1965 年創立(開学 50 周年)。カリフォルニア大学群の一つで、メルセド校(2005 年開校)の次に新しく、新設校ながら、全米の州立大ランキングの上位に入る名門校に成長しました。
サンフランシスコから南に約 120 キロ、モントレー湾を望む高台に立地。シリコンバレーにも比較的近く、 800 ㌶(東京ドーム 170 個分(の広大なキャンパスには牧場や森林があります。構内には学生の移動のためにシャトルバスが走っています。
学生の 95%は州内からの進学(残 5%は、留学生 2%、州外学生 3%)となっています。
学部 15,670 人、大学院 1,500 名
教職員 1,700 名
※オンキャンパス寮生の場合
広大なキャンパスには牧場や森林、植物園があり、教室間の移動にはバスを利用します。広大な敷地の森の中や丘の上にオックスフォード大学やケンブリッジ大学と同じく学部・学科を核にカレッジ(村のような小キャンパス)を形成しています。カレッジは 10 に区分されています。
郊外型キャンパスのためバスや車を用いてダウンタウンと往復する学生が多いです。 恵まれた自然を享受できることもあり、立地に関して学生の満足度は高いです。
UCSC の福利厚生施設は、大学直営方式で運営されている。福利厚生事業の最高責任者はアドミッション・広報担当副学長であり、大学のスタッフにより事業経営が行われています。アドミッション担当が、ダイニング・ハウジングを担当するのは留学生を含む学生のリクルートメントに取り組むうえで、大学生活の基盤である福利厚生が重要な仕事と位置付けられているからです。開学50周年迎え、未来に向けどのような大学へと発展させていくかが問われています。大学の発展にとって、「学生の成功」(優秀な学生を集め、教育し、社会へ送り出す)が重要なポイントであり、ダイニングサービスは食事をきちんととってもらいエネルギーを養い、学業に専念してもらうための必須の基盤である、と位置付けています。
UCSC のダイニング・ハウジングは、10 年前まで 40年間にわたりを民間企業に委託していた。直営への移行は、民間委託は収益が企業利益になるが、大学直営の場合は収益を大学・学生のコミュニティづくりに活用できるからです。アメリカでは運営が行き詰まったときに「プライベート部門」(民間)が学内に入ってくることがあり、この動きは今日も一進一退を繰り返しており、全米での直営:委託比率は 5:5 となっています。
UCSC では、卖独大学ではなく複数大学で民間企業と契約していた時代もありましたが、個別対応をしてもらえず(ローカルに対応してもらえず)それぞれの大学の個性化に貢献してもらえなかったため、それぞれの大学で独自に運営する道をたどったという歴史があるということです。しかし、昨今では民間企業でもローカルアクションに対応しようと研究を重ねているようです。民間から大学直営を移行する際、学生は「サステナブル・キャンパス」「環境にやさしい」ということを要求として掲げ、それを実践するFS事業体を求め、現在の到達点が築かれています。
保有室数は約 8600 室。半数はキャンパス内、半数はキャンパス周辺です。秋入学/夏卒業なので、夏の期間は集中講座等の利用者のために寮を活用しています。
UCSC の 10 のカレッジに、Dining Hall が 5 カ所、コ ーヒーショップが 4 か所、カフェレストランが 7 カ所配置されています。スタッフ体制は、Dining マネージャー40名、パートタイムスタッフ 274 名、学生アルバイト 900 名で構成されています。
大きく 3 つのプランに大別され、オンキャンパス、オフキャンパス含めすべての寮生にミール加入を義務付けているのが特徴です。
朝食:9 ドル/昼食:10.5 ドル/夕食 12.5 ドル
ミールを寮生全員に義務化することについて、全員がきちんと食事を摂る環境づくりをすることは、最終的には学生の利益につながるという考え方を持って進めています。
ミールカードを義務付けることで、学内で(将来的に)成功する学生が増加している。オフキャンパスの寮生は部屋にこもってしまうことが多かったが、ミールに加入することで大学に来る習慣を形成することに成功しました。「みんなとふれあう場を作る」ことができたことが成功の要因と考えられています。学生の「義務化」への反対意見は少なく肯定的な評価が多いです。
支持される理由は営業時間が長いことです。7:30~23:00 まで営業することで「何度でも利用できる」「いつでも開いている」という食事保障の安心感が確立されているからです。このため大食いする人は減りました(自分の食べられる量は決まっているから)。
学生の声として「自分の好きなものを続けて食べてしまうのでバリエ-ションが少ない」という声が出ていますが、これに対しては、味見をしてもらうことで食体験を広げ、選択肢を広げる取り組みを進めています。このことは、食べ残しをなくすことにもつながっているということです。
