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Book Review #03

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岡山大学
田島 響さん

2045年、おりづるタワーにのぼる君たちへ

著:松田 哲也
出版社:株式会社ザメディアジョン

「75年は草木も生えない」と言われた広島の、その75年後を迎えました。今、広島には緑と希望があふれています。この街は、75年の歩みをどう総括するのでしょうか? どんな未来に進んでいくのでしょうか?

 広島と聞いて、みなさんは何をイメージしますか? 厳島神社、お好み焼き、広島東洋カープ、路面電車など、有名なものが思いつく方もいるでしょう。原爆が投下された街、平和記念都市と連想する人も多いと思います。その一方で、広島は私が育ってきたふるさとであり、約120万人の生活の場でもあります。世界的に有名で特徴的な街でありながら、そこには日常も存在しているわけです。

 広島のど真ん中、原爆ドームのすぐ隣に、1つのビル、いや、タワーが建っています。「おりづるタワー」、12階建ての小さなタワーです。本書の著者は広島の自動車メーカー・マツダの創業家に生まれた松田哲也氏。地元の企業人として、そしてコンプレックスを抱えた1人の人間として。これら2つの視点から、戦争体験のない著者がおりづるタワーに込めた想いを綴っています。

 おりづるタワーの屋上には、「ひろしまの丘」というウッドデッキの展望台があります。真下には原爆ドームがあり、その向こうに緑豊かな平和公園、さらに向こうには広島市街が広がっています。戦争と平和と日常の大パノラマを見て、私たちは何を考え、何を想うでしょうか?

 おりづるタワーは、私たちに平和を考える時間と空間を与えてくれます。そしてこの本が、タワーで思索を巡らせる支えとなるはずです。これからの社会を生きる私たちは、2045年、おりづるタワーから何を見るでしょうか? これからの社会を担い動かす私たちは、2045年、おりづるタワーにのぼる君たちへどんな世界を示せるでしょうか?

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