『大学生協の保障制度からみた大学生の病気・ケガ・事故 2018』
今回は、『年次報告2018』をご紹介します。それは『大学生協の保障制度からみた大学生の病気・ケガ・事故に関する報告書です。具体的には、2018年4月1日〜2019年3月31日の1年間の私どもの共済・保険の支払状況や学生生活無料健康相談テレホンの利用状況を分析したものです。【大学生の病気・ケガ・事故2018】をキーワードにWeb検索していただくと詳細に内容をご覧いただけます。ぜひともアクセスしてみてください。
いきなりで恐縮ですが、『年次報告2018』掲載のデータより【〇×式クイズ】を「三問」出題させていただきます。
【第一問】「学生の病気入院(1日以上)は、ケガ入院の2倍以上の件数である」
【第二問】「学生の急性アルコール中毒で入院(1日以上)は100件以上である」
【第三問】 「学生の精神障害(心の病)による平均入院日数は50日以上である」
いかがでしたか? 正解はいずれも「〇」です。少し解説させていただきます。
【第一問】病気9859件、ケガ3296件、病気入院はケガ入院の約3倍です。学生は圧倒的に若年層が多く大きな病気などしない、といった先入観をお持ちにならなかったでしょうか。私たちは、病気であれ、ケガであれ、学業継続を大きく阻害する要因である入院の保障を重視しております。病気とケガをなるべく区別することなく、保障を設計している背景でもあります。また、「からだとこころに垣根を設けない」という考え方が根底にあります。なぜなら、病気であれ、ケガであれ、からだであれ、こころであれ、学業継続に支障をきたす生活リスクという点では、何ら変わらないと考えているからです。
【第二問】急性アルコール中毒による入院は169件です。この背景には、新歓コンパ、クラブ・サークルでの飲み会などがあると思われますが、お酒についての正しい知識と現場で対処するちょっとした勇気があれば、100%防ぐことができたのではないでしょうか。学生たちが主体的に「イッキ飲み防止」等の予防活動に取り組む背景でもあります。大学の皆さまとも協力させていただき飲酒による事件・事故を撲滅させていくことも、私たちの重要な予防活動であると考えています。
【第三問】学生の精神障害(心の病)による平均入院日数は52.6日です。精神障害を除く平均入院日数は8・8日ですので約6倍もの差があります。私たちは、このデータに裏付けされた実態より「心の病をなんとか入院に至るまでに保障対象としないと重篤な事態は回避できない」との想いから、2019年度より『こころの早期対応保障』を新設しました。具体的には、2019年度からは「精神疾患の治療を目的として共済期間中に病院または診療所に通院し、公的医療保険制度における療養の給付または療養費の対象となる精神科専門療法の診療を始めて受けた場合」でも保障対象とする保障となりました。この背景には、全国の大学保健管理施設、学生相談室等の先生方からのご助言がありました。
※『こころの早期対応保障』は、2019年4月〜9月に304件の給付がございました。
以上三つの「◯×式クイズ」はほんのさわりですが、私たちは、大学生協の保障制度で実際に支払われた実態を分析して、将来の病気やケガ・事故の予防活動や学業継続を阻害するリスクに対処できる制度開発などに活かしています。
文部科学省の学校基本調査によれば、2019年5月1日現在の日本の高等教育機関に在籍する学生は約291.9万人です。一方で、大学生協共済(生命共済)の加入者は約67.6万人です。すなわち日本の学生の1/4弱(約23%)が大学生協共済(生命共済)に加入していることになります。これらより『年次報告2018』の数値は、概ね日本の学生の平均値と評価できると考えています。まずは、その視点でデータをご覧いただけましたら幸いです。
大学生協共済は2019年度より大幅な制度改定を行いました。その制度設計コンセプトは「少ない掛金で学業継続に支障をきたす保障を優先して実現させる」です。今後も過去の給付(支払い)を徹底的に分析し、〝学生ファースト〟の視点でその時々の学生の生活リスクに見合う制度の企画・開発に活かしてまいります。
ぜひとも大学での学生の安全管理の推進等にお役立ていただければ幸いです。お気付きの点やご要望などがございましたら、何なりとお寄せください。
(大学生協共済連 藤本 昌)
大学生協の保障制度は、
2019年より『こころの早期対応保障』などが新設されました。
今後、順次、支払状況を公開してまいります。
『Campus Life vol.61』より転載