第49回「学生の意識と行動に関する研究会」地域から見た大学への期待、大学の地域の貢献

2025年10月14日、第49回「学生の意識と行動に関する研究会」が開催され、「地域から見た大学への期待、大学の地域の貢献」をテーマに議論が行われました。本研究会は、報道機関の記者有志と全国大学生協連が協力し、若者の社会的意識を掘り下げることを目的としています。全国大学生協連会館をメイン会場とし、オンラインも併用したハイブリッド形式で開催し、オンライン・オフラインの両方から多くの参加があり、活発な意見交換が行われました。
 
 
司会  日本私立大学協会 広報部 大嶽 奈々 様
司会
日本私立大学協会 広報部

大嶽 奈々 様
全国大学生協連 専務理事 中森 一朗
全国大学生協連 専務理事
中森 一朗
越前市役所 総務部 スポーツ交流課副課長 近藤 佳孝 様
越前市役所 総務部
スポーツ交流課 副課長

近藤 佳孝 様
仁愛大学 人間生活学部 健康栄養学科 教授 鳴瀨 碧 様
仁愛大学 人間生活学部
健康栄養学科 教授

鳴瀨 碧 様
仁愛大学 健康栄養学科 4年 鳴瀨ゼミの皆さま
仁愛大学 健康栄養学科 4年
鳴瀨ゼミの皆さま
全国大学生協連 全国学生委員会(2025年度)委員長 髙須 啓太
全国大学生協連 全国学生委員会
(2025年度)委員長

髙須 啓太
 
司会
本日司会を務めます日本私立大学協会の大嶽と申します。よろしくお願いいたします。学生の意識と行動に関する研究会は、全国大学生協連の呼びかけで報道機関の記者有志が運営委員会を作り運営してきました。49回目の本研究会では、地域から見た大学への期待、大学の地域の貢献をテーマに、福井県の仁愛大学人間生活学部健康栄養学科鳴瀨碧教授および仁愛大学の学生様、越前市総務部スポーツ交流課副課長近藤義孝様よりご報告をいただき、研究討論をいたします。

それでは、開会にあたって、研究会の事務局を代表して、全国大学生協協同組合連合会の中森よりご挨拶をお願いいたします。
 
全国大学生協連 中森専務理事
皆さんこんにちは。全国大学生協連専務理事の中森です。本日は「地域から見た大学への期待、大学の地域貢献」というテーマで、仁愛大学様と越前市の皆様から事例をご紹介いただきます。冒頭、鳴瀨先生や司会の大嶽さんとも話しましたが、本当に典型的で優れた地域連携の実践を伺えることをありがたく思います。

私が大学生協に関わり始めた頃、大学は「象牙の塔」と呼ばれ、外部と隔てられた存在でした。しかし近年は「地域に開かれた大学」へと変化しており、今まさに発展途上の段階にあります。学生数が減少する中で、大学が地域の中でどう存在感を示し、貢献していくかは大きな課題です。

行政の皆様からのご報告もあると伺い、当時は難しかった「大学と行政の連携」が進んでいることを心強く感じています。行政の立場から大学にどのような期待を持っておられるのか、ぜひお聞きしたいと思います。

学生の皆さんも、地域の方々との交流を通じて多くを学ばれていることと思います。食育活動やスポーツ選手との関わりなど、実践的な学びが得られる良い機会ですね。

最後に、大学生協としても地域との連携を重視しています。例えば大学農場のブドウでスパークリングワインを作る取組や、地域の神輿担ぎへの学生参加など、多様な形で協力しています。本日の学習会が、そうした連携の意義を共有する場となることを願っています。以上、開会のご挨拶といたします。
 
司会
中森専務理事、ありがとうございました。それでは、越前市総務部スポーツ交流課副課長近藤義孝様より、e☆SPARKLE(e☆SPARKLE(イースパークル))、地元出身アスリートチームの連携プログラムと題して、地域から見た大学との連携事業についてご報告いただきます。それでは、近藤様よろしくお願いいたします。

越前市スポーツ交流課・近藤副課長 より

越前市スポーツ交流課・近藤副課長
それではe☆SPARKLE(イースパークル)地元出身アスリートチームとの連携について私福井県越前市スポーツ交流課の近藤がご説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。まず、福井県の越前市について動画でご紹介させていただきたいと思います。

~プロモーション動画~

仁愛大学様は昭和57年に短期大学として開学し、平成13年に4年制大学となりました。平成17年には大学院を設置し、令和8年度には新たにビジネスコミュニケーション学部を開設予定です。平成19年の協定を機に、地域社会の発展と人材育成を目指して、市と大学が連携し様々な事業を展開してきました。

令和7年度の代表的な取組を3点紹介します。
 
越前市スポーツ交流課・近藤副課長

1つ目は「地域観光人材の育成」です。観光に関する専門知識を持つ人材を育てるため、市・大学・県・観光連盟の4者が協定を締結し、令和6年度から観光学特設コースを設置しました。令和8年度の新学部設置に先立ち、県などと連携して講義支援を行っています。

2つ目は「多様性社会に向けた寄附講座」です。越前市は人口の約7%が外国籍市民で、特にブラジルにルーツを持つ方が多く、ポルトガル語講座を開設。公開講座やミニ講座を通じて、多文化共生に貢献できる人材育成を進めています。

3つ目は「市職員による講義」です。平成27年度から毎年、全学部2年生を対象に市の職員が講師として講義を行い、ふるさと教育や市の施策理解を深めています。基礎演習や公共政策などの科目でも、自治体職員が登壇し、学生が地域課題の解決策を考える機会を提供しています。

