読書マラソン二十選! 156号


読書をするにはとても快適な季節がやってきました。
夏バテで疲れた身体を、読書で癒しませんか。
今回は第13回全国読書マラソン・コメント大賞でナイスランナー賞を受賞された方々のコメントから、選りすぐりの作品をピックアップ!
 


  • 『旅のラゴス』
    筒井康隆/新潮文庫

    「人生とは旅である」という言葉がある。でも、僕の人生には “旅" 的な要素はないなぁといつも思っていた。毎日講義に出て、部活に励み、友達と遊ぶ。なんとなく楽しいけど、ワクワクするような出来事はやってこない日常的な日常。この物語は、奴隷の身に堕ちても、愛する者と別れても、前を向いてひたすら旅を続ける男が主人公だ。彼は旅を人生とすることで、自らの手で幸福も悲しみも選びとっていた。まるで「君もこんな風に生きてみろよ」と背中で語っているような気が、僕はした。人生を “旅" にするためにも、勇気を出して一歩、挑戦への一歩を踏み出してみようと思った。
    (北海道大学/匿名)

  • 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
    東野圭吾/角川文庫

     一見つながりがないように思われた話がおもしろいようにつながって、読み始めたら止まらなくなった。誰しも幸せになりたい、だから悩む。そんな時、信頼できる人に相談したり話を聞いてもらえるだけで救われることもある。その選択が正しかったか、わかる日は来ないかもしれないが、自分の決断や人生を後悔せず、前向きに考え、努力し続けることが大事だと思った。私の行動は必ず何かに影響していく。だから自分に誇りをもって良いおこないをしていきたい、誰かの力になりたい、そう思わせてくれる作品だった。
    (愛媛大学/ひらお)

  • 『小暮写眞館 上・下』
    宮部みゆき/講談社文庫

     家族のあたたかさ。友達の優しさ。愛するものへの想い。この本を読むと、これらを感じずにはいられない。それは、今まで自分自身が経験したものかもしれないし、まだ経験していないものなのかもしれない。でも、共通して言えることは、現実と同じくらい、いや、それ以上に読者の心を打つということだ。私自身、読み終えた後、胸にじんわりとしたあたたかさを覚えた。こんな感覚は久しぶりだった。これからの人生において悩むことが必ずある。そんなときに私を救ってくれる本に出会えたと思った。
    (愛知教育大学/ボーム)

  • 『新世界より 上・中・下』
    貴志祐介/講談社文庫

     この本は冒険小説のように人を興奮へと導き、ミステリー小説のように謎が潜み、ファンタジー小説のように神秘的な一冊である。読み進めるごとに徐々に明らかになっていく謎。真実へとたどり着いた時、この物語の世界観が大きく変わった。「想像力こそが、すべてを変える」。物語の最後を締めくくったこの言葉に、私はこれから先も考えさせられることになるだろう。
    (琉球大学/じぇらーと)

  • 『かがみの孤城』
    辻村深月/ポプラ社

     中学生の頃の私に読ませてあげたい本だ。この本を読みながら、何度もそう思った。
     中学校の教室で、私はいつも閉塞感を抱えていた。実際はそうではないのに、教室が世界の全てであるかのように感じていたのだ。周りの友達と諍いを起こさないよう、じっと息をひそめていた。あの頃の私がこの本を読んだら、きっと味方ができたように感じて息がしやすくなるだろうと思った。
    (高知大学/侘助)

  • 『オーデュボンの祈り』
    伊坂幸太郎/新潮文庫

     綺麗な話だ。私はこの作品を読み終えた時、純粋にそう思った。物語の舞台は荻島という、江戸より鎖国を続けてきた島だ。この島の住民は、現代社会から切り離されているためか、どこか人間味がなく無機質的に思える。そこが美しいのだ。
     時に人は、人を寄せつけないものに心を奪われる。廃墟などがそうだと思う。なぜかわからないが惹かれる。それと似たような感情を、私は彼らに抱いた。そんな彼らは言う。「生きる意味のある人間はいるのか」と。果たしてどうなのだろうか。たまには本を読んで、こんなことを考えるのもいいかもしれない。
    (山形大学/こう)

  • 『ツナグ』
    辻村深月/新潮文庫

     生きていても、亡くなった人に縛られることは、大切な人を亡くした人なら誰でもあると思います。すぐに忘れることなどとてもできないし、「あの時こうしていたら……」などといった後悔もたくさんしてしまいます。しかし、この作品に出合って、この “死者は、残された生者のためにいるのだ" というフレーズから、亡くなった人にはもう会うことはできないけれども、思い出としてずっと存在するんだなぁということをしみじみ実感させてもらいました。会えない悲しみよりも、思い出の存在が打ち勝つようになりました。
    (長崎純心大学/みー)

