リレーエッセイ
山原和葉(いずみ委員・同志社大学)
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P r o f i l e
山原 和葉(やまはら・かずは)
同志社大学一年生。おばけが怖くて一人暮らしができないので家から片道2時間近くかけて通学している。しかし、本を読んでいると意外とすぐにつくのでそんなに苦痛ではない。本しか好きじゃない訳ではなく、他には日本美術と特撮が好き。
本が好きだ。こんなところにエッセイを載せているのだから言うまでもないだろうが、あえて宣言させてもらった。私の本好きは自分で言うのも何だが筋金入りだ。それこそ、ベビーカーに乗っている頃から母親に連れられ地元の図書館に通っていた。自分で歩けるようになった頃には親に「絵本を読んであげる」と言われた次の瞬間には10冊以上の絵本を抱えて飛んできていたそうだ。
三つ子の魂百までと言うが、本好きは成長しても衰えるどころかどんどん強くなっていった。
今回のエッセイを書くに当たり、今までの読書人生を振り返ってみたところ、人生に影響を与えたと感じる本が何冊かあることに気がついた。
そのうちの一冊が昨年読んだ、あをにまる先生の『今昔奈良物語集』だ。この本は『竹取物語』や太宰治の『走れメロス』といった日本の様々な時代の有名作品を奈良県が舞台の物語にパロディ化した作品だ。
実を言うとこの本を読むまでは、生まれてからずっと奈良に住んでいるにもかかわらず私は奈良が好きではなかった。奈良といえば大仏だが、私は大仏の近くに住んでいるわけではない。ほかには吉野の千本桜だが、私は花より団子派である。よって奈良からなにか恩恵を受けたと感じたこともなく、むしろ大阪や京都に魅力を感じていた。このような風潮は奈良県全体にあり、小・中・高と、周りの友人もこのような調子だったため、奈良県を褒めたら負けだと思っていたといっても過言ではない。
しかし、この本は、そんな私の価値観を一変させた。普通に読む限り、この本は華々しい奈良なんてものを書いていない。ちっとも奈良を褒めていない。でも、本の中には確かに私が生まれてから今まで過ごした奈良があり、確かに奈良への愛がつまっていた。そして、本を読み終わった目でもう一度奈良を見つめてみると、思いのほか、奈良はつまらない場所ではなかった。奈良が好きでも良いんじゃないか。一度思うとそれからは奈良がどんどん好きになり、来年、奈良検定を受けようと勉強を始めたほどである。
本の面白いところは、読んでみるまで何が自分の人生に影響を与えるのかわからないところだ。本屋や図書館にあふれている本の中に、まだまだ私の人生を変える一冊があるかもしれないと考えるとぼけっとしてはいられない。沢山の本が私を待っているのだから。
次回執筆のご指名:古沼 花月さん
2年生のときに読者スタッフに登録していただいて今年が3年目。就活も終え、いまは卒論執筆中のようですが、古沼さんの最近の愉しみをぜひ教えてください。(編集部)
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