未来と向き合い平和について考える -大学生協の戦後75年特設サイト-

Book Review #04

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岡山大学
田島 響さん

ある晴れた夏の朝

著:小手鞠るい
出版社:偕成社

世界は分断されている、と思う。

欧米と中国の対立は深まるばかりだし、コロナ禍で経済格差は拡大している。相変わらずジェンダーギャップが横たわり、政治で若者の存在感は薄い。同じ世界に生きているはずなのに、“僕ら”と“彼ら”で見ているものが違う。

この物語の登場人物たちもまた、2つに分かれている。広島・長崎への原爆投下は正しかったか、それとも間違っていたか。アメリカの高校生8人が討論会を開いて追究していく。

日本人作家が、あえてアメリカの視点に立って書いている。2時間程度で読めるやさしい文章ながら、取り扱う論題は原爆にとどまらず、人種差別や日本の加害面などへと広がっていく。

キャラクターもありきたりでなく、黒人だったり、日系だったり、1人ひとり違うバックグラウンドを持っている。だからこそ、問題提起とその討論が立体的で、温度を持って伝わってくる。

もちろん、これは原爆がテーマの作品として書かれている。あの戦争と向き合ううえで手に取りやすい1冊になっている。だが、そうしたことを考えるためだけに読むのはもったいない。僕が感じ取った裏テーマは、さらりと序盤に登場する。

「人と人とは異なっている。」
続けて、“僕ら”が“彼ら”とともに目指すべき先が示されている。
「わたしたちはその差異を受け入れ、異文化を学び、成長していかなくてはならない。」

私たちは連帯できるだろうか。連帯をどこまで広げられるだろうか。
今日のニュースも東京五輪の開催可否で揉めている。

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