最終的に単行本にかかわるすべての仕事です。
Aさん
質の高い本を作るだけでなく、「どう届けるのか」の導線まで作れるようになるのが理想なのではないでしょうか。SNSの発信の仕方を考えたり、雑誌の記事をweb向けに編集したり、イベントを仕掛けたり……増やそうと思えばいくらでも仕事を増やせるともいえるかもしれません。
Cさん
日常的に物語を生み出している小説家といえども、物語のスタートからゴールまで明確に見えているわけではありません(もちろん見えている方もいます)。対話を重ねる中で、物語の方向性を定め、どういう見せ方をしたら読者に伝わるのか、より多くの読者に本を手にとってもらえるのかを共に考えていくことが仕事だと思います。
Bさん
一言で言うならば、作家の伴走者です。作家の描きたいものを、描いてもらいやすいように環境を整えたり、作品のイメージや構成を一緒に考えたり。夫婦や家族のように密になって作家をサポートします。作家は読者の人生の伴走者です。
Dさん
文芸編集についての役割は、作家さんに対してはひたすらいい作品を書くための企画提案から資料集め、実際に書く段階になってもすべてサポート作業に徹することだと思います。もちろん作家さんそれぞれ望まれること、やりたいことが違うので、それは信頼をいただけるようにコミュニケーションが大事になります。ただ本を作ることに関しては、必ずしも作家さんの意見が最優先とも限りません。こちらから先方が思いもよらない提案をしたり、デザイナーや営業の意見、ひょっとしたら書店さんからの意見にも耳を傾け、ベストなものを作るのも編集者の仕事です。各分野の連結係といえるかもしれません。
Aさん
面白い原稿をいただいたとき、提案したエピソードが小説に採用されたときも嬉しいです。もちろん「これ以上読めない…」と思うほど疲れていることもありますが、基本的には大好きな小説を毎日読めるのは、いい仕事だと思います。また、作家さんに限らず、取材先やイベント会場などで色々な人に会えるのも魅力です。
Cさん
電車の中で自分がかかわった本を読んでくれている方を見ると嬉しいです。
Bさん
原稿の執筆を快諾いただく時。原稿をいただく時。ゲラのやりとりの時。見本ができた時。できた本を眺めながらお酒を飲む時。そしてその本が売れた時……辛いことも多いですが、編集の仕事はすべてが醍醐味であり、やりがいを感じます。
Dさん
自分の担当していた作家さんの作品が、多くの読者の方に届いた時はやはり嬉しいです。特に新人の方がデビューされること、さらにその方々を多くの方に知っていただくのも本当に大変なので、そういった方々が大きな賞をいただけたりすると嬉しいです。
やりがいとしては対作家さんにかぎらず、後輩の編集者がいい仕事をしてくれた時や雑誌が評判になったときも嬉しく、さらに営業やデザイナーも含めて「チーム」という考え方も、編集者の仕事にはあると思います。対談、座談会などおもしろい企画が誌面に載ったときもワクワクしますね。最近では古典芸能の仕事など、続けてきたことが形にできました。やはり時間をかけて作り上げるというのが大切なのだと気づかされます。
Aさん
編集者といっても媒体によって違いますが、文芸編集のことでいえば(今まさになりたてなわけですが)、作家さんと何を話せばよいのか分からず、初めは緊張と戸惑いがありました。著名な方とどう雑談したらよいのか分からず、先輩たちの様子をじっと眺めていました。人生経験が豊富ではないので、話題も提供できるものは少ないですし、まだまだだなと思う日々です。
あとは読書量が追いつかないこと。担当作家の過去の作品も読みながら新刊も読み、賞の下読みをして、新人作家や話題作にも目を通す、できればこれまで読んでこなかった名作や古典も教養として読まないと……なんて考え出すと、何から手をつければいいのか途方に暮れました(笑)。今は自分の中で優先順位をつけて読んでいますが、もっと読まなきゃという焦りはずっとあります。
Cさん
会社にもよると思いますが、あまりに自由度が高くて何をやったらいいのかわからなかったことです。
Bさん
何もできない。無力さ、勉強の足りなさを痛感した時です。苦労は感じませんでした。ただなりたての頃は無力さだけを感じていました。
Dさん
幸い多くの作家の担当をいきなりすることになりましたが、その作家の本をそれまで読んでいなかったケースも多く、特に歴史時代物のジャンルはあまり読んでいなかったので、そこが最初は苦労しました。作家さんとの話題に困ると、雑誌「Number」時代から培った、野球、競馬、相撲のいずれかのネタで乗り切っていました。
Cさん
物理的に忙しいのは本を作る最終段階の校了の時期です。が、気持ち的には企画が始まるときが一番忙しいかもしれません。題材は何にするか? 小説のテイストは?(ハードなものか、ハートウォーミングにするかとか)どんな読者に読んでほしいのか? 可能性が無限に広がっているだけに迷いは尽きません。また企画の最初の段階で小説の成否の半分くらいは決まってしまう(ような気がする)ので、頭をフル回転させるように心がけています。
