熊本大学生協
赤レンガが美しい五高記念館
熊本大学では、実験や実習中に発生するケガ・賠償事故に備えるため、全学生に対して、学生教育研究災害傷害保険(以下、「学研災」)と学研災付帯賠償責任保険(Aコース)(以下、「学研賠」)への加入をお勧めされています。また、学部・学科によっては、上記以外の推奨する保険商品を指定し、その必要性を具体的に示しながら学部・学科の全員が加入するよう学生への案内をされています。上記の案内には大学生協が取り扱う「学生総合共済」(以下、「共済」)および「学生賠償責任保険」(以下、「学賠」)についても記載されております。熊本大学では、①大学生協の「共済」・「学賠」か②学研災・学研賠のいずれかを選択し、加入することをお勧めするという案内が全学生に対して行われています。この背景には「熊本大学に在籍するすべての学生を無保障状態にしない」という強い想いがあり、生協も同じ想いです。
熊本大学生活協同組合(以下、生協)では、①共済加入状況や給付の実績・実態などについて日常的に大学の関係各署への報告、②病気やケガ・事故の予防につながる企画の実施(事前に大学と相談し、協力を得ながら進めるとりくみ)などを行っております。これらのとりくみにより、熊本大学の複数の教職員の方からは、〝大学生協の「共済」・「学賠」を勧めることは学生にとってメリットがある〟〝大学生協の「共済」・「学賠」は、大学にとっても役立つものだ〟という声をいただいています。このように、生協では、熊本大学の中に学生のための生協の「共済」・「学賠」の認識が広がり、少しずつ理解され、大学の案内に掲載されるようになっています。
学生保険についての確認書
一方で、実験・実習を担当されている教員の方は、多忙な業務の中で授業開始前までに学生全員の保険加入を確定させなければならず、「保険加入の確認作業や学生・保護者への案内、説明等に膨大な時間を費やし、苦労されている」とお聞きしています。 熊本大学では、生協が案内する「共済」・「学賠」に過半数の学生が加入しているのですが、大学として加入の内容の確認ができておらず、一人ひとりの学生に加入確認書類を提出させて、把握するという手法を取らざるを得ない状況となっています。また、実験・実習をする学生が加入する保障は学研災、学研賠など大学が案内する保険だけではなく、大学生協の「共済」・「学賠」でもよいため、保険(共済)の加入状況の確認作業が複雑になり、手間がかかるようになっている現実があります。これらの状況を受けて、「熊本大学生協にも確認作業に協力してもらい、全ての熊本大学生になんらかの保障を付けることを実現させて欲しい」などの要望が寄せられるようになりました。
前述のような状況の中、生協では、学生の保険(共済)加入状況の確認および実験・実習を担当する教職員の作業軽減を達成できるようなとりくみを行っています。
熊本大学は、数年前に学生証と生協組合員証が一体化しました。個人情報の取り扱いに関する覚書を交わした上で、生協の組合員データベース上には入学者全員の学生番号を持つようになりました。生協は、4月入学式以降、入学者全員の「共済」・「学賠」の加入状況を確認し、学部・学科ごとに情報を整理します。その後、学生番号をキーにして未加入者を確認し、大学の保険担当部署へ加入状況を伝えます。このように、大学が案内する保険の加入状況に加え、生協が案内する保険の加入状況を担当教職員へ伝えることで、実験・実習開始前に保険未加入者に対し加入案内を行っていただくことができるようになりました。このことにより担当教職員の方は、早期かつ効率的に作業が進められるようになりました。
しかし、まだ多くの学生が「共済」・「学賠」の加入確認のため生協の加入窓口を訪問されているため、より改善の余地はあります。熊本大学生協の共済担当者に関しても、その都度、共済システムや加入申込書を確認し、確認書を作成して渡すという作業が発生しているため、大学・生協が双方の業務負担を軽減するためにも協力体制を確立することが大切です。今後は、本来の目的である〝全ての学生を無保障状態にしない〟とりくみを進めることは、実務に関わる人々の困難の緩和と、成果を残せる仕組みに作り替えていく必要があります。生協では、大学の学生の保険担当部署および各学部の教務課、生協が連携する仕組みを作る中で、これらの課題が解決できるよう継続して提案を行います。
「学生教育研究災害傷害保険」「賠償責任保険」のご案内
熊本大学附属図書館
熊本大学医学部保健学科看護学専攻では、看護実習中等のリスクに備え、学研災への加入は推奨、看護学生向けの保険商品への加入は必須とし、案内を行っています。一方で、近年は、多くの学生が大学生協の「共済」・「学賠」へ〝入学時点で〟加入しており、学研災や看護学生向けの保険商品への加入の確認がスムーズにできない状況が発生しています。2014年に看護実習を担当される先生より質問・相談があり、全国大学生協共済生活協同組合連合会(以下、共済連)の専門スタッフ同席のもと状況の確認をしたところ、さまざまな実態がわかりました。
看護では、実習前の保険加入確認を行うが、提出された回答には「その他の保険に加入済み」として共済や学賠が記入されていました。しかし、学生本人は加入内容をほとんど理解していないため、本当にそれらの保険に加入しているかどうか正確につかめない状況にあります。また、生協が案内している「学賠」で看護実習中の事故等を十分にカバーできるのか、よくわからず、学生や保護者から質問があった際、明確に回答ができない状況でした。 この懇談により、共済連の専門スタッフからは「共済」・「学賠」で対応できる範囲を先生方に対して説明し、理解していただくことができました。共済連としても、学生がどのような保険に入っているかを十分に把握できておらず、学生が加入する保険の組み合わせによって保障される内容が全く異なることに気付くことができました。
また、同時期に、医学部医学科にも懇談を働きかけ、臨床実習時への対応等についてヒアリングを行い、医療実習生が行う医療行為のガイドラインが改定された場合、大学生協の「共済」・「学賠」、そして民間の保険ではどこまでカバーできるのかを、共済連の専門スタッフに協力いただき大学へ情報提供を行いました。今後も、相談窓口として解決策等の協議を継続して進めていきます。
最後に、担当の先生と事務職員の方からは、臨床実習の概要や発生したトラブル等、多くの実態を共有していただきました。「日々変化する中で発生するリスクに対し、万全の準備を行って学生を送り出したい」という教職員の皆さまの想いに、しっかり応えられる保険商品等を提案していくことが求められています。
(専務理事 深見隆久)