大学生協の保障制度

【スペシャルトーク】子どもの自己肯定感を高めるためには?長所を認め、伸ばしてあげること

河野美江(島根大学保険管理センター教授)

松本一郎(島根大学大学院教育学研究科教授 島根大生協理事長)

大屋光宏(島根県高等学校PTA連合会会長)

まもなく大人になろうという高校3年生〜大学生に、保護者はどのように接すればよいのか?さまざまな経歴を持ち、現在では島根で高校、大学の教育に関わる3人の話をお届けする。

島根大学 保健管理センター教授
河野 美江氏

こうの・よしえ 佐賀医科大学卒業。医学博士。日本産婦人科学会専門医、日本臨床細胞学会専門医、臨床心理士。病院勤務を経て現職。一般社団法人しまね性暴力被害者支援センターさひめ理事。正しい性の知識の普及に努める。

島根大学大学院 教育学研究科教授(島根大生協理事長)
松本 一郎氏

まつもと・いちろう 島根大学大学院研究科終了。博士(理学)。民間企業にて地球資源・環境問題についての調査・研究に従事した後、島根大学教育学部に赴任。環境教育・防災減災教育・理科教育などの研究を行う。

島根県高等学校PTA連合会会長
大屋 光宏氏

おおや・みつひろ 名古屋大学農学部卒業。愛知県職員として勤務した後に島根に戻り、専業農家を継ぐとともに住民として地域の発展に尽力。今夏、開催される第70回全国高P連大会島根大会実行委員会会長も務める。

2極化、3極化が進み、多様な考えの高校生が増えている 

――今どきの高校生についての印象をお聞かせください。

松本
授業や研究発表の場で高校生たちと接する機会に感じることですが、自分の考えをアウトプットする時に、社会に対して期待感が低くなって適当に流すような生徒さんが増えているように見えます。一方でやりたいことをしっかり見つけて、社会に出て役に立ちたい、もしくは自分の好きなものを深めたいという気持ちを持った生徒さんも多く、昔に比べて2極化、3極化しているように思います。 
大屋 
人間の本質は昔と変わらないという思いがありますが、最近の高校生は自己アピール、プレゼンテーション能力が非常に高いと感じています。成人年齢が18歳になり、置かれている環境が変化してきていることや、授業内容にも主権者教育やSDGsなどが盛り込まれるようになったからだろうと思います。反面、昔より幼稚な考え方をする生徒も多いと聞きますし、家庭には一昔前の価値観があったりしますので、一言で評価はしづらいですね。 
河野 
私の講演会に来る高校生を見ていると、おとなしくてお行儀がいいという印象を持ちます。空気を読むということでしょうか。加えて初めから「理系は無理」という女子が多いのが気になっています。諸外国では自然科学分野の研究者の内、約半数が女性ですが日本では全体の2割弱です。日本では昔から女性は論理的思考ができないと言われていて、今の高校生もそれを引き継いでしまっているように見え、すごく残念。大きな損失だと思っています。

「女子だから」と可能性を閉ざさないでほしい

――子供達にはどんな高校生活を送って欲しいですか?

河野
私は大学で男女共同参画推進を担当しており、女子中高生向けに理系のおもしろさを伝える授業をしてきました。理系の女子大学生に対して初めは「まじめ、おしゃれじゃない」という印象を持っている女子中高生が多いのですが、実際に交流してみると「素敵だな、私も理系に進もうかな」と変わっていくんですね。私が産婦人科医になるとき、「家庭とどう両立するのか」と反対されましたが、やろうと思えば何でもできる思います。男子でも同じですが、やりたいことをまず見つけて周りの目を気にせずにチャレンジしてほしいです。特に女子に対しては、「女子だから」といって可能性を閉ざさないでほしいと思います。
松本 
理系女子のお話、賛同します。自然は研究に対して、男女に関係なく対等に結果を返してきます。理系に興味を持って取り組むのは自信につながるので、もっと理系に目を向けてほしいです。私は理科や社会科のさまざまなテーマの研究に取り組む高校生とお話する機会がありますが、高校生は、あるテーマのおもしろさを知ると、その子たちはどんどん先に進んでいくんですね。そのテーマが将来の職業につながるものでも、趣味でも好きなものをしっかりと持って楽しんでほしい、というのが一番の願いです。現代はインターネットやSNSで世界とつながっていますが、反面、世界に逃げられるとも言えますよね。高校生たちには、好きなものを自分の中だけで閉じ込めずに外に出して、自信を持って家族や友達、先生ともっとつながってほしいと望みます。
大屋
大学生になると家を離れて1人暮らしを始める子どもも多くいます。高校生の保護者という立場で言えば、高校生の間に家庭や地域での人との触れ合い、またふるさとをよく知ることを通じて自己肯定感、自尊心を育んでほしい。そうすれば大学生、社会人になって困難なことに出会ってもがんばれると思います。それだけは身に着けて送り出してあげればあとは安心かなという思いがあります。