越前市では令和6年に「第2期スポーツ推進プラン」を策定し、「誰もが元気に幸せ実感できるまち」を基本理念としています。生涯スポーツや地域スポーツ環境の充実など5つの目標を掲げ、2025年4月にはトップアスリートによるプロジェクト「e☆SPARKLE(e☆SPARKLE(イースパークル))」が発足しました。競技の枠を超え、市民に夢と活力を届ける活動を展開し、スポーツの力でまちの活性化を目指しています。

~紹介ビデオ~
 
e☆SPARKLE(イースパークル)の設立趣旨

e☆SPARKLE(イースパークル)の設立趣旨ですが、市民一人ひとりがスポーツを「する」「観る」「支える」機会を得ることを目指しています。スポーツをより身近に感じ、誰もが自分なりの形で関わり、元気や前向きな気持ちを得られる地域社会の実現を目指しています。活動を通して「スポーツを応援したい」「関わりたい」という人が増えることで、地元越前への恩返しになると考えられています。アスリートたちは「多くの支えのおかげで挑戦を続けてこられた」「学びや出会いを次世代につなげたい」「夢中になれる場を広げたい」と話しており、子どもたちに夢や目標を持つ大切さを伝えたいという思いが込められています。子どもたちがスポーツを通じて健康で前向きになり、地域全体の健康寿命が伸びることを願って、活気あるまちづくりを進めています。なお、e☆SPARKLE(イースパークル)は市が主導したものではなく、越前市出身のトップアスリート5人が自主的に設立した団体です。

越前市のスポーツ推進プランでは、「生涯スポーツの推進」「居場所と舞台づくり」を柱とし、運動習慣と食事・栄養を組み合わせた健康づくりを進めています。競技スポーツにおいても、勝利のための戦略として栄養管理が重視され、栄養指導体制の整備と大学との連携が掲げられています。仁愛大学との協力のもと、専門的な知識を持つ人材の活用や相談・支援体制の構築を進めていきます。
 
e☆SPARKLE(イースパークル)の設立趣旨

また、子どもと若者のスポーツ機会の充実にも力を入れ、正しい食知識と望ましい食習慣を身につけることで基礎体力の向上を図ります。学校・地域・家庭が連携した食育を推進し、栄養教諭や保健体育教諭らによる給食を活用したスポーツ栄養指導、さらに大学と連携した研修会の開催も予定しています。競技スポーツ分野では、競技種目やシーズンに応じた食事サポート体制を整備するため、仁愛大学との連携が不可欠と考えています。

e☆SPARKLE(イースパークル)はスポーツの三本柱「心・技・体」を重視しています。「心」はメンタルトレーニングや目標設定、「技」は競技力の向上、「体」では特に栄養・食育の専門性が求められます。e☆SPARKLE(イースパークル)は仁愛大学人間生活学部健康栄養学科・鳴瀨教授と連携し、今後の指導体制を強化していきます。

現在の活動として、8月11日に「スポーツサマーフェスティバル with e☆SPARKLE(イースパークル)」を開催し、約300人が参加。仁愛大学の学生を含む多くのボランティアが協力しました。また10月13日には「e☆SPARKLE(イースパークル)バイク 中島康晴監修 吉野瀬川ダム見学ライド」を実施し、50名以上が参加。ダムの見学や「ダムボルガ」試食会など、食を通じた地域活性化にも取り組みました。

今後も地域社会の発展と人材育成に向け、スポーツを通じて仁愛大学との連携をさらに深めてまいります。最後に、e☆SPARKLE(イースパークル)のSNS発信も行っていますので、ぜひ登録して応援していただければ幸いです。
 
司会
ありがとうございました。続きまして、仁愛大学人間生活学部健康栄養学科鳴瀨碧教授より地元出身アスリートとの連携プログラム 地域で活躍できる人材の育成を目指して、地域と連携した魅力ある管理栄養士養成実践教育の実現 と題して、大学の地域への貢献について事例をご報告いただきます。それでは、よろしくお願いいたします。
 

仁愛大学健康栄養学科学科長 鳴瀨教授 より

仁愛大学健康栄養学科学科長 鳴瀨教授
皆様こんにちは。仁愛大学の健康栄養学科で学科長をしております鳴瀨と申します。本日は、このような本学の学生の取り組みを発表させていただける機会をいただきましたことを本当にお礼申し上げます。

本日は、「地元出身アスリートとの連携プログラム」「地域で活躍できる人材の育成」「地域と連携した魅力ある管理栄養士養成実践教育の実現」というテーマでお話しします。まず、福井県の大学生の現状と大学教育に求められることについてです。今年3月卒業の福井県高校生の大学進学率は62.2%で、そのうち64%が県外、36%が県内大学に進学しています。実に3分の2が県外に流出しており、この20年間ほとんど変わっていません。県外流出が続くと地域活性化は難しくなり、県は県内進学率を2024年に40%に引き上げる目標を掲げましたが、達成できず30%台で推移しています。また、県外大学に進学した学生のUターン就職率は2024年で28.4%、ここ数年も3割弱で、県外に出ると戻りにくい傾向が見られます。
 
今年3月卒業の福井県高校生の大学進学率

この状況を背景に、福井県は「福井長期ビジョン」の中で、県の産業・社会を支える人材育成政策を進めています。高校生の県内進学率を現在の3分の1から2040年までに50%に高める長期目標を掲げ、地域や社会のニーズに応える教育の充実が求められています。一方、大学進学者は、学びたいカリキュラム、課題発見・解決力や主体性、コミュニケーション能力などの社会人基礎力、将来に役立つスキルを習得し、卒業後に社会で活躍できることを求めています。県内進学率を上げるためには、こうした学生のニーズに応える魅力ある教育体制の構築が大学側に求められています。

