新学期が始まり約3カ月が経過します。大学生協では、毎年、この時期に新入生の生活リスクへの対応を念頭において、健康・安全の予防提案活動を推進しています。
大学生協共済連のデータによれば、昨年の新入生(2014年入学)には、4月~6月の3カ月で、事故955件、病気382件(計1337件)の共済金が支払われています。事故による給付は約4件に3件(事故の構成比73%)がスポーツ事故693件で、それに交通事故149件(同16%)が続きます。交通事故のうち自転車運転中の事故は97件で、交通事故の約3件に2件は自転車運転中の事故でした。病気では肺に穴があく気胸71件を筆頭とする呼吸器系の病気が103件(病気の構成比27%)でトップ、次が消化器系の病気101件(同26%)の順です。呼吸器系と消化器系で病気全体の過半数(53%)を占めます。病気には精神障害11件、急性アルコール中毒1件も含まれています。
今年(2015年)は4月期に新入生への共済金を給付した件数は126件でした。この内訳は気胸等の呼吸器系の病気で1日以上入院した件数20件、胃腸炎・虫垂炎等の消化器系は10件にも上ります。
このように、大学生協では、毎年、共済金支払のデータをしっかりと分析して、効果的な予防提案活動の実践のために活用しています。その背景には「新入生の病気・ケガ・事故を一つでも減らしたい」という強い想いがあります。
各大学生協でも独自のとりくみを実践しています。例えば、早稲田大学生協では、毎月の共済給付の状況を直ちに取りまとめてホームページ等で幅広く報告しています。1カ月で130件、うち病気による入院が37件もあります。事故入院の約3倍にあたります。こうした事実を丁寧に分析することにより、新学期における学生の生活リスクを知ることができます。同生協では「共済金を受け取った方の声~たすけあいアンケート~」や「共済担当窓口の声」をあわせて掲載しています(図1)。
京都大学生協では、ホームページの「新入生をサポートするページ」を通じて『知っておきたい京大生活 リスクの実態』と題して、京大生が直面するリスクの実態について数値にもとづく具体的な報告を行っています。
これらのとりくみの背景には、新入生はもちろん、すべての学生に病気や事故に遭ってほしくない、という各大学生協の「現場」で学生と接する担当者等の強い願いがあります。
毎年、新学期には未成年の多くの新入生が大学に入学してきます。大学生協では、このタイミングに「未成年飲酒やイッキ飲みを防止するとりくみ」や「お酒とのつきあい方」に関する情報発信をしています。未成年の飲酒は法律違反であるので当然ですが、年齢に関係なく「お酒」と真摯に向き合って「お酒」によって生じるプラス・マイナスの影響を考え、行動することが大切であると思っています。
弘前大学生協では大学とも連携して「STOP!未成年者飲酒 STOP!イッキ飲み」というタイトルで「未成年はお酒を飲まない! 飲ませない! イッキ飲みはしない! させない!」とりくみを積極的に行っています(図2)。
また、アルコールをはじめとする依存性薬物問題の予防に積極的に取り組んでいる「アルコール薬物問題全国市民協会(ASK)」の協力会員として『イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン』のポスター掲示・チラシ配布等を実践しています。
以上のように、大学生協では大学をはじめとするステークホルダーの皆さんとの連携も強く意識しながら、学生の生活リスクに備えるとりくみを実践しています。ぜひとも大学生協の飲酒事故を予防するとりくみにもご注目ください。
大学生協共済連では、2014年度の方針に明確に位置づけた「自転車事故防止のとりくみ強化」を具現化する目的で『自転車事故防止キャンペーン事例』を冊子にまとめて、全国の大学生協で自転車事故防止提案活動を行う行動提起を行っています。同冊子は、2014年度に実施した自転車事故防止活動コンクールの審査の過程で最終選考に残った10件のエントリー事例を教訓として残し、広めることを目的に作成されています(図3)。
本年3月18日に兵庫県で全国初の「自転車の購入者に保険の加入を義務付ける条例」が制定され、今後、ますます社会的にも注目が集まると思われます。大学生協ではこうした動きも視野に入れて、すべての大学で自転車事故の防止提案活動を積極的に展開していく予定です。「一人の学生も自転車事故の加害者にも被害者にもさせたくない」という強い想いが背景にあります。
また、自転車事故以外の「学生生活24時間365日」の他人に対する賠償事故や学生本人のケガや病気のリスクにも対応できる大学生協の学生総合共済・学生賠償責任保険(示談交渉サービス付帯)へのご加入を提案しています。
以上のように大学生協では事故に遭わないための「事前」、事故に遭ってしまった「事後(保障)」の双方のとりくみを提案しています。それは、大学の皆さまとも連携できるものと信じております。ぜひとも大学生協のとりくみにご注目ください。
これまで大学生協では、各種の結果の分析や共済・保険の支払実績の分析等を通じて、「学生の生活実態」を目に見える形でお示ししてきました。それらは、大学生協のホームページに整理されています。大学生協 調査 や大学生協 たすけあい情報室のキーワードでWEB検索していただけましたら、さまざまな情報を入手していただくことが可能です。ぜひともご覧ください。
大学生協では、日常的に学生と接しておられる大学の皆さまとともに学生の健康・安全に関するとりくみを推進していきたいと考えています。お気づきの点がございましたら、何なりと大学生協へお寄せいただけましたら幸いです。
(大学生協共済連 藤本 昌)