――残り少ない高校生活を送る子に親はどのように向き合い、寄り添えばいいでしょうか?

松本
先ほど大屋会長が自己肯定感、自尊心という言葉を使われていましたけど、自尊心とは自分に対する誇り、それに加えて自己肯定感は自分が社会もしくは何かのために肯定的な立場にあると実感できることです。ある研究発表会でプレゼンテーションがあまり上手くなくても、どんな質問にも返してくれる生徒がいました。つまり研究のテーマが好きなんですね。親はそれを認めてあげて伸ばしてあげることが大切です。そのことによって自己肯定感が伸びます。
大屋
子どもにとって一番身近な社会が家庭です。農業をやって、PTAや地域活動をしていると家庭で過ごす時間が少なくなってしまい、葛藤があります。それでもそういった活動をする親を見ていると、子どもは規範意識や社会性が身に付くのではないかと思います。大人になって何かあった時に参考にするのは親と今までのこと。家庭が手本になると思います。もう一つは子供の人権。国連がわざわざ児童の権利に関する条約を採択するのも子どもを自分の所有物のように考える親がいることの現れです。虐待もそうです。例えば親は「がんばれ」と励ましたつもりでも、子どもには苦痛でしかないときもあるわけです。自分の考え方を押し付けていないか気を付けた方がいいですね。
河野
子どもの部屋に勝手に入って掃除をする、子供の携帯を見るという保護者さんもいらっしゃいます。子どももまたそれでいいと思っていたりします。でもこれは子どもの境界線を侵害する行為で、やってはいけないことです。高校卒業まで全部親が世話していると、大学入学後に自分のことは何もできず子どもはどうしたいいのか困ってしまいます。私も二人の子どもの親として偉そうなことは言えませんが、子どもは大学に入ったら自分一人で生活できるように高校時代からいろいろなことを経験させてほしいと思います。

――先ほど女子の進路についてお話がありましたが、最近では性暴力の被害に遭う学生もいます。子を被害者にも加害者にもしないためにできることは何でしょうか?

河野
私たちの調査では日本で同意がなく行われた性暴力の被害はアメリカと同程度にあることがわかっています。女性だけではなく男性も被害を受けています。またセカンドレイプと言って性暴力の被害者に落ち度がないにもかかわらず、「服装や態度など被害者に原因がある」などといいう誤った思い込みから「何をやっていたのか」「どうして逃げなかったのか」と非難されて、さらに追いつめられることも少なくありません。被害を訴えられず、学校をやめてしまう人もいます。高校でも大学でもいろいろな問題が起きていますので、保護者の皆さんも現状を知っていただけたら、と思っています。その上で申し上げたいのは、実は子ども世代が周りの人たちと関係を築く時、親など身近な人たちをモデルにしているということです。夫婦をはじめ男性と女性がどのような関係を築いているのかを子ども達は見ています。パートナーとの関係が一方通行になっていないか見直し、子どもに何を伝えていくのかを考えるのが親の役目だと思います。またセカンドレイプを防ぐためにも、被害を打ち明けやすい環境を作るためにも、普段から性暴力のニュースを見た時などに、「こんなことはひどいよね」「被害にあったら言いにくいかもしれないけど必ず言ってね、できることはするからね」と親子で話していただけるといいのかなと思います。

――ありがとうございました。

『保護者のための大学生活入門』より転載