リレーエッセイ
岩田 恵実(読者スタッフ・名古屋大学)

P r o f i l e

岩田 恵実(いわた・めぐみ)
名古屋大学文学部2年。
「仏文専攻」と言うとおしゃれなイメージを抱かれがちですが、私は微塵もそれらしきそぶりを見せることができず、さらに最近読書による夜更かしで余計優雅さから遠のいております。他の仏文の方はおしゃれな感じなのでご安心ください。

 初めまして、名古屋大学文学部2年の岩田恵実と申します。私は今年からフランス文学を専攻しています。しかし私は第二外国語に中国語を選択しており、フランス語はほとんど今年から学び始めたところです。ということで大して発音も文法もわからないままいきなり専門講義に通い始め、最初は息も絶え絶え予習と復習に追われておりました。が、半年が経過し若干頭が慣れてきたのか、辞書を駆使すればある程度フランス語の文章が理解できるようになってきました。そんな私の最近の楽しみは、フランスの詩を読むことです。今期からフランスの詩の講義を履修しており、毎週お題となる詩を訳すうちに魅了されてしまいました。
 フランス文学は、もちろん作品の年代や形式にもよりますが、豊富な比喩を使った豊かで繊細な表現と余韻のある文章構成が特徴だと思います。たとえば憂鬱さや悲しみ、喜びなどの感情を色で表したり(例えば黒=憂鬱、残酷さ、など)、はたまた色を自然現象で表したり、イメージをひとつの形容詞で断定せずに色んな面から細々と表現しようとしますが、これらは他の言語の文学作品にはあまり見られないのではないかと思います。もっとも小説ですとあまりに一つ一つの描写が長すぎて多少飛ばし読みしたくなるのですが、詩では限られた文字数の中でリズムを保つことも重要なため、特に洗練された表現が多く、じっくりと意味を考えながら読みたくなります。詩は脚韻や音節数など様々な制約があるのですが、定められた規則、文字数の中で美しい言葉をのびのびと紡いでいく作者たちそれぞれのセンスと力量には驚愕します。
 フランス語の和訳は大学受験の英語和訳問題のように地道に主語・動詞・目的語を分類して組み立てることの連続ですが、パズルを解くかのような感覚でなかなか楽しいです。前述のようにフランス語はとにかく比喩や修飾が多く、加えて詩では倒置など語の入れ替えが起こるため文の構造の把握が非常に難解ですが、そのぶん訳が完成したときの嬉しさはひとしおです。そして今度はなんとか組み立てた直訳から本文の内容を紐解いてゆきますが、解釈は様々な可能性を秘めており、自分と他者の文の捉え方の比較をすると解釈の多様性に気づかされ、さらに詩の奥深さを感じることができます。一節ずつの意味をじっくり考えたり、なんとなく言葉をくちずさんでみたりするなど詩の楽しみ方は色々ですが、私は詩の雰囲気と言葉のリズムを、訳を見ながらのんびり楽しむ……というのがお気に入りです。フランスの詩を日本語訳だけで読むとキザったらしくピンとこないかもしれませんが、その場合は原作の詩とその日本語訳が対になって収録された『フランス名詩選』(岩波文庫)がおすすめです。この本は様々な時代の著名なフランス詩人の代表作が収録されていて、手軽にフランスの詩に触れることができます。詩に興味を持った方がおりましたらぜひお手にとっていただきたい一冊です。さて、私の語学の修行はまだまだ始まったばかりですが、これからも日々精進していこうと思います。
 

次回執筆のご指名:戸松立希さん

今秋よりいずみ委員に加わり、さっそく、特集の紀行文などで才能を発揮してくれています。2020年は、戸松さんにとって新たなチャレンジの年になりそう!? ぜひ、抱負を一言お願いします。(編集部)

「リレーエッセイ」記事一覧


ご意見・ご感想はこちらから

*本サイト記事・写真・イラストの無断転載を禁じます。

ページの先頭へ