卒業生のひとりごと
11.在宅士の実力が試されるとき


「そのとき」は、突然やってきました。
 あれよあれよと「外出自粛」「イベント自粛」「リモートワーク推奨」等々、「とにかくおうちでおとなしくしていなさい」系の指示が出されました。まさか、こんなにも家にいることが推奨される日が来るとは。驚きつつも「わたしはもともと在宅で365日中300日くらいは家にいるのだから、そこまで生活は変わらないだろう」と、どこか高をくくっていました。けれど、それは大きな間違いだったのです。
 まず、仕事が半分以上飛びました。「風が吹けば桶屋が儲かる」とは、まさにこのこと。いえ、儲かってはいないというか、むしろ逆なのですけれども。仕事が減れば収入も減り、収入が減れば健康で文化的な生活を送るのが難しくなってしまうため、これはシンプルに危機です。
 そして普段からライフラインとして活用していたネットスーパーの利用が難しくなるという問題も発生しました。これは単純にネットスーパーを利用する人が一気に増え混雑したためなのですが、あまりに注文できなさすぎて一時期冷蔵庫が寂しい状態になっていました。また実店舗のスーパーも「この街にはこんなに人がいたのか!」と驚くくらいに混んでいて(平日の日中にもかかわらず)、あまりに「密」だったため、しばらく最低限の食材は比較的空いているコンビニで買うようにしていました。ちなみに余談ですが、トイレットペーパーやティッシュペーパーが軒並み売り切れていて「自宅の在庫が1」になったときは、人間の尊厳を失うかと思いました。結果的に事なきを得ましたが。
 とはいえ、自宅で過ごすことに関しては自称プロです。普段から基本的に自宅にばかりいるので、「外出できないからすることがなくて暇」というような悩みとは無縁。家から一歩も出なくても、電子書籍でいくらでも本が読めますし、動画配信サービスには観きれないほどの映画やアニメがありますし、パソコンやスマートフォンあるいは紙とペンがあれば創作もできますし、手持ちの服を組み合わせてひとりファッションショーを開催したり、メイク研究をしたりするのも楽しいです。
 平和な時分には「家にばかりいないで、もっと外に出なよ!」などと言われたりしていましたが、このような状況下では「引きこもりでよかったな」と思わずにはいられません。家にひとりでいても、無限に楽しめるのが在宅士の強みです。ちなみにこれを書いている現在(2020年8月末)は、いままで通りとはいかないまでも外出できるようになってきましたが、またいつ何時在宅を余儀なくされる事態が発生するかわかりません。ということで、何かの役に立つことを願い、自宅で楽しく過ごす方法をいくつかご紹介させていただきたいと思います。さあみなさん、ともに楽しく引きこもりましょう!
 

積読崩し祭りの開催

 長時間自宅で過ごす日は、高く積みあがった「積読」を崩す絶好の機会です。「買ったけどまだ読んでいなかった本」や「ほしいものリストに入れたまま結局まだ買っていなかった読みたい本」を、どんどん読んでいきましょう。
 また時間がたっぷりとれるときには、長めのシリーズものに着手したり、読み進めにくい癖が強い作品に挑戦したりするのも良いですね。ちなみにわたしは『ドグラ・マグラ』(夢野久作/角川文庫)を再読しましたが、気が滅入りがちな自粛期間にどうして奇書を読んでしまったのか自分でもよくわかりません。なお『ドグラ・マグラ』はとっつきにくい作品ですがチャカポコゾーンを突破すれば比較的読みやすくなるので、これから読むという方は、なんとかチャカポコをクリアしてください。
 

ひとり映画祭りの開催

 月500円くらいで色々な映画やアニメがみられる動画配信サービスに加入していれば、「暇」とは無縁になります。興味惹かれる作品がたくさんあるのにも関わらず1日は24時間なので、すべてを観ることは当然叶わず、もどかしい思いをすることも。
 たっぷり時間がとれるなら、ブランケットと飲み物とおやつを用意して、延々と映画やアニメ、ドラマを観ましょう。自宅なら、途中でうっかり眠ってしまっても大丈夫。「とりあえず気になるアニメやドラマの1話だけ延々観ていく」という個人的な企画(?)を開催しても楽しいと思います。ちなみにわたしはずっと観たかった『イヴの時間 劇場版』を観てボロボロに泣きました。
 

ひとりファッションショー開催

 せっかく買った新しい洋服も、外に出ないと着る機会を失いがちです。そんなときは、自宅でひとりファッションショーを開催しましょう。用意するものは、全身鏡と洋服。今までしたことながなかった組み合わせを試したりするのも楽しいです。家から出ない日なら、頓珍漢なコーディネートになってしまっても大丈夫。素敵な組み合わせを発見したら、写真に残しておくと後々着こなしの参考になります。
 
 このように家にいながら楽しくすごす方法はたくさんあるので、わたしはずっと外出できなくても特に問題はありません。ですが、外出したくてもできずにストレスをためてしまっている方の姿や、営業を続けることができず泣く泣く閉めてしまうお店、イベントが開催できなくて嘆いている関係者の方々の姿を見ると、わたしとて心が痛みます。安心してマスクなしで外に出たり、イベントに参加したりすることができる「普通の」日々が、はやく戻ってくることを願っています。引きこもり生活だって、平和な世の中でこそ、より謳歌することができるのですから。
 
P r o f i l e
門脇みなみ(かどわき・みなみ)
『読書のいずみ』卒業生。自称ひきこもりのプロ(在宅士)です。

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