ここからは、本学健康栄養学科の取り組みについてお話しします。健康栄養学科は2009年4月に開設され、医療・食品教育・保健福祉、さらに歯科クリニックや薬局、リハビリ、美容スポーツ業界、カフェレストランなど多様な分野で活躍する管理栄養士・栄養士の養成を行っています。現代の日本では、核家族化や共働き世帯の増加、晩婚化や長寿化に伴う医療費増大、スポーツ栄養学の進歩などにより、赤ちゃんから高齢者まで様々なライフステージで栄養の専門家が求められています。こうした社会的ニーズに応えるため、健康栄養学科では2026年4月から3つの専門コースを開設します。医療福祉現場向けの「実践栄養コース」、子どもの成長やアスリートを支える「健康スポーツ・食育コース」、食品健康産業で活躍する「食・健康マネジメントコース」です。3年次からの演習やゼミ、卒業研究において、医療・行政・教育機関や企業と連携した体験実践教育を提供し、学生の希望する未来に沿った学びを支援します。
 
多様な分野で活躍する管理栄養士・栄養士の養成

健康栄養学科では2026年4月から3つの専門コースを開設

実践教育を支えるためには、医療・教育・食品健康スポーツ関連企業や地域団体との連携が不可欠です。本学科では、医学教育の強化と多職種連携教育の一環として、福井大学医学部との連携事業を行っています。毎年、本学の学生が福井大学の医学部で解剖学実習を受ける際、医学部の学生が10グループに分かれた本学学生にチューターとして指導します。一方、福井大学医学部の学生は本学に来て病院食の調理実習を行います。入院患者に対する食事箋は医師が書くわけですが、医師は実際に調理をしたことがないし、その栄養を提供するための食事がどう考えられて、どう作られているかということを知らないケースがほとんどです。医学部では栄養教育が十分に行われていません。そのため、腎臓病の治療食などを実習で学ぶ機会を設け、臨床栄養学を学んだ本学健康栄養学科の学生がチューターとして福井大学の医学部の学生をサポートする「交換教育」を実施しています。これは全国的にもまだ少ない取り組みであり、医学教育や多職種連携教育の新たなフィールド構築につながっています。

また、地域のフレイルサポーターと連携した体験授業や、医療機関・高齢者施設での臨地実習、地元企業と連携した実践教育も行っていて、例えば鯖江市のマイセンさんという大豆ミートを作っている会社の食材を使い、給食経営管理論の実習でメニューを提供しています。大豆ミートを使ったお弁当の開発もしています。また、大学の近く、北陸新幹線「越前たけふ」駅に隣接する道の駅にレストランや食材販売の店舗を構える鮮魚丸松さんは最新の冷凍技術を持っており、その技術に関する講義や加工施設の見学を通して商品開発や食品管理を学ぶ取り組みも進めています。さらに、昨年の新幹線開業1年を記念して、あわら温泉旅館グランディア芳泉さんと福井市内のレストランと一緒に、学生が考えた福井食材を使ったお土産「湯けむりマカロン」を開発し、一般販売しました。これらの取り組みを通じて、学生の学びと地域社会、企業との連携フィールドを構築してきました。
 
地元企業と連携した実践教育

越前市との連携についても、「えちぜん歯とお口の健康フェスタ」や「越前市まるごと食の感謝祭」などで、学生が大学で学んだ知識を地域の方々に伝え、健康増進に貢献しています。また、フレイル予防事業にも福井県と越前市の協力のもと、学生が参加しています。こうして越前市との連携は進められてきました。

本学科では地域連携の強化に取り組む中、今回越前市スポーツ交流課から地元アスリートとの連携プログラムのお話をいただきました。今年4月発足のe☆SPARKLE(イースパークル)との連携です。5月に佐藤希望さんと越前市スポーツ交流課の職員が来学され、スポーツを通して地域住民の健康を支える活動に、本学健康栄養学科との連携を希望されました。スポーツによる健康づくりでは食事が重要であることから、本学科にお声がけいただいたものです。

最近、スポーツ栄養学への関心が高まり、多くの学生が将来アスリートの栄養サポートをすることを夢見て管理栄養士資格取得を目指しています。しかし、スポーツ栄養学はアスリートに限らず、一般成人の生活習慣病予防や高齢者の介護予防、リハビリ効果向上にも不可欠です。人生100年時代に健康で長生きするには、食事と運動は切り離せず、車の両輪となります。

本学科では、地域課題に沿って学生が学び、地域に貢献できる実践力をどう養うかが課題でしたが、越前市では、競技者の競技力向上だけでなく、地域住民の健康増進のためにスポーツ推進と栄養指導・食育を進めており、今回の地元出身アスリートとの連携プログラムは、本学科に2026年4月に導入される健康スポーツ・食育コースの貴重な実践学習の場となります。トップアスリートの食事や補食の内容や摂取方法を競技別に学ぶことができ、地域スポーツイベントや食育活動に参加することで、コミュニケーション力向上や実践的食育活動、地域活性化につなげられます。アスリートに限らず、あらゆる年代の健康づくり・体力づくりに必要な食事・栄養・運動についても学ぶことができ、地域活性化への貢献が学生のやる気にもつながります。

