「大衆」とは誰か
河本 捷太
これから始まるこのコーナーでは、私が出会い印象に残った名著について紹介していきます。今回取り上げるのは、今年2月にNHK Eテレ「100分 de 名著」で放送されたオルテガの著書
『大衆の反逆』です。簡単にこの本の紹介をしましょう。
この本は、スペインの哲学者であるオルテガ・イ・ガセットによって書かれました。彼によると、「大衆」とは「平均人」であり、他人と同一であることに快感を覚える凡庸な人だとし、その大衆が支配権を獲得した「超民主主義」状態により、社会が暴走しているとして痛烈に批判しています。哲学的な要素や政治的な要素が含まれており、読むには若干ハードですが、内容は非常に面白いのでオススメです。かくいう私は番組でこの本の面白さを知り、テキストを読んで内容をおさらいした後、文庫を購入しました。難しそうだと思われた方は番組やテキストをオススメします。
本書ではオルテガの巧みなフレーズが数多く登場します。お気に入りのフレーズに次のようなものがあります。
「敵とともに生きる!反対者とともに統治する!」
大衆は異なる意見を持つ人を嫌い、排除しようとします。そうではなく、その人たちを理解することに努め、ともに生きていく道を選ぶべきなのです。私はこれを見たとき、次の言葉を思い出しました。
「君の意見には反対だ。だが、君がその意見を表明する権利は死んでも守る。」
これは哲学者のヴォルテールの言葉です。ヴォルテールの言葉との共通点は反対者を排除するのではなく、意見を聞こうとする姿勢です。これは私たちも意識しなければならないことなのです。友達といるとたまに意見が食い違い、腹が立つこともあるでしょう。その時すぐに、それは違うだろうと跳ね除けてはならないのです。彼には彼の事情があったかもしれません。まずは聞こうとすることが大事なのです。
最後は、オルテガの支配の方法に関する次の言葉で締めたいと思います。皆さんも この意味を是非考えてみてください。それでは。
「支配するとは、拳より、むしろ尻の問題である。」
日本放送協会
2019年2月(100分 de 名著)
『オルテガ「大衆の反逆」』
NHK出版
本体524円+税
オルテガ・イ・ガセット
(神吉敬三=訳)
『大衆の反逆』
ちくま学芸文庫
本体880円+税
P r o f i l e
河本 捷太(かわもと・はやた)
愛媛大学3回生。いずみ委員。「100分de名著」を観始めたのは2018年2月放送、ヴィクトル・ユゴーの『ノートル=ダム・ド・パリ』でした。難しい本も分かりやすく解説されているので、毎月楽しみながら学んでいます。決して回し者ではありません(笑)。
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