  • 『ボトルネック』
    米澤穂信/新潮文庫

     もし自分がこの世に存在しなかったら世界はどれほど変化するだろうか。または、何か変化が起きるのだろうか。そんなことは想像できないし、実際に見てみないとわからないことだ。しかしこの本の主人公は自分の代わりに何者かが生きている世界をまざまざと見て、体験した。そしてそんな世界に生きる人々が自分の世界よりも幸せだったら? 私はこの主人公の心情に胸が押しつぶされる思いがした。主人公が抱える失望プラス絶望を誰か救ってほしいと心から思った。
    (大東文化大学/藤子)

  • 『となり町戦争』
    三崎亜記/集英社文庫

    「戦争」へのイメージがガラリと変わる一冊。戦時特別偵察業務従事者としての任を受けた北原修路は、繰り広げられるとなり町との戦争に実感を持てずにいた。「この戦争にどのような意味があるのか」「戦争とはいったい何なのか」北原は戦争について様々な疑問を抱くが、納得できる答えを与えてくれる人はいない。そんな中で、行政の人間である香西さんとの交流を重ねるうちに少しずつ戦争の輪郭が見えてくる。北原が見つけた答えとは一体なんだったのか。それは読み終えた人にしかわからないことである。
    (横浜市立大学/Y.M)

  • 『命売ります』
    三島由紀夫/ちくま文庫

     なぜか、死にたい。今、生きていてもしばらくすれば消えるこの命が必要ないんじゃないか? そう考えたことは、私自身何度もある。この物語の主人公の凄いところは、それを実践してしまえることだ。自らの命を売り物にし、自分の欲求を満たすべく人のために死ぬ。なのに、ある依頼人から死ぬよう頼まれたときに出た言葉は、「俺は嫌だよ」。何があった? 自分の命を売っている男が、急に死にたくないと言いだした。これまでの依頼で安らかに死ねそうだったのに死にそこなってきた主人公は、今こそ絶好のチャンスという所で死に対する恐怖心を持ってしまった。三島のナルシズムともとれるこの一言で、俗に言う「命の重さ」を複雑に考えるようになった。
    (桜美林大学/盛升)

  • 『アンパンマンの遺書』
    やなせたかし/岩波現代文庫

     小さい頃、アニメ「アンパンマン」をよく見ていた。アンパンマンのテーマソングも歌っていた。その時は、アニメや歌詞に込められた意味など、全く考えていなかった。この本を読み、やなせたかしさんがアンパンマンを通して、子どもたちに伝えたかった想いを知った。子どもだましの甘さを嫌い、社会の姿に目を向けること、自分を犠牲にして他者を助けること。可愛らしいアニメの中にこのようなテーマが隠されていたと知り、私はもう一度、「アンパンマン」を見たくなった。きっと、今の私がアンパンマンを見ても、勉強になることがたくさん含まれている気がする。
    (東京大学/サバンナ)

  • 『寂しい生活』
    稲垣えみ子/東洋経済新報社

     冷蔵庫とのおワカレ。普通はなかなかできないことを彼女、稲垣さんは成し遂げた。冷蔵庫は過去(昨夜の残りもの)と未来(これから食べたいもの)が詰まった箱だったのだ。これはかなり衝撃。そして納得した。これをなくすことで「今」と向き合うようになった……とのこと。ふむ。私も過去をうじうじ回想して落ち込んだり、これからの予定にげんなりしたりワクワクしている。きちんと「今」と向き合えていない自分がいることに気づいた。時間を巻き戻したり早送りすることってできない。今、この瞬間を味わっていかないと!
    (愛媛大学/hana)

  • 『病牀六尺』
    正岡子規/岩波文庫

     もしも自分が不治の病を患い、『病牀六尺』の世界で生きることになったら……。果たして、子規ほどの尽きることなき知的好奇心を持ち続けられるだろうか。病の苦しさの中でも決して失われることのなかった生きたいという気持ちや死の二日前まで書き続けた記録は、百年以上経った現代でも色褪せない。私たちは、過去から「生」や「死」について学ぶことができる。私は、子規のように生きることができないと思う。だが、本書を通じてもう少し力強く生きてみようと思った。
    (立命館大学/匿名)

  • 『ていうか、やっぱり日本語だよね。』
    泉子・K.メイナード/大修館書店

     日本語は不思議な力を持っていると思う。普段何気なく、意識せずに使っているあんな言葉やこんな言葉。辞書では説明しきれないあのニュアンス。この本はそれをわかりやすく教えてくれる。「試験って、来週だ “よね"」と言えるのに「来週だ “ねよ"」とは言わない。なんでだろう。言われたら何と答えよう。「そこは “よね"だろ! “みたいな"」とぼかしたり、「あらあら、そこは“よね" を使うんザマスよ」と人のスタイルを借りてきたり、私たちは自分の言いたいことに「飾り」をつけて気持ちを伝えている。日本語の面白さに気づいて、「やっぱり」と言うと、ハッとしてしまうようになる。
    (横浜市立大学/唐波はやな)

