイスコメント選考委員)

一橋大学名誉教授
前東京経済大学図書館 館長
一橋大学大学院商学研究科教授などを経て、2017年から東京経済大学経営学部教授(2024年に退職)。
著書に『リスクと保険の基礎理論』『物語で読み解くリスクと保険入門』ほか。生活経済学会会長、日本保険・年金リスク学会会長、アジア太平洋リスク・保険学会(APRIA)会長、総務省情報通信審議会委員などを歴任。金融行政モニター委員を務める。2022年に前島密賞受賞。

