CASE 1

大学生協の電子教科書は、
学生とのコミュニケーションの広がりにも
役立っています!

京都大学 理学研究科
馬場 正昭教授

馬場 正昭教授


 

 
──大学生協の電子書籍システムを採用しようと思ったきっかけを教えて下さい。
馬場:
もう10年くらい前になりますが、特に京都大学の1,2年生を相手に一般教養科目の授業を始めようと思ったのですが、あまり授業が面白くないので、その時からアクティブラーニングを取り入れようとしまして。例えば・・まだ3.11はありませんでしたが、原子力発電の問題とかをアクティブラーニングで、しっかりやろうと考えていました。
そうしているうちに、この大学生協のDECSシステムのお話がありまして、これは一番いいなと思って導入することにいたしました。


──一般教養の授業をアクティブラーニングを使って、より学生の興味を高くするというのが狙いだったということでしょうか。
馬場:
学生はそれまでやっぱり受動的と言いますか、一方的に話を聞くだけでそれでは全然力にならない。
やはり教員も学生も一緒になって問題を解決していくという・・そういう授業で一番良かったなと思っています。


──今はやりの「能動的学び」ですね。
馬場:
そうですね(笑)。


──実際に授業を行うために工夫したことや準備したことについてお教えください。
馬場:
やはり電子教科書なので、紙媒体ではできないような長所を活かそうということで、例えば動画を貼りつけたりですとか、資料を補足したりですとかそういうのを少し工夫しました。


──実際、授業の使用までに困ったこと、悩んだこと等ございますか?
馬場:
もちろん最初はビューアの使い方もわかりませんし、実際にどのようにして、学生さんに購入いただくようにすればよいか等、全然わからなかったので、ちょっとまごまごしましたが、大学生協さんが(特に京都大学生協)すごく親身に相談に乗ってくれましたので、スムーズにいきまして、今困っていることは全くありません。とても感謝しています。


──ありがとうございます。
先ほど先生の工夫をお聞きしたのですが、今度は学生さんの工夫、学生さんの受け止めについて教えてください。

馬場:
実は、私がやっている授業は必修ではないので、全員の学生さんがこれを購入してくれるわけではありません。それでちょっと悩んではいたのですが、実際やってみると、必修より親身になってくれる学生さんが多くて、とてもいい授業になりましたよね。
それでレポートに(まあ私は何も要求してないのですが)、「最後に、先生!これはとてもためになりました!」とか、「すごく勉強になって将来役に立ちます」というような、とても嬉しいレポートをいっぱい書いてくれますので、とても効果が上がっていると思いますよ。


──まさに、馬場先生のファンの学生さんがいるように、私もコメントを拝見して感じました。やはり「先生に直に伝わる」というのが魅力だったのでしょうか。
馬場: はい。理想的にはやはり人と人とのつながり、まぁ今よく『コミュニケーション能力』といいますけどね。それを身に付けるというのも、この電子教科書を使った授業の一番の長所だと思っています。まぁファンというか、どうかわからないですけどね(笑)
私も学生さんといろいろ接する機会が増えてとても楽しく授業をやっています。


──教科書はデジタルですが、学生とのコミュニケーションなど、やり取りを重視されたということですね。
馬場:
はい。やはりそれが一番大事で、まぁもう一つは、例えば京都大学って、大学に馴染めないとか、授業に出て来られなくなる学生さんも、ちょっといらっしゃいます。そういう方のためにも、コミュニケーションツールは、とても大事なものだと思っています。


──なるほど。今までのところで学生さんの姿が見えてきたのですが、学生さんの方で機能の工夫とか使用法とかでなにかございましたら教えてください。
馬場:
基本的には、このビューアにはメモを書き込んだり、付箋を貼ったりして、それを学生と教員みんなで共有できるというシステムがあります。それを基本にコミュニケーションをとっていますよね。
学生さんもそれに慣れてきたので、今回初めてアンケート機能というのを使って、これはちょっと楽しい授業がいろいろできそうだというのを少し体験しましたので、ちょっとこれから楽しみにしてそれを工夫していこうと思っております。


──授業が終わった後にアンケートをとられたりしたのですが、学生さんの声の中に、特徴的なもの等はございますか?
馬場:
まずは、これはICTを使わなければいけないので、最初はどうしても難しいなという意見がやはりありますが、その使い方も含めて、「とても役に立つ 将来自分が身に付けるキャリアパスとして使えるというメリットもある」というような感想をたくさんもらいました。


──今後の授業に対しての展望や抱負がございましたらお聞かせください。
馬場:
実は、私もまだこの使い方に慣れているわけではなくて、機能を使いこなしているわけではありません。時々大失敗をして、まごまごすることがありますが、実はその時学生さんがフォローしてくれて、「先生こうですよ〜」とかね(笑)「こうしたらいいですよ」とか・・、それも含めて、なんかこれがアクティブラーニングだなっていうのを体験しました。だからみんなで作っていく・・私はクリエイティブクラスと言っていますが、まぁそういうのが、こういう授業の理想の形かなというふうにはちょっと思っています。


──教えることだけではなく、そのような機能も含めて先生・学生 相互で学び合っていくこと、高め合っていくことが重要だということでしょうか。
馬場:
『教育』というのは、やはり教員も自分を高めていく必要があります。
それで一体となって、もちろん学生さんが将来社会に羽ばたいていく、これも一番大事ですが、我々 教員自身も自分を磨いていくそのためにも、このVarsity Wave、とても有効だと思っています。


──最後になりますが、今後大学生協に期待することはございますか?
馬場:
実は私、生協の教職員役員をして、いろいろお手伝いをしているんですけど、大学の生協さんってとても大事で、普段大学生活で学生さんが一生懸命勉強している、職員も一生懸命頑張って働いている、それを生協の人が一生懸命支えてくれていますよね。
やはり学生さんにとって授業って一番大事なことなのでまあそれに対しても教材とか、コミュニケーションツールとしてこの電子教科書を導入する・・これは一番大事なことだと私は思っています。
これから、そういうわけで我々教員もそうですけれど、学生さんとそこに大学生協さんも入っていただいて、これからこのような新しい『ICT教育』というのは、どんどん普及していくと思うので、一緒になってどんどん改善していければいいかなと思っています。これからもよろしくお願いいたします。


──大学生協がペンやノート、教科書を「売る」からもう一歩進めた、先生・学生さんと一緒に「学びを造る」立場に立っていい。 むしろ立つべきだというような先生のお考えだと受け取ってよろしいでしょうか?
馬場:
はい。みんな一体となって楽しくいいシステムができれば、やはりみんな楽しいと思うんですよね。それをちょっとお願いしたいと思っています。


──まさに楽しく学ぶ環境をみんなで作り上げていきたいですね。
今後ともよろしくお願いいたします。  


 
馬場 正昭(ばば まさあき)
1955年、福岡県生まれ。京都大学大学院理学研究科修士課程修了。神戸大学理学部助手、京都大学教養部助教授、同大学総合人間学部助教授などを経て、京都大学理学研究科教授(化学専攻 電子スピン化学講座)。専門は、物理化学、レーザー分子分光、励起分子ダイナミクス。理学博士(京都大学)。