Bさん
日常生活を営みながら小説のことを考えておりますので、何が忙しいのかわからないですね。今は子育ての方が忙しく思います……。
Bさん
読者には作品との出会いと、作品を読んで何か感じてもらえたかが大事なので、編集者の苦労を読者に知ってもらったらダメだと思います。作品の前にも後ろにも編集者という存在は感じさせないのがベストです。
Dさん
特にないのですが、本は基本は紙と文字だけで出来上がっているため、楽曲や映像に比べると「手間かかっていないじゃん!」と思われがちですね。フォントひとつ、紙ひとつ、文字だてひとつにも(たぶん)編集のこだわりはつまっています。
Aさん
媒体や編集部によると思います。はじめにいた「Number」は不規則で深夜に会社にいることが多かったですが、今は健康的だと思います。会食以外で終電を逃すこともほとんどありません。作家さんが締切に大幅に遅れない限り、基本的に“超緊急で”仕事をするということがあまりないので、ある程度計画性を持って、自分のペースで仕事をすることができると思います。深夜に原稿が届いて遅くまで読むこともありますが、連日それが続くわけではないです。ただ、常になにかしらの課題本(賞の下読みや担当作家の新刊など)を抱えているので、休日でも100%休んでいることは少ないかもしれません。そうはいっても、読むことに関してはあまり苦ではないですし、2〜3時間とれればいいので私生活に多大な影響があることもないです。読書が好きな方であれば気にならないかと思います。私はそんなに体力に自信のある方ではないですが、ペースをつかめばどうにかなります。(今のところは)。
Cさん
起きるのも遅いですが寝るのも遅いです。夜型の人は相性がいいかもしれません。
Bさん
基本的に皆さんと同じ、人間的な生活は送りますが、生活のすべてに何か作品のヒントを探っているような生活です。夢でもなんでもヒントになるので、24時間編集している感じです。
Dさん
以前いた雑誌で入社翌日から、いきなり終電で帰れずタクシー帰社でしたし、48時間徹夜(最高は72時間くらいまで)、3週間洗濯以外は家に帰れず、ということもありましたが、文芸編集の場合、そこまで集中力は保てないと思います。
いまは月刊の小説雑誌で、月に一度の校了作業は深夜に及ぶこともありますが、編集長の方針もあり、きちんと午前から仕事をし、可能な限り早く(といっても7時、8時にはなりますが)を部署全員で心がけています。作家さんとの会食も兼ねた打ち合わせで遅くなることもありますが、最近はめっきりそれも減っています。
Aさん
友人に「あんまり寝てなさそう」とか言われますが、めっちゃ寝てます。
Cさん
原稿用紙で原稿のやりとりをすることはほとんどない、ということでしょうか。
Bさん
校閲ガールの印象が強いようです。
Dさん
作家の先生のお宅に「原稿まだですか?」と伺うことはありません。
Aさん
映画や演劇を観ても、文芸以外の雑誌を観ても、「この人は書けるだろうか」という視点を持ってしまうこと。面白いコンテンツに出会うと、どこかで「あわよくば仕事でこの方と……」となってしまいます。あとは、知人のSNSなどの文章に対して「なにこの酔った文章」とか敏感になっている自分がたまにいて「私ホントに嫌なやつだな」と思います(笑)。
Cさん
テレビのテロップの誤字をついつい見つけてしまいます。
Bさん
生活のすべてに何か作品のヒントを探っているような生活です(夢でもなんでもヒントになるので)。道を歩いていても、何かネタを探します。電車や飲食店でも他人の会話が気になったり。。。よく家族に「あなたは話を聞いてない」と怒られます。
Dさん
本屋にはしょっちゅう行きます。あとSNSでも書店員さんとのつながりは大事にし、テレビや代理店の甘言には気をつけています(笑)。
Aさん
肩が凝りやすい体質なのでなるべく軽くしています。紙の本は家や会社でじっくり読むので、入れているとしても文庫本です。財布、スマホ、家の鍵、化粧道具、イヤホン、水、頭痛薬があれば基本は大丈夫です。メモは失礼のない場面であればスマホにしています。手帳もスマホ、電車内でのながら読みもスマホです。
Cさん
本が一冊、原稿が一束あとは筆記具など。Kindleで原稿を持ちあるく人もいるかもですが、紙の方が起動が早く、全体を俯瞰するのに向いているので、アナログ生活です。
Bさん
ゲラは紙なので、やはり紙の比重は高いです。電子は漫画しか読みません。
Dさん
