気になる! 切手
追伸 お気に入りの切手を送ります。

展示スペース奥壁面の世界地図、日本地図には、今回のテーマとなったウサギ、カワウソ、ハリネズミの切手がそれぞれの生息地に貼付され、ここだけでも立派な学習室のよう!


 どうもこんにちは。杉田です。地元を離れてから文通が趣味になり、同時に切手——特殊切手に惹かれるようになりました。
 特殊切手とは、いつでも買える普通切手と違い枚数限定で発行されるもので、様々なデザインが楽しめます。ムーミンのようなキャラクターや、風神雷神図屏風のような芸術作品をあしらったもの、動物シリーズ、世界遺産シリーズ、近代測量150年、G20大阪サミット……いつどんな切手が発行されるかは年度単位で発表されます。また特殊切手の値段自体は普通切手と同じですが、1 枚単位では買えない(10枚1シートでの販売)こともあるので、そこは要注意でしょうか。
「どうせなら素敵な切手を貼ろう」が「素敵な切手が欲しい」に変わったのはいつのことだったか。『こんとあき』の林明子さんのイラスト、素朴なタッチで描かれた和洋菓子、日デンマーク外交関係樹立150 周年の切手も色合いが綺麗だったし、和の食文化シリーズ第3集は、おにぎりのイラストの切手がおにぎり型になっていてすごくキュートだった
……使う数より買う数の方が多い? いつかは使うから! コレクションじゃなくて実用品だから!
そんな切手ライフに衝撃的なニュースが飛び込んできたのは今年4月のこと。

 2019年10月1日より、消費税増税に伴う郵便料金変更。
 通常はがきは62円から63円に。定形郵便物は82円から84円に……。

 

世界中の切手から、テーマごとに展示。切手には時代、歴史背景などたくさんの情報量が詰まっていることがわかります。

 
 たかが1円2円と言われるかもしれません。でも、でも、「1、2円切手を貼り足したら、せっかくの特殊切手が台無しじゃないか!!」
 あれもこれもと惹かれては買っていた切手は半年で使い切れる量ではなく、とすれば10月以降は不足額を別で補うしかないのですが、現在は1円切手が前島密(近代郵便制度の創設者)の肖像、2円切手がエゾユキウサギ。どちらも和風の写実的なタッチで、手元の切手との相性は微妙です。う〜んと落ち込んでいるところに飛び込んできたのが切手の博物館(東京都・豊島区)の情報。5月は企画展「ウサギ! カワウソ! ハリネズミ!?」を開催しているとのことで、傷心をもふもふに癒してもらおうといざ出発です。
  博物館は小ぢんまりとした二階建てで、展示は1階の企画展のみなのですが、情報量の多いこと多いこと!
 展示スペースの規模(高校の教室より少し広いくらい)からは信じられない情報量の多さです。ウサギだけでもヤブノウサギ、ユキウサギ、カイウサギ、などなどなど何十種類もズラリと並び、ハリネズミの仲間としてハムスターやリス、モモンガ、カピバラも登場。
 

切手について学べるゾーン。

また展示されている切手は世界各国から集められているのですが、中にはレソトなど聞き覚えのない国名も。可愛かったりブサカワだったりする生き物を堪能しつつも「スマトラウサギは2007年に初めて生体撮影が成功したのか……横縞模様といいレアウサギだ」と各種の生態を読みこみ、見覚えのない国名は電子辞書で検索してしまいます。聞けば企画展ごとに800〜1,000種類の切手を紹介しているとのことで、圧倒されるのも当然でした。
「切手を見に来て地理と生物に強くなるとは……?」
 首をかしげながら、もちろん切手そのものも堪能します。たとえばスロベニアの発光切手はイルカのイラストの上に発光塗料が塗られて骨格がぼんやり浮かび上がる仕組み。アメリカ発行のソノラ砂漠を描いた切手は10枚1シートに様々な動物が描きこまれているのですが、どれだけ目を凝らしても切り取り線が見えない。33セントの表記は10個あるけど、自分で好きに切っていいの……?

