第48回学生生活実態調査の概要報告 part2

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費目別の傾向

(1)アルバイト収入
  アルバイト収入の使い道が暮らし向きを表す。
  生活費や授業料の負担で<苦しい>学生たち。(図表10・11)

  1. 現在のアルバイト就労率は<大変楽>が59.0%と特に低く、<楽>から<大変苦しい>の70.4%まで暮らし向きが苦しくなるほど上がっていく。
  2. 夏季休暇を含む半年間のアルバイトについては暮らし向きによる就労率の差は小さいが、その収入の使い道には暮らし向きによる差が明確に表れている。「衣類・バッグ」は<大変楽>の28.0%から<大変苦しい>の10.5%まで、また「旅行・レジャー」も32.7%から12.6%まで、暮らし向きが苦しくなるほど下がる傾向がある(いずれもアルバイト就労者を100として)。
  3. 一方で「生活費の維持」や「授業料」は暮らし向きが苦しくなると上がる傾向があり、特に<大変苦しい>は「生活費の維持」が57.9%、「授業料」も17.9%と高い。
  4. 「貯金」は<大変楽>から<苦しい>まで減少するが、<大変苦しい>については17.9%と<苦しい>を上回り、今後の生活に備える傾向も見られる。

図5 日常の不安や悩みの内容

(2) 奨学金
  奨学金が支える<苦しい>学生の大学生活。
  一方では使い道を「特に決めていない」<楽>な学生も。(図表12・13)

  1. 暮らし向きが苦しくなるほど奨学金の受給率は高くなり、「奨学金をもらう必要性を感じなかった」は低くなる。
  2. 使途については暮らし向きに関わらず、5割前後の学生が「食費や住居費などの生活費」に使っている。また<苦しい>や<大変苦しい>層では「大学納付金」の学生がそれぞれ60.7%と63.3%で、奨学金に支えられながら大学生活を送る学生が多く存在することが読み取れる。
  3. 一方で<大変楽><楽>には使い道を「特に決めていない」受給者が8.2%と7.9%と、ほかの層より多く存在しており、特に使用目的がないまま奨学金を受給している学生も存在している(いずれも奨学金受給者を100として)。

暮らし向きと学生生活

勉強時間の長さが経済生活にも影響している<大変苦しい>学生たち。
学生生活の充実感も得にくい。(図表14~図表20)

  1. 暮らし向きが<大変楽>な学生は学生生活について、「充実している」が40.5%で「充実していない」が1.6%。対して<大変苦しい>学生は「充実している」が28.0%と低く、「充実していない」は10.4%であった。
  2. 学生生活の充実度別に見ても、「充実している」層の54.2%が暮らし向きを<大変楽>や<楽>と感じる学生が占めるのに対して、<苦しい>と<大変苦しい>学生は9.0%のみであり、「充実していない」層は<苦しい>と<大変苦しい>が26.4%を占めている。
  3. また自分の大学については<大変楽>な学生のうち「好き」が44.8%と他と比較して特に多く、<大変苦しい>学生のうち「嫌い」が12.8%と他の層を大きく上回り、暮らし向きと大学生活の充実度は相互に影響していると思われる。



  4. <苦しい>や<大変苦しい>学生の大学生活の特徴点として以下があげられる。

    1. <大変苦しい>学生のうち相談相手が「いる」は65.6%と、他の層より大幅に少ない。
    2. <大変苦しい>学生の大学生活の重点は「勉学や研究を第一においた生活」が36.0%、「アルバイトをしたり、お金をためることを第一においた生活」も8.8%と他の層と比較して多く、「自分の趣味(車・スポーツ・音楽・パソコンなど)を第一においた生活」は4.8%と少ない。また「なんとなく過ぎていく生活」が6.4%と、<大変楽>や<楽>と比較して多い傾向にある。
    3. 日常生活で悩んでいること、気にかかっていることとして「生活費やお金のこと」のほか「時間が足りないこと」、「自分の性格や能力のこと」、加えて「心身の不調・病気など健康のこと」や「家族のこと」も多く、金銭面での悩みのほか、自身の健康や能力に不安を感じる学生が多く存在する。
    4. 授業以外の大学の勉強時間についてみると、1週間の全体平均は274.7分だが、<大変苦しい>学生の平均は372.3分と長く、特に理系では<大変楽>と比較して94.3分、医歯薬系も81.9分長い。
    5. さらにアルバイト就労との関係では、理系の<苦しい>や<大変苦しい>学生は非就労者の勉強時間が長く、勉強時間の長さを確保するためにアルバイト就労を制限していると考えられる。


掴みづらい<楽>増加の背景にあるもの~11年との比較~

学生生活の充実や親元の経済状況の感じ方が影響か。(図表21~37)

  1. <大変楽><楽>の生活費を11年と比較して見ると、自宅生、下宿生ともに「こづかい」や「仕送り」は金額も収入に占める構成比も減少し、<大変楽>においては収入合計も減少している。
  2. 支出については、自宅生の全ての層で「教養娯楽費」の構成比が微増となっているものの、費目毎の大きな変化は見られず、学生が感じる暮らし向きの変化は、生活費の増減とは乖離しているように見える。
  3. また半年間のアルバイト収入の使い道を見ると、「生活費のゆとり」は減少し、「サークル費用」はすべての層で増加している。暮らし向きが楽な学生ほど、学生生活が充実し、自分の大学を好きな傾向があり(図表14~図表16)、サークルなどの学生生活充実のための費用増加は<楽>の増加にも通じるのではないか。
  4. 「こづかい」や「仕送り」、「奨学金」の受給率と父親の年収をみると、学生の経済生活が親元の収入に大きく影響を受けている様子がうかがえるが、その父親の年収と暮らし向きについてみると、750万以上の層で11年から12年にかけて<普通>が減少し、<大変楽>や<楽>が増加している。経済不況が続く中で、親元に一定以上の収入があること自体で、自身の生活も保障されていると捉え、<楽>と感じる学生が増加したとも考えられる。