「大学生が主人公と町中華ノンフィクション」編
春休みはいかがでしたでしょうか。新入生&在学生にお勧めの大学生が主人公の海外文学と昨今注目されている町中華関連のノンフィクションを紹介します。
『ベル・ジャー』
シルヴィア・プラス〈小澤身和子=訳〉
『ベル・ジャー』
晶文社 定価2,750円(税込) 購入はこちら >
ピュリツァ―賞受賞の天才詩人シルヴィア・プラスによる本作は、20年ぶりの新訳。晶文社の海外文学シリーズ「I am I am I am」の第一弾として、2024年7月に刊行されました。
主人公の女子大生エスター・グリーンウッドはニューヨークのファッション誌でのインターンを勝ち取るも……という内容で、1932年生まれの著者が大学生活を過ごしたであろう時代のアメリカの状況が、随所に描かれています。
にもかかわらず、主人公の苦悩も作品の主題自体も、現代の大学生が読んでも全く色褪せない物語であり、感銘を受けました。
本来は、どんな可能性も開ける若き大学生が、結婚、仕事、将来、生き方などに思い悩み、とてつもなく繊細な年頃である面は、共感しかありません。
英米だけで430万部以上を売り上げた世界的ベストセラーであり、装丁も美しい本作を是非手にとってみてください。
『地球上の中華料理店をめぐる冒険 5大陸15ヵ国「中国人ディアスポラ」たちの物語』
関 卓中〈斎藤栄一郎=訳〉
『地球上の中華料理店をめぐる冒険
5大陸15ヵ国「中国人ディアスポラ」たちの物語』
講談社 定価2,200円(税込) 購入はこちら >
中華料理にはなじみ深く、横浜、神戸、長崎などに中華街がある日本。昨今では、特に「町中華」が注目されていますが、「町中華」は、北極圏からアフリカまで、世界中で息づいているようです。
ノルウェー、イスラエル、カナダ、トリニダード・トバゴ、ブラジル、モーリシャス、ケニア、マダガスカル、などなど。
とはいえ、世界中の「町中華」はノスタルジーだけではとても語りつくせず、現地の味を取り入れた独自進化にくわえて、店の創業者の人生はかなり濃厚でした。本作にはニューヨーク・タイムズも絶賛です。
おまけ『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』
グレッグ・ジラード、イアン・ランボット
〈尾原美保=訳〉
『九龍城探訪 魔窟で暮らす人々』
イースト・プレス 定価3,850円(税込) 購入はこちら >
2025年1月に日本でも公開され、話題沸騰となった香港映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦! 九龍城砦』。私も急いで観に行きました。かつては多くの人がすみつき、迷宮化したスラムの九龍城砦。ここで暮らす新世代の主人公たちが、黒社会と決戦&大暴れします。映画自体も超エモく、その舞台となった九龍城砦の資料的価値もある2004年刊行の本書は現在19刷りと密かなロングセラーになっているそうです。
執筆者PROFILE
重松 理恵(しげまつ・りえ)
大学生協職員。広島大学、東京大学、名古屋大学生協など各大学生協での書籍担当者を経て、現在、大学生協事業連合書籍商品課に在籍。著書に『東大生の本の使い方』(三笠書房)、最新刊は『読んで、旅する 海外文学』(大月書店)。