2014 アメリカ大学食堂視察 報告書

(4)視察のまとめ

8.事業規模の違い~ミール単価/客単価等

1.大学のスケールの違い

大学名 面積(k㎡) 東京ドーム
面積換算(個分)
北海道大学札幌
面積換算(個分)
京都大学吉田
面積換算(個分)
マサチューセッツ大学 5.87 124.9 3.3 7.9
ミシガン州立大学 21.00 446.8 11.8 28.4
ボストン大学 0.54 11.5 0.3 0.7
ハーバード大学 1.54 32.8 0.9 2.1
スタンフォード大学 33.10 704.3 18.6 44.7
UCサンタクルーズ校 8.00 170.2 4.5 10.8
北海道大学(札幌キャンパス) 1.78 37.9 1.0 2.4
京都大学(吉田構内) 0.74 15.8 0.4 1.0

 

広大なキャンパスはいわば一つの街です。上記のとおり、郊外に設置されている大学ほど広大な面積となり、寮がメインのキャンパスライフとなっています。学内には発電所、警察や病院などが設置されています。とくにマサチューセッツ大学アーマス校はダウンタウンまでの距離も長く、オンキャンパスでの食環境は必然的にダイニングがほぼすべてをサポートすることになります。そのため学生の誕生日には保護者よりケーキの注文がダイニングに寄せられるなどということもあります。また 24 時間近い勉学研究をサポートするために営業時間が深夜におよび長時間化しています。

2.フードサービス事業の規模の違い=利用単価

今回の視察した大学規模の違い、大学直営であることについては考慮に入れる必要があります。事業規模の違いについては冷静に分析しなければいけませんが、ミールプランを軸として利用機会の拡大、利用単価の拡大を実践し、一人当たり利用高に関しては大学生協と比較にならない高い利用を実現している点は着目すべきです。また事業規模の大きさは、仕入れ・調達に効果として反映していると言え、事業活動の安定化・高次化も生み出していると思われます。

  会員生協名 組合員数 供給高
(千円)
組合員1人当
利用高
1 高知工科大 1,082 127,519 117,855
2 神戸大 14,929 782,168 52,393
3 滋賀大大津 1,353 65,277 48,246
4 宮崎大学 6,093 289,775 47,559
5 鳥取大学 6,878 325,532 47,329
6 東北大学 26,280 1,241,640 47,247
7 大阪教育大 4,321 189,851 43,937
8 宮城大学 2,375 103,084 43,404
9 岡山大学 14,897 643,641 43,206
10 鹿児島大学 14,261 609,860 42,764
  大学名 学生数 事業高
(千円)
学生1人当
利用高
  高知工科大 28,000 9,860,000 352,143
  神戸大 46,000 8,352,000 181,565
  滋賀大大津 17,402 3,288,685 188,983

上記の表は大学生協の 13 年度の食堂供給高より組合員 1 人当たり利用高トップ10と、アメリカの 3 つの大学の学生1 人当たり利用高を比較した表です。非常にレベルの高い会員生協でも5~8倍近い 1 人当たり利用高の違いがあります。この組合員一人当たり利用高をどのように拡大していくのかという点が大学生協にと ってのポイントだと感じています。例えば、ミシガン州立大学の学生 1 人当たり年間利用回数を算出すると年間 128 回になります。東北大学では年間 120 回、大阪教育大学で年間 100 回、ランク外ですが福井大学で年間 62 回となっています。※2 利用回数では、非常に高いレベルの会員生協もありますが、まだまだ利用機会の拡大の可能性がある会員生協も多いことが伺えます。

しかし、やはり利用単価の違いが大学生協1人当利用高と、アメリカの学生1 人当事業高の違いとなっていることは明白です。アメリカの大学では 1 食あたり単価を算出すると7~9 ドルになります。ミシガン州立大学では 1 食あたり原材料費で 3.5 ドルということでした。大学生協は概ね 400 円前後客卖価とし、原材料費は180 円程度だとすると、その差は歴然です。大学生協の過去のアメリカ視察報告などからは当時の客単価は5 ドル程度あったと推察され、この 10 年程度の中で新たな考え、バリューを設定し実践したことで現状の事業となっていると考えられます。

今回視察した大学では「RealFood」の取組や食環境への取組を積極的に取り組んでいました。また高い事業ミッションを掲げ、大学と一体となった運営も特徴だと考えています。ミッションを基本とし「提供している食事へのこだわり(提供方法、食材調達、業態の変化)」、「利用機会と利用卖価の拡大」、「事業の継続性」をすすめ事業発展を成し遂げていると言えます。

3.大学生協が目指したい事業拡大について

大学生協のフードサービス事業は、地域によって違いがありますが、発展を続けています。しかし、今後はさらに厳しい事業環境が続くと想定されます。しかし、事業拡大をしてくことで実現できること、事業拡大のために実践しなければいけないことがあると感じました。大学生協のフードサービス事業のミッションについて各会員生協が検討し、連帯への結集と活用をとおして大学と一体となった福利厚生事業を推進していくことが大切だと考えています。その上で利用機会の拡大を模索し、組合員にとっての豊かな食の価値を提案し、メニューとして提供していくことで大学生協のフードサービス事業が革新的な発展を進めていくことができると思います。

※1:連合会資料 13 年度の食堂供給高合計より算出しています。
※2:食堂年間供給高・客単価数値より客数を逆算して算出していますので、若干の差異があることをご了承ください。