九州大学生協第103回定例総代会は、2024年5月25日(土)にビッグさんど地下1階ビッグダイニングで開催いたしました。本総代会では総代214名のうち、54名が対面で出席し(うち9名は早退)、書面出席154名と委任出席2名を合わせた計210名の総代が何らかの形で総代会に参加しました。
例年の総代会では、議案に対する議論を学生委員(以降そしき部員)が各グループに入って議論の補助をしつつ進行していました。その後に行われる質疑応答でも比較的差しさわりのない質問や事実関係を確認する質問に終始しており、そしき部員は運営上のスタッフのような役割を果たしていました。
九州大学生協第103回定例総代会
ただ今回の第103回総代会では意見が飛び交い、参加した総代が本気で九州大学生協の将来を考えた質問や提起が行われ、想定時間を大幅に上回る議論が展開されました。本記事では大きく、そこに至るまでの経緯と総代会当日、総代会後の取り組みについてを取りまとめていきます。
総代会実施までの背景
理事会
分科会PPT
2月末に行われた2023年度第8回理事会内にて、農学系生活支援施設(アグリダイニング、ウエスト5号館店)の事業者公募に関する協議が行われました。理事会内では矢原理事長や出水副理事長を中心とする教員理事の方と学生理事の間で九州大学生協の今後について真剣な議論が執り行われました。丁度その頃総代会の準備をそしき部内で始める時期だったということもあり、そしき部員の学生理事の中でも食堂を1つなくすという意思決定を行うことをこの理事会の場だけで行ってよいのかという話があがりました。その中で、「コロナ禍以降行うことが出来ていなかった分科会という形でこの議題を扱うことができるのではないか」という提案を理事会で学生理事の方から提案させていただきました。
その提案に対し、「組合員である学生から声を上げることと、その中心には学生理事の多くが所属するそしき部があるべきだ」という教職員理事からの積極的なご意見をいただきました。より組合員に開かれた場である総代会の分科会という形で総代からの意見も取り入れて決定をしていくという運びを理事会で承認いただき、当時常任理事とそしき部で部長を務めていた中川湧太くん(現3年生)を中心に総代会における分科会として実施しました。
農学部説明会の様子
おいでよそうだいの森
このような議論の場を設ける総代会により積極的な議論ができる状態参加をしてもらうべく「おいでよそうだいの森」という1, 2年総代に向けた事前学習会兼交流会を実施しました。こちらについては1年生総代の9割が参加し、その多くが総代会にも参加をしてくれたことで積極的に意見をする総代の数を増やすことに大きく貢献をしました。
総代会当日
分科会概要
本年度の総代会は例年の議案の他に、分科会として「アグリダイニング(農学部食堂)を救え!」というプログラムを実施しました。
本プログラムは経営状況の悪化のため営業時間の見直し、または経営継続の可否という実際の理事会で議論されている問題を総代さんが取り組むプログラムへと昇華したものです。
本プログラムは総代さんへ生協運営に携わっているという認識を深めてもらうこと、また九大生協の厳しい経営状況を身をもって体験することでより多くの組合員に危機感を持ってもらおうという考えのもと実施いたしました。
実際のプログラムの内容としてはまず九大生協の現状の運営状況ならびに現状の価格で黒字化を達成するために必要な利用量の増加幅を示しました。その後、アグリダイニングの営業についてA.営業時間を短縮して営業を継続する B.黒字化の目処が立たないため営業を継続しない という2つの立場を選択していたただきました。
その上で、Aの方は黒字化を達成する具体的な方法(値上げ、食事スペースの拡大による効率的な利用)を、Bの方は利用できる食堂が近くになくなってしまった農学部学生が不利益を被らないためにどうするか(生協弁当の充実化、出張販売など)について考えてもらいました。
本プログラムははじめ40分の予定でしたが、想像以上の盛り上がりを見せ、90分を超えるプログラムとなりました。
また、日頃理事会等に出ていない総代さんのために各月の利用点数・金額を示した表やアグリダイニングのレイアウト図、出食表などを参考資料として各テーブルに準備しましたが、それでも会後のアンケートでは「事前知識の共有が不十分だった」という意見が出るほど総代さんが問題に対して深刻に捉え、真剣に考えてくださりました。
運営責任者中川湧太さんのコメント
九州大学3年
中川湧太さん
運営側としては、総代さんがこれほど真剣に考えて取り組んでくださったことを嬉しく思うとともに、総代会以降の動きが重要だと考えています。問題意識を持った総代さんが組合員の中にいるだけでは、生協運営にはそれほど大きな影響を及ぼしません。問題意識を持った組合員を巻き込んで大きな動きを作ることではじめて本プログラムを行った意味が生まれると考えています。実際に総代会の約1ヶ月後には実際に総代と農学部学生でアグリダイニングの運営について考える「農学部説明会」を行いました。この説明会に参加した総代さんからは「九大生協の赤字の問題は農学部食堂だけに限った話ではない。ぜひこの食堂以外でも意見交換会を実施して欲しい」というご意見をいただきました。
今後は経営状況を考えるべき他の食堂・生協店舗へと活動を拡げ、九大生協の運営について組合員みんなで考えていくことが必要だと考えています。
私自身そしき部員として様々な企画に携わってきたのですが、その多くは参加者さんと運営側という関係性でした。今回はそうではなく、同じ立場に立ってもらった上でこのような発言が総代さんの方から出たということに驚きを覚えるとともに、分科会をやって良かったなと思わされる1番の出来事でした。
総代会後
農学部説明会
分科会における議論の結果70%の総代が上記2つの選択肢のうち 「A.営業時間を短縮して営業を継続する」を選択しました。それを踏まえ再度常任理事会で議論を行ったのちに、農学部で総代と農学部の組合員に対する説明会を実施し、今後についての意見交換を総代同士で行っていただきました。
執筆者コメント
全国大学生活協同組合連合会
2024年度九州ブロック学生事務局
九州大学法学部 4年
今川大悟さん
自分自身も実際にこの総代会に学生理事として参加をしておりましたが、総代さんからのエネルギーには驚かされるものがありました。自分たちの大学に誇りをもち、よりよい大学づくりに貢献をする大学生協にもっとよくなっていってほしいと考える総代の方々が多くいたことにあきらめかけていた総代会のあるべき姿を見つけました。コロナ禍で1年生の頃の総代会は書面議決がメインであった総代会が、総代さんの積極的な参加による成立する民主的な議論のもと、本音で「組合員のよりよい生活と平和」を追い求めている空間がそこにありました。
材料費や水光熱費の高騰に伴う経営の悪化やとまらない日本社会における少子高齢化など大学生協の今後には暗いものが多いのではと考えることもありました。しかしコロナが収束し対面での活動が復活した今、協同組合だからこそ作れる「つながり」や「対話」の価値について改めて向き合う必要があることに気づかされました。
今回の総代会を通して今も昔も組合員の形は変われど本音で「よりよい生活と平和」の実現を願っているのだと感じることができました。そしてこれは九州大学生協に限った話ではないと考えています。大学生協がそういった変化する組合員の現状に寄り添い続け、学生のよき理解者であり続けることこそが、組合員にとって「安全・安心で誠実な、信頼できる大学生協」であり続けるために欠かせないことであると再認識させられました。