第6回 ペン助のうただより 2018年秋号

読み方百人百首

 うーん、うーん……
 どうしたの?
 この短歌、どう読もうかなぁって。

でも自撮りやめないきみが可愛くて可愛くなくて夜霧がしみる
田丸まひる『ピース降る』

 たとえば「(客観的に/主観的に)可愛くて(主観的に/客観的に)可愛くなくて」だったら、どっちだと思う?
 "近くて遠い“か。それなら後が主題だろうし、それで「可愛くない」が主観なのは違和感かな。短歌の「きみ」って、恋人とか配偶者のことが多いんでしょ?
 うんうん。
「でも自撮りやめないきみ(=恋人)が(僕にとっては)可愛くて(でも世間的に)可愛くなくて夜霧がしみる」かな。「でも」の前に省略されてるのは「(もともと可愛くないから、可愛い自撮りは撮れないのに)でも自撮りやめない」。
 自分もそう読んだんだけど、「(世間的に)可愛くなくて」で終わると辛いなぁって。あと個人的に「自撮り」にこだわる行為を可愛いと思えない。
 そんなわがままな……。
 解釈の仕方で変わらないかなぁ。ちなみに「夜霧がしみる」=「泣ける」で、「可愛くなれないきみが悲しい、視界が滲んで見ていられない」で取った。
「夜霧」があるような時間と場所で自撮りを「やめない」切迫感は、思春期の「きみ」と見守る大人のイメージ。この歌集、「きみ」は恋人じゃなさそうだし。
 それから同じ連作にある〈自撮りブスみたいな顔の為政者がまばらにひかり浴びる八月〉の「自撮りブス」が……
 待って待って! うーんと、両方主観でも読めるんじゃないかな。
 え?
「(自撮りにこだわる行為は可愛いと思えないのに、)でも自撮りやめないきみが(きみだから自分にとって)可愛くて(でも外見的には)可愛く(思え)なくて」っていう葛藤の歌なんじゃないかな。この後も「でも可愛くて、でも」って続く。
 あー、「可愛い」って言い切りたいからこその葛藤か! なのに言えないから「夜霧がしみる」=「泣ける」わけだ。
 そうそう。まあ自分は、最初の読み方がシンプルで好きだけどね。
 

今・月・の・う・た
 
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高村光太郎『智恵子抄』
暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた
齋籐史『魚歌』
サラリーマン向きではないと思ひをりみーんな思ひをり赤い月見て
田村元『北二十二条西七丁目』(本阿弥書店)

過去になる名字に朱色が染み渡る 戻れないことは幸せなこと
高田ほのか『ライナスの毛布』(書肆侃侃房)

パーキングエリア夜こそ美しく(まだ今日だからまだ楽しいね)
ペン助
 

ー 掲・示・板 ー

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