この連携プログラムの最初の具体的な活動として、8月11日に越前市スポーツ交流課主催「スポーツサマーフェスティバル with e☆SPARKLE(イースパークル)」が開催され、健康栄養学科4年生8名、3年生3名、2年生3名の計14名がボランティアとして参加しました。仁愛大学ブース(食育ブース)の運営、受付、スポーツ体験サポートなどを担当。事前にe☆SPARKLE村上めぐみさんや越前市職員とオンライン打ち合わせを行いました。e☆SPARKLE(イースパークル)の村上さんの発案で食育ブースの設置運営を学生が任されることとなり、参加の子供たちを対象に食育クイズを実施することになりました。食育クイズの作成は、栄養教諭を目指す4年生学生が中心となって行いました。こちらは食育クイズを学校のパソコン室で考えている学生の様子です。イベント前日には、ブースの設営、各種スポーツ体験ブースの設営などの会場準備を学生とe☆SPARKLE(イースパークル)の皆さんで行いました。前日準備では、スポーツ体験のデモとして、フェンシングの佐藤さんから学生たちが指南を受けました。初めてフェンシングのサーブルを持って学生が練習をしていました。

こちらはイベント当日の様子です。2年生と3年生は、会場受付や食育ブースの受付、さらにスポーツ体験ブースのサポートを担当しました。実際に受付を行ったり、駅伝ブースで子どもたちのサポートをしたりする場面もありました。

4年生は食育ブースの運営とスポーツ体験ブースのサポートを担当しました。こちらでは、子どもたちにいろいろ話しかけ、教えながら進める様子が見られました。また、高校時代にバレーボールを経験した4人の女子学生は、バレーボールブースのサポートを行いました。

午前・午後で学生の配置を入れ替え、全員の学生がスポーツ体験ブースのサポートに交代で参加できるようにしました。これにより、e☆SPARKLE(イースパークル)の皆さんや来場者と、スポーツを通じて交流する機会を作ることができました。

越前市長も食育クイズにチャレンジされ、全問正解で学生から拍手を受ける場面もありました。イベント終了後には、e☆SPARKLEの皆さんとの記念撮影やサイン会も行われました。e☆SPARKLEのメンバーはオリンピック代表選手など超有名トップアスリートなので、東京などのスポーツイベントでは観衆が殺到して近くで接することは難しいですが、この日は学生も身近にトップアスリートと触れ合うことができ、背中にサインをもらったり、一緒に写真を撮ったりと大変喜んでいました。

その後、全員で後片付けを行い、e☆SPARKLEの皆さん、越前市スポーツ課の皆さん、ボランティアスタッフの皆さんと挨拶をして解散となりました。

今回の連携プログラムで私が感じたことをお話しします。学生は地元出身のトップアスリートや地域の人々と触れ合うことで、コミュニケーション力を向上させ、地域活性化活動に喜びややりがいを感じられたと思います。4年生は食育ブースの運営を通して、学内で学んだことを実践に活かす経験ができました。実際、栄養教諭を目指す学生は、この経験を9月・10月の教育実習でも活かせたと話していました。2年生、3年生も上級生との関係構築や、4年生の活動をサポートすることで、学びを実践に結びつける過程を学んだようです。

次回のプログラムは、越前市で行われる菊花マラソン(11月3日)でのベビーカーウォークへの学生参加です。ボランティアスタッフとして参加するだけでなく、子育て世代向けの食事と運動に関するリーフレット作成にも取り組みます。今回は3年生が中心となって作成し、2年生が補助、4年生は内容のアドバイスや質問対応を行う予定です。このように学生同士で教え合い、学び合いながら実践力を高める点が、このプログラムの魅力だと感じています。

今後の展望としては、e☆SPARKLE(イースパークル)と学生が連携し、越前市内の飲食店や菓子店の既存商品を「アスリート飯」として認定したり、新たなアスリート飯の開発に取り組むことも考えています。また、ライフステージや性別など多様な人を対象にした健康増進イベントの開催や、食事・栄養情報の発信、さらにトップアスリートの食事や補食の内容を学ぶ機会を地域に提供することで、地域活性化と人材育成につなげていきたいと思います。

ご清聴ありがとうございました。以上で発表を終わります。
 
司会
ありがとうございました。続きまして、地域連絡の鳴瀨ゼミの学生様よりオンラインでコメントいただいております。よろしくお願いいたします。
 

仁愛大学 鳴瀨ゼミの学生さん より

仁愛大学 鳴瀨ゼミの学生さん
こんにちは。仁愛大学健康栄養学科4年、鳴瀨ゼミです。今回は、地域と連携したプログラムに参加して得たことについて発表します。

私たちは越前市スポーツ交流課から、8月11日に行われるスポーツイベント「スポーツサマーフェスティバルwith e☆SPARKLE(イースパークル)」で、e☆SPARKLE(イースパークル)の運営するスポーツブースのサポートと、仁愛大学の食育ブースの設置・運営を依頼されました。

7月30日には、越前市スポーツ交流課の職員、e☆SPARKLE(イースパークル)の村上めぐみ選手、鳴瀨先生、そして私たちでオンライン事前打ち合わせを行いました。その際、村上選手から「食育ブースでは運動と栄養に関するクイズを作成し、子どもたちに食育をしてほしい」という要望がありました。子どもの健全な成長やスポーツ活動には、食事が重要であると考えます。

そこで、私たちはこれまでの授業や実習、ゼミで学んだ栄養学、スポーツ栄養学、栄養教育の知識を活かし、子どもたちが答えられる内容の食育クイズを作成しました。そしてこのクイズを幼少期からの食意識の形成に役立てたいと考えました。

そして、実際に8月11日のイベントにボランティアとして参加し、「スポーツサマーフェスティバルwith e☆SPARKLE(イースパークル)」のスポーツ体験ブースのサポートと仁愛大学ブース(食育ブース)の運営を行いました。ここからは、スポーツ体験ブースのサポートの経験や食育クイズ作成を通じて学んだことについて説明します。

