第51回学生生活実態調査の概要報告

※データの無断転載はお断りいたします。

CAMPUS LIFE DATA 2015

2016年2月24日

はじめに 調査概要とサンプル特性について

<調査概要>

調査実施時期 2015年10~11月
調査対象         全国の国公立および私立大学の学部学生
回収数            9,741(30大学・回収率31.5%)

<サンプル特性>

  1. 第51回学生生活実態調査は74大学生協が参加、17,605名から協力を得た。ただしここで紹介する数値は、経年での変化をより正確に見るために、毎年指定している30大学生協で回収した9,741名の平均値である。
  2. 全体的に昨年の構成比と比べ大きな差異がなく、経年での比較にも耐え得る調査である。
  3. 専攻別の男女の構成比は、文科系4.4:5.6、理科系7.3:2.7、医歯薬系3.8:6.2となっており、文科系と医歯薬系の特徴は女子の影響を受けやすく、理科系の特徴は男子の特徴を受けやすくなっている。

1.学生の経済状況

アルバイト収入増により今後の見通しも明るく
一方、貯金の目的が「生活費」「授業料」「奨学金返還」の「苦しい」学生も1割
文系4年生は就活期間変更で収入減に

(1)自宅生の生活費(図表1)

アルバイト収入は4年連続増加。「小遣い」「奨学金」は減少が続く

  1. 自宅生の収入合計は62,190円。前年から1,070円増加し、3年連続前年増となった。
  2. 費目別では「アルバイト」が4年連続増加。前年から+1,590円と増加が大きい。
  3. 家からの「小遣い」15,040円(前年-160円)、「奨学金」11,470円(前年-270円)は前年に続き減少した。
  4. 支出合計は59,890円で、前年から1,710円増加。「食費」12,250円(前年+240円)や「教養娯楽費」8,490円(前年+650円)、「貯金・繰越」17,190円(前年+660円)などが増加し、「交通費」9,020円(前年-510円)などが減少した。

(2)下宿生の生活費(図表2・3)

「仕送り」増で収入合計は増加。「奨学金」の構成比は微減傾向が続く

  1. 下宿生の収入合計は122,580円。前年から410円増加し、4年連続の前年増となった。
  2. 費目別には「仕送り」が71,440円で前年から1,300円増加し、「奨学金」23,270円(前年-940円)、「アルバイト」25,320円(前年-240円)が減少した。「仕送り」が0円の学生は9.1%と、引き続き1割近く存在している。
  3. 「奨学金」はこれまで最も高かった2010年から3,470円減少しており、収入合計に占める構成比も2010年の21.8%から毎年減少し、2015年は19.0%となった。
  4. 支出合計は118,200円で、前年から1,240円増加した。
  5. 費目別には「貯金・繰越」が12,500円(前年+190円)で4年連続増加し、「貯金・繰越」の費目で調査し始めた79年以降最も高い金額となったほか、「食費」24,760円(前年+280円)、「住居費」53,100円(前年+470円)、「教養娯楽費」9,240円(前年+640円)などが増加した。前年より減少した費目は「交通費」3,320円(前年-90円)、「書籍費」1,720円(前年-230円)、「勉学費」1,490円(前年-30円)、「日常費」5,540円(前年-70円)などであった。

【図表3】下宿生の仕送り金額分布

(%)

(3)奨学金・アルバイト(図表4〜7)

