今月のナイスコメント(2026年7月)速報
2026年9月2日現在
7月に投稿されたコメント705枚から選考しました。選考は、大学生協の全国学生委員、出版甲子園学生メンバー(特別協力)、書籍担当職員、顧問をお願いしている先生で行いました。
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ナイスコメント:4件
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| ペンネーム: | 寒月 |
|---|---|
| 大学: | 近畿大学 2年 |
| 書名: | 文系学部解体 |
| 著者: | 室井尚 |
| 出版社: | 角川新書 |
文系学部が徐々に縮小され、実用的な理系学部が優遇されるような風潮を、薄々感じている人も多い気がする。文系には文系の良さがあるし、理系には理系の良さがある。どちらもなくてはならない学問なのに、政府の一方的なカリキュラムの押し付けにより、大学の自由な世界が壊されつつある。本書が発行されたのは2015年。果たして、今の大学は本来の「自分の頭で考え、自分のやりたいことを決める。もしくはさまざまな可能性にチャレンジさせる」役割を果たしていることができるだろうか。この問題には、文系も理系も関係ない。

| ペンネーム: | のら |
|---|---|
| 大学: | 立命館大学 4年 |
| 書名: | 幻坂 |
| 著者: | 有栖川有栖 |
| 出版社: | 角川文庫 |
大阪というと、どこか騒がしく明るい町だという印象がぬぐえない。しかしこの作品を読むと、静かで穏やかな坂の街という大阪の別の側面が見えてくる。この作品は大阪の天王寺七坂を中心とした坂を舞台にした幻想小説がおさめられている。どこか不思議で薄暗い作品や、物悲しくも心温まる話など様々な感情を刺激する物語が読める。私はこの短編集を読んだ後、実際に四天王寺に行ってみた。少し奥まった場所にある坂たちが、歴史と日常を感じさせてくれた。新たな大阪観を開拓するにはうってつけの一冊である。

| ペンネーム: | ワイ |
|---|---|
| 大学: | 岐阜大学 2年 |
| 書名: | ドン・キホーテ |
| 著者: | ミゲル・デ・セルバンテス・サアベドラ 牛島信明 |
| 出版社: | 岩波少年文庫 |
狂気に囚われているのは、ドン・キホーテか、我々か。読み進めるうちに、その境界がどんどん曖昧になる。以下は、最終的に行き着いた、私の考察である。『人はみな、自分が持っている狂気を他人に見られないよう必死に隠しているが、一部の人はそれをたまたま露出している。人はどうしてその人を異端とし、責め、嘲笑できるだろうか。本当の狂人は、マイノリティである「狂気じみた人」ではなく、マジョリティである「狂気を非難する人々」なのかもしれない。』

| ペンネーム: | Vu |
|---|---|
| 大学: | 名古屋市立大学 1年 |
| 書名: | 翻訳をジェンダーする |
| 著者: | 古川弘子 |
| 出版社: | ちくまプリマー新書 |
思い出してほしい。ハリー・ポッターのハーマイオニーが、どんなふうに喋っていたか。翻訳された海外の本で、女性はとても「女らしい」言葉を話しているのではないだろうか。普段自分たちが、本を読んだり映画を見たりして、違和感を感じていない部分には、ジェンダーに関する固定観念が存在している。そうした固定観念を作っているのが、翻訳であるということについて指摘し、フェミニスト翻訳、社会に抗する翻訳の可能性を探っている本書をぜひ読んでみてほしい。
次点:8件
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| ペンネーム: | tori_py |
|---|---|
| 大学: | 京都大学 1年 |
| 書名: | モモ |
| 著者: | ミヒャエル・エンデ 大島かおり |
| 出版社: | 岩波少年文庫 |
「自分の時間を大切にする」は僕の今年の抱負だ。大学入学後、人間関係の忙しなさに焦燥した時に立てた目標だが、本作はこの言葉のもつ別の側面に気づかせてくれた。作中に登場する、時間を奪う「灰色の男たち」に操られ、無駄を削ぎ落として生活する人々は、正にタイパを求めSNSや要約情報で時間の「節約」に追われる現代人の鏡写しで慄然した。時間を節約しても、手元には自分の為の時間は残っていない。『時間は、ほんとうにじぶんのものであるあいだだけ、生きた時間でいられる』。この言葉を胸に、生きた自分の時間を大切にしたい。

| ペンネーム: | かわたけ |
|---|---|
| 大学: | 北海道大学 1年 |
| 書名: | 福祉は誰のため? |
| 著者: | 竹端寛 |
| 出版社: | ちくまプリマー新書 |
福祉は自分でどうすることもできない「かわいそう」な人を救うものとして捉えていないだろうか?この本を読むとそうした思い込みが破壊される。最も印象に残ったのは、筆者が桜井智恵子の著作から引用をして能力主義を覆すような考察をしている部分だ。「能力とは分かちもたれて現れたものであり、それゆえその力は関係的であり共同のものであり、能力は個に還元できない」という考えは、一生戒めとして覚えておきたい。ケアに興味などないという人も一度読んでみることを勧める。『他者の合理性を「聴く」』など、広く示唆に富むから。

