新入生の保護者20,347名から集約
「2020年度保護者に聞く新入生調査」概要報告

※データの無断転載はお断りいたします。
2020年11月5日

<2020年度の特徴>

  1. 受験から入学までにかかった費用
    入試制度の変更を念頭に一般受験生の受験学部数が引き続き増加
    受験学部数は増加しているが、受験料は減少
  2. 保護者の意識
    大学選びの関心事は「所在地」「設置者」「就職実績」に加え、「ブランドやイメージ」も重視
    大学生活の心配事は「大学での授業や単位」が半数を超え、就職への不安も拡大

全国大学生活協同組合連合会(以下 全国大学生協連)では、2007年から毎年4月~5月に新入生の保護者を対象とした「保護者に聞く新入生調査」を実施しており、2020年は122大学生協の20,347名の方から回答を頂きました。

この調査は毎年、受験から入学までにかかった費用をはじめ、受験から入学までに困ったこと、大学生活を送る上での不安といった保護者の意識とあわせ、大学生協の事業に対する評価も頂いています。
今回の調査結果から、受験から入学、その後の大学生活の変化、大学入試制度の変更を前にした受験のための費用の変化、今後の大学生活や将来への保護者の不安や関心などを報告いたします。
今回調査をした時期は、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言が2020年4月7日(埼玉県、千葉県、東京都、神奈川県、大阪府、兵庫県及び福岡県以外の道府県については同月16日)に発出され、5月31日の解除予定日も都道府県によって短縮または延長がありました。ほとんどの大学でキャンパスへの立ち入りが禁止され、多くの大学で2020年度4月開講が延期となりました。開講後の授業は、主にオンライン授業でした。

<調査の概要>

【調査の目的】 新学期の大学生協の取り組みについての保護者の評価や、新入生が入学までにかかる 費用、具体的なスケジュール、住まい探しや商品購入の際の意識を調査することによ り、新学期事業の総括および次年度提案の基礎データとする。
【調査対象】 2020年に入学した新入生(学部生)の保護者
【調査期間】 2020年4~5月
【調査方法】 インターネット調査(各大学生協の名簿からランダムサンプリングして郵送で依頼、Web画面から回答)
【回収数】 20,347(122大学生協・回収率32.9%)

サンプル特性

グラフ

▲ クリックで拡大 ▲

受験から入学までにかかった費用

<平均額について>

  • 各費目の平均額および合計の平均額は、それぞれ「0」と無回答を除いた平均の「有額平均」で表示しています。
  • 費目のいずれかに「0」が含まれていても合計の平均額には反映されるため、各費目の平均額を合計したものと、合計の平均額は一致しない場合があります。

<各費目の内容>

A.出願のためにかかった費用 受験料/願書を取り寄せた費用
B.受験のための費用(総額のみ) 交通費/宿泊費/滞在費
C.大学への学校納付金 入学金/授業料/施設拡充費・寄付金・学校債・その他
①入学した大学への学校納付金 ②入学しなかった大学への納付金(総額のみ)
D.合格発表や入学手続きのための費用(総額のみ) 交通費/宿泊費
E.入学式出席のための費用(総額のみ) 交通費/宿泊費/手土産代/お礼/その他
F.教科書・教材購入のための費用 パソコン/教科書/電子辞書/教材/その他
G.住まい探しの費用 交通費・宿泊費・滞在費/礼金・入館金・敷金/前家賃や日割分・その他/斡旋手数料・仲介手数料
H.生活用品購入費用(総額のみ) 寝具/家具/家電用品/自炊用品/インターネット契約・配線工事、電話機・携帯電話/日用雑貨/自転車・バイク/衣類や身のまわりの小物
I.その他の費用 引越し代・荷物の送料/4月分の生活費/予備の貯金/保険料/生協出資金/ミールカードなど/お礼・お祝い返し・その他

1.受験から入学までにかかった費用
入試制度の変更を念頭に一般受験の受験学部数が引き続き増加。一方で受験料は減少
下宿生の生活用品購入額は減少

(1)受験から入学までにかかった費用(図表1~4)

国公立・自宅・文科系1,350,900円から私立・下宿・医歯薬系3,094,700円まで

  1. 自宅生の受験から入学までにかかった費用

    ○国公立1,378,100円・私立1,694,800円

    • 国公立文科系1,350,900円・国公立理工系1,374,200円・国公立医歯薬系1,491,200円
    • 私立文科系1,555,200円・私立理工系1,977,200円・私立医歯薬系2,567,100円
  2. 下宿生の受験から入学までにかかった費用

    ○国公立2,039,700円・私立2,332,800円

    • 国公立文科系1,988,000円・国公立理工系2,040,700円・国公立医歯薬系2,211,700円
    • 私立文科系2,232,600円・私立理工系2,533,600円・私立医歯薬系3,094,700円

図表

図表

図表

図表

▲ クリックで拡大 ▲

(2)受験から入学までにかかった費用の特徴 (図表5〜8)

①受験から入学までの費用は入学大学の設置者、専攻、住まいなど進路により大きく違い、国公立・自宅・文科系が1,350,900円と最も低く、私立・下宿・医歯薬系の3,094,700円が最も高い。

②費目別では「出願するためにかかった費用」が前年より減少している。国公立は127,100円(前年+100円)だが、私立は150,800円(前年-23,100円)と私立の減少が大きい。

③「出願するためにかかった費用」の多くを占める「受験料」は、131,800円と前年より11,500円減少した。国公立121,000円(前年-900円)、私立145,800円(前年-23,700円)と私立の減少が大きい。