緩やかな減少傾向が続く下宿生の奨学金受給率
就職活動の変更の影響が大きい4年生を除き、アルバイト収入が増加

  1. 何らかの奨学金を受給している学生は35.0%(自宅生28.7%・下宿生39.1%)で、前年から0.1ポイント減。下宿生の受給率はこれまで最も高かった09年と比較すると5.5ポイント減少し、緩やかな減少傾向が続いている。
  2. 奨学金受給者の平均金額は58,340円(自宅生53,260円・下宿生61,060円)で、前年から-960円(自宅生-2,550円・下宿生+560円)となった。
  3. 現在アルバイトをしている学生は70.4%(自宅生76.5%・下宿生65.6%)。調査を始めた08年以降最も高い就労率となった。
  4. ただし就職活動が後ろ倒しとなった4年生のみ、現在のアルバイト就労率(前年から2.7ポイント減)、この半年間の就労率(前年から2.0ポイント減)、1ヶ月の「アルバイト」収入(前年から2,910円減)、ともに前年から減少しており、特に文系の4年生の減少が大きい(それぞれ3.1ポイント減、4.0ポイント減、4,640円減)。
  5. また半年間のアルバイト収入の用途は「旅行・レジャー」25.1%(男子20.1%・女子31.0%)、「生活費のゆとり」21.3%(自宅生17.1%・下宿生25.1%)、「生活費の維持」20.4%(自宅生14.0%・下宿生25.3%)、「サークル費用」19.3%(自宅生22.5%・下宿生16.7%)、「衣類・バッグ」18.1%(自宅生23.3%・下宿生13.9%・男子11.6%・女子25.8%)などであった。

(3)暮らし向き(図表8〜10)

「楽」な暮らし向きは引き続き半数を超える
今後「よくなる」は79年調査以来の最高値に。「バイト収入増」を図る

  1. 暮らし向きが「大変楽な方」「楽な方」(以下「楽」)は52.7%(自宅生55.9%・下宿生51.2%・寮生35.0%)と、「楽」が引き続き半数を超えている。
  2. 一方「苦しい方」「大変苦しい方」(以下「苦しい」)は9.4%で、前年から0.2ポイント増。この25年間で「楽」は34.4%から52.7%まで増加したが、「苦しい」は9.1%から14.9%の間を推移している。
  3. 奨学金受給者の暮らし向きは「楽」が36.7%と、非受給者の61.5%より24.8ポイント低い。また下宿生の仕送り金額帯でみると「0円」の「楽」は28.1%、「苦しい」は24.4%と、奨学金の受給や仕送り金額が自身の暮らし向きの印象に与える影響は大きい。
  4. 今後の見通しは「よくなる」が18.3%(「かなりよくなりそう」「少しはよくなりそう」)で、前年から2.4ポイント増加し、同じ選択肢で調査をしている79年以来最も高い数値となった。
  5. また収入面の対策として「アルバイトを増やす」が47.1%(自宅生47.8%・下宿生46.5%)と最も多く、前年から2.1ポイント増加した。
  6. 貯金をする目的(前回は13年調査)としては「将来への蓄え」28.7%(自宅生32.1%・下宿生25.9%)、「旅行などのレジャー」28. 4%(男子22.2%・女子35.8%)が多いが、暮らし向きが「苦しい」学生は、「予備の生活費」「大学納付金」「奨学金返還」といった目的が多くあげられ、また「貯金をしていない」学生も多い。
  7. 2015年4~9月の半年間にあった特別な支出をみると「海外旅行」の実施率(-2.4ポイント)、実額平均(-5,900円)、有額平均(-12,100円)ともに前年から減少しており、この時期円安であったことが影響していると思われる。
  8. また文系 4年生は「国内旅行」「海外旅行」の平均額や実施率が下がり、「就職活動」の平均額、実施率は増加。就職活動時期変更の影響を受けたものと思われる。

【図表8】奨学金受給と暮らし向き

【図表9】仕送り金額と暮らし向き

【図表10】貯金の目的(暮らし向き別)

(%)



2.就職について

内定取得に余裕の表れ
インターンシップはプログラムによる役立ちの違いが明確に

(1)就職への意識

就職に対しての不安は「就職ができるか」の減少が続く

  1. 就職に対して不安を「感じる」(「とても感じている」「感じている」)73.5%(前年+0.5ポイント)、何かを「している」(「している」「まあしている」)48.5%(前年+0.4ポイント)、就きたい職業を「決めている」(「内定している」「未内定だが決めている」「だいたい決めている」)62.1%(前年+1.1ポイント)と、前年からの意識の変化は小さい。
  2. 就職予定者を100としても、不安を「感じる」75.8%(前年-0.4ポイント)、何かを「している」54.4%(前年-0.4ポイント)、就きたい職業を「決めている」69.4%(前年+1.0ポイント)で、前年の傾向との変化は小さい。
  3. 「就職ができるか(内定がとれるか)」という不安は、全体で40.3%と、データがある09年以降最も低くなった。
  4. また就職予定者を100としても「就職ができるか(内定がとれるか)」は43.9%まで下がり、文系3年生については「就職先が安定しているか」の不安も14.8%と、09年以降最も低い数値となった。
  5. 文系4年生の「内定している」が75.1%に対し理系4年生は78.2%で、理系の内定者が多い。