私たちが「スポーツサマーフェスティバルwith e☆SPARKLE(イースパークル)」のスポーツ体験ブースをサポートして学んだのは、参加者に成功体験を積んでもらうことの大切さです。イベントには幼児から中学生が参加していましたが、e☆SPARKLE(イースパークル)の方々は、誰もが楽しめる活動を準備し、来場した子ども全員が楽しめるよう工夫していました。私たちはその様子を間近で見て、成功体験が子どもたちの挑戦意欲につながることを理解しました。

次に、私たちが作成した食育クイズについてです。問題数は十問で、対象は園児から中学生まで。順路に沿って問題を提示し、解答後にスタンプを押す形式にしました。悩んでいる子どもには学生がサポートし、解答が全部終わった後、丸付けとパンフレットの配布も行いました。

クイズの正答率から見えたことを報告します。正答率が高かった問2(97%以上)は、選択肢がスライド表示でイラストも使われており、子どもが直感的に理解できたことが正答率の高かった理由と考えられます。問5(正答率98%以上)は、このイベントが夏の開催で、学校で教わった熱中症対策の水分補給の内容と重なっていたため正答率が高くなったと考えられます。
一方、正答率が低かった問1(59%)では、「タンパク質って何?」という声が多く、対象の多くが小学生だったことから、言葉自体に馴染みがなかったことが影響しました。また、問4(食品添加物)や問10(カルシウム)は、親子ともに「難しい」「わからない」という声があり、選択肢やイラストだけでは理解が難しい内容でした。
 
正答率が低かった問

対象年齢に合った内容

これらから、問題作成では対象年齢に合った内容や、イラストなどヒントを取り入れることが重要で、自力で解く体験を促す工夫が必要であると学びました。
食育クイズの作成では、難しい問題において、大学での学びを活かしながら対象年齢に合わせて補足の説明をすることができました。また、イラストやフリガナを用いてスライドを見やすくわかりやすく作成しました。クイズの内容は、誤った情報を与えないように正しい情報の選択ができました。そしてスポーツ栄養の授業で学んだ知識を生かして問題を作成することができたと思います。
 
活かせたこと

今回、e☆SPARKLE(イースパークル)のイベントを通して三つのことを学びました。
1つ目、アスリートの声を聞くことで、今の子どもたちに求められている栄養の知識を知ることができたということ。2つ目、色々な知識がある中で、対象者の理解度に合わせたクイズを作ることの重要性を学ぶことができたこと。3つ目、成功体験をすることで子どもたちの自信につながり、未来の挑戦を後押しすることができるということです。

栄養教育の授業では、先生からの現場での体験談を聞き、食に関する授業の構成や模擬授業を通して子どもへの教育方法について学んできました。

しかし、今回のイベントで実際に初めて子どもたちに関わってみると、クイズに対して意欲的な子や無関心な子など様々な様子であったため教えることの難しさを実感しました。

この経験を生かして、イベント後の教育実習ではこどもの興味を惹きつけられるように現物を見せたり、子供に考えさせる声がけなどの工夫を取り入れたりすることで子供たちの反応に合わせて授業を展開することができました。教育実習を経験した今、子供たちの現状をより実感しました。

最後に今回の取り組みを振り返り、今の子どもたちの現状として、参加者の多くが運動していますが、運動と栄養に関する知識が少ないことが分かりました。

大学で学んだ知識を踏まえて、体を動かすために必要な栄養に関する知識を、地域のイベントを通して、子どもたちにわかりやすく伝えていきたいです。そのためには、今回のような地域と学生が連携した食育活動のフィールドの構築が重要であると考えます。私たちは普段は、教科書などからの知識だけでしか学べていませんでしたが、実際に体験を通して子供たちと触れ合うことで、座学から得た知識をより深く理解し、身につけることができました。そのため、このような経験を積むことができる活動を推進していくことが大切であり、今後もこのような機会をいただけたら、より多くのことを学んでいけると感じました。

これで発表を終わります。ご清聴ありがとうございました。
 
司会
学生の皆さん、ありがとうございました。続いて全国大学生活協同組合連動会の髙須学生委員長より大学生協が行っている地域との連携活動についてご報告をお願いいたします。それではよろしくお願いいたします。
 

全国大学生協連 髙須学生委員長 より

全国大学生協連 髙須学生委員長
全国大学生協連学生委員会の学生委員長を務めております、髙須啓太です。今回は地域と協力した大学生協の取り組みについて紹介します。
私は昨年春に岐阜大学地域科学部を卒業し、既卒二年目として大学生協連の活動に参加しています。
本日は大学生協の取り組みを三つのうちの一つだけ紹介します。まず、地域の居場所づくりとして、今年7月に東京大学生協が実施した子ども食堂・若者食堂の開催です。これは今年新しく始まったトライアル的な取り組みで、学生団体と協力し、土曜日で生協食堂が営業していない時間に運営されました。小学校二年生から中学一年生までの20人の子どもと、大学一年生から修士一年生まで16名の学生が参加しました。大学での交流の場として、保護者からも好評だったと聞いています。
今後は定期開催や、他大学生協への展開も検討中です。

続いて、地域イベントへの出展として、宮崎大学生協のひなたフェスへの協力について紹介します。2024年9月7日・8日に宮崎で開催された日向坂46のひなたフェス2024には、40,000人以上が来場する大規模なイベントでした。
宮崎大学生協は、宮崎大学の魅力や地域とのつながりを発信する「宮崎大学ひなたブース」の運営に協力しました。このブースでは、宮崎大学発のベンチャー企業が完全養殖で育てたサクラマスを使った「サクラマス漬け丼」や、大学の牧場施設で飼育された乳牛のミルクを使った「宮崎大学ミルクプリン」などを提供しました。また、リサイクル可能な弁当容器や、間伐材・国産材を使ったJUON割り箸を使用し、大学生協の取り組みを来場者に伝えることもできました。
この活動は、地域活性化や地産地消、SDGs推進に貢献する取り組みとなりました。なお、員外利用にあたるため、宮崎県の確認を取りながら進めたとのことです。
 