学生生活実態調査と比較すれば日本との差が明確になると思われます。学生のトータルの支出を考察するうえでもより深い分析が必要と思います。
プラン名 | 販売価格 | プラン内容 |
7-Day Meal Plan | 4100ドル (47万5600円) |
土日を含む週7日間Dining Hallで食事ができる。四半期で50ドル(年間200ドル)オンバリューされる。四半期で4名(年間16名)のゲストの利用も可能 |
5-Day Meal Plan | 3700ドル (42万9200円) |
平日5日間のみDining Hallで食事ができる。 四半期で50ドル(年間200ドル)オンバリューされる。四半期で4名(年間16名)のゲストの利用も可能 オンキャンパスの寮生は加入義務(5-Day or 7-day) |
55 meals Per Quarter | 1800ドル (20万8800円) |
学外生専用プラン 四半期で55回(週上限5回まで)Dining Hallで食事ができる。利用回数制限がある(回数をカウントする) 四半期で50ドル(年間200ドル)オンバリューされる。 ゲストの使用も可能'回数にカウントされる オフキャンパスの寮生は加入義務(55meals~) |
Flexi Dollars | 申込 | クレジットカードと紐付されたDining Hall利用カード10%OFFでDining Hallメニューの利用ができる。現金、クレジットカードを携帯する必要なく便利 |
Slug Club Meals | 申込 | 大学教職員等のための補助的なカード カードに申し込むことで5食分利用できる特典(年間) |
オンキャンパス① | オフキャンパス② | 差①-② | |
---|---|---|---|
学費'寮生 | $13,398.00 | $13,398.00 | $0.00 |
\1,554 | \1,554 | \- | |
フード&ハウジング | $14,730.00 | $9,792.00 | $4,938.00 |
\1,709 | \1,136 | \573 | |
書籍・サプライ | $1,440.00 | $1,440.00 | $0.00 |
\167 | \167 | \- | |
移動・交通費 | 573.00 | $1,260.00 | $687.00 |
\66 | \146 | \-80 | |
個人的支出 | $1,800.00 | $1,878.00 | $78.00 |
\209 | \218 | \-9 | |
キャンパス保険 | $2,415.00 | $2,415.00 | $0.00 |
\280 | \280 | \- | |
寮生合計 | $38,061.16 | $33,404.09 | $4,657.07 |
\4,415 | \3,875 | \540 |
非寮生学費 | $22,878.00 | $22,878.00 |
\2,654 | \2,654 | |
非寮生合計 | $57,234.00 | $53,061.00 |
\6,639 | \6,155 |
■ 営業時間:7:30~23:00(土・日含む)年中無休。 5 つのダイニングの内 3 店舗が年中無休、2 店舗で朝食営業対応。
■ 席数:270 席、テラス席 75 席
■ 1 日利用者:平均 3,200 名
■ 年間供給高:約 8 億円
■ スタッフ体制:Mgr7 名、スタッフ 40 名、学生アルバイト 120 名。
■ ミールホルダー利用:約 1,000 名(教員・大学スタッフを含む)
■特記事項:喫食前レジ決済 (通過チェック)、レジ 1 台 1 名対応。
■College Eight(カレッジ8)の食環境を支える中核施設(寮に囲まれている
■UCSC 全体のベーカリーを内製するセントラルキッチンを併設。
■全キャンパスで 1 日1万~1 万2,000食のパン・ケーキ・パイの需要があり、これを焼成し各店に配送(配送便は 1 日 2 回)
■ベーカリー部門のシフトは午前 2 時から午前 0時までの交代制で運営。
ビュッフェスタイル(定番商品・サイクル商品・企画商品で構成)。訪問時の企画メニューはワールドツアー企画。商品サイクルは 35日(5 週)。5 週分メニューをストック。
人口増加のため、ビーガンメニューは必ず展開しています。4~5 年前までは、ビーガンメニューと言えばビーガンしか食べられない(おいしくない)ものが大半でしたが、昨今の技術進歩で一般利用者もおいしく利用できるものが増加しています。ビーガン人口は 6~8%、ベジタリアン人口は 20%であり、合計約 30%となります。
ラール人口 1~2%。ベジタリアンに比較して非常にわずかです。今後学生数が増えてくればそれにしたがって対応が必要になりますが、現段階では特段の取り組みは行っていません。おそらくビーガンメニューならば対応可能と判断されています。