  • 『未来の年表』
    河合雅司/講談社現代新書

     私たちは、今この日本で若者が減り続け、代わりに高齢者ばかりになっていることを知っている。自分たちの世代ばかりが搾取され、年月を経たとしても奪われた分が戻ってこないことを感じている。そして、生き続けた先の、未来の社会状況が必ずしも安定しているわけではないと、漠然とした不安を抱えている。けれど、たいていの人はそうした問題の先にあることを語りたがらない。今は維持できているし、何かが起こり始めるのはもう少し先で、目を逸らしている間に何とかなって欲しいから。そう考えている人たちが消えた後、生じた困難と真正面から向かい合っていくのが私たちとは、不平等ここに極まれり。それでも私は、ただ翻弄されるよりも、事実を知って少しでも立ち向かいたい。この本は、その一歩となる一冊だった。
    (立命館大学/猫鍋)

  • 『変身』
    カフカ〈高橋義孝=訳〉/新潮文庫

     ある朝巨大な虫となってしまったグレーゴル。彼の世話をするのは妹だけ。両親はなるべくグレーゴルに関わらないように過ごす。物語の最後、彼は虫のまま息を引き取る。彼の死を家族は悲しまない。むしろ喜んですらいる。これは不思議な、小説の中だけの話であろうか。現実の世界でも似たようなことは起こっているように思った。例えば不登校の子ども、引きこもりのニート、リストラされた父親、介護が必要となった祖母……社会から家族から排除された人々は何を思いどう生きているのか。彼らを象徴したのがグレーゴルであるように思った。
    (愛媛大学/なつ)

  • 『白夜/おかしな人間の夢』
    ドストエフスキー〈安岡治子=訳〉/光文社古典新訳文庫

     この物語がロシアの文豪ドストエフスキーの作品と聞けば難しそうな印象があるが、内容はラノベみたいで、ポップなお話。物語は彼女いない歴と年齢が一致する草食系ぼっち青年が、春の「白夜」の街で心に傷を負った少女との交流を描く。このような小説のラストでは女の子慣れしていない男性が一様に辿る「悲劇」で終わる。百年以上昔のロシア小説にも「ダサイ」人物が出てくるなんて新鮮だった。ある意味、モテない男は古今東西、どこにでもいることを気づかせてくれて、笑いながら(私の場合、自嘲的に)読める一冊。やっぱり、最後の女性のハートを射止めるのは真面目で誠実な男かぁ……。
    (東北学院大学/吉成学人)

  • 『ラッセル幸福論』
    ラッセル〈安藤貞雄=訳〉/岩波文庫

     幸せになりたい、人に愛されたい。
     私は常にそう考え、“幸福" を渇望していた。そして満たされない自分の心に没頭して自己嫌悪を感じずにはいられなかった。しかし、この「幸福論」を読んでわかったのだ。純粋な興味で外界に注意を集中すること、それが幸福への第一歩であるのだ。外界への興味は、活動を促し、生きることへの熱意をもたらしてくれるのである。
    (秋田大学/篠藤 頼)

  • 『読書について』
    ショウペンハウエル〈斎藤忍随=訳〉/岩波文庫

    「たくさんのことを次々と重ねて書いた黒板」。私の頭の中は、これらしい。いままでの読書は一体何だったのか。落ち込まずにはいられなかった。しかし、どういうわけかまた読んでしまう。そして読むたびに少しずつわかってくる。何が根絶されるべき悪い読書で、何が真の読書であるのかを。あくまでこれは、著者が考える1つの基準でしかないかもしれない。けれど、何も持たずにふわふわ彷徨っていたこの私に、初めて確かな指針が備わったのだ。私の読書は、もう少し良くなりそうだ。
    (小樽商科大学/春紀)

  • 『もうすこしまってくれたら…』
    スージー・シック、モニク・トゥヴェ
    〈いまい あや=訳〉/アシェット婦人画報社

     表紙に描かれた主人公が、何の生き物かわからない。だけどこのタイトル、きっと深い意味があるんだろうな、と手に取りました。
     何しろ心の優しい主人公。それが実にさりげなく伝わる。子どもが読んだら、約束を守ること、待つこと、なんかを学ぶんだろうな。大人が読むと、うーん、やっぱり深かった。 約束は守られるもの。しばらくのお別れは、しばらくであって、永遠ではないから。本当に信頼できる相手との約束は、信じて待つもの。離れている間は、不安だし、寂しいけど、必ずまた会えるものだから。胸の熱くなる絵本です。
    (岡山大学/芳仙)
 

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