2024年05月13日(月) | 《特別TOPICS》
鹿児島大学 郡元キャンパス中央食堂では、AI・IoT技術によるリアルタイムの混雑情報が提供されています。これは鹿児島大学生協が協力し学術研究院理工学域工学系 機械工学専攻 准教授 熊澤典良先生の研究室が開発したもの。
混雑が可視化されることによって、どのような変化が生まれたのでしょうか?
最も食堂が混雑する12時〜13時のランチタイムは、行列が当たり前の光景です。郡元キャンパス中央食堂では、およそ600人が利用できますが行例や密を避ける為、これまでしてきた事は ①提供・会計を素早くする ②学生は早めに利用する ③あらかじめ持参する ④食堂利用を諦める…。温かい食事を摂って欲しい職員の想いで言えば、特に④は避けたい事の一つでした。
生協職員としても、行列を早く解消する為にスピーディーな提供や、レジの下に応援ボタンを設置し、混雑してきたらレジ応援を事務所に要請して対応。ボタンをいつ何時何分に押した!と言うのを可視化したら、もっと意識が変わるのではないか?と前任の専務理事は感じていました。
そこで食堂の混雑状況が一目でわかれば、利用もスムーズにストレスなく出来るのではないだろうかと、可視化したシステムを鹿児島大学准教授 熊澤先生と研究室の大学院生そして生協も開発に協力して実現しました。
食堂内にタイプの違う4つのカメラを設置。1つは魚眼カメラで全体を見渡せる事ができます。他に30倍のズームカメラで商品の棚を映せば、何を選んでいるかが分かり、抑止力にもなります。様々な角度から各特徴のあるカメラを設置する事で、より正確な状況を把握し、それをAIの技術で人の動きとして数値化。混雑の具合が赤い折れ線グラフで提供され、数十秒おきに最新情報に更新されます。
この情報は店舗入り口で見られる他、鹿児島大学生協のホームページで公開されているので、利用者はスマートフォンなどで教室からでも随時確認することができます。実際に表示されるのは待ち時間とグラフなので、利用者のプライバシーは守られています。
お弁当の状況(残個数)をこちらのモニターで反映します
このシステムが導入された事で、職員の動きにも変化が起きました。スタッフ側ではモニターと待ち時間の両方が見られるため、これまではバックヤードにいると感じられなかった混雑状況を確認して、レジ応援に走り混雑を回避したり、商品の速やかな補充を行ったりとスタッフ側もスムーズに動けるようになりました。
またキャンパス内に点在している複数の店舗に設置しているので、職員も他店舗の混雑状況を共有できるという利点もあります。
熊澤先生の研究室でもモニターが映し出されているので随時確認する事ができます。開発にあたって、苦労もありました。「頭の数を認識するのに髪色の黒で設定したら、他の衝立の黒に反応したり、髪が金髪だったり帽子をかぶっていたり、ポニーテールに反応しなかったり…」(熊澤先生)
参加した理工学研究科2年の吉野さん(今春卒業)は「研究の中で、意外とこんなに混んでいたっていうのが目でわかるようになりました。あと、気温などのデータも予測に取り込んで食材の仕入れ量などの調整にも生かしていければ。」と話しています。
熊澤先生研究室で学ぶ学生たち
この研究の成果が認められ、2024年1月 ICTを活用し鹿児島愛にあふれた活動を表彰する<第4回鹿児島
混雑解消システムSmaMEは更に活用の幅が広がります。例えば保存した映像を早送りを行い、利用者の動きを分析、買いやすい棚のレイアウトや、支払い方法にかかる時間などを観察できる。時期に合うタイミングの良い仕入れや量なども予測可能に。
キャンパス内の複数店舗で設置すれば、空いている店舗への誘導や、自主的な店舗間の人員支援なども期待できるのでは無いかと考えています。