「核政策を知りたい広島若者有権者の会」、通称「カクワカ広島」とは、広島に住む、高校生や大学生、会社員、カフェ店員たちが、核兵器のない世界の実現を願って緩やかにつながるグループです。民主主義国家における市民の代表、そして国の政策決定者である国会議員に、核兵器のない世界の実現への道のりを尋ねています。若い世代が政治を通じて平和を実現する背景にある想いを学びましょう。
田中美穂(カクワカ広島 共同代表)
2020年9月25日(金)
大学生協連主催「第4回オンラインミーティング」にてゲストスピーカーとして講演
(記録:四方遼祐/全国学生委員会)
「カクワカ広島(核政策を知りたい広島ワカモノ有権者の会)」は2019年の1月に発足しました。議員に会うことは日本ではメジャーではありませんが、アメリカ等ではロビー活動が活発らしく、それを日本でもやってみようということで始めたのです。
大きなきっかけになったのは、2018年1月15日。ICAN事務局長のベアトリス・フィンさん来広されました。その時に彼女が、「平和活動することって楽しい事なんだよ」とおっしゃったのです。広島とは雰囲気が全然違うな、カッコイイな、という印象を持ちました。同時に、こういう活動を日本でもできないかな? とも思いました。
その後も、2018年はICANの様々な人が来られました。そういう意味では広島の若い人たちが直接ICANの人と触れる機会がたくさんあった年ともいえます。このころから「カクワカ広島」の構想ができ始め、たくさんエールをもらいました。
ICAN事務局長 ベアトリス・フィンさん
そして、「カクワカ広島」発足の最後の最後の一押しになったのはサーロー節子さんという被爆者の方の講演会です。「核廃絶は誰かがやると思っているかもしれないけど、自分自身が行動しないと。“頑張ってください”とか“祈っています”、ではなくて一緒に行動しましょう!」という呼びかけがとても印象に残っています。この言葉で「自分も何かやらなきゃ」と思いました。ちょうどこの講演会の後、なんとなく一緒に聞いていた知り合いや知らない人も交えて呑みに行き、「やろう!」と決めました。そして2019年の1月7日にミーティングを行って、具体化を進め、名前もカクワカ広島に決定しました。
カクワカ広島の大きなテーマの1つが「なぜ日本は核兵器禁止条約に入っていないのか?」というものです。平和活動に積極的な人にとっては当たり前ですが、多くの日本人はこの条約の存在すら知らないです。広島の人でも。だから、広島の人にこの条約に日本が入っていないことを伝えるとかなり驚かれます。
「核兵器禁止条約」については、8月6日・9日の近くにはメディアで取り上げられますが、なかなかそれ以外の場面では国会でも取り上げられない内容です。どうにかして人々の目に触れるようにしたい、という想いもあって活動を進めています。
因みに「カクワカ広島」のメンバーは、みんな他の仕事をしながら活動をしているのも特徴ですね。自分がやれるときに、やれる分だけという感じで進めています。
ロビー活動の効果は、やる前はなかなかどんな効果があるのか想像しにくかったです。でも実際にやってみると、直接会うことはとても大切だと感じます。議員は遠い存在のように感じますが、実際にあってみると様々な直接意見が聴けて勉強になるし、お互いに、人と人なんだという視点で考えられるようになります。
直接聴いた考えは、ウェブサイトやSNSでも発信をしています。
そして発信したものを見てもらうことによって核廃絶のことは他人事ではないということを感じてほしいです。核の脅威はいつでもどこにでもあるし、現時点で核実験の被害に遭っている人もたくさんいます。そういうことがわかってくると他人事ではないということが少しずつ感じられるようになってきて、行動につながると思うので、こういったことを目的に活動しています。
