いずみ委員・読者スタッフの読書日記 182号


レギュラー企画『読書のいずみ』委員と読書スタッフの読書エッセイ。本と過ごす日々を綴ります。
 
  • 新潟大学4年生
    古沼花月
    M O R E
     
  • 電気通信大学大学院M2
    木村壮一
    M O R E
     
  • 名古屋大学6年生
    後藤万由子
    M O R E
     

 

 

新潟大学4年生 古沼花月

12月中旬

 卒業論文執筆も終盤。めげそう。ひたすらに谷崎潤一郎とにらめっこを続けた数カ月を経て、とにかくエンターテイメントが読みたいという強烈な衝動が爆発しそうになっていた。その勢いに背中を押され、三島由紀夫『命売ります』(ちくま文庫)を購入。かつて『金閣寺』(新潮文庫)を途中で挫折した経験を引っ提げての挑戦になったが、本作はとにかく読みやすい! 自殺に失敗した男が「Life For Sale」の新聞広告を出し、自分の命を売ることでトラブルに巻き込まれる様子を描いている。私であれば売るのはもとより買うのも嫌なのだが……現代でもSNSで探せば同じような商売をしている人が一人くらい見つかるかもしれない。うーん、怖い。『命売ります』購入はこちら >
 

年末年始

 荒木飛呂彦『STEEL BALL RUN』(集英社)全24巻を読む。
『ジョジョの奇妙な冒険』第7部にあたる作品で、就職活動終了記念に両親に甘えてプレゼントしてもらった。感謝、感謝。乗馬によるアメリカ大陸横断レースと陰謀を描いており、バディものの要素も強い本作品。ジョジョシリーズでは「スタンド」と呼ばれる異能力があるのだが、主人公のジョニィは「爪を回転させ銃のように射出できる」能力者である。これが見ていてどことなく痛い。本人は平気そうなのだが、最終巻までずっと痛そうだった。こうなると鬼太郎が髪の毛を飛ばす、アンパンマンが頭を入れ替える瞬間も痛いのではないかと思えてくる。痛覚があっても怖いし、なくても怖い気がする。『STEEL BALL RUN』購入はこちら >
 

1月中旬

 青崎有吾『アンデッドガール・マーダーファルス 第2巻』(講談社タイガ)を読む。好きなゲームのイベント遠征の旅のお供であり、まさにオタ活旅にふさわしい作品といえるだろう。本作は作者自らが「オタクの煮凝り」と称する強烈な内容で、妖怪・ヴァンパイア・ホームズ・ルパン・安倍晴明に小泉八雲まで登場する。甘く重いパフェを食べている感覚にもなるが、基本は特殊設定ミステリであり非常に読みやすい。首だけの不老不死美少女、輪堂鴉夜が「怪物専門の探偵」としてヨーロッパを放浪し事件を解決していく。一昨年にはアニメ化され、特にアニメ版の真打津軽が最高! 飄々として口がよく回る武闘派キャラって本当に魅力的だと思う。舌嚙みそうだけど。イベントも楽しく、大満足な旅行になった。『アンデッドガール・マーダーファルス 第2巻』購入はこちら >
 
 
 
 

 

電気通信大学大学院M2 木村壮一

11月中旬

 11月から、修士論文のため、被験者実験を開始した。人を対象にするので、実験準備や大学内の手続きに時間がかかり、今からのスタート……。参加目標人数は80人!
 参加者を集めるのも大変だけど、1人あたり90分程度かかるので、なかなか終わりが見えない。同じ説明を何十回と繰り返すと、なんか頭が空になってくる。自分、修了できるのか?? そんな不安な気持ちが続く毎日の中、通学中の読書ぐらいはスカッとした気持ちになりたいと手に取ったのが、『炒飯狙撃手』(張 國立〈玉田 誠=訳〉/ハーパーBOOKS)だ。なんと不思議なタイトル! 炒飯かつ狙撃手? かわいらしいななんて思っていたら、内容はとてもスリリングだった。おいしい炒飯が作れる狙撃手と台湾警察の刑事のW主人公が、それぞれ別の事件に巻き込まれながらも、最後に一つになっていく描写に、ページをめくる手が止まらなかった。登場人物の設定も細かく、緊迫したシーンの後にほっこりもした。行き帰りの楽しみがあるから、また明日も頑張ろう! しんどい時、ちょっとした楽しみがあるって、大事。『炒飯狙撃手』購入はこちら >
 

