CASE 5

反転学習に講義資料配信を活用
教員同士で効果的な活用法をFDで
共有しています

大阪府立大学
高畑進一先生宮井和政先生

高畑先生・宮井先生


 

 

聞き手:大学生協東京事業連合 森川佳則
 

──大学生協の電子書籍システムを採用しようと思われたきっかけや狙いについてお教えください。
高畑:
大阪府立大学は文部科学省の事業、大学教育再生加速プログラム(以下AP)に採択されました。これは全学の取り組みで、平成26年度から本格的に全学で動いております。その中で、総合リハビリテーション学類全体(理学療法専攻・作業療法専攻・栄養療法専攻)で、アクティブラーニングを推進する、そしてこの学類においては"反転学習"を中心にやっていこうということを計画しました。 その反転学習を推進するために今回この生協のシステムを採用して事前に資料配信を行い、学生の自宅学習を促そうということをすすめてきました。


──では複数の先生で同じ授業をされる中で気をつけている点等ありましたらお教えください。
高畑:
ひとつの授業を複数の教員でオムニバス形式で担当する場合に、配信するものが複数になりますので、配信の授業回数、日時、その授業で行う内容・・などをできるだけ盛り込んでタイトルをつけて配信をするようにしております。そうでないと学生がどの資料が次の授業の事前配信の資料かということが混乱して、見るべきものを見てこないとか、あるいは間違ったものを見てくるとか、そういう事が起こりやすいということがございましたので、そういうところに注意しております。


──実際に授業の使用までに困った事とかありましたらお教えください。
宮井:
特にこのシステムは大学の教務システムと紐付ける必要があるんですけれども、その紐付けに少し時間がかかっている現状がありまして、特に学期の初めの方は授業の前に配信ができないというような状況が起こっております。 特に1年生の前期で非常に顕著なんですけれども、その点につきましてはこちらの大学の方の教務システムとも併せまして改善が必要なのではないかなと感じているところです。


──講義資料を配信して反転学習を進めるという狙いがありましたが、実際どのような運用を行っていますか?授業の進め方や予習復習のスタイルなど。まず宮井先生からお願いします。
宮井:
どの先生も似ているとは思うのですけど、自分の講義の1週間前に講義資料を配信しまして、特に具体的な指示は出してないですが、資料を配信したのできちんと見てから授業に臨んでください。ということを伝えております。 実際の講義では僕は穴埋め形式で行っているのですけれども、その穴埋めのところを書いてもらう時に実際にその場でパソコンで参照している学生さんもちらほら見受けられるようになってきています。 また、私が担当しているのは解剖生理学という講義なのですが、特に上級生になってからいろんな学問の核になってくる学問ですので、復習にも使えますよ!というのは特に強調して伝えてあります。 授業でもわからないことがあったら「ちゃんと僕の授業でやっていますから、きちんとそこを調べれば出てくるはずですよ」というのは何回も何回も念入りに伝えるようにはしています。

高畑:
配信の仕方は同じです。授業の1週間前を目処に事前に資料を配信する。そしてどういうところを中心的に予習しておいてほしいかを伝えまして、その上で対面授業に臨んでいます。おそらくこれは他の教員もほぼ同じ方法で行っていると思います。


──先生方で学び合いの中で、FD等をされているということなのですが、そこの部分も少しお教えいただければと思います。
高畑:
今はAPの事業が進んでおります。ですからこの反転授業をとりくんでいる教員に対して毎年アンケートを行っております。 このアンケートでは、効果があったことや、逆に不便であったことを調査し、私ども委員が取りまとめています。 今後は、いい取り組みについては共有化できるよう、FDなどを行っていきたいと思っています。


──学生様からもアンケート取られていると思うのですが、実際学生様の姿は何年間かの取り組みの中で変化はございましたでしょうか。
高畑:
アクティブ・ラーニングや反転学習において一番重要視しているのはやはり自宅学習の時間を充実させることだとおもいます。この数年間アンケートを取りつづけておりまして、その自宅学習の時間は徐々に徐々に増えてきております。それがこの取り組みの成果であろうと考えております。


──今後の授業に対して、展望・抱負などをおふたりにお聞きしたいと思います。
宮井:
私の方は今年度からは事前の配信行っているんですけれども、僕は授業の形式自体は穴埋め形式で行っておりまして、穴埋めのところを書いてもらうということを今授業中でやっております。 事前配信することでその場でPCの資料を見ながら書き込むという学生さんもだんだん散見されるようになってきましたので、将来的にはこれをもう一段階ステップアップして、プリント(紙の資料)自体も先に配ってしまって、家で穴埋めをしてきて下さいと・・。授業の方は話を聞くことに集中してくださいねというような流れが構築できればなということを考えているところです。

高畑:
そうですね。今のような取り組みをはじめ、今後もっといろいろな方法を教員が考えられると思うんですね。事前に資料を配信する。その資料を用いてどのように事前学習をするか。対面学習が終わった後にその資料を用いてどのように事後の学習をするか、復習をするか…このあたりのつながりを全部うまく組み立てられるような取り組み・工夫が今後はもっと必要だと考えています。


──なるほど。反転学習による予習・実際の授業で・さらに復習で活用・・そのサイクルを循環させ、それを先生同士の学び合いで更に広げていこうというのがいまの狙いだという事ですね。
高畑:
そうですね。そういう形でいろいろなやり方が生まれてくれば、活用方法が広がりますし、学生の理解も深めることができるのではないかと思います。


──本日はありがとうございました。

 
高畑 進一(たかばたけ しんいち)
【所属】
2007年度 – 2018年度 : 大阪府立大学大学院 総合リハビリテーション学研究科 教授
2012年度 – 2018年度 大阪府立大学地域保健学域 総合リハビリテーション学類 教授
2005年度 – 2011年度 大阪府立大学 総合リハビリテーション学部 教授
2003年度 – 2004年度 大阪府立看護大学総合リハビリテーション学部 教授

【審査区分/研究分野】
精神神経科学 / スポーツ科学 / リハビリテーション科学・福祉工学

【キーワード】
PET / MEG / emotion / 模倣 / 観察 / Three-dimensional motion analysis / delusion / Disabled sports / 扁桃体 / kinematic analysis …

 
宮井 和政(みやい かずまさ)
【所属】
2016年度 – 2018年度 : 大阪府立大学 総合リハビリテーション学研究科 教授
2014年度 – 2015年度 : 関西看護医療大学 看護学部 特任准教授
2009年度 – 2013年度 : 秋田大学 医学系研究科 准教授
2008年度 : 秋田大学 医学系研究科 助教
2003年度 – 2007年度 : チューリッヒ大学 生化学部 博士研究員
1996年度 – 2004年度 : 奈良先端科学技術大学院大学 バイオサイエンス研究科 助手

【審査区分/研究分野】
疼痛学 / 神経科学一般 / 解剖学一般(含組織学・発生学) / 生物系 疼痛学 / 神経化学・神経薬理学 / 疼痛学 / 神経化学・神経薬理学

【キーワード】
管腔臓器 / ATP / cAMP / 上皮組織 / 内臓感覚 / セロトニン / ニューロプシン / シナプス / 5-HT受容体 / 形態学的リモデリング