 

2階の図書室。切手にまつわる資料が揃っています。

 モヤモヤしつつ階段を上がれば図書室で、これ幸いとカタログで同じ切手を探すのですが、切手は見つかっても英語が分からない!「ソノラ砂漠の切手は10枚1シートでのみ販売、ってところまでしか分かんないなあ……」
 本当に切り取り線がないのか後で見返そう、と誓いつつ手を伸ばしたのは『ビジュアル日本切手カタログ vol.4 普通切手編』。ここらで見慣れたものを見て落ち着きたいところです。
「なっっっつかし〜!! あったあったこんなの!!」
 落ち着くはずが叫びかけたのは、1994年から2015年まで販売されていたメジロの50円切手。前回郵便料金が改訂された2014年以前は切手にハマっていなかったせいか、4年前とは思えない懐かしさです。巻末の郵便料金変遷表を見ると、日本で初めて切手が発行されたのは1871年。当時は手彫で刷版を作っていたようです。定形/定形外の区分ができたのは1966年。そこからの約半世紀だけでも料金は何度か変更されており、「はがきは50円、封筒は80円」だったのは1994年から2014年の20年間。その前には「はがきは41円、封筒は62円」の時代や、「はがきは40円、封筒は60円」の時代があったとか。今のはがき料金で封筒が届いていたのか……。
 時代ごとにまとめられたカタログ部分(フルカラー)と見比べながら、ここでも震災切手(関東大震災で切手倉庫と印刷局が被害を受けたため、暫定的に民間で印刷された)など日本史の知識を試されたり、キレイだなと目を惹かれたら弔事用の切手で驚いたり(慶弔切手の存在を初めて知りました)。博物館同様、カタログも情報量がすごい。3階の切手バザールも覗いたものの、ピンセットを手にアルバムを猛スピードでめくっていく人たちに圧倒され、そそくさと退場しました。最後にショップを冷やかし、迷いに迷ってスウェーデンとチェコスロバキアの切手を購入。切手料金+αがあるからか、普段の切手と比べるとどうにも高くて泣く泣く絞った結果です。使用済みだと少し安くて良かった……
 大満足の帰宅後、アクセスしたのは日本郵便のホームページ。お目当ては記念押印(特殊切手と同じデザインだったりする限定押印)をもらう方法です。『ビジュアル日本切手カタログ vol.5 記念切手編2001- 2016』で存在を知り、ついゲットしたくなってしまいました。
「 つくづく物欲を刺激してくるなぁ……」
 コレクターを名乗るほどではないけれど、実用と言い切るにはちょっと無理が出てきている気がする今日この頃。記念押印をもらう方法を探す途中、新料金移行後の秋のグリーディング切手に一目ぼれしてしまって、どうしようもないなと笑ってしまいました。秋が来るのが楽しみです。

 

Information
切手の博物館
所在地:東京都豊島区目白1-4-23
アクセス:JR山手線 目白駅徒歩3分、JR山手線・東京メトロ東西線・西武新宿線 高田馬場駅徒歩7分、東京メトロ副都心線 雑司が谷駅徒歩13分
開館時間:午前10時30分〜午後5時
休館日:月曜日、展示替時、年末年始
入館料:大人200円、小中学生100円
※入館料を切手でお支払いすることもできます。
 詳細はホームページ(URL:https://kitte-museum.jp/)をご覧ください。

今秋の企画展は、自然の光と人工の光、概念の光に着目し、切手に描かれたありとあらゆる光を集めた「光の世界」展です。
開催期間は、2019年10月3日(木)から2019年12月27日(金)まで

 
P r o f i l e

杉田 佳凜(すぎた・かりん)

広島大学大学院M2。いずみ委員。
文通および切手収集にはまって約5 年。過去イチオシの切手は、2015 年発行のクラシック・プー。小さなハチの巣型の切手がキュートでした。いま一番欲しいのは、7 月末発行の鍬形蕙斎ゆるかわ動物切手です。

※「気になる!○○」コーナーでは、学生が関心を持っている事柄を取り上げていきます。


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