未来と向き合い平和について考える -大学生協の平和活動特設サイト-

Book Review #01

イメージ

奈良県立大学
四方遼祐さん

さがしています

著:アーサー・ビナード
出版社:童心社

後輩に教えてもらって、手に取った…絵本…ならぬ写真本?詩の詰まった本。

「ヒロシマを知っているものたちがさがしています─── たいせつな人びとを、未来につづく道を。」と帯に書かれたこの本は、広島の平和記念資料館にある遺品の中から選ばれた14点のカタリベたち。

モノであるこれらの展示品にアーサー・ビナードが命を吹き込んでいる。
建物疎開の作業をしていた学生の軍手、中身が入ったままのお弁当箱など、1945年8月6日の8時15分にその役割を果たし切らずに遺されたモノたち。

裏表紙の帯にはこんな言葉が並ぶ。
「『おはよう』『がんばれ』『いただきます』『ただいま』『あそぼ』 そのことばをかわすことができる、みんなの生活は、どこへいったのか? 1945年8月6日の朝、ウランの核分裂がヒロシマで引き起こしたことは、どこまで広がるのか? ピカドンを体験したカタリベたちは、今の日本をじっと見つめているのだ。 その視線の向こうにあるのは?」

そして興味深いのは、これを書いているのがアーサー・ビナードというアメリカ人だということだ。アメリカで生まれ育って、英語でその正当性や必要性を教えられてきた彼は、あとがきに興味深い文章を残している。

「『原子爆弾』も『核兵器』も、核開発を進めた人たちがつくった呼び名。 それに対して『ピカドン』は、生活者が生み出した言葉だ。具体的に、生きた言語感覚で、核分裂をとらえていて、その言葉のレンズがぼくに新しい視点を与えてくれた。同時に、『ピカドン』に相当する英語が存在しないことにも気づいて、課題を背負った思いがした。

広島の平和記念資料館を訪れた時の記憶とともに、改めて遺された「モノ」から学ぶことが多いと感じる。

ページの先頭へ