宮崎大学生協のひなたフェス

続いて、地域と協力した美化活動として、山形大学生協のスポGOMIの取り組みを紹介します。山形大学生協は複数キャンパスに大学生教育学生委員会があり、それぞれで毎年継続して行っています。今回は鶴岡キャンパスの学生委員会が企画した由良海岸での活動を例にご紹介します。
 
山形大学生協のスポGOMIの取り組み

本来は海岸での開催予定でしたが、直前の雨天で中止となり、急遽室内での環境活動に切り替えました。クイズや海のゴミのカルタ、マイクロプラスチックを使ったキーホルダーづくりなどを行い、参加者に海のゴミ問題を学んでもらいました。
スポGOMIは「スポーツゴミ拾い」と呼ばれ、従来のゴミ拾いにスポーツの要素を加えた日本発祥の新しい活動です。二~三人のチームで制限時間内にゴミを拾い、その量と質を競います。大学生や中高生だけでなく、子どもから大人まで幅広い世代の地域住民が楽しみながら参加できます。昨年度は約60名が参加し、32キロのゴミが集まりました。
本来の会場では、海岸の食材を使ったキッチンカーやマイクロプラスチックを使ったワークショップも予定されていました。楽しみながら清掃活動を行うことで、地域住民との交流を深めつつ、環境課題への関心も高める取り組みとなっています。スポGOMIは継続的に実施されており、大学生協や地域との接点を広げるきっかけとして、地域からも若い力への期待が寄せられています。

今回は三つの事例を紹介させていただいたきました。この3つ以外にも、大学の研究成果やゼミで取り組んでいるプロジェクトを食堂や購買で組合員に向けて発信し、商品として販売するというような取り組みもあります。このような取り組みは、県外から地元ではない大学に進学した学生にとっては、自分の通っている大学のある地域のことを知り、自分の大学の研究を知るというような取り組みでもあると思います。
大学と地域と協力した大学生協の取り組みというのは、これからもっと広がってほしいです。継続して大学と地域、学生と地域の関係というのを大学生協に広げていけたらというふうに思っております。私からの事例の紹介は以上となります。
 

研究討論

司会
髙須学生委員長、ありがとうございました。それでは、これより研究討論を開始いたします。まず報告者への質問から始めます。

記者A
最初に越前市役所の方にお伺いしたいのですが、福井県内には他にも大学がありますが、越前市には仁愛大学だけです。仁愛大学の存在、重要性について教えてください。

近藤副課長
おっしゃる通り、福井県内に大学何個もございますが越前市において大学は仁愛大学様というところになっておりますので、地域連携、協定書を交わしていろいろな形での連携協力をし合って進めているところでございます。その中で、例えば、越前市役所の近くにハピライン福井武府駅前という駅がありますが、学生による街中の賑やかしなどを目的としまして、今後人間学部のコミュニケーション学のゼミ室を設置予定です。このように仁愛大学との連携を強めています。

記者A
学生の皆さんに質問です。今回のイベント以外に地域連携とかで学んだり、為になったりした、という経験がある方がいらしたら教えてもらえますか?

鳴瀨ゼミの学生さん
仁愛大学では一年生の時に街探検っていう遠足がありまして、福井市であったり、県外であったりっていう学生が多いので、越前市のことをまだ詳しく知らなかった状態で遠足をさせていただいたことで、越前市の魅力やスポットについて知ることができたので、大学生活を始める際にはとても助かりました。

記者A
今回こういうイベントを体験して、これからまた別のイベントも待っているようですけれども、こういう体験を通じて、もともと越前市の出身でない方がいらしたのですが、越前市で活躍してみたいとか、そういう人間関係を生かしてみたいとか、何かそう考えている方が、もしいらしたらその気持ちを教えてください。

鳴瀨ゼミの学生さん
将来栄養教諭の道に進むつもりなのですが、栄養教諭として子どもたちと一緒に食に関するイベントなどで携わっていけたらなと思っています。

記者A
鳴瀨先生に伺います。先生から見て学生が成長したな、と思うようなことがあれば教えてください。

鳴瀨先生
実際のところ、学生たちは栄養教育や栄養教育実習といった授業を受けており、その中で食育に関する教材を作ることもあります。ですので、今回の食育クイズの制作も慣れているだろうと思っていたんです。
ところが、授業では小学校の給食時間などに行う栄養の話を想定したシミュレーションやトレーニングはしているものの、今回のように幅広い世代の方に向けた媒体づくりの経験はなかったようなんです。これは発表用のスライドを作る過程で学生と話していて初めて気づいたことで、「あ、そうなんだ」と驚きました。
それでも学生たちは、授業で学んだ知識やこれまでの経験を活かしながら、「こうした方がいいのでは」「こういう伝え方もあるのでは」と自分たちで工夫して、最終的にとても良いものを仕上げてくれました。その姿勢が本当にすばらしいと感じました。
また、先ほどもお話がありましたが、今回の経験がその後の教育実習にも生かされたという点もとても良かったと思います。私自身もその話を聞いて、「なるほど、そうつながるのか」と嬉しく思いました。
 
司会
それ以外に何かご質問等ありますでしょうか?

