
本を読むときにあると嬉しいものは、何ですか。使い込んで手にしっくり馴染むようになったブックカバーでしょうか、それとも、読書中周囲の音に邪魔されないように装着するノイズキャンセリングヘッドホンでしょうか。あるいは、座り心地の良いソファでしょうか。
ひとにはそれぞれ、読書のときにそばにあってほしいものが、何かしらあるのではないかと思います。一冊の本と過ごすひとときを、より心地よいものにしてくれる何かが。
ブックカバー
ブックカバーはかける派ですか、かけない派ですか。書店で本を購入したときにかけてもらえる紙のブックカバーがすきですか、それともしっとりした手触りの革製のものがすきですか。すきな布で手作りするのも良いですね。
気に入っているブックカバーをかけると、その本が本当に「自分のもの」になったような気がして、より愛着が湧いてきます。ブックカバーと、本の頁の、手触りの違いもすきです。
またブックカバーも本のカバーも外してしまって、本をシンプルな状態にして読むのも乙なもの。気分に合わせて、かけたり、外したり。そんな風に楽しめるのも、紙の本の醍醐味だと思います。
栞

本を読むのを途中で一度やめなければならないとき。本についているスピン(背表紙の上からぴょろんと出ているリボンのような細い紐)を、読み途中の頁に挟んでおきますか。それとも、金属のブックマーカーを引っ掛けておきますか。一見栞に見えないような、小さなクリップ型のものも便利そうです。
本の中には、一息で最後まで読んでしまいたいものもあれば、繊細なお菓子を味わうように少しずつ読み進めたいものもあります。またパラパラと頁を捲って、気になったところだけつまみ食いするみたいに、読みたい本もあります。とある頁だけを、延々眺めていたいと思うものもあります。
栞は、どのような読み方をしたい本にも静かに寄り添ってくれるような、控えめな読書のおともです。主張はしないけれど、ないと少し困ってしまう。たぶん、そういう存在です。
一冊のノート

ふと目にとまった一文や心にすーっと染み込んできた言葉を、書き留めておきたいと思うことがあります。また本を読んでいるときに、なぜか読んでいる本の内容とは違うアイディアや考えが、思い浮かぶこともあります。
本を読むときに一冊ノートを用意しておくと、大切にしたい一文に出会ったときや、ちょっとしたことを思いついたときに、すぐに記しておくことができます。ノートはたっぷり書けるA4サイズの無地のものでも、持ち歩きやすい手帖のようなものでも、素敵な挿絵入りのものでも、まとめ買いして余らせていたものでも、なんでも良いです。
ノートを最後まで使い切る頃には、良い意味で混沌とした唯一無二の一冊が出来上がっていることでしょう。それもある意味、「本」と呼べるのではないでしょうか。
あたたかいお茶
読書中はつい夢中になって、飲食を忘れてしまうことがあります。せめてあたたかいお茶くらいは、手元にあると安心です。日が暮れるより前の時間なら、紅茶や珈琲を。夜の読書タイムには、カフェインが含まれていないハーブティやホットレモンを。
特に、涙腺を積極的に緩ませてくるタイプの本を読むときには、いつもよりたっぷりと飲み物を用意しておいた方が良いでしょう。すきな飲み物をたっぷり注いだ大きめのマグカップの隣に肌触りの良いタオルを置いておけば、準備万端です。
本を読むときに、そばにあると嬉しいもの、安心するもの。本を読みながら、少しずつ、見つけていってみてください。ふとした瞬間に「ああ、わたしは、これがすきなのだなあ」と、気づくこともあります。それもまた、読書の醍醐味のひとつなのだと思います。
P r o f i l e
門脇みなみ(かどわき・みなみ)
『読書のいずみ』卒業生。本はすきなときに、すきなように、すきなだけ読みたいです。
「卒業生のひとりごと」記事一覧