未来と向き合い平和について考える -大学生協の平和活動特設サイト-

#01 武田 智実 さん

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参加者
武田 智実
(全国通訳案内士/福山市立大学非常勤講師)

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参加者
金田 菜緒
(Peace Now! Hiroshima2020 実行委員/福山市立大学都市経営学部)

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参加者
林 優樹
(Peace Now! Hiroshima2020 事務局次長/福山市立大学都市経営学部)

自己紹介 ~活動を始めたきっかけ~

福山市立大学都市経営学部2年の金田菜緒です。

同じく都市経営学部4年の林優樹です。

福山市立大学で英語の非常勤講師を務めています武田智実です。通訳案内士という国家資格を持っていて、各地で日本に観光目的で訪れる外国の方に英語で通訳のガイドを行っています。

活動を始めたきっかけはなんですか?

私は福山市出身で、小学生のころから学校で平和教育を受けてきました。8月6日の数日前は毎年登校日があり、被爆者の証言を聞いたり原爆について学んだりと、平和について考えることは身近なことでした。平和についてのニュースもよく目にしてきて、身近なテーマでした。英語もずっと勉強してきて、何か社会に役に立つことができたらと思って、資格を取り、広島に限らず外国のお客様の案内をしています。

英語の勉強をしてきたから、なろうと思ったのですね。

活動に対する想い ~観光客の外国人にヒロシマを伝えるから…~

その活動はどのような想いでされていますか?

このコロナ禍でなかなか仕事の機会がなくなったけど、外国の人に広島を知ってもらって平和について考えてもらえばという思いで行っています。

コロナ禍で活動は全く行えていないのですか?

今年は観光客もいなくて、なかなか行えていないですね。来年以降またできたらと思っています。

外国の方にガイドをされていて、どんなことを感じますか?

この先。外国人観光客が増えたときに、平和公園に行った際に見てほしいんだけど、ガイドの人が案内をしています。外国の方ってすごく真剣に、説明を聞いてくれる。例えば案内していて、「核保有国何か国あるの?」「どう核についておもっているの?」と聞かれたりします。

日本とは違う視点で聞いてくるのですね。

その場合はお客様は観光に来ておられるから強く主張することはないのですが一言意見を述べたりします。また、外国の方は、資料館から出た後はみんな圧倒されて衝撃で言葉が出ない方も多いです。初めて見るからショックを受けている様子があります。それだけ資料館の中は真剣に展示を見ておられる。じっくり解説なども細かくみられる。マンハッタン計画のところなども真剣に見ていますね。

活動をしていて大変なこと、そして楽しいことはありますか?

大変なのは資料見て伝えることを覚えること。原稿はネットやパンフレットをもとに、自分の伝えたいことも入れながら作っています。伝えたいことを憶えるのが大変。特に、数字とかは正しく伝えないといけないから、覚えるのが大変です。一方で、わかってもらうというよりも、相手にどんなことが起こっているか見てもらい考えてもらえることは嬉しいです。広島に足を運んでもらい、広島や原爆について知ってもらえるのはとてもやりがいがあります。

ただ見るだけよりもガイドをしてもらって考えながら回るほうがより深く学ぶことができそうですね。

そうですね。学んだ知識などを糧にして考えてもらえたら、それはすごくいいなと思います。

自分たちもヒロシマのことを詳しく知らない大学生にヒロシマのこと、平和のことを伝えるのですが、先生は伝えるときに意識していることはありますか?

ガイド的な目線かもしれないけど、ガイドをする人は観光客だから、あまり情報を詰め込みすぎないということは気を付けている。他にも、急がせないというのも意識している。日本に楽しみに来ている面もあるから急がせすぎず、そしてストーリー性を持つように伝えています。佐々木偵子さんのお話は外国の方が興味を持ってくれます。何が最初にあって、今現在はどうかということも意識的に伝えていますね。話す際には、2分で話す内容を3分で話すということも意識していますね。

なるほど、参考になります。


武田先生がガイドの際参考にしているガイドブック。

あなたにとって平和とは? ~共存、共生するために~

先生は平和だと思う瞬間はどんな時ですか?

家族や親戚が集まっておしゃべりしたりご飯を食べる時が個人的に平和だと感じます。

どんな世界が平和だと感じますか?

難しいですが、大小に関わらず争いがないことだと思います。ただ、それでは人間が平和なだけであって、自然に関してはどうなのかなとも思います。人間だけが平和というのでは意味がなくて、自然環境を守っていくことも大事なことだと思います。人間が我慢したり工夫したりなどを考えないといけないですね。それを全部含めて平和だと思います。

確かに争いがないことも平和だと思うけど、環境や自然へのバランスも考えないといけないですね。

(地球上に生きているのは)人間だけじゃないので、共存していかないといけないです。そのために自然を守らないといけないとすると、争いはしている場合ではないと思います。協力しないと自然を守ることはできないですし。争いは自然を破壊することにもなりますね。

では今、新型コロナウイルスのことはいったん考えないとして、先生は平和な世の中だと思いますか?