(2)インターンシップ(図表11~13)

<1日>インターンシップには約半数が参加、4年生の参加が多い
「役立った」は< 1ヶ月以上>56.9%、<1日>は23.6%

  1. この1年間でインターンシップに参加したことが「ある」13.5%(1年生1.7%・2年生4.4%・3年生24.9%・4年生25.3%・文系3年生33.3%・文系4年生37.8%・理系3年生20.8%・理系4年生17.6%)。
  2. インターンシップが「役立った」(「大いに役立った」「まあ役立った」)は11.7%(参加した人を100として86.7%・文系3年生92.8%・文系4年生79.9%・理系3年生90.9%・理系4年生85.2%)で、参加した文系4年生のうち18.5%は「役立たなかった」(「あまり役立たなかった」「全く役立たなかった」)と評価しており、学年によってインターンシップに対する印象が違う。
  3. インターンシップに参加した人の46.7%が<1日>のインターンシップに参加しており、文系3年生40.8%、文系4年生65.9%と、<1日>には4年生の参加が多い。また<2日以上2週間未満>は文系3年生64.6%・文系4年生63.0%、<2週間以上1ヶ月未満>は文系3年生11.4%、文系4年生11.9%であった。
  4. <1日>のインターンシップにのみ参加した学生は1年生0.6%(参加した人を100として34.0%・以下同)、2年生0.5%(10.4%)、3年生4.5%(18.0%)、4年生7.2%(28.4%)と4年生が多い。
  5. インターンシップの日程の長さと、インターンシップへの参加が役に立ったかは、ほぼ比例しており、
    <1ヶ月以上>にのみ参加した人は「大いに役立った」の割合が56.9%に対して<1日>のみへの参加者の「大いに役立った」は23.6%と低い。
  6. 1年生、2年生はインターンシップ自体への参加は少ないものの、期間は<1ヶ月以上>が多く、1年生は参加者の3割を占める。
  7. インターンシップへの参加回数は有額平均で2.2回(文系3年生1.9回・文系4年生3.1回・理系4年生2.1回)、そのうち<1日>には文系4年生が2.4回、理系4年生が1.9回参加している。

※図表11~13 について
「1d」…1日/「2d-2w」…2日以上2週間未満/「2w-1m」…2週間以上1ヶ月未満 /「1m-」…1ヶ月以上

【図表11】日程別参加者の感想(合計)

【図表12】日程別参加者の感想(3年生)

【図表13】日程別参加者の感想(4年生)

3.日常生活について

政治への関心が高い学生は日本の未来も前向きに捉える
「経済的な理由」で海外留学をあきらめる学生が全体の2割

(1)勉強時間・読書時間・スマートフォン利用時間(図表14・15)

読書時間「0」は45.2%に。平均時間も短縮

  1. 1日の読書時間は平均28.8分で前年より2.9分短縮、有額平均(読書した人の平均)も52.9分で前年から1.5分短縮となった。また読書時間「0」は45.2%(文系39.8%・理系48.1%・医歯薬系55.1%)と前年から4.3ポイント増加し、「0」の割合を更新している。
  2. しかし「60分以上」23.3%、「120分以上」6.9%も存在しており、「120分以上」の層は同じ形で調査を始めた04年以降4.5~7.5%の間を推移している。
  3. 男女別にみると男子の平均時間が32.0分(有額平均57.1分)、女子25.0分(同47.7分)と男子が長い。平均時間の長さは06年に男女間で逆転しており、読書時間「0分」も08年に逆転した。