12月中旬

 なんとか、目標人数は集まりそう。一安心。まぁ、その結果を年末年始でまとめないといけないけど。説明を冒頭した後、実験中に自分がやることはないから、『[増補]憲法は、政府に対する命令である。』(C. ダグラス・ラミス/平凡社ライブラリー)を読み進めた。最高法規としての憲法をその認識以上に意識したことがなかった。しかし、憲法が今の形になっているからこそ、自由に議論ができるし、人権も保障されている。憲法をほったらかしにしていると、大変なことになるかも。大事なことは、不断の努力で保持する必要があるなと実験室で感じていた。
 そのころ通学中は、『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』(キングスレイ・ウォード〈城山三郎=訳〉/新潮文庫)を読んだ。何冊かビジネス書を読み、挑戦すること・学び続けること・責任感を持つことが共通していた。なるほどと思いつつ、自分が研究室で実践できているとは言えない。こういったことを普通にできる大人になりたい。
 
 

1月中旬

 終わった! ついに、修士論文が書き終わった!! 途中何度も投げ出したくなったけど、ここまでこられた。振り返れば、先生や友人、家族などたくさんの人に助けてもらったなー。今までの頑張りをほめるとともに、自分はひとりではないと強く感じた日だった。
 
 
 

 

名古屋大学6年生 後藤万由子


12月某日

 朝、YouTubeを開いたら「ゆきてかへらぬ」の映画の宣伝のサムネイルが目に入った。へー、『中原中也との愛 ゆきてかへらぬ』(長谷川泰子〈村上 護=編〉/角川ソフィア文庫)映画化されるんだ。上映来年(2025年)の2月下旬だから、国家試験の後か。観にいこう。『よちよち文藝部』(久世番子/文藝春秋)で中原中也は知ったけど、あんな人が近くにいたら大変そう。泰子、どこが良かったんだろう。「雨のなかから現れ出たような」小林秀雄、実際見てみたい。あれ、泰子は運命感じていたのかな。『中原中也との愛 ゆきてかへらぬ』購入はこちら > 『よちよち文藝部』購入はこちら >
 

12月某日

 勉強の合間にストレッチをしようとYouTubeで動画を見ようとしたら、諏訪大社神事のドキュメンタリー映画の宣伝が出てきた。自分の好みの動画を出してくれるYouTube。だめだ、ストレッチと勉強そっちのけで何回も見てしまった。そういえば『古事記』(次田真幸/講談社学術文庫)を読んでいて、どうして出雲神話に諏訪が出てくるんだろうと疑問だったんだよな。山の麓で育ったから海辺の地域ばかり興味があったけど、山の方の神話も面白そう。『古事記』購入はこちら >
 

1月某日

 ブラタモリの再放送を観た。なんて良いお正月だ。道の曲がり具合や高低差を見て楽しそうなタモリ、こっちまで見ていてニヤけてくる。去年の3月にいきなり最終回でしばらくロスだったけど、今年4月から復活するからすごく嬉しい。就職したら『ブラタモリ』(NHK「ブラタモリ」制作班/KADOKAWA)片手に全国を歩きたいな。まずはどこから行こう。『ブラタモリ』購入はこちら >
 

1月某日

特集の「マイベスト」を書こうとして、ふと『羊の歌 ーわが回想ー』(加藤周一/岩波新書)を思い出した。いずみ委員になるきっかけになった本。2年生の時に買ってから3周読んだけど、今読んだらどんな感覚になるんだろう。医学部ながら文学部の授業に参加するあたり、自分と重ねてたっけ。今思うと思い上がっていたな。そうだ、国試が終わったらまた渋谷の宮益坂に行って聖地巡礼しよう。タモリ、坂好きだしこれは良いのでは。待てよ、もう一度松江の国庁跡にも行きたいし、いや、諏訪も良いな。行きたいところがありすぎる。『羊の歌 ーわが回想ー』購入はこちら >
 
 

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