| ペンネーム: | いちごおはぎ |
|---|---|
| 大学: | 熊本大学 4年 |
| 書名: | 私たちの世代は |
| 著者: | 瀬尾まいこ |
| 出版社: | 文春文庫 |
高校の卒業式で、担任がこんなことを言った。「コロナ世代という言葉に負けるな。君たちは高校生でしか出来ない経験を充分やってきた」正直私は腹が立った。コロナに奪われた経験がたくさんあると思っていたから。この本を読みながら、高校生の頃にコロナが流行していなかったら、私はどんな学校生活を送っていたのだろうと考えた。冴と心晴が物語で語っていたみたいに、私はコロナ禍で不便なことと同じくらいに印象的なこともたくさん経験した気がする。○○世代という言葉に腹が立ったときは、この本を読んで、元気をもらってほしい。

| ペンネーム: | ポッカレモン |
|---|---|
| 大学: | 北海道大学 大学院 |
| 書名: | 海峡の光 |
| 著者: | 辻仁成 |
| 出版社: | 新潮文庫 |
函館競輪場に入ったことはないが、真向かいに高い壁で囲まれた刑務所の存在は知っている。本作の舞台である。
刑務官の「私」のもとに、子供のころ自分をいじめた花井修が入所してくる。花井は優等生を猫被る悪質な人心掌握者であり、その性格は今も変わっていない。主人公もまた、刑務官という権威の皮を被り、己の煩悶と戦う。
青函連絡船や函館山などの情景描写が等身大だ。地図を見ながら想像してほしいのだが、函館は大地よりも海と空の方が広い(当たり前のことだけれど)。私は曇天の函館が苦手で、その理由が少しわかった気がする。

| ペンネーム: | ゆず |
|---|---|
| 大学: | 徳島大学 1年 |
| 書名: | 変身 |
| 著者: | フランツ・カフカ 高橋義孝 |
| 出版社: | 新潮文庫 |
「不条理文学」と聞いて身構えて読み始めたが、全然怖くない!というかめちゃくちゃ面白い!!毎ページ笑えて、特にグレーゴルが虫になった場面は「早く家族に助けを求めなよ!」とツッコミが止まらなかった。
しかし、最後まで読んでハッとした。彼はあんなに家を支えていたのに、実は家族と上手くいっていなかったのでは……?それこそが「不条理」なのだ。
いつか私が虫になってしまったとき、ちゃんと家族に助けを求められるよう、日頃から家族仲は良くしておこうと心に誓った。

| ペンネーム: | まなりん |
|---|---|
| 大学: | 神奈川大学 2年 |
| 書名: | 愛するということ |
| 著者: | エーリッヒ・フロム 鈴木晶 |
| 出版社: | 紀伊國屋書店 |
本書は、愛とは受動的な感情ではなく、能動的に身につける技術であると説く。実は私は、大学の同級生に本書を薦められていながら、約8か月も読まずに放置していた。「せっかく薦めても読まない人がほとんどだが…」と書きながら思い出したのである。慌てて読み始めたところ、愛を実践するには人格を育てる必要があり、そのために規律・集中・忍耐・最高の関心が求められるという主張に大いに考えさせられた。私は日頃から気になる点に目が向くことが多いので、その同級生は私に足りないものを見抜いて本書を薦めてくれたのかもしれない。

| ペンネーム: | せんひき |
|---|---|
| 大学: | 弘前大学 4年 |
| 書名: | 夜行 |
| 著者: | 森見登美彦 |
| 出版社: | 小学館文庫 |
小さな頃、夜の貨物列車が苦手でした。踏切の音や列車の走る音は聞こえるのに、車窓のない貨物列車は闇と同化し、その姿をうまく捉えることができません。それは、世界が闇に飲み込まれていくような感覚でした。
本書では、六人の男女が旅先で体験した不思議な出来事が語られていきます。それらは恐ろしくもあり、どこか魅入られるようでもあり、あの頃に感じた夜の得体の知れない怖さを思い起こさせました。
自分という存在の輪郭が曖昧になり、世界を包む深く広い夜をそっと覗き込むような感覚を味わえる一冊だと感じました。

| ペンネーム: | 氷刄 |
|---|---|
| 大学: | 龍谷大学 2年 |
| 書名: | おいしいごはんが食べられますように |
| 著者: | 高瀬隼子 |
| 出版社: | 講談社 |
“食”と人間関係。描写がリアルで生々しい。心の声と実際に喋っている内容の乖離。気持ち悪さが心を圧迫する。社会で形成される”弱者は守らなければならない”という空気感。施しは善意なのか悪意なのか。心の読めない相手の行動ほど怖いものはない。歯車が噛み合っているようで噛み合わないまますれ違っていく。吐き出したいけど吐き出せないもどかしさ。賛成も反対もできずに嫌な共感ばかり。言葉が刺さりすぎて気分が悪くなる。みんな狂っているように見えて、案外これが正常なのかもしれない。きっと、私の心もブラックに近いグレー‥。