【図表14】1日の読書時間

  1. 授業時間を除く予習・復習・論文などの勉強(以下<大学の勉強>)時間の1週間の平均時間は385.7分(1日55.1分)、1日の平均時間は前年より-1.6分であった。また就職や関心事についての勉強(以下<大学以外の勉強>)時間の平均は1週間で170.4分、1日24.3分で前年から-0.5分。<大学の勉強><大学以外の勉強>時間ともに前年から微減となったが、3年前と比較するとそれぞれ1日15.9分と6.2分増加している。
  2. また4年生全体の1日の<大学の勉強>時間は前年より3.2分減少しているが、文系4年生は前年から3.5分増加した。
  3. 1日のスマートフォン(以下スマホ)利用時間の平均は155.9分(男子148.6分・女子164.7分)。有額平均159.8分(男子153.3分・女子167.5分)。スマホを持たない、または利用しない「0分」は2.3%(男子3.0%・女子1.6%)と低く、ほぼ全員が利用している。
  4. 1日のスマホ利用の平均時間は前年から-7.7分、有額平均-11.5分。文系(前年-15.3分)、女子(前年-13.1分)、2年生(前年-12.0分)と利用時間が長い層の減少が大きい。

 

(2)政治への意識(図表16~20)

政治への関心は6割以上が「ある」。2年前に関心が低かった層の関心が高まる
16年夏の参議院選挙には7割が「行く」ものの、下宿生の1割は「行きたいが行けない」

  1. 国内外の政治の動向に関心が「ある」(「大いにある」「まあある」)は64.5%で、前回調査の13年から2.9ポイント増加した。女子62.4%(13年57.9%)より男子66.3%(同64.6%)が高く、また理系60.0%(同56.3%)より文系70.9%(同68.6%)が高い傾向は2年前と変わらないが、それぞれ関心が低かった層での関心の増加が大きい。
  2. 日本の未来は明るいと「思う」(「とても思う」「まあ思う」)は33.2%。男子35.4%に対して女子30.5%であった。
  3. 2016年夏の参議院選挙への投票に「行く」(「必ず行く」「なるべく行く」)は71.1%だが、下宿生(64.7%)は自宅生(78.5%)より13.8ポイント低く、「行きたいが行けない」が10.5%に上る(全体6.2%・自宅生1.3%)。
  4. 投票に対する意識と政治への関心や、日本の未来への期待との関係を見ると、投票に「必ず行く」学生は政治への関心が高く、日本の未来も「明るい」(「明るいととても思う」「まあ思う」)と思う傾向がある。
  5. 投票に「行きたいが行けない」学生は政治への関心の有無(「ある」6.2%・「なし」6.1%)や日本の未来への意識(「明るい」6.6%・「暗い」6.2%)の差は小さい。住民票の移動や時間の制約といった物理的な条件により投票行動が左右されているとも考えられる。
  6. 「行きたくない・行かない」は6.3%(自宅生5.2%・下宿生7.0%)で、理系(7.9%)が文系(4.6%)より高い。
  7. 政治への関心が「ある」層は、「ない」層と比べ、投票に「行く」が26.9ポイント高いほか、日本の未来についても「明るい」が5.2ポイント高い。

(3)留学への意識(図表21)

留学を「したいができない」30.1%。「経済的な理由」が6割を占める

  1. 大学入学後に海外留学の経験が「ある」は8.8%。「ない」90.3%のうち、在学中に「する」は11.4%(「必ずする」2.8%・「すると思う」8.6%)であった。留学経験がない人を100とすると「する」は12.6%(文系14.5%・1年生23.5%)で、前年からの変化はほとんど見られない。
  2. 一方在学中に留学「しない」は65.5%。そのうち「したいができない」は30.1%、「したいと思わない」が35.4%であった。「したいができない」理由は「経済的な理由」が18.5%と最も多く、「したいができない」人を100とすると61.5%に上る。そのほか「時間の余裕がない」12.9%、「語学力に自信がない」11.5%、「単位の取得が遅れる」10.4%があげられる。
  3. 「したいと思わない」理由は「興味がない」20.2%、「語学力に自信がない」13.7%、「経済的な理由」11.2%と続き、「したいと思わない」人を100としてそれぞれ57.1%、38.7%、31.6%であった。

【図表21】大学入学後の留学経験と在学中の予定