主な活動としては、議員さんに会うこと。手紙を手書きで送った後、それを追いかける感じで「お手紙読みましたか?」と電話をかけていき、日程調整を行います。反応がいい議員さんのときだと「読みました! ●日はどうですか?」と最初から言ってくれました。あとは、事務所の電話番号が使われていない議員さんもいたりしますね(笑)。これはいいのか?と思いましたけど。もちろん忙しいということで断られる場合もあります。そして、会って聞いたことをSNSでの発信をします。SNS以外にも、報告会・イベントもやっています。報告会は何人か会えたらまとめて報告するという風にしていて、今まで3回やりました。最近は新型コロナウイルスの影響もあって、議員の方に会える機会が減っているので、オンライン・オフラインでイベントを行ったりもしています。
2019年3月から広島選出の国会議員に面会
2019年の3月から、これまでで8名の広島選出の国会議員の方と面会をしました。面会のときは次のような4つの質問は必ずするようにしています。
1つ目の質問は、絶対「Yes」と答えるんですけど(笑)、一応聞いています。4つ目の質問は意見がいろいろ出てきて面白いところですね。もちろん「核兵器禁止条約」を支持していない立場の人にも会いに行って、そういう意見も聞きたいと思っています。そういう意見が聞けるのも面白いところの1つですね。
もちろん、議員の全員が全員この問題に興味があって政治家になっているわけではないんですし、みなさんお忙しい中でやっておられます。ですが、私たちが会いに行きたいと言うことで議員さんが勉強されているな、という印象を受けることもあって、それは私たちが会いに行くことのメリットだと思います。一緒に学んでいく機会・環境を作りだせているのかな、と。
それぞれの議員さんの細かな声はFacebookやWebサイト、YouTubeにもアップしていますのでご覧ください。
ICAN国会議員誓約
他にもICANをモデルにやっていることもあります。「ICAN国会議員誓約」というものがあります。日本では「ヒバクシャ国際署名」を全国的にやろうという動きがあったのであまり広がってはいませんが、面会のときにお願いするようにしていてすでに4名の議員の方が署名してくださっています。
その他の活動
他にも去年の参議院選挙のときには広島の立候補者に「核兵器禁止条約についてどう思うか」を聞いて回答をまとめたり、自民党総裁選のときには岸田さんの核兵器に関する発言をまとめたりしました。参議院選挙のときは、それ以外にも党の公約に「核兵器禁止条約」についての記述があるかみんなで見るイベントも行いました。
「カクワカ広島」では、基本的にはデザインをかっこよくということにこだわっています。少しでも若い人たちに興味を持ってほしいという思いで試行錯誤している部分の1つですね。
この「Fight the Power」というのは、今年パリで開かれたICANのフォーラムのテーマの1つとして挙げられていたものです。権威・権力に立ち向かうといったような中身だったんですけど、これは今の日本にも象徴される話だと思います。立ち向かう──対抗する、反抗するというわけではないんですけど、関心を持って「私はこれに取り組みたい」と意思を表明することは大事だなぁと思っています。それに目を向けずに過ごすことも簡単なんですが、広島に来ていろんな人に出会ったり勉強したりしている中で、自分は全然無関係じゃないと感じるようになりました。いつか自分が影響を受けるかもしれないし、もしかすると自分が死んだ後にまた核が使われる可能性もすごく高いと思う。それを未来に残して死ぬのはすごく無責任だと思うんですよね。今、政治の話をすることはまだタブーな雰囲気がありますが、それに怖気づかずに、わからないから学ぼう、考えようという仲間を増やしながら頑張ることが大事だと思うようになりました。
次に、「それぞれに正義がある」という話です。今の話ともつながってくるんですが、例えば、核抑止論は重要だという人もいてそれぞれに想いがあります。なぜそう思うかという声を聴くことが大事だと思っています。自分は核抑止論が不要だと思うからこそ核抑止論が重要だと言う人の意見も勉強してみよう、とか。そうやって勉強をし続けていると、自分は知らない事ばっかりだと思いますが、そう思いながらも日々勉強を楽しんでやっています。