私は極めて軽装で、本やゲラを持ち運ぶ場合は別の紙袋に入れることも多いです。だいたいいつもリュックで、たまに1泊くらいの出張だとそこにすべてを入れるので、相手に驚かれます。一時期、小型のタブレットを持ち歩いていましたが、それも重いので止めてしまいました。実際の校了作業は紙でないと現時点ではできないし、そんな大事なものは失くしたら大変なので持ち歩きません。あとはスマホで充分です。
Aさん
増えました。具体的な数字は分からないのですが…平均して週に3〜4冊? もっとかも? 学生時代はひたすら好きなものしか読んでいなかったのですが、今はヒット作や話題作もなるべく読みたいので、自然と増えます。
Bさん
趣味や好きで読む本の時間は奪われます。
Cさん
たぶん年間100冊ちょっとだと思います。読む本の量自体も増えましたが、世に出ない原稿(新人賞の下読みなど)の量が膨大です。本になったものを読むのは、氷山の一角という感覚です。
Dさん
文芸編集者になってからは増えました。月20冊くらいは最低ラインと思います。
Aさん
小説に関しては下読みがあるので、「ここをこうしたらもっと面白くなるのでは」とか「ここがこうなってるから面白いのか」とか一種のテキストのつもりで読むこともあります。
ただ「いい本だった」「微妙かも」とか漠然とした感想を持つのではなく、その理由を具体的に言葉にできるのが、編集者なのだろうと思います。なかなか難しいですが修行中です。
ノンフィクションは「この方は小説が書けるだろうか」という視点を持つこともあります。
Bさん
常に展開を考えてしまうこと、自分ならこうするなという……。一般読者と変わらないと思います。
Cさん
この書き手は次にどんな物語を書いてくれるのだろうか、と考えながら読むことでしょうか。そうやって読み始めているにもかかわらず、夢中になって物語を追いかけてしまうような作家の方にはすぐに会いにいきたくなります。
Dさん
まずこれまで書かれたものとの比較(個人=作家比、相対比=先行作との比較)を常にしていると思います。作品の現在地を知る必要性があるからです。次にいまの時代にこれがどう読まれるか、常に編集者として冷静に見ている気がします。
Aさん
①寺山修司→どこからあのセンスが出てくるのか近くで見たい。
② 宇野千代→人生相談をしたいです(笑)。
Dさん
①菊池寛→創業者ですが、色々とアイディアマンだったとエピソードが面白いです。
②池波正太郎→原稿は絶対に期日まで書かれるうえ、編集者にごちそうしてくださるとか。
Aさん
帯文やプロモーションの仕方、企画内容など、勉強になることばかりです。小説ももちろんですが、ノンフィクションや雑誌の特集の作り方、最近はwebの連載やインタビュー記事なども勉強になります。
Cさん
書店さんに行って、格好いい本を見つけるとやられた〜と思い日々歯噛みしています。思わず手に取りたくなる帯を作れる人、すごい、と思っています。
Bさん
帯の惹句やデザインなど。あとは売り方ですね。
Dさん
装丁や帯などいつも参考にしています。「うーん、でも違うかな?」と思うことも(笑)。帯でいえば、読めば分かることを書いても仕方なく、どうしたら「買いたい」と思わせるかが大事だし、装丁は絵はもちろんですがタイトルの書体、本が並製が上製か、丸背か角背か、ニス引きがマットかグロスか……専門的なチェックポイントはいくつもあります。
一方、プロモーション=仕掛けも大事で、「売る」というものを決めたら一点突破する出版社もあるので、そこは羨ましく感じます。大きな看板やたくさんの広告、メディアへの露出によって(内容はもちろんいいものでないといけませんが)、売れ行きというのは違ってきます。文藝春秋は刊行点数が多く、一点突破は難しいので、数多くの書籍の中からどうセールスポイントをPRしていくか、常に課題にしています。
Aさん
色々なタイプの方がいらっしゃるのではないかと思いますが、ヒットを出せる人、売るところまで導線を引ける人、著名人とのパイプのある人、大物作家さんにも意見をはっきり伝えられる人は本当に尊敬します。
Cさん
作家の能力を100%以上引き出せる人でしょうか。
Bさん
自分で天才だとか、あとはやってきた仕事や手掛けた作品を自慢しない人です。
Dさん
著者からの信頼の篤いということと、社内からも信頼に足りる人であること。
Aさん
直近では、新人の作家さんや、まだ小説は書いたことがない著名人に書いてもらう経験はしてみたいです。長い目でみたときに、異業種とのコラボにも興味があります。どこにでも「物語」は必要とされているので、本という形態だけにこだわらず、柔軟に物語や言葉を応用できる編集者になりたいです。
Dさん
新しくはないと思いますが、来年は向田邦子さんの没後40年にあたるので、何か企画を総合的にやっていきたいです。
第2回(164号)
実業務&編集者になるには? 篇
第3回(165号)
作家になるには 篇
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