第2回 ペン助のうただより 2017秋号


 「今年も甲子園すごかったね〜」
 「ね! 特に決勝戦! 1対1で追いつめられた後攻の大将がさ……」
 「……ん? 甲子園だよね。野球なのに大将? キャプテンじゃなくて?」
 「あ、ごめん。甲子園は甲子園でも、短歌甲子園の話だった」

 

短歌の試合!?短歌甲子園・歌合

 夏の全国高校野球選手権大会ならぬ、全国高校生短歌大会——短歌甲子園が今年も開催されました。短歌は大会といっても、作品を送って結果を待つだけがほとんど。けれど短歌甲子園では、各選手が一騎打ちで歌を競い、質疑応答も含めて判定が下るなど、本家甲子園にも負けない熱い戦いが繰り広げられるのです。
 そんな短歌による試合ですが、平安〜鎌倉時代には大流行していました。歌合と呼ばれる競技はチーム対抗戦で、自陣の歌が相手チームの歌よりも優れていることを"論戦を通じて審判に訴える“ところに特徴があります。
具体的な流れとしては……
①方人が短歌を発表
②自陣の方人の歌がより優れていることを、念人たちが主張しあい議論
③判者が議論の内容を含め勝敗を決定

これを繰り返し、勝利歌数の多かったチームが勝ちとなります。
 この歌合、現在でもいくつかの大会が開かれています。例えば大学生対象の大学短歌バトルでは各チームが優勝を競うほか、最優秀念人賞も選考。また岐阜県にある古今伝授の里フィールドミュージアムで開催される短歌道場は、大学生以上ならプロアマを問わない無差別級の大会で、意外な勝負が見られるかも……
 ぶつかり合う歌と歌に言葉と言葉! 歌合は手に汗握らずにはいられない、熱い熱い戦いです。読書の秋だけでなく、スポーツの秋にも短歌はいかが?
 

今・月・の・う・た
 
秋さむき夜空にひらく花火みゆ人工もかく美しくして
佐藤佐太郎(『帰潮』)
眠れない夜にきみから教はつた世界でいちばん長い駅の名
秋月祐一(『迷子のカピバラ』)
少しって言葉は安易 安易だが少し淋しい気持ちで歩く
枡野浩一(『歌』)

てのひらに落ちてくる星の感触にかなり似てない投げ上げサーブだ
しんくわ(『しんくわ』)

「平凡に幸福」というそれだけを夕陽が罪のように照らして
ペン助
 

ー 今月の短歌本 ー

『短歌パラダイス』
(小林恭二/岩波新書)
 歌人20名による、超豪華歌合記録!! 歌はもちろん念人たちの論戦は生き生きとして面白く、また著者による解説が歌と戦いをいっそう盛り上げます。
 「モチーフの近さ遠さでくるとは、よほど作品の内容に自信がないな(笑)」
 「なにいー、リズムが悪いー?」
 「もうこの歌にはお手上げだな。勝てないよ」

ー 掲・示・板 ー

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コンビニのおでん始まる夕暮れは
 

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