最後に「続けるためには仲間が大切」と書きました。この写真はFacebookページに500いいね! がついた時に撮った写真なんですが、仲間はそれぞれ個性的で、いろんな活動を掛け持ちながらやっている人が多いです。そういったそれぞれの活動から学ぶことが多いです。学生のころから学んでいる人もいれば私みたいに社会人になってから興味を持つ人もいます。そういういろんな人たちが一緒に頑張ろう!という気持ちで、学びあいながら熱くなりすぎず、淡々とやっています。苦しくなく続けられる仲間がいることは大切だなあと思いながら日々活動しています。
───私のきっかけは好きな「英語」を使ってニュース翻訳することから始まりました。すべての人がはじめから「これは人類の危機だ」「自分が動かなきゃ」と思うことは難しいと思います。広島や長崎、沖縄のように実体験を聴く機会があるならまだしも、普通はなかなかできないですよね。だから、興味を持つことや好きなこと──私だと英語、あとはデザインとか動画編集が得意とか、自分の特技が生かせる入口があるだけでも違うと思うし、そういう人が集まれば強いチームになるなぁと思いますね。
───「カクワカ広島」自体は仲間を増やそうということにあんまり力を入れていないんですよ。ただ、拠点となる「ハチドリ舎」というカフェがあるんですが──ここには社会問題を気軽に話そうよ、みたいなカフェで普段話せない真面目なことを話すために老若男女がある集まってくるカフェなんですね。ここのオーナーもカクワカのメンバーの1人なんですが、オーナーがたまに誘ってくることはあります(笑)。そういう意味では、拠点があるというのは、大事かもしれないですね。今はなかなか会えない情勢ですが、「ここに来ると誰かがいる」みたいな場所があるということですね。
───敷居を低くするというのは1つのポイントだと思います。選挙のときも私たちのまとめたものを見て投票に行く人がいればいいなと思います。「核廃絶」って選挙の争点にはなかなかならないし、それだけをみて投票してほしいということも思わないけれど、自分の興味がある分野のことを調べて発信するような流れができれば、国会議員にとっては脅威かもしれないけど、みんなが多面的に社会についていろんな考えをもっていろんな意見を言えるようになるのではないかと思います。
───いろいろありますが、事前に調べることは絶対にやります。その人が過去にどういう発言をしてきたか、どんな政策をしてきたかとかは調べています。そして、先ほど出した4つの質問以外にも、この質問だけは絶対しようとか、こう答えるだろうからこう切り返そうとか、イメトレをします。いつもではありませんが、時間があるときは仲間とロープレをしてから訪問することもあります。ロープレをした回は、話す内容もほかのときに比べて充実していましたね。議員さんは、その人の回答がなんとなく想像できるからこそ、そこをどう切り崩すかは面白いところですし、自分の勉強にもなります。広島のメディアの方もお力添えしてくれて情報をくれることもあります。あとは、ぶつからないようにすることも気を付けています。喧嘩をしたいわけではないので、対話をすることにこだわっていますね。自分たちと反対の意見を持つ人にも嫌な思いはしてほしくないので。
福岡県北九州市出身。
ICANキャンペーンニュースの翻訳を通じて、カクワカメンバーと出会う。
社会に関心を持つきっかけは、誰にでもそこら中に散らばっているはず。カクワカ広島の活動が誰かの些細なきっかけになればいいなと願って、日々邁進中。好きなものは、本とお酒。
おもに広島に住む、高校生や大学生、会社員、カフェ店員たちが、核兵器のない世界の実現を願って緩やかにつながるグループ。
核兵器の問題についてもっと詳しく知りたい、もっと自分事として捉えたいと考えていて、被爆者とともに暮らす一市民として、核兵器禁止条約に背を向ける日本政府の姿勢に心を痛めています。
団体略称の「ワカ」には、「分か」りたい、「沸か」せたいという意味も込められています。
民主主義国家における市民の代表、そして国の政策決定者である国会議員に、核兵器のない世界の実現への道のりを尋ね、その情報をFacebookやTwitterなどのSNS、ウェブサイトなどで広く発信し、市民の関心を高めていきます。