私の読書
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『火花』
又吉直樹 著
文春文庫
本体580円+税
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『東京百景』
又吉直樹 著
角川文庫
本体660円+税
最近のチャレンジは「本を買わないこと」で、一月から半年間は本を買わないようにしようと思っている。今までに読んだ本をもう一度しっかり味わい直してみたかった。本好きにとっては、本を買わないってのはなかなかに苦しいんだな。マジで。本屋での面白そうな本たちの誘惑がすごい。
それともうひとつ理由があったんだった。本棚が足りねえ。きっつー。劇的にスペース不足。このまま好きな本をムシャムシャ買って読んでいくと、本棚がパンクする。というか、既にパンクしているので小説の大半を売るはめになった。悲しい。読みたくなったら買いなおせば良いさと自分に言い聞かせる日々。
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『東京百景』と
『火花』は東京を旅行した時、隅田川のほとりで読み返した二冊。大好きな又吉直樹さんの大好きな作品。芸人畑出身ということで、イロモノ扱いされがちな彼の作品は、正直に言ってめちゃくちゃおもろい。芥川賞をとったから『火花』を知っている人は多いと思う。若手芸人のリアルが書かれている。
又吉さんの書く文章はボディーブローみたいだ。最初読んだ時はよくわからない部分も多かった。でも他の作品を読んで、時間を空けて読み直すと、ジワジワと意味や雰囲気が頭の中で動き出して止まらなくなる。
捨てたらあかんもん、絶対に捨てたくないから、ざるの網目細かくしてるんですよ。ほんなら、ざるに無駄なもんも沢山入って来るかもしらんけど、こんなもん僕だって、いつでも捨てられるんですよ。捨てられることだけを誇らんといてくださいよ
(『火花』より)
人に評価される漫才と自分の作りたい漫才。自分が好きなものをやっていたはずなのに、いつの間にかそれに首を絞めあげられている。作中に登場する若手芸人の二人、神谷と徳永のやりとりはいちいち重たい。ぐらぐらに煮詰まった鋭い言葉を投げつけてくる。なのに笑えるのが、又吉直樹のすごいところ。
『火花』が出版されたのは2015年。あの時読んだことのある人にも再読をおすすめ。若手芸人の言葉に張り倒されるかもしれない。最近、ボディーブローされてない君、どうですか?
岡山大学 理学部4回生
末永 光
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