断食(ラマダン)時に喫食可能なものを提供するなどの対応は現在も行っています。
他の宗教や食習慣上の制限との関係で、ハラルに対応できるメニューも存在します(アルコール、豚不使用)。
アレルギー対策、特にグルテンフリー(GF)対応は増えています。現状では、GF 対応は市販の商材を購入し提供するようにしています。牛乳の種類が多く、無調整入、低脂肪乳、豆乳といったように食事制限のある人でも喫食できるラインナップをそろえています(冷蔵庫は大きい)。アレルギー対策は専門教育・訓練を必要とするため、外部講師(専門家)による 1 日がかりの講習を実施し従業員教育を進めています。
UCSC は広大な農場を保有しており実習でさまざまな野菜を栽培しており、野菜は、ダイニングで提供されます。ジャガイモは、College Eight で 1 日 20ケース使用しています。
廃棄(ごみ)問題が重要な関心事として位置づけられゴミの「減量、削減、リサイクル」に取り組まれています。段ボール包装資材週 1 回、コンポスト化する食品ごみ(食材端材、廃棄、食べ残し)週 3 回というように大学に出るゴミを削減する取り組みが推進されています。埋立地に行くゴミをいかに減らすか? いかに発生させないか? がポイントとなっています。
節水も重要な課題であり、一人 1 プレートのみを基本とし、トレイや食器種類を増やすことなく食器洗浄数、洗浄に使用する水の量を削減しています。一人 1 プレ ート方式は、食べ過ぎ・盛りすぎの抑制にも効果が高いです。
食べ残し削減のため「食べられる分だけ」とってもらうために、味の嗜好を事前に試食できる“LOVE food HATE waste”が推進されています。
学生の要望でも非常に高い位置づけとされており必須の取り組みになっています。
ph
ミシェル副学長、担当部長、マネージャーを交えて、 UCSC のダイニング事業・ハウジング事業について懇談を行いました。以降は、質疑の主な内容です。
大学としては、州外・海外の優秀な学生を集めたい。
現在は 5%だが、2020 年までに 12~13%まで増やしたい。エスニックミックスに対応できるプログラムは既に保有しているが、州外・海外を増やすことで活発な大学づくりをしたいと考えている。
州立大学としては、州内の学生を受け入れることが最大の目的のだが、優秀な学生を集め切磋琢磨することは大学自体のベースアップにつながる。留学生の受け入れることで大学の収益が高まり国際化が進展し、競争力のある大学に発展する。
全体の基調であり関心事である Healthy Monday(ビ ーガン、ベジタリアンのメニューを強化する日)に取り組み、健康な食生活への自覚を促している。
大きな関心事だ。リアルフードとは、①オーガニック、 ②サステナビリティ、③ローカル(地元食、地域文化)、 ④地元からの仕入れ、の 4 点だ。学生の関心が高い分野である。現在 28%~33%のリアルフード仕入構成を2020 年までに 40%にすることを目標にしている。一方で、リアルフードは仕入れコストが高くなる場合もあるため、仕入れコストのバランスをいかに取っていくかが実践的課題である。
「マイプレート」(一人 1 プレート)の考え方は浸透しつつある。「何度でも利用できる」「いつでも空いている」という食事保障の安心感が確立されることで、「適量」摂取のハビット(習慣)が形成される。いわゆる「食べ放題」のマイナス面を克服するためには安心感が大切。利用制限をかけると、その一度にいかに効率的に(=得になるように)利用するかを考えてしまい「大食い」「食べ過ぎ」の危険性を増大することになる。
オープンキャンパスや入学説明会等大学を決める場でダイニングサービスの目的や実践の内容を説明し、ミールプランへの加入(義務)について合意形成を行っている。
学生のニーズの把握については、学生を年間 35 万円で 5 人雇用し、彼らが学生アンケートを行う。この声をマーケティングに役立てている。オンラインの一言もあるが、紙ベースのものの方が利用される。オンラインの場合は、該当店舗への意見・声が当該マネージャ ーのメールに直接飛ぶようになっている。実際には、マネージャー室がフロアに対しガラス張りになっているので、意見や要望を持つ学生は窓ガラスをたたいてマネージャーに直接声を届けることもある。
キャンパス初体験時には、ダイニングに来てもらってスタッフを紹介し、利用方法等を説明している。人間的なつながりを作って「来店しやすくする」ことが一番の近道だ。
アメリカではちゃんとしたものを食べようとするとそれなりにお金がかかる。日本の大学の食堂の客単価は概ね 390 円~400 円だが、これはアメリカではジャンクフードと同じ価格帯だ。それで、本当にちゃんとした食事を提供することができるのか? アメリカでは概ね800 円程度になっている。