岸先生の推薦図書


『同化と他者化―― 戦後沖縄の本土就職者たち』
岸政彦
ナカニシヤ出版/定価3,960円(税込)
購入はこちら >せっかくなので、ここでは私が生活史について書いた本を紹介しますね。この本は私の最初の本であり、主著でもあります。博士論文を10年かけてイチから書き直しました。60年代から70年代にかけて、沖縄から単身出稼ぎや集団就職で本土へ渡り、その後Uターンした人びとの生活史をもとに、「沖縄的アイデンティティ」について考察した本です。生活史だけでなく、統計データや歴史的資料も大量に使いました。

『マンゴーと手榴弾―― 生活史の理論』
岸政彦
勁草書房/定価2,750円(税込)
購入はこちら >私なりの、質的調査の「方法論」について書いた、理論的で抽象的な議論の本です。内容は専門的なところもありますが、沖縄で生活史調査を続けてきて出会ったさまざまな困難や可能性について、じっくり考察しました。「構築主義」を正面から批判した本でもあります。
 

『街の人生』
岸政彦
勁草書房/定価2,200円(税込)
購入はこちら >2冊めの本です。もともとは自費出版しようかなと思っていたら、勁草書房の編集さんが「ぜひうちで」と言ってくださいました。「生活史の語りを、解釈や説明抜きで、そのまま並べる」という、私のスタイルが始まった本です(最初の本ですでにそれに近いことをしていますが)。まさかこんな無愛想な、わかりにくい、読みにくい本を出版してもらえるとは、思ってもみませんでした。南米から来たゲイの青年、シングルマザーの風俗嬢、「ニューハーフ」、摂食障害、元ホームレスの5人の生活史は、どれもほんとうにしみじみと人生の奥行きを感じさせます。

『地元を生きる―― 沖縄的共同性の社会学』
岸政彦、打越正行、上原健太郎
ナカニシヤ出版/定価3,520円(税込)
購入はこちら >尊敬するフィールドワーカーである打越正行、上原健太郎、上間陽子といっしょに4人で書いた、沖縄の共同体規範に関する社会学的調査の本です。沖縄といえば「共同体のシマ」として、社会学だけでなく、一般的にも表象されてきました。しかし、言うまでもなく、沖縄の内部にも多様性や分断があります。階層格差とジェンダーに注目し、異なる資源を持つひとびとが「沖縄的共同性」をどのように経験し、それをどのように作り変えているかを、生活史や参与観察などの質的調査で分析した本です。
 

『断片的なものの社会学』
岸政彦
朝日出版社/定価1,716円(税込)
購入はこちら >私が書いた本のなかで、もっともたくさんの方に読んでいただいている本です。「紀伊國屋じんぶん大賞2016」を受賞しました。生活史の聞き取り調査でさまざまなところでいろいろな方と出会い、また日常生活でもたくさんの出会いを経験して、そのなかで私の記憶に残った、断片的で説明できないエピソードをもとに、人生やこの「世界」そのものについて考えた本です。

『東京の生活史』
岸政彦
筑摩書房/定価4,620円(税込)
購入はこちら >語り手ではなく、150人の聞き手をSNSなどで公募する形で集め、それぞれがひとりずつ聞き取った150人の語り手の語りを集めた本です。1200ページを超える、まるで辞書のような分厚い本になりました。値段も5000円近くしますが、その作り方から内容まで大きな話題となり、「紀伊國屋じんぶん大賞2022」と「毎日出版文化賞」を受賞しました。説明も解釈も一切ない、とても読みにくい、でも「東京の人生」が膨大に詰まった本です。続けて出版された『沖縄の生活史』『大阪の生活史』と合わせてぜひお読みください。
 

『質的社会調査の方法―― 他者の合理性の理解社会学』
岸政彦、石岡丈昇、丸山里美
有斐閣/定価2,090円(税込)
購入はこちら >学部生向けに、石岡丈昇さんと丸山里美さんという、日本を代表するフィールドワーカーのお二人と一緒に書いた教科書です。多くの大学の授業で教科書として採用され、現在もたくさんの方に読まれています。この本ではじめて「他者の合理性」という言葉を使いました。一見すると不合理に思える他者の行為選択も、その生活史をじっくり聞くと、そこにそれなりの「理由」が存在することがわかる、という話です。詳しくは本書をお読みください。

『生活史論集』
岸政彦
ナカニシヤ出版/定価3,960円(税込)
購入はこちら >私が信頼する9名の社会学者と一緒に作った本です。それぞれの研究テーマについて、生活史データを用いて書かれた論文集です。釜ヶ崎、沖縄、在日コリアン、被差別部落、東北の被災者など、さまざまな語り手が語る生活史の語りをもとに、10名の社会学者が「個人の目を通した社会」を描きました。現在の日本語圏の、社会学的質的調査研究の到達点を表す本になったと自負しています。
 
P r o f i l e

岸 政彦(きし・まさひこ)
略歴
1967年生まれ。
社会学者・作家。京都大学大学院文学研究科教授。
専門は沖縄、生活史、社会調査方法論。
■主な著作・共著・編著
著書に『同化と他者化』(ナカニシヤ出版 2013)、『街の人生』(勁草書房 2014)、『断片的なものの社会学』(朝日出版社 2015/紀伊國屋じんぶん大賞 2016受賞)、『ビニール傘』(新潮社 2017)、『マンゴーと手榴弾―― 生活史の理論』(勁草書房 2018)、『図書室』(新潮社 2019)、『リリアン』(新潮社 2021/第38回織田作之助賞)、『にがにが日記』(新潮社 2023)など。共著に『質的社会調査の方法』(有斐閣 2016)、『地元を生きる』(ナカニシヤ出版 2020)、『大阪』(河出書房新社 2021)。編著に『東京の生活史』(筑摩書房 2021/紀伊國屋じんぶん大賞 2022、第76回毎日出版文化賞受賞)、『生活史論集』(ナカニシヤ出版 2022)。監修に、沖縄タイムス社編『沖縄の生活史』(みすず書房 2023)などがある。
 

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