1.学生の経済状況
(1)自宅生の生活費(図表1)
1ヵ月の収入合計は4,660円減少/アルバイト収入が9年ぶりに減少
支出合計は3,950円減少/「食費」「教養娯楽費」の減少が顕著
- 自宅生の収入合計は62,820円。前年から4,660円、18年からは4,930円それぞれ減少した。
- 費目別には「アルバイト」が37,680円で前年から3,550円減少した。「アルバイト」の収入は11年から9年ぶりの減少となった。収入構成比は60.0%で前年から1.1ポイント減少した。
- 支出合計は62,130円。前年から3,950円、70年以降で最も高かった18年から5,070円減少した。
- 費目別には「食費」(10,670円、前年▲3,180円)、「教養娯楽費」(10,750円、前年▲2,240円)の減少額が大きく、「食費」の支出構成比は17.2%と70年以降最小となった。
- 「貯金・繰越」は19,610円で前年から2,730円増加した。支出構成比は31.6%で、この費目を設けた80年以降最も高くなった。

(2)下宿生の生活費(図表2・3)
1ヵ月の収入合計は7,610円減少/アルバイト収入が7,240円減少(減少率21.5%)
仕送り額2,400円減少/仕送り「0」の下宿生は全体の8.6%(前年+1.5ポイント)
支出も自宅生と同様「食費」「教養娯楽費」の減少が顕著
- 下宿生の収入合計は122,250円(前年▲7,610円)。70年以降で前年からの減少額が最も大きい。
- 費目別には「仕送り」が70,410円で前年から2,400円減少した。収入構成比は57.6%となっている。仕送り「0」の下宿生は全体の8.6%となり、16年以降4年ぶりに8%を超えた。
- 「アルバイト」が26,360円で前年から7,240円減少した。減少は15年から5年ぶりで、70年以降前年からの減少額が最も大きい。収入構成比は21.6%で前年から4.3ポイント減少した。
- 「奨学金」(21,130円、前年+230円)、「その他(貯金引き出しなど)」(3,900円、同+1,720円)は増加した。下宿生の奨学金受給者は、収入の46.5%を奨学金が占めており、「仕送り」は非受給者より48,640円少ない。
- 支出合計は121,180円(前年▲7,910円)で、これも70年以降前年からの減少額が最も大きい。
- 費目別でもすべての項目で前年より減少している。食費(24,570円、前年▲1,820円)、教養娯楽費(10,990円、同▲1,880円)、交通費(3,370円、同▲700円)は70年以降前年からの減少額が最も大きい。


(3)奨学金(図表4)
「給付型」奨学金の受給者が増加
「貸与型」奨学金受給者の73.4%が返還に不安
- 何らかの奨学金を「受給している」は32.1%で、前年から1.6ポイント増加した。受給者の平均額(有額平均)は56,870円(自宅生50,670円・下宿生60,740円・寮生60,220円)で330円増加した。
- 20年4月から対象が拡大された日本学生支援機構の給付型奨学金受給者は6.8%と5.0ポイント増加。その他の給付型奨学金と合わせた給付型受給者は9.6%で、前年から3.6ポイント増加した。貸与型受給者(24.8%)は、給付型受給者(9.6%)の約2.6倍となっている。
- 将来奨学金を返還することに不安を「常に感じている」+「時々感じている」は貸与型奨学金受給者の73.4%(前年+1.8ポイント)を占めている。(奨学金受給者を100として)

