主権者教育座談会『18歳(若年層)が学ぶべき 主権者として身に付けるべき力とは』

「主権者」(有権者)と聞いてイメージすること

僕たちは社会の中で生きているし、関わる中で社会を作っている、その中で一つテーマとして大きいのが選挙で、20歳から18歳に選挙権が早まったことを今当事者、これから当事者としてどう感じていますか。

僕は18歳選挙権になった最初の方の選挙から行っていますが、18歳当時に考えていたことと今考えていることは変わらない気がします。選挙に行くのが当たり前だと思っていますが、周りを見ているといろんな理由で行かないという人もいるので、18歳や20歳という年齢として選挙権というのを考えるのは少し難しいのかなと思うところはあります。自分なりに今の暮らしがこうなったらいいなとか、選挙のタイミングにはなってしまいますが考えたりはしています。

なぜ18歳になった時に選挙に行ってみようと思ったのですか?投票行為をしてみて感じたことなどはありますか。

親が選挙に行くので、それに付いて行った感じです。自分が選挙に行く年齢になってからは、テレビで開票速報とか選挙関連のことをやっていると比較的見るようになったかなと思います。

一方で、高校生のお二人はこれからですが、選挙や投票することに対するイメージはありますか。

どの政党も一長一短というか、この政党のこの政策は支持できるけど最近のある活動は支持できないと思う時に、自分の好きなところだけを見て入れようと思っていいのか、悪い部分があるから止めた方がいいと考えた方がいいのか、自分の判断基準が難しいかなというイメージがあります。

私は4人兄弟の末っ子で、姉が成人した後に母と一緒に行った選挙に付いて行った時、すごく姉が緊張していて大人としての責任を背負った感じが伝わってきたのを覚えています。

過去と現在での若者の社会参画・政治参加について

ここからは大人の方にもお聞きしたいと思うのですが、今の若い人の社会参画にどのような印象を持たれていますか。

今までのお話を伺って思うところは、皆さんの行動のきっかけづくりには、何があったのだろうかということです。教育の立場から見ると、多分誰かが後押しなり、きっかけを作って参画してくるから社会とのつながりが出てくるのだと感じます。それをもって選挙、投票に行くという価値観が生まれてくると思うのです。
高校の立場から言うと、東京都はすごく教育委員会を含めて力を入れていて、東京の18歳の高校生は投票率が高いというデータがあります。それが高校だからできる話で、卒業した後の進路はさまざまだから、高校時の意識感覚と大学生の時の周りの友達の意識感覚とはだいぶ違うと思うので、その辺は皆さん2、3歳の違いなんだけど、一人ひとりの価値観って皆さんで共有できるものなのか逆に聞きたいですね。

あまり友達と政治の話をすることがないのと、別のコミュニティでも政治の話は個人としては一切ないかなと思います。最初におっしゃっていたきっかけに関しては、何か理由があったかと言われると、自分で分かるような理由が今思いつかないですね。なんとなく行ってみて、やっているうちに楽しいなって思ったり、続けたいなと思ったり。その方が理由としてはしっくりくるなと個人的には思います。


福田 晴一氏
(東京都立深川高等学校 副校長)

そこのところで、今の日本というのは日曜日の投票が基本ですよね。不在者投票も皆さんに知られるようになりましたけど、そこに束縛というものは感じませんか?

そうですね、月曜から金曜までは学校で、土曜もバイトがあったりすると日曜日に行かなきゃいけないのかなと思ったことはあります。ただ、なぜ行くのか、あまり考えたことはないかもしれないです。むしろ個人的には行かないという選択肢がそもそもないのかもしれないです。


平川 康弘氏
(文部科学省 総合教育政策局 地域学習推進課 青少年教育室長)

我々は祖父母世代からいろいろと教えてもらうきっかけがあり、それを聞いて学んで行動に移していたのかなと思うし、そういったきっかけを我々大人が提供することも必要なのかなと思いました。先ほど西村さんがお姉さんの選挙に付いて行ったという話がありましたが、今総務省でも子連れ投票という、子供さんを連れて投票に行くという取り組みを行っていて、発達段階ごとに教えていく程度が変わってくると思いますが、選挙とは何かを知るきっかけとしての一つの施策なのかなと思います。

総務省のデータでは、1989年(平成元年)の参議院議員選挙と2019年(令和元年)の選挙を比較した時に、各年代で10%以上投票率が下がっています。これは、30年前と比べて日本社会が大きく変化し、主権者意識が薄れているためと考えられます。近年、18歳から投票できるようになったことは意識向上のために大変良いことと思います。18歳は保護者が関われる年齢なので、一緒に投票に行くことが政治参加の一つのきっかけになります。私自身、学生の頃も選挙に行っていましたが、考えてみると一人暮らしをする前に、実家で両親が選挙の話をしていました。選挙や投票に関する会話が家庭の中で行われることが重要だと感じています。