④「受験料」は減少しているが、予定として考えていた額より高額となり困ったという意見は多い。「費用について予定と違って困ったこと」では「受験料が増えた」が22.4%と前年より2.8ポイント増加している。特に一般受験生は31.0%とこの設問を始めた14年から10.9ポイント増加した。

⑤18年、19年と2年連続増加した「受験料」は減少したものの「受験学部数」は増加している。5学部以上の受験は、国公立25.2%で前年より5.1ポイント増、一般受験生40.2%も同じく6.9ポイント増。21年度からの大学入学共通テストを前に、現役入学志向の高まりで受験学部数が増加する一方、併願出願等で費用を抑えていることがうかがえる。

⑥受験から入学までの費用面で準備・工夫したことの上位3項目は前年と変わらず、「学資保険に入っていた」44.9%(前年-3.4ポイント)、「貯蓄を切り崩した」36.3%(前年+0.6ポイント)、「奨学金を申請した(する)」33.1%(前年+0.2ポイント)となっている。「奨学金を申請した」は17年からの増減幅は1ポイントと小さい。「学資保険に入っていた」は14年以降減少傾向だが、「貯蓄を切り崩した」は増加傾向が続いている。住まい別では、自宅生は「自宅通学にさせた」(28.3%、前年+4.1ポイント)、寮生は「奨学金を申請した」(51.7%、前年+3.9ポイント)の割合が高い。

⑦下宿生の「新生活用品購入費用」は289,200円(前年-15,200円)と6年ぶりに20万円台に下がった。下宿生で購入率が高い品目は、「日用雑貨」88.3%、「寝具」85.0%、「衣類や身のまわりの小物」82.5%と続き、「インターネット契約・配線工事の申し込み」は51.9%となっている。

図表

図表

図表

図表

▲ クリックで拡大 ▲

2.保護者の意識
大学選びの関心事は「所在地」「設置者」「就職実績」に加え「ブランドやイメージ」も重視
大学生活の心配事は「大学での授業や単位」が半数を超えて就職への不安も拡大

(1)受験から入学までの保護者の意識 (図表9〜12)

①子どもの受験大学を選ぶ際に保護者が関心を持ったことは「大学の所在地」54.9%、「設置者(国公立・私立)」47.6%の順に高く、「大学の所在地」は自宅生が63.1%(下宿生46.7%)、「設置者」は国公立が71.0%(私立18.7%)を占め、大学納付金や親元を離れた場合にかかる費用など、家計への影響が大きいことに関心が高い。

②全体では「大学や研究の内容」45.6%(文科系39.1%・理工系55.2%・医歯薬系45.6%)が続くが、私立は「就職率などの就職実績」50.6%(全体39.3%・国公立30.1%)、医歯薬系の「取得できる資格」55.7%(全体29.1%・文科系31.3%・理工系20.1%)など、大学卒業後の子どもの将来を念頭に受験大学に関心を寄せる保護者も多い。また、「大学のブランドやイメージ」は30.9%(前回調査18年+9.2ポイント)と関心が高まっている。

③大学生活を始めるにあたって心配なことは、「新型コロナウイルスへの対応」63.5%を除くと、「大学での授業や単位のこと」51.7%が最も高く、前年から13.6ポイント増加した。「友達付き合いなど人間関係のこと」48.4%が続き、新型コロナウイルス感染症対応の影響による就学環境の変化を心配していることがうかがえる。

④そのほか「就職や将来のこと」(46.8%、前年+13.0ポイント)は、10年以降最も高い値を示している。文科系51.4%、理工系44.9%と高く、前年からそれぞれ13.4ポイント・12.6ポイント増加した。医歯薬系は23.1%で、前年から9.0ポイント増。新型コロナウイルス感染症対応の影響で社会経済状況が変化したことにより、就職への心配が高まっている。

⑤下宿生の保護者については、「食事や日常生活全般のこと」62.8%(全体35.8%・自宅生10.3%)や「事故や病気、けがなど健康面のこと」60.3%(全体39.6%・自宅生20.3%)が、引き続き高い。

図表

図表

図表

図表

▲ クリックで拡大 ▲

(2)入学までの行動 (図表13〜14)

①入学した大学のオープンキャンパスには新入生の 56.5%が参加しており、推薦受験生は81.0%と高い。特に推薦受験の自宅生は86.7%にも上り、オープンキャンパス以外の見学にも58.4%と半数以上が訪れている。また一般受験生もオープンキャンパスには43.4%が参加し、うち自宅生は56.6%(下宿生31.9%)と参加率が高い。

②オープンキャンパスに訪れる新入生は 、10年40.7%から15年には47.3%と増加し、この10年間で15.8ポイント増加(推薦受験生+13.7ポイント・一般受験生+13.5ポイント)した。

③またオープンキャンパスには、全体の31.4%(参加した新入生を100として55.6%)は母親などの同行者も参加している。この割合は 14年に設問形式の変更を行って以降継続して増加している。

④オープンキャンパスへの同行は、一般受験生の20.6%に対し推薦受験生は51.7%と高く、参加した新入生を100とすると推薦受験生は63.8%に上る(一般受験生47.5%)。さらに推薦受験の自宅生61.2%(参加した新入生を100として)に対し、下宿生は68.5%(同)と同行者が多い。新生活準備のためにオープンキャンパスの機会に入学大学を訪問する保護者が多いものと思われる。また受験の際も下宿生の 51.3%(全体36.0%・自宅生21.7%)が同行者を伴って受験会場を訪れている。

⑤一方で新型コロナウイルス感染症対策により、入学式の中止や延期は94.9%となった。通常開催されたのは0.6%、本人のみ参加などの条件付きで開催されたのは2.7%で、入学式への新入生本人の出席は2.5%にとどまった。

図表

図表

▲ クリックで拡大 ▲