記者B
先生から、県内進学率や就職率、Uターン就職率などのお話がありましたが、こうした取り組みを通して、学生の皆さんが「県外に出よう」と思っていた気持ちから、「地元や県内で働くのもいいかもしれない」と感じる瞬間があるのではないかと思いました。たとえば、越前市での活動や地域との関わりを通して、「地元に就職するのも悪くないな」と思うきっかけになることがあるのかどうか。学生の皆さん、そして越前市の近藤様、そして鳴瀨先生のそれぞれにお伺いしたいのですが、そうした“地元で働くことを意識する瞬間”というのは、どんなときに訪れるのでしょうか。まず、学生の方からお願いします。

鳴瀨ゼミの学生さん
越前市の方々と連携させていただくことで、今までは情報としてしかわかっていなかったことが実際の場面や現場でいろんなことが経験できるのか学べます。どうやって自分たちが成長しているかを理解することができるようになります。そういった場面に遭遇すると、越前市で就職すれば、今後より成長できるような、と考えることがあります。

記者B
越前市の近藤様、学生さんと一緒に取り組んでいて、越前市に対して愛着が湧いてくれるような瞬間を目の当たりにしたことはありますか?

近藤副課長
今回のイベントは、アスリートチームの方々がお話しされていた「地元の応援があってこそ今までやってこられた。その恩返しをしたい」という思いを改めて形にしたものです。e☆SPARKLE(イースパークル)は、まさにそうした地元への感謝の気持ちを活動の原点として取り組まれています。
その思いに学生の皆さんが共感し、連携することで、学生自身も越前市に対して恩義や愛着を感じてもらえるのではないかと考えています。
今回のイベントでは、子どもたちや来場者など「顔の見える相手」との交流がありました。また、秋に予定している菊花マラソンのベビーカーウォークでも、通常なら参加が難しい小さなお子さん連れの方々にもスポーツを楽しんでほしいという思いが込められています。e☆SPARKLEの皆さんは、そうした活動を通じて、運動やスポーツの魅力を広め、菊花マラソンを盛り上げたいという気持ちで取り組まれています。
こうした取組を通じて、「越前市っていいね」「e☆SPARKLEや越前市役所で働きたい」と感じてくださる方が増えれば、連携の副産物として非常にありがたいと考えています。

鳴瀨先生
私は、地元に残っている学生たちは、就職の段階で改めて「外に出よう」と考えることはあまりないと思っています。もちろん、家庭の事情などさまざまな要因はありますが、地元に残ること自体に価値を見いだして選択している学生が多いと感じています。そうした学生にとって、今回のような取り組みがあることで、「地元に残ってよかった」と実感できるのではないでしょうか。行政や企業、地域団体の方々と一緒に地域活性化や健康増進といった活動に関わり、自分たちが学んできたことを生かせる機会があることは、大きなやりがいにつながります。それが、地元で就職しようという意欲をさらに高めるきっかけになると思います。
一方で、県外へ進学する学生には、都会への憧れや、福井県の地理的な事情も影響していると感じます。福井県は広く、公共交通機関が都市部ほど発達していません。例えば、大野市や恐竜博物館のある勝山市などから越前市の大学へ通うには下宿が必要になります。そうなると、「どうせ下宿するなら県外の有名大学へ」という選択になることも多いのです。
しかし、この県や地域に残ることで「こんな面白い取り組みができる」「地域の人と一緒に活動できる」といった魅力を、高校時代から県や大学が積極的にPRしていくことができれば、県内進学や地元就職への関心を持つ高校生が増えるのではないかと思います。
実際、今回の夏のイベントの取り組みを9月のオープンキャンパスで紹介したところ、参加された高校生や保護者の方々から「こんな面白い活動があるんですね」と大変興味を持っていただきました。こうした情報発信が、地元志向へとつながるきっかけになるのではないかと感じています。
 
司会
それ以外で何かご質問等ございますでしょうか?
それではこれより自由討議に移らせていただきます。テーマは「大学の地域への貢献 地域から大学への期待」というところで自由に議論いただければというところではございます。会場の方から何かございますでしょうか。

会場参加者
大学の地域貢献という観点から、大学生が地域にどのように関わっていけるかという点で、少し話題を提起させていただきたいと思います。大学生が地域づくりに参画することは、多くの学生にとって関心の高いテーマだと思います。高校までと違い、大学に進学すると、サークル活動や学外の団体などを通じて、地域の取り組みに参加する機会も全国的に増えているのではないでしょうか。
一方で、就職活動の場面では「学生時代に力を入れたことは何ですか?」という、いわゆる“ガクチカ”が定番の質問になっています。そうした中で、地域づくりの取り組みが学生の経験として語られる機会がもっと広がっていくといいなと感じています。大学生が地域活動を通じて興味や関心を深め、背中を押されるような経験をすることが、非常に意味のあることだと思います。
今回この活動に参加した学生の皆さんが、実際にどのように感じたのか――興味が高まったのか、背中を押されたと感じたのか、そのあたりも気になるところです。
まとまりのない話で恐縮ですが、そうした点も、大学と地域の連携を考える上で重要な視点になるのではないかと思い、発言させていただきました。

記者B
近藤副課長に質問です。よく大学の地域連携と言う場合に、地域から見るとやっぱり大学は敷居が高いっていう話がよく聞きます。例えば、越前市から見て仁愛大学への要望、もう少しこうしてくれるともっと連携が進むみたいな部分でのお考えはありますか。