(4)アルバイト(図表5~7)
アルバイト就労率減少、とりわけ1年生の減少が顕著
半年間のアルバイト収入は24,000円減少し、使途から活動を制限された学生が見える
2年生以上では、勤務先からアルバイトシフトを減らされた経験は5人に1人
- 半年間(4~9月)のアルバイト就労率は72.4%と前年から11.5ポイント減少した。学年別では1年生の減少が大きく、1年生59.1%(前年▲19.1ポイント)、2年生79.5%(同▲8.8ポイント)、3年生80.0%(同▲7.7ポイント)、4年生73.6%(同▲8.4ポイント)。社会的生活行動制限の影響を大きく受けた1年生の「新規にアルバイト先を探したが見つからなかった」(6.2%)は、2~4年生より4ポイント前後多い。(図表5・6 )
- アルバイトをした人の半年間の収入(有額平均)は250,000円で、前年から24,000円の減少となった。
- アルバイト収入が「大きく減少した」+「減少した」は43.1%、「変わらない」43.5%、「増加した」+「大きく増加した」が12.3%となった(「アルバイトをした」を100として)。
- アルバイト収入の使途として、「サークル費用」(前年▲16.2ポイント)、「旅行・レジャー費用」(同▲14.4ポイント)の減少が目立つ。反面、「生活費のゆとり」(同+2.9ポイント)、「生活費の維持」(同+1.8ポイント)が増加した。コロナ禍で行動が制約されている状況が表れている(「アルバイトをした」を100として)。(図表7)
- アルバイトの実態では「勤務先からシフトを減らされた」「アルバイト先の休業で勤務できなかった」が、2年生以上で目立っている。(図表6)



(5)暮らし向き(図表8)
収入面の対策は「我慢する」「特に対策はない」が増加
- 暮らし向きが「大変楽な方」+「楽な方」は61.9%で4年連続増加したが、これから先の見通しは「かなりよくなりそう」+「少しはよくなりそう」16.0%と前年から5.3ポイント減少した。
- また、「少し苦しくなりそう」+「かなり苦しくなりそう」は23.2%で、1年生18.5%、2年生21.8%、3年生25.9%、4年生27.8%と学年が上がるほど先の見通しを「苦しくなりそう」と見ている。
- 収入面の対策は「アルバイトの増加」47.4%(前年▲8.0ポイント)、「特にない」28.3%(同+6.7ポイント)、「我慢する」13.8%(同+2.5ポイント)、「奨学金の申請」5.8%(同▲1.2ポイント)、「仕送りの増加」3.9%(同▲0.8ポイント)となっている。自ら収入を増やす「アルバイトの増加」や「奨学金の申請」が減少し、「特にない」「我慢する」など「耐える」対策をしている。(図表8)
- 節約・工夫したい支出費目の中で最も多い「外食費を含む食費」は、95年以降の60%以上から減少し、57.7%と90年(57.5%)と同水準となっている。
※この設問は隔年調査
- 増やしたい支出費目の中で最も多い「貯金」32.2%は18年から+1.7ポイント。増加の大きい費用は「教養娯楽費」16.0%(18年から+6.9ポイント)、「勉学費」14.9%(18年から+4.4ポイント)となっている。
※この設問は隔年調査

(6)半年間の特別費(図表9)
「合宿」「留学」「旅行」「就職活動」は大きく減少
「耐久消費財や高額商品の購入」「運転免許」が増加
- 20年4~9月に支出した特別な費用の有額平均額(0を含まない平均)は172,700円で前年から35,200円減少となった。
- 減少した費目は「合宿代」「国内旅行」「海外旅行」「帰省代」「留学」「就職活動」だった。
- 増加した費目は、「耐久消費財や高額商品の購入(パソコン・情報機器関連・スマホなど)」、「運転免許」「各種スクール(資格などの講座やスクール、eラーニングなど)」となった。
- 自己負担額は66,200円で前年から33,300円減、自己負担率も42.8%で前年から7.5ポイント減少した。

(7)大学納付金支払者、家計支持者の収入変化(図表10~11)
授業料などの学校納付金を負担する学生は11.4%(一部負担含む)
「主な家計支持者」の収入は18.9%が減少
- 「保護者・親族」「自分」「学費免除の手続きをしている」を組み合わせた、授業料などの大学納付金(学費)の支払者は「自分」11.4%。一部負担も含め1割以上の学生が学費を負担している。「保護者・親族」は82.4%、「学費免除…」4.2%となっている。この中で「保護者・親族のみ」は76.0%、「自分(奨学金・アルバイト収入など)のみ」も5.3%いた。(図表10)
- 半年間で「主な家計支持者」の収入が「大きく減少した」+「減少した」は18.9%となっている。大学納付金の負担感が増したことがうかがわれる。(図表11)

