1981年にスタートした大学生協の学生総合共済が、2019年4月から新制度に大きく変わります。今回は、前回の流れを受けて改定のポイントを中心に新制度の特長をご紹介します。詳しくは、大学生協共済連のホームページ等をご参照ください。
2019年度版『大学生協の学生総合共済』
新制度の根底には、「〝無理のない掛金〟で、大多数の学生に共通する〝いざというとき〟に備える必要最低限の保障・サービスを提供する制度」という設計理念があります。〝無理のない掛金〟とは、ひと月あたり生命共済1200円(1日あたり40円)、学生賠償責任保険150円(1日あたり5円)を目途にしています。〝いざというとき〟とは、「学業継続に支障をきたすとき」と読み替えてご理解ください。具体的には、学生の後遺障害、長期入院・手術、心の病、扶養者の万一(就学費用への影響)、高額な賠償事故を起こして加害者となってしまった場合などを想定しています。
また、学生特有のリスクである教育研究活動中、インターンシップ(個人申込含む)、ボランティア、アルバイト中の事故等への十分な備えを念頭においています。さらには、今回、制度に付帯するサービスも充実させました(生命共済加入者と保護者が無料で利用可能)。具体的には「からだとこころの健康相談+くらしの相談(一人暮らしでのトラブル、ストーカー等)」に専門スタッフが、24時間365日お応えする〝いざというとき〟に遭わないための予防サービスといえます。
一方で、私たちは、大多数の場合、学生生活にとって大きな支障をきたすとは考えにくい病気の通院保障(こころの病を除く)や高額の死亡保障などには掛金を使わない考え方に立っています。あくまで「卒業までの学業継続に支障をきたすリスクに合理的に備える」ことを重視しているからです。
以上のように、大学生協の新制度は営利を目的としない民間の保険とは異なる「協同組合ならではの真に学生のための制度」であると自負しております。なお、生命共済については、学研災・付帯学総・他の共済等とは関係なく保障されますので、他の保険等にご加入の場合でも、「より充実した学生生活リスクへの備え」が実現できる、との考え方に立って制度を設計しております。
今回は過去に類をみない大幅な改定ですが、以下の三つの「目玉」となる改定に絞ってコメントさせていただきます。
⑴ 「こころの早期対応保障」の新設
全国大学保健管理協会や全国大学メンタルヘルス学会の賛助会員でもある大学生協共済連では、この間、消極的な休・退学、自死等にもつながる「心の病」への対応について、保健管理施設・学生相談室等で悩める学生と寄り添っておられる先生方にご助言を求めてきました。具体的には、「現在の生命共済でも精神障害による入院は保障対象だが、もっと早期に重篤化しないための対応が必要、何とかできないか。SNS環境が普及し、リアルな人間関係への影響が懸念される現在の学生の生活環境を考えればなおさら」、「入院後の復学は大半が極めて困難と言わざるを得ない。学内にある相談窓口を利用したり、身近なクリニック(精神科・心療内科)を受診する等の最初の一歩のきっかけになるような保障やサービスをつくれないか」といったアドバイスをいただきました。これが、今回の「こころの早期対応保障」の新設の背景です。ご助言をいただきました先生方には、この場を借りて、お礼を申し上げます。
また、関連するストーカー被害に関する保障もあわせて検討しました。こちらは、生命共済加入者全員対象の「ストーカー被害見舞金」として新設いたします。
⑵ 「事故通院1日目」からの保障の実現
現在の生命共済は、通院保障は「通院のみ、または入院・通院あわせて5日以上の場合」に1日目から保障対象とする基準となっています。この基準にある条件を撤廃して、単純に「1日目から」保障対象といたします。実は、この改定に至るまでには、議論がございました。具体的には「学業継続に支障をきたすとは思えない、ちょっとしたケガの保障に掛金を使ってよいのか」と「短期の通院でも損傷個所によっては学業継続に支障がある場合があるし、初診料への負担やアルバイトができなくなることへの対応も必要」という双方の主張です。現役の学生の意見も参考に、最終的には後者の選択をするに至りました。ここで強調したい点は、単に他の商品並みに保障を厚くするだけの発想ではなく、「本当に大多数の学生にとって学業継続との関係で必要な保障なのか」をしっかりと議論した経過があるということです。「自分たちが出し合った掛金をどのように有効に使うべきかの議論が反映された改定である」とも換言できます。
⑶ 「一人暮らしの保障」の充実
現在、自宅外生向けには学生総合共済(火災共済)をご案内しておりますが、2019年度からは、学生賠償責任保険と火災共済を「学生賠償責任保険(一人暮し特約)」として一つの保障にまとめて、わかりやすく充実させます。「現在、火災共済に加入し、学生賠償責任保険に加入していない加入者は約1万6000名もおり、水もれ事故で家主には賠償できても、階下の人の家財は保障できない」「火災共済は、一般的な賃貸住宅向け火災保険と比べて補償範囲が狭い」の二つの改善が必要不可欠、というのが主な理由です。
この改定により、借家人賠償保障では、現在の火災(失火)、破裂・爆発、水もれ、凍結による破裂に加えて、学生(被保険者)の過失による破損等も含めて幅広く保障できることになります。また、「示談交渉サービス」が付帯されますので、家主に対しても、階下等の他人に対しても、一つの保険(学生賠償責任保険)で示談交渉を代行できるように設計しました。これで、学生・家族の心の負担が大幅に軽減できると考えています。今回の改定では、家財の保障等も合わせて充実を図り、適正な保険料で「大学生協らしい一人暮らしの学生のための独自の保障・サービス」を実現させることができたと自負しております。
学生総合共済のマスコット「タヌロー」
最後に、私たち大学生協の学生総合共済のマスコット「タヌロー」とともに、「2019年度版のパンフレット(表紙)」をご紹介します(写真参照)。 「大学生協の2019年度からの新制度」に関心を寄せていただき、他の保険等とも比較・検討の上、2019年度以降、貴大学等の指定・推薦制度として位置付けを積極的にご検討くださいますようお願い申し上げます。また、新制度についての詳しい説明をご希望の場合は、各大学生協までお申し付けください。個別に対応させていただきます。
(大学生協共済連 藤本 昌)
『Campus Life vol.56』より転載