読んで一言 165号

アンケートから、読者の感動したり影響を受けた本・映画・舞台をご紹介
 

『サロメ』
原田マハ/文春文庫
本体680円+税

 『幸福な王子』の作者、オスカー・ワイルドの描いた戯曲『サロメ』と、その挿絵を描いた天才画家オーブリー・ビアズリーに焦点を当てた美術ミステリ。退廃的で背徳的、異端、同性愛、近親相姦といった雰囲気を全体にまとった作品で、そういう雰囲気が好きな人ははまると思います。私はとても好きな作品でした。
(京都工芸繊維大学 やもり

『この気持ちもいつか忘れる』
住野よる/新潮社
(CD付・先行限定版)本体1,700円+税

 住野よるさん作品は「キミスイ」のイメージからライトな感動青春文芸だと思われがちだが、私はそれだけだとは思っていない。読みやすくて、感動できて、青春モノであることは間違いではない。しかし、住野よる作品の醍醐味は「どんでん返し」にこそあると思っている。予想を裏切る展開が、主人公の隠された心情を丸裸にする。そんな、住野よるの醍醐味がこの本にも詰まっている。
(金沢大学 カズテル
 

『はい!こちら子ども記者相談室デス!』
かめおか子ども新聞、ヨシタケシンスケ/新潮社
本体1,000円+税

 子どもが書いて大人が読む月刊紙、かめおか子ども新聞。この新聞では、大人の悩みを子どもが解決するコーナーが人気だそうです。子どもに関する悩みはもちろん、結婚や老化についての質問にも、子ども記者たちは見事に答えてくれています。これまでにない新しい考えを知ることができ、とても面白かったです。また、ヨシタケシンスケさんのイラストと、そこに添えられているコメントが、さらに本書を楽しくしています!
(名古屋大学大学院 学生最後の一年

『神様のケーキを頬ばるまで』
彩瀬まる/光文社文庫
本体560円+税

 普段読まない雰囲気の作品でしたが友人のおすすめで読みました。誰もが悩みを抱えたり挫折を経験するなかで生活している……可愛いタイトルとは裏腹に内容はリアルなもので、でも重すぎないような作品でした。各話の登場人物が少しずつどこかで繋がっている短編集です。終わりはどれも前向きなもので、読んでいて救われるような気持ちになりました。
(弘前大学 めれんげ
 

『有頂天家族』
森見登美彦/幻冬舎文庫
本体686円+税

 面白きことは良きことなり、を合言葉に生きる矢三郎は狸界の名門下鴨家の三男。矢三郎の尊敬する美女に現を抜かしている天狗に宿敵夷川家のおかげで退屈している暇はない。洛中で起こる様々な危機も四兄弟の絆と毛深き愛で乗り越える、波瀾万丈の物語。読み出したらとまりません。
(杏林大学 海辺の

『ままごとは、ほんのむし。』
たからもも。/リイド社
本体1,000円+税

 読書が好きで、内容に影響されやすい猫のままごとと、飼い主のけいな。1匹と1人の生活を描いた、のんびりした漫画。ままごとの蔵書を実際に読んでみるのもいいかも。
(奈良女子大学 玉鋼
 

『図書室で暮らしたい』
辻村深月/講談社文庫
本体660円+税

 母校での教育実習中に見つけた一冊。高校時代足繁く通っていた八文字屋書店。そこで見つけたのは文庫本になった辻村深月さんのエッセイ。とても身近な話題が丁寧に綴られていた。辻村さんの日常や思い出に、実習期間の間、とてもいやされました。
(宮城学院女子大学 雪路

『第七官界彷徨』
尾崎翠/河出文庫
本体670円+税

 五官や第六感を超えた第七官に響く詩を書きたいと願う町子は、音大志望の従兄、精神科医の長兄、苔の恋愛を研究する次兄の暮らす家で炊事係を始める。知的な口調で大真面目に奔放なことを言う4人のやりとりには声を上げて笑ってしまった。戦前に書かれた作品だが、彼らの恋愛に対する思いや切なさは瑞々しく、新しさすら感じる。素敵な本に出会えた喜びで、読了後は鼻の奥がつんとした。
(京都大学 いろは
 

『兎の眼』
灰谷健次郎/角川文庫
本体600円+税

 新卒の女性の先生、小谷先生が様々な子供や先生に会っていく話です。生徒への関わり方に悩み、だんだん相手の立場がわかっていく先生にすごく共感しています。私と歳も近いので身近に感じることが多いです。
(新潟大学 ジェットスイパー・カスタム

『ある愛の詩』
新堂冬樹/角川文庫
本体680円+税

 傷ついたイルカと育った青年が、海の女神と出会ったとき物語が始まる。小笠原の海で育った拓海は、旅行に来ていた音大生で声楽志望の流香と出会う。慈愛に満ちた、それでも愛することと愛されることを知らない青年と、両親との確執を抱え愛におびえる彼女が出会い、織り成す物語の結末とは。大好きな人に、大好きと言いたくなる一冊です。
(山形大学 みけ
 

『第一阿房列車』
内田百閒/新潮文庫
本体590円+税

 究極の「不要不急」がここにある。なんにも用意がないのに汽車で出かけて旅館に泊まって観光もせずに帰ってくる。これを不要不急と言わずに何を不要不急と言うのか。百閒先生とヒマラヤ山系氏の道中は、真面目だが面白い。いや、真面目だからこそ面白い。笑わせようという魂胆が無いのに面白い、というのが真のユーモアである。阿房列車は溢れんばかりのユーモアを乗せて日本中を走り回る。
(同志社大学 梶原 響)

『往復書簡』
湊かなえ/幻冬舎文庫
本体600円+税

 1話目は驚き、2話目はほっとし、3話目は切なくなりました。手紙のやり取りだけで描かれる、どれも違う読後感のミステリーです。
(名古屋大学 シエル

 映画 
『ミッドナイトスワン』
(2020年 日本)

 トランスジェンダーの主人公は人に愛を与えたいと思っている。一方で母親からDVを受ける少女は愛に飢えている。その2人が出会った時その目には希望が宿り、その瞬間から周りの人の人生を巻き込んで動いていく。衝撃の展開あり、しかしきれいなラブストーリー。演技が素晴らしい役者さんが揃っており見応えのある映画。
(お茶の水女子大学 ぴぐ

 舞台 
『ローマの休日』
(2020年 日本・帝国劇場)

 もともとの作品内容を知らなかったので今回がお初だったのですが、アン王女の強さに心打たれました。自分の願いよりも、義務を全うすることを選ぶ王女の姿は、同じ人間として憧れを抱きます。観終わった後にタイトルの良さを噛み締められるところもオススメ。最後まで観て初めて「ローマの休日」というタイトルの意味が分かり、とても感動しました。的確に内容を言い表している素晴らしいタイトルなんです。ぜひその部分も注目して観て欲しいです!
(お茶の水女子大学 あかりんご
 
 

 映画 
『9人の翻訳家 囚われたベストセラー』
(2019年 フランス・ベルギー)

 ミステリー作品としての面白さだけではなく、音楽や映像の美しさ、そして何より9人の翻訳家が発する言葉の数々が魅力的で、面白かった。
(電気通信大学 リン
※斜体の投稿者名は、ペンネームです。

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