近藤副課長
地域連携に関する敷居の高さについてのご質問ですが、私は現在スポーツ交流課におります。以前も地域競争センター様や増田ゼミの方々と協力してイベントを実施した経験があり、その中で感じたのは、仁愛大学様は非常に敷居が低く、協力いただきやすいということです。今回の鳴瀨ゼミ様についても、e☆SPARKLE(イースパークル)を通じてお願いしましたが、快く協力していただきました。
これは、e☆SPARKLE(イースパークル)様や大学、市の双方が求めることが一致しており、ウィンウィンの関係になっているからだと思います。市から一方的に「こうしてください」と押し付けるのではなく、ゼミとしても成果が出せる形で、越前市やe☆SPARKLE(イースパークル)の要望にも応えることができる対等な関係です。そのため、行政からの押し付けではなく、自然に成果が出ているのだと認識しています。地域競争センター様をはじめ、仁愛大学様やご協力いただいているゼミの皆様には、心から感謝しております。

記者B
鳴瀨先生からは市の方とか、地域の方にもう少しこういうようなことをしてくると大学も動きやすいなどの要望はありますか。

鳴瀨先生
今もお話があったように、越前市様からは、比較的学生が参画しやすい取り組みをお声掛けいただけるので、大学としても非常に協力体制を取りやすいと感じています。やはり、行政などから「こういうことをやってほしい」となると、教員レベルでないとなかなか学生を参加させられないこともあります。例えば、学生はまだ学んでいる途中ですので、実際の管理栄養士や栄養士として活動できるわけではなく、できることや協力できることには限りがあります。
そのため、他のところでは教員でないと対応できない依頼もありますが、そういった場合は、行政の方にも学生が参画できるような内容で少し待っていただきたいと思います。しかし、越前市さんに関しては今回のように、学生も積極的に、楽しみながら参加できる取り組みをしてくださっており、大変ありがたく思っています。

小林
そういう関係性というのは、やっぱり試行錯誤しながら積み上げていく感じなのでしょうか。

鳴瀨先生
最初はやはり試行錯誤だったと思います。だんだん進めていく中で、お互いのニーズなども分かってきて、今の現状につながっているのかなと思います。もう一つ感じるのは、いろいろな協力の形がありますが、そのとき単発で終わってしまうものも多いということです。今回のように協力して終わりではなく、継続的に取り組めるものを持ってきていただけると、より良いのではないかと思います。
 
司会
その他何かありますでしょうか。

会場参加者
先ほどの発表にもあったかと思いますが、子どもたちと学生が関わるポイントが興味深いと思っています。教職員でなければ難しい部分と、学生でも参加できる部分があると思うのですが、逆にe☆SPARKLE(イースパークル)の取り組みでは、学生の方が子どもと関わりやすい場面もあるのではないかと感じました。大学と地域の連携において、学生ならではの良さについてお伺いできればと思います。

鳴瀨先生
例えば子供さんの場合だったら、私みたいな年齢の人が関わって何か言うよりは、やっぱお兄さんお姉さんはいろいろ話かけやすいし、一緒に何かするにも楽しいのではないでしょうか。そういうところはやはり「学生ならではだ」というふうに思います。その他、先ほどもお話ししましたが、フレイルの活動をした時もフレイルのサポーターの方であるとか、実際にフレイルズチップに来られている高齢者の方とかっていうのは世代が違うので、学生と関わることでその方たちも若い人と関わることが楽しかったようです。学生にとってみれば、自分のおじいさん、おばあさんの年代の方が、結構アクティブにいろいろ活動されているわけですよね。特にフレイルサポーターの方なんかは。学生たちもそういった方年配のたちから教わることもやっぱり多いと思います。そういう世代を超えた交流というのも、学生の方が構築しやすいと言いますか、構築できると非常に面白いのかなとい思います。

近藤副課長
私も今の先生のおっしゃった通りだと思っておりまして。行政職員と言いますと、例えば、今の高齢者の方々ってちょっと構えてしまうのかな?とか。子どもたちに対してももしかするとちょっとアプローチの仕方が変わってくる。やはり年齢が近い学生さんだから逆に意固地になっている高齢者の方々も受け入れてくれる。そういった柔らかい入り口が学生さんならではなのかなというふうに思っております。

浦田
高齢者の方に代わってお話しいただき、ありがとうございます。報告の中の写真を見ると、子どもたちもとても楽しそうで印象的でした。こうした取り組みに学生が関わることで、小さい子どもたちが地元に親しみを持つようになる可能性もあるのではないかと思います。そうすると、地域に残りたいという気持ちが増えることにもつながるのはないかと思って伺っておりました。ありがとうございました。
 
司会
それでは、他に何かなければ、ここで質疑応答研究討論の方は終了します。
本日は鳴瀨先生ありがとうございました。また越前市の近藤さん、ありがとうございました。また、学生の皆さんもありがとうございました。
閉会にあたって全国大学生活協同組合連合調査部の大築よりご挨拶をよろしくお願いいたします。


全国大学生協連広報調査部 大築
本日はありがとうございました。特に発表の準備をしてくださった鳴瀨先生、鳴瀨ゼミの学生の皆様、越前市の近藤副課長に感謝申し上げます。短い準備期間でしたが、素晴らしい報告をいただき、大変ありがたく思います。
私もメモを取りながら拝聴しましたが、大学が地域の中で何ができるかという点が非常に大事だと改めて感じました。大学生協がある大学は、比較的大規模な場合が多いのですが、地域に密着した活動は意外と少ないのではないかと思います。仁愛大学様の場合、越前市と一体となった取り組みを通じて、学生の成長が具体的に目に見える点が特に素晴らしいと感じました。
学生の皆さんも緊張しながら発表されたと思いますが、練習や準備の成果がしっかり伝わりました。この経験が一人ひとりの成長につながることを感じられ、私も大変嬉しく思いました。本日は本当にありがとうございました。

 
司会
以上で研究会を終了いたします。皆さんありがとうございました。