今は完全な平和ではないと思います。日本でも格差があったり、貧困家庭があったり。子供の貧困は問題ですよね。それで平和なの? って思います。お金持ちになる人は金持ちになっていくという社会だと思います。

貧困の方は生きるのに必死で平和な暮らしとは言えないし、お金を持っているひとは必ずしも社会や環境にいい活動をしているかといわれるとそうではないですね。

そうですね。海外ではノブレス・オブリージュ(フランス語、一般的に財産、権力、社会的地位の保持には義務が伴うことを指す)というお金持ちの人が寄付をして責任を果たすという文化があります。日本ではあまり見られない文化ですよね。お金持ちの人が寄付をして大学で勉強をできるような仕組みが文化が育つといいなと思います。本当に貧困の人が勉強したいときに勉強できるような社会になったらいいなと思います。

金田さんの、お金持ちの人が環境にいいことをしているかと言われたらそうでないと思うというのを聞いて、やはりすべての問題、もちろん平和もつながっているんだな、すべてを解決しないといけないと思いました。

戦後75年 ~いろいろなところに行って感じたい~

戦後75年、次の世代に向けてどんなことを語り継ぎたいですか?

語り継いできているけど、戦争に関しての体験はないので本当の怖さは分かっていません。でも広島や長崎など戦争の爪痕が残っているところに行って、資料や戦跡を見て感じることや知ることが大事だと思います。例えば、私は去年、鹿児島の知覧という特攻隊の基地があったところに子供を連れていきました。皆さんと同じくらいの世代の子供です。特攻隊に乗った人は私の子供達とほぼ同じような年代の子で、その子たちがそのまま敵の艦隊に突っ込んで死んでしまったわけです。私は、年頃の子たちがどんな気持ちで死んでいったのかということに疑問を持っていました。そして同じくらいの歳の我が子たちに知ってもらい、何かを感じ取ってほしかったんです。実際私は、現場に行く前は、かわいそうというイメージだったんですが、行った後、その感情は怒りになりました。なんでこの年代の子が亡くならなけばならなかったのかと感じました。現地に行ってみないと感じられないことってあって、考えが変わることがあります。皆さんにはいろんなところに行ってもらって、それを次の世代に語り継いで、どういう世界にしたいか考えてほしいです。

息子さんはどのような感想を持ったと言っていましたか?

息子たちも圧倒されてしまって、あまり話すことができませんでした。とても何か感じている様子だったので考えが変わったというのはあると思います。

大学生へメッセージ ~安心領域を出る経験をしよう~

先生は大学の講師もしていて、外国の方へガイドもおこなっておられますね。ぜひその2つの視点を持つ武田先生から大学生へメッセージをぜひお願いします!

私は大学生に大事にしてほしいことが5つあります。
1つ目は、勉強をしていろんな世界を知ってほしいということ、2つ目は旅をして、その場所に実際に足を運んで何かを感じ取ってほしいということです。そして3つ目は本を読んでほしいです。今は新型コロナウイルスの影響で旅にいけないから、その時間を使って本を読んでほしいし、平和について結び付けて考えてみてほしいと思います。

どんな本をお勧めしますか? 私自身は旅をして、価値観が変わるということは共感ができるのですが、どんな本読んだらいいか悩んでいる。どのような本を読んだら考えが広がるというか、先ほどの話につながりますか?

私は様々なジャンルの本を読みます。まずは表紙を見て一回手にとってみる。新書の背表紙を見て、面白そうと思ったら読み進めてみる。ちょっと見て合わないと思ったらそれは読まないけど、面白そうと思ったら読み進めることにしている。とりあえず手に取ってみて読んでみることが大事だと思います。

先ほどおっしゃられた旅で、先生はどこに行ったことがありますか?

私は3年前イタリアに子供たちを連れて行きました。これは伝えたいことの4つ目に関わってくるのですが、何か判断を迷っているときに「今しかできないこと」という判断基準で決めることがあります。旅行で言うと子供たちとは大学生の今しか一緒に行けないから行きました。最後に、みなさんは平和についてや広島について発信する人たちだと思います。そのことについて発信することにドキドキしますよね?

すごくドキドキします。

そうですよね。でもそれはとてもいいことだと思います。経験しないことを経験する、つまり安心領域を出てみてほしいと思います。大学の中では安心して友達や先生と話せると思うけど、一歩大学の外に出てみると未体験、未経験のことをすると思います。それが大事だと思います。安心領域を出で様々な経験をしてほしいと思います。アンテナを張って常に外に目を向けて周りを見る努力をしてほしいです。

何もしないと安心だけど、その先がないですよね。自分が見られるのはそこを出てからだから意識していきたいです。

はい。その5つを大学生へメッセージとして伝えたいと思います。

その5つのことも、先生のこれまでの話も全部つながっているような気がしました。自分も大切にしたいと思います。

本日はありがとうございました。

ありがとうございました。

(記録:林優樹/中国